ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団『ローラン・プティのこうもり』 2012年2月5日(日)

2012年02月11日 | Weblog

Nさんから寄稿頂きました。2日目のこうもりです。


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新国立劇場バレエ団『ローラン・プティのこうもり』
2012年2月5日(日)

ベラ:本島美和
ヨハン:福岡雄大
ウルリック:八幡顕光

メイド:楠元郁子

グランカフェのギャルソン:輪島拓也 江本拓 奥村康祐

フレンチカンカンの踊り子:厚木三杏 西川貴子 堀口純

チャルダシュ:芳賀望
       川村真樹 長田佳世 寺田亜沙子
       丸尾孝子 米沢唯 細田千晶

本島さんのベラは、
子供をあやすときや育児に疲弊している姿は本当の母親らしいのだが、
変身後はそれはそれはゴージャスで艶やかな美女になり、
前後の対比が際立っていた。
きりっとした晴れやかさがあり、大胆に舞う姿が眩しく映る。
伸びやかに、ときにはしっとりと
身体全体で様々な表情を見せて終始吸い寄せられた。
また、細かな芝居もしっかりとこなし、
特に1幕での食器の汚れをメイドに注意し自身で拭くところは
短い時間の中であらゆる動きを鮮やかに見せていて秀逸だった。

福岡さんはこれまでに観た中で最も若いヨハンだったが、
持ち前の磐石の技術に貫禄や渋みがあり、大変好演だった。
若くして父親になり、5人の子供と同様まだまだ遊びたい盛りであることを窺わせる
どこか幼さも持ち合わせた魅力もあった。
若手のダンサーならではのヨハンであろう。
5人の子持ちに見えて大人の男性の魅力が十分にあり、
3月のカレーニンが一層楽しみになった。
シャープで無駄のない、胸がすく踊りも気持ち良い。

劇場のブログによれば高所恐怖症とのことだが、
微塵も感じさせず嬉しそうに浮遊していたことも挙げておきたい。

本島さんと福岡さんは
くるみ割り人形やドン・キホーテといった古典バレエから
ロメオとジュリエットや椿姫のようなドラマティックな作品まで
共演を重ねてきたが、
こうもりのような小粋で洗練された作品においても
良きパートナーシップを見せてくれた。
グランカフェの駆け引きは勿論のこと、
食卓での夫婦喧嘩も自然で、温かく見守りたくなる微笑ましさが漂う。
これからも多くの作品でペアを組んでほしいお2人である。

八幡さんのウルリックは機敏で可愛らしく、
ヨハン夫婦にとって弟分のような存在であろう。
びしっと真ん中分けした髪型が似合い、
ベラへの好意を抱きつつも
夫を取り戻したいという彼女の願いを叶えるべく
懸命に協力する姿が印象深かった。
ベラの着替え中も観客を飽きさせることなく
小気味良い踊りで楽しませてくれた。
前回全幕上演した2006年は代役でこの役を踊り、
ソリスト昇格間もないとは思えぬ堂々たる舞台に当時は衝撃を受けたが、
今回も益々磨きがかかって頼もしく感じた。

グランカフェのギャルソンには
初めて輪島さん、奥村さんが加わった。
マキシムの店長らしい風格とコミカルさのある輪島さん、
軽やかで初々しさのある奥村さん、ともに新鮮であった。

この作品では女性はロングドレス、
男性はタキシードで登場する場面が多いのだが、
違和感なく着こなしていて
プティが描く洒落た世界を見事に表現していた。
全幕上演は約6年ぶりで初めて出演するダンサーが多くいながら
質の高い洗練された舞台を披露し、
バレエ団を代表するレパートリーであると思った次第である。

土曜日は2002年の劇場初演時から踊っている
湯川さんと山本さんペアが登場する。
プティから直接指導を受けた経験を持つお2人の
華麗なる共演を楽しみに待ちた



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