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2017.1.24 Newsモーニングサテライト

2017年01月24日 19時46分16秒 | MS
■マーケット

NYダウ反落
新政権が本格始動後の株価は下落市場が期待する具体策が見えていないことが、不透明感と捉えられています。市場では保護主義的な通商政策が前面に出てきている事への警戒感は強いようです。その意味で週末のイギリス・メイ首相との会談や月末のNAFTA各国との交渉などを見極めたいとのムードもあるようです。世界的な保護主義台頭への警戒感から、為替では安全資産の円も買われやすく、一時3日ぶりに112円台を付けました。今週から決算発表の企業数もグッと増え、足元は政策よりも相場を動かす要素となりそうです。ニューヨークの株価終値です。揃って反落でした。ダウが27ドル安、1万9,799ドル。ナスダックが2ポイント下落の5,552。S&P500が6ポイントマイナスの2,265でした。

【NY証券取引所中継】マクドナルド決算を分析
解説は米国みずほ証券の中川義裕氏

--引けにかけてちょっと下げ幅を縮めてますね。

そうですね。1日を通してみますと、TPPからの離脱やNFTAの再交渉など、トランプ大統領の保護主義的な貿易政策をめぐる懸念が新ためて意識され、相場の重しとなっています。

--さて決算発表したマクドナルドの株価は軟調のようですね。

海外は好調だったものの、アメリカの既存売上高がマイナス1.3%(前年比)となったこと嫌気されたようです。2015年10月に開始した朝食メニューの終日販売の効果が一巡したことも要因です。

--となると今後の課題は何なんでしょうか。

フランチャイズオーナーが去年夏の報告書によりますと、いわゆるミレニアル世代のうち、ビッグマックを食べたことがあるのが、わずか5人に1人だそうで、魅力ある商品の提供に苦戦しているようです。一方で、今回の決算ではお得商品が売り上げを押し上げており、値ごろな商品を求める需要も根強いことが示されています。高品質と値ごろ感、両方の賞品を提供しなければならないというジレンマをどう克服するかが課題のようです。


【NY証券取引所中継】トランプ銘柄を再考
解説は米国みずほ証券の中川義裕氏

--トランプ大統領就任で投資銘柄を考えるうえで、思考回路の変更も必要みたいですね。

トランプ大統領はアメリカ国内でエネルギー確保などを主張し、原油開発関連などへの規制緩和が株式市場でも期待されてきました。一方、これはクリーンエネルギーには逆風と考えられていましたが、実は就任当日に示した政策課題の中で「自然環境を保護し、天然資源の保護することは引き続き優先事項となる」と環境保護にも言及しています。

--それを考慮するとどんなことが想定されるのでしょうか。

(フリップ1:新政権の追い風を受け上昇)
電気自動車のテスラモターズもトランプ銘柄に浮上してきます。テスラの自動車はすべてカリフォルニア州の工場で製造されるメイド・イン・アメリカで、今後は生産設備の拡張で多くの雇用も見込まれます。イーロンマスクCEOは、トランプ大統領が新設した戦略政策フォーラムのメンバーで、数少ないハイテク業界からの一人です。自動運転に関する規制緩和にも働きかけていくと予想されます。

--そのほかにもありますか。

アマゾンもその一つです。というのも足元で小売り各社が冴えない業績を発表していますが、雇用者数が比較的多い小売りは今後雇用削減が進む可能性があり、トランプ大統領にとって好ましいものではありません。そんな中で10万人を超える新規雇用を発表したアマゾンはハイアー・アメリカンに合致してきます。。トランプ氏はこれまでアマゾンに対して独占禁止法に違反しているとして批判してきましたが、増加する配送需要に応えるための設備投資は、国内での雇用維持にもつながり、トランプ大統領にとっても朗報です。
 
 
 
 
【為替見通し】注目ポイントは「円高サイン」
解説はソニーフィナンシャルホールディングスの尾河眞樹氏

--ニューヨーク市場は一時112円台を付けていますね。

そうですね。トランプ大統領のTPP脱退の署名については、これは以前から言ってきたことではあるんですけれども、さっそく実行に移したことがトランプ政権の保護主義を象徴している印象で、こういったことが嫌気されて円高圧力になっていると思います。

