ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団 マクミランの『ロメオとジュリエット2011年6月26日(日)

2011年06月27日 | Weblog

Nさんより引き続き日曜日の観劇記の寄稿頂きました。

ありがとうございます。

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2011年6月26日(日)
ジュリエット:リアン・ベンジャミン
ロメオ:セザール・モラレス
 
マキューシオ:福田圭吾  ティボルト:輪島拓也  ベンヴォーリオ:菅野英男
 
パリス:厚地康雄
 
キャピュレット卿:森田健太郎  キャピュレット夫人:湯川麻美子
 
乳母:遠藤睦子
 
ロザライン:川村真樹
 
大公:内藤博  ロレンス神父:石井四郎
 
モンタギュー卿:小笠原一真  モンタギュー夫人:千歳美香子
 
3人の娼婦:寺田亜沙子 堀口純 北原亜希
 
ジュリエットの友人:大和雅美 井倉真未 細田千晶
               川口藍 加藤朋子 盆子原美奈
 
ロザラインの友人:酒井麻子
 
マンドリン・ソリスト:グリゴリー・バリノフ
マンドリンの踊り:アンダーシュ・ハンマル 小口邦明
             清水裕三郎 田中俊太郎 原健太
 
ベンジャミンのジュリエットは
登場場面からレディの貫禄があり、情熱ほとばしるヒロインであった。
大ベテランのダンサーであるが年齢を感じさせない恐るべき身体能力の持ち主で、
お転婆な少女を踊っても全く違和感がない。
バルコニーから降りてくるときは階段を1段飛び越してくるなど
ロメオに心を一気に開いていくさまがダイナミックに伝わってきた。
 
モラレスのロメオは
マントを翻す仕草や踊りが洗練されていて、大人びた雰囲気があった。
ジュリエットに求婚するときもどこか控えめで、
恋一直線に突っ走るというよりは
落ち着いた物腰でジュリエットを見守る優しい青年であった。
 
踊りは大そう美しく優雅で、
複雑な振付においても余裕を感じさせた。
 
所属するバレエ団は異なっていても
流石本家英国で踊り込んでいる2人らしい、
奥深い味わいのあるペアであった。
マクミラン作品の良さを改めて感じた次第である。
 
マキューシオの福田さんは軽妙洒脱に踊り切り、見事だった。
変に芝居をしなくても踊りそのものから味わいが生まれて
身体が自然と動いているように見え、
主役を上回るほどの存在感があり、秀逸だった。
 
輪島さんはティボルト役がとても似合い、
これまで観てきた役の中では一番の当たり役に感じた。
貴公子然とした雰囲気の中にちらりと黒の魅力が覗き、
悪役だけでは終わらぬ青年であった。
ロメオに刺され、倒れ込んで息絶えるまで
力を振り絞って身体を浮かせるなどのもがきっぷりが凄まじく、
ティボルトの執念が伝わってくる一幕であった。
 
ベンヴォーリオの菅野さんも好演していた。
ロメオ、マキューシオそれぞれに理解を示す
頼もしい友人であった。
 
ロメオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの3人のチームワークが良く、
観ているこちらまで楽しい気分にさせてくれた。
 
遠藤さんによる乳母の名演も挙げておきたい。
あらゆる作品を踊りこなせる方がどう演じるか関心があった。
アラジンの母役に引き続き、ジュリエットやロメオを始め、
強烈な個性を持つ若者達相手に四苦八苦する姿が可愛らしく、
愛嬌たっぷりと見せてくれた。
 
3人の娼婦は意外なキャスティングで当初は驚いたが、
たおやかなダンサー達が気品や優雅さを捨てて思い切り弾ける姿は
大変新鮮であった。
特に、今年1月の悲哀感溢れるニキヤの記憶が新しい寺田さんの
勢いのある娼婦には驚かされた。
今後の新境地開拓が楽しみである。
 
ジュリエットの友人6人の
淑やかで統制のとれた踊りも上出来で、
清らかな癒しを与えてくれた。
ベテランやソリストから成る昨日の6名は勿論、
コール・ドから選抜された5名と
彼女達を率いる頼れるリーダー・コリフェの大和さんから成る
本日のメンバーも良かった。
 
街の雑踏場面を見渡してみると
中心で繰り広げられている男性ダンサー達の決闘に目が行きがちだが、
実はその周りで女性同士も激しく争っている。
中でも娼婦対街の女は迫力満点で、
男性に負けじと張り合っている女性ダンサー達にも是非ご注目いただきたい。
 
統制のとれた群舞が持ち味のバレエ団だが、
この作品ではあまりに揃い過ぎていては
庶民で溢れかえる街の雰囲気が出にくい。
しかしながらばらばら過ぎてはまとまりを失ってしまう。
新国立のダンサー達はその辺りの加減が絶妙で、
ヴェローナの街の生活感を保ちつつ揃えるべき箇所はしっかり揃えていた。
 
土曜日は初役同士の本島さん、福岡さんペア主演である。
火花を飛び散らすかのようにパワー炸裂だった『ドン・キホーテ』、
静謐でしっとりとした『椿姫』、と趣の異なる作品で共演を重ねてきた2人が
どんな舞台を作り上げるか、期待したい。



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3 コメント

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ますます (Aruyaranaiyara)
2011-06-27 20:25:46
2日目のNさんのお話を聞いて、
益々観に行きたくなりました。

なにか、新国立が凄く盛り上がっている、
そんな空気がガンガン伝わって来て、
観に行くのが待ちどうしくなってきました。

新国立を永らく観てこられたNさんならではの、
公演相互の曼荼羅絵図を駆使されたお話には、
深く心に届く説得力を感じ、
私の観劇意欲を煽られます。

再び、感謝です。
返信する
ありがとうございます (N)
2011-06-27 22:42:13
Aruyaranaiyara様

初めまして、Nです。
初日分に引き続きこの度もコメントいただき
誠にありがとうございます。
じっくりとお読みくださったことが伝わり
書き手として大変嬉しく、
Aruyaranaiyara様のお言葉1つ1つが心に届きました。
深く感謝いたします。

新国立での鑑賞を決心され、待ち遠しくなったと
拝読し、劇場ファンとして心より喜んでおります。

また寄稿させていただきますので
是非お立ち寄りくだされば幸いです。
返信する
お二人とも感謝です (管理人)
2011-06-30 17:50:09
ARUYARANAIYARAさん そしてNさん
早速コメントありがとうございます。
一重にnさんの力の入った観劇記のお陰です。
今後共宜しくお願いします。
博多では中々バレエを見ること適いませんので。
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