ボリショイ劇場 & シドニ-オペラハウス観劇記

元モスクワ、現在シドニ-赴任の元商社マンによるボリショイ劇場やシドニ-オペラハウスなどのバレエ、オペラ観劇記です

新国立劇場バレエ団 マクミランの『ロメオとジュリエット』6月25日(土)

2011年06月26日 | Weblog

Nさんより国立劇場バレエ団今シーズン最後の演目
『ロメオとジュリエット』の初日分の寄稿頂きました。

Nさん何時もありがとうございます。

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新国立劇場バレエ団 マクミランの『ロメオとジュリエット』
2011年6月25日(土)
ジュリエット:小野絢子        ロメオ:デニス・マドヴィエンコ
マキューシオ:八幡顕光       ティボルト:マイレン・トレウバエフ
ベンヴォーリオ:芳賀望        パリス:貝川鐵夫
キャピュレット卿:森田健太郎 キャピュレット夫人:楠本郁子
乳母:堀岡美香                   
ロザライン:寺田亜沙子
大公:内藤博                        ロレンス神父:石井四郎
モンタギュー卿:小笠原一真   モンタギュー夫人:千歳美香子
 
3人の娼婦:湯川麻美子 西川貴子 丸尾孝子
ジュリエットの友人:さいとう美帆 高橋有里 西山裕子
            寺島まゆみ 長田佳世 米沢唯
ロザラインの友人:川村真樹
マンドリン・ソリスト:江本拓
マンドリンの踊り:アンダーシュ・ハンマル 小口邦明
           清水裕三郎 田中俊太郎 原健太

新国立劇場バレエ団にとっての上演は7年ぶりとなる
マクミランの『ロメオとジュリエット』初日を鑑賞した。
 
小野さんのジュリエットは全幕版の初役とは思えぬ滑らかで美しい踊りに驚嘆した。
マクミラン独特の振付も難なくこなし、
数日間で大人の女性へ階段を駆け上がるかの如く
成長するジュリエットを丁寧に演じていた。

聞き分けの良い少女だった1幕とは一変し、
3幕では自我が芽生え、両親から何を言われようとも
ロメオへの一途な思いを崩さぬ凛とした女性となり、
あたかも別人のようである。
パリスとの結婚を迫る両親に反抗し
1人ベッドの上で佇んでいるだけでも内に秘めた魂の叫びが伝わり、
物語の世界に引き込まれた。
 
演劇要素の強い作品においても立派に舞台を務め上げ、
主役目白押しな来シーズンも益々楽しみなダンサーである。
 
マトヴィエンコのロメオは陽気、軽快で街の人気者そのもの、
周囲をぱっと明るくさせるオーラを放っていた。
特にジュリエットのマンドリン演奏に合わせて踊りを披露する場面では
次々と難技を決めていて独壇場となり、
ジュリエットの友人達までもを虜にしてしまうことにも
納得いく輝きがあった。
 
小野さんとマトヴィエンコは初めてペアを組んだが、
2人の間で交わされる愛が伝わってきたことに加えて
パドドゥでの複雑なリフトも破綻がなく、安心して観ることができた。
 
八幡さんのマキューシオは茶目っ気があり、
ロメオにとっては弟分のような可愛らしさも持ち合わせていた。
数多くある踊りの見せ場ではたっぷりと魅せてくれた。
ティボルトに刺されても最期の最期までひょうきんさを失なわず
やがて息絶えるまでの芝居も光っていた。
 
トレウバエフさんのティボルトは現れた途端
舞台に緊張感が走るほど、存在感があった。
モンタギュー家へに対しては静かに敵意の炎を燃やし、
決して剥き出しにすることなく冷静さを失わない。
キャピュレット家の重鎮らしい貫禄、気品を備え、
ジュリエットを見守るときには兄のような優しさも見せる
魅力ある人物であった。
 
楠本さんのキャピュレット夫人も忘れ難い。
キャピュレット家に誇りを持つ気高い夫人で、
トレウバエフさんと同様登場するだけで舞台が引き締まる。
息絶えたティボルトを目の前にしての錯乱ぶりは
鬼気迫るものがあった。
 
3人の娼婦はベテラン揃いで見応え十分だった。
特に湯川さんは文句なしの蓮っ葉なリーダーで
踊り、芝居ともに板に付き、初演時からの踊り込みが窺える。
 
幕開けから大勢の男性達による剣術の場面が多く、
鞘の音もよく響き渡って迫力があり、血湧き肉踊る活劇が続く。
怪我が心配ではあるが、
他のバレエ作品ではなかなかお目にかかれない場面なだけあり
見どころの1つである。
 
騎士の踊りの音楽の場面では
貴族達の優雅且つ堂々たる舞いが披露され、
絵画から抜け出したかのような重厚な美しさがある。
 
新国立劇場に通い始めて早6年半になるが、
新国立劇場バレエ団が踊るマクミラン版『ロメオとジュリエット』を
鑑賞することをずっと願っており、
その夢がようやく叶い感無量である。
劇場に響くプロコフィエフの音楽に聴き入りながら、
幸せを噛み締めるばかりであった。
 
明日はリアン・ベンジャミンとセザール・モラレスの主演である。
英国で踊り込んでいる2人の舞台をを楽しみに待ちたい。
 



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2 コメント

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感謝 (Aruyaranaiyara)
2011-06-27 11:29:26
今回の新国立ロミジュリ、観にいこうかornot、迷ってました。

Nさんの、他の、どの書き込みより、
情報量の多さ、私見を多く交えず、
全体像の客観的なお話しを伺って、
観にいく事に決めました。

ありがとうございました!
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お役に立てて何より (管理人)
2011-06-30 17:47:58
ARUYARANAIYARAさん
早速コメント頂きながら返事遅くなり申し訳ありません。是非お楽しみください。
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