--今日の予想レンジは、112.00~113.80円、その円高地合い、今後はどう見ていますか。

(フリップ1:米、今後の注目イベント)
投資家が次の展開に向けて動き出すにはまだ材料不足ですね。1月終わりから2月ごろに大統領が所信表明を行う一般教書演説や、おそらく2月中に議会に提出される予算教書で、財政政策の具体的な中身が出てくれば、アメリカの景気拡大が意識されてドル円上昇するとみています。ただそれまでは流動性が薄い相場続きそうで、足下はドル円のチャートで短期的な円高のサインが出ている点にはやや警戒したいところです。

--注目ポイントは「円高サイン」です。

(フリップ2:100円割れまで調整も)
足下、ドル円は冷やし一目均衡表の雲上限が114円24銭、これをした抜けてしまいましたので、短期的には雲の下限を意識する109円93銭までポジション調整によりいったん下落してもおかしくない状況です。ただ円高が一方的に進む材料も乏しいので、ドル円は一時的に下落したとしても、再び反発する可能性が高く、再び雲の上限を上抜けて115円を超えてくるとみています。

【日本株見通し】注目ポイントは「調整後の反転きっかけ待ち」
解説は野村証券の若生寿一氏

--今日のの予想レンジは、18750円~19000円、昨日の日経平均は大幅に下落しましたけれども・・・。

今日もニューヨークがじり安で、しかもやや円高ということですから、残念ながらまた下がると思います。ただこれから個別の企業の業績に注目が集まりやすい環境になりますので、その辺りが支えになったりということです。日中はやはり為替にらみの展開だと思います。

--19000円というところで、いったん調整もありうるかなというお話も先ほどありましたけども、買われ過ぎ、過熱感という意味ではどうなんでしょうか。

(フリップ1:過熱感薄れ反発待ちか)
やはり過熱感の調整というのが、実はあるのかなと思います。例えば、これは東証一部の騰落レシオです。去年の12月に過去最高の166.5%まで上昇していました。この指数は通常120を超えると、株式市場が短期的に買われすぎ、加熱しているということを示すと言われることが多いのですが、そのあとは調整につながることも多いので、今回もこういう側面があるのかなと思います。

--この動きを見ていきますと、だいたい下のボトムのライン80%と考えると、ちょっとそこまで下げてしまいそうな印象がありますね。

はい、騰落レシオは昨日の段階で91.55ですね。これは9月初めぐらいの水準まで低下しています。ですから過熱感はなくなったと言っていいと思います。もちろん仰った通り、80割れまでくれば売られすぎで反発という話になってくるんですけど、今回はその前に一巡するんじゃないのかなと思ってまして、ポイントはやはり企業業績ということだと思います。

--ただ企業業績に関して言いますと、EPS(1株当たりの利益)予想というのは下がってきてしまっているというのが、今の現状だと聞きましたが・・・。

それは今期予想のベースの話なんですね。しかも会社予想のベースなので、マーケットはもうすでに来季を見ています。来期に関してはさっきも申し上げたように114円の為替を織り込んで、増益を織り込み始めていますので、ですからそちらのほうにきちっと目が向いてくれれば、割安という話になって、株も戻りやすくなってくると思います。


 
■【プロの眼】業績見通し上方修正はバブル期以来の勢い
トランプ新大統領の具体的な政策が見えない中で日本株は1万9,000円を割り込んでいます。期待を織り込んだ後の具体化が遅れで去年末の急激な株高に対する調整がやや起きているといいます。足元は積極的には買い上がりにくい中、次なる材料とみられるのが企業業績です。内外の景気改善でドル円の水準が切りあがり、それを踏まえてのアナリストの企業業績見通しの上振れが始まっています。今後、この業績見通し上方修正は続くのか、株価への織り込みは進むのかを野村証券の若生寿一氏に解説してもらいます。

--気になるのが株式市場の動きなんですが、トランプ大統領の具体的な政策がなかなか見通せない中で、日本株は1万9000円を割り込んでいます。これは一旦調整という見立てでいいんですか。

「トランプ政権が出して来るいろんな手が正直、消化不良という言い方になるのかなと・・・。なかなか具体的な話も出てこないし・・・ということですね。なので足下は積極的に買い上がりにくい状況になっていると思います。」

--そうした中で、今日のテーマになっているのが「業績見通し上方修正」ということで、企業決算はどういう状況でしょうか。

「これから10-12月期の業績が出始めて、今週末ぐらいから本格化、来週・再来週辺りがピークになるんですけれども、今アナリストがその前に企業業績見通しをちょっと変え始めています。ということで先週から業績の前提条件を変えました。
(フリップ1:アナリストの業績見通しの前提)
  ドル/円 103円 → 114円
  ユーロ円 114円 → 120円
正直、トランプ大統領の政策を織り込んでいない形ですね。」

--トランプ政権の動きというのを織り込まずに、の前提で・・・、ではどうなっているんでしょうか。

(フリップ2:上方修正はバブル期以来の高水準)
「アナリストの上方修正の社数と下方修正の社数の差をリビジョンインデックスという割合で示しているんですが、これが先週末時点で33.6%になりました。」

--急上昇していますね。

「まだ見通しの修正が少なくて、ちょっと極端な数字になっている可能性があるんで、参考値なんですが、ただこれは遡ると80年代の日本のバブルの時、88年4-6月期以来という水準なんですね。ですから歴史的に上方修正の勢いが強いという状況なので、これだけ見ると株価には強い追い風が吹いているという言い方もできると思います。」

--ただ冒頭で言いましたように、不透明感を企業の皆さんも口にされていますから、なかなか上方修正というのは続かないのではないか、という見方がありますね。

(フリップ3:業績見通しの上方修正は続く?)
「そうですね。そこはやはりアメリカの景気が大事になってくるのかなと思うのですが、経験的にはアメリカの景況感、米ISM製造業景気指数(緑のグラフ)とリビジョンインデックス(赤のグラフ)が似た動きになるというのはご覧いただける通りなんですね。ですからアメリカの景況感がしっかりしているという状況が続けば、日本の企業業績の上方修正も続きやすいというふうに考えられます。」

--となると株価はだんだんと織り込んでいく形になりますか。

「そうですね。トランプ新大統領の政策はアメリカファーストと言っていますから、アメリカの景気を腰折れさせるような政策は最終的には取らないと思います。そういいう状況の中で、イエレン議長をはじめとして、FRBからアメリカ景気への自信とともに、利上げペースは変わらないんだというのが示されれば、為替も落ち着き、アメリカの景気も落ち着きます。それによって日本企業の業績への安心感も広がりやすいということですから、その点では織り込みも進むというふうに考えています。」

--利上げのペースは早まるかもしれませんね。どうでしょうか。

「そこが問題なんですが、一応3月に次のFOMCでその辺りを確認して、6月に利上げかなと思ってます。」
 
 

■日経朝特急

電子部品、5四半期ぶり受注増
電子部品大手の受注が持ち直している。村田製作所やTDKなど大手6社の2016年10-12月期受注総額は前年比約3%増え、5四半期ぶりにプラスに転じた。中国メーカーのスマホ(スマートフォン)向けや自動車用が伸びたほか、為替相場の円安も受注の伸びにつながった。
 

MRJ5度目の延期
三菱重工業は、子会社の三菱航空機が開発する国産ジェット旅客機MRJの初号機引き渡しを2020年半ばに延期すると発表した。宮永社長は三菱重工の総力を挙げると話し、長期的な姿勢で取り組むことを強調した。約50年ぶりの国産旅客機誕生に向けて苦しい状況が続いている。
 

自動運転、自由に公道実験
政府は国家戦略特区の仕組みを活用し、人が運転に全く関与しない完全自動運転の公道での実験を原則自由にできるようにする。まずは今年度内に東京・大田区の羽田空港周辺で始める。道路使用許可など申請手続きを簡素にし、AIによる遠隔操作を認めるといった規制緩和も検討する。2025年の市場投入を目指し、完全自動運転技術の研究開発を後押しする。
 

ビットコイン対応店が急増
国内でインターネット上の仮想通貨ビットコインを支払いに使える店舗は、今年中にも現在の約5倍の2万ヵ所まで増える見通し。海外では10万カ所以上で使えるなど急拡大していて、訪日外国人の増加に対応するために、小売店などが導入するケースが増えているようだ。
 


■日刊モーサテジャーナル

トランプ新政権、重要課題は「貿易」と「移民」
今週からトランプ新政権は本格始動するが、最重要課題の一つは貿易だと各紙が伝えている。特に英メイ首相が27日、外国の首脳として初めてホワイトハウスでトランプ大統領と会談することに注目している。
ワシントンポストは、今回の会談がEU離脱後、アメリカを主な貿易相手国にしたイギリスがトランプ大統領に猛烈にアプローチをしたことで実現したと指摘。トランプ大統領もイギリスには好意的な姿勢を示しているが、実際に交渉がまとまるには何年もかかるため、簡単にはいかないだろうと懸念するアナリストの声を掲載している。
そしてもう一つの重要課題は移民問題。ウォールストリートジャーナルは、トランプ政権が実現するであろう具体策をまとめている。まず不法移民受け入れる都市に対し、連邦政府からの補助金を削減、そしてシリアなどからの難民を一切拒否、また犯罪者の不法移民を強制送還をいち早く実施することなどが挙げられている。
 

米国「トランプラリー」に投資家離れの兆し
ウォールストリートジャーナルが、トランプラリー対し投資家の熱狂が冷め始めていると伝えている。その証拠に、世界のファンドマネージャーによる現金保有率が12月は4.8%だったのに対し、1月は5.1%に増加、またS&P500に連動するETF「スパイダー」の空売り残高が19日時点で前週比6.8%増加したことも熱狂の終わりを示していると指摘している。
 

トランプ大統領“2つ”のツイッターの謎
トランプ大統領と言えば、ツイッターでの投稿が有名だが、実は個人のアカウントと大統領就任後から始まった公式アカウントでは書かれたメッセージのトーンが全く違うという。
例えば、公式アカウントでは「皆様の祈りに感謝しています。米国にご加護がありますように。」と書かれていて、謙虚で礼儀正しいとしている。一方、以前から利用していた個人アカウントでは「3100万人が就任式をテレビで視聴した、4年前より1100万人も多い!」と就任式の注目度を自慢してみせたり、全米で広がった抗議デモに対しては「大統領選でなぜ投票に行かなかったのか?セレブが事態を悪化させている」と反発するなど、自己顕示欲や批判ばかりが目立つとしている。さて国民はどちらのトランプ氏を信じればいいのでしょうか。
 
 
「トランプ大統領“2つ”のツイッターの謎」について

--どっちもトランプ氏なんでしょうね。どうなんでしょうね。

《野村証券/若生寿一氏》
「そうですね。私もどっちもトランプ氏だと思っています。ただ結局、交渉のテクニックみたいな感じがするんですね。手段として高圧的な発言をするというのが一方にあり、そしてもう一方では常識的な発言をするということで、たぶん落としどころはその間のどこかにあるわけですよね。その意味では新たな交渉のテクニックとして、使い分けをしているのかなという印象がありますね。」

--演説でもメディアですと確かにどうしても時間の関係もあって一部になってしまいがちですけど、そこというのはやはり目立つところをどうしてもピックアップしてしまい・・・。

「リップサービスも含めて、そういうところが強調されていて、但し中身はそれなりのことをしゃべっているという、そういうこともありますので・・・。」

--ですから両方をしっかり私たちは見ていかないといけないということですね。
 


■今日の予定

英ユーロ離脱をめぐる最高裁判決
ユーロ圏1月PMI
米1月製造業PMI
米12月中古住宅販売件数
決算(日本電産、中国アリババ、米アルコア)
 
 

■ニュース

米 TPP離脱の大統領令に署名
アメリカのトランプ大統領は23日、TPP=環太平洋経済連携協定からの離脱に関する大統領令に署名しました。これにより現在の協定は発効不可能となりました。アメリカの離脱でTPPの12ヵ国体制は崩壊し、安倍政権の成長戦略も見直しを迫られることになります。一方、これに先立ちトランプ大統領はフォード・モーターやロッキード・マーチンなど企業経営者と会談しました。この中で「現在の規制の75%以上を撤廃する」などと述べるとともに日本の市場は閉鎖的だと批判しました。
 

アマゾン 新配送拠点で1,000人雇用へ
アメリカのインターネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは23日、コロラド州に新たな配送拠点を作り、1,000人以上を正規雇用すると発表しました。新しい配送拠点は州都デンバーから30キロ程の所に造られる予定で広さはおよそ9万平方メートルです。アマゾンは新規雇用者の給与として従来の小売業の30%増しの金額を支払うとしています。
 

米 ハリバートン 赤字幅拡大
アメリカの資源サービス大手ハリバートンの去年10月から12月期の決算は2割を超える減収で赤字幅が拡大しました。売上高は40億2,100万ドルで1年前に比べ21%減少しました。最終赤字も5.3倍の1億4,900万ドルに拡大しました。ただ北米市場の売り上げは前の期に比べ9%ほど増加していてアメリカの原油掘削活動の回復が確認されています。
 

米 マクドナルド 減収減益
アメリカのファストフード大手、マクドナルドの去年10月から12月期の決算は減収減益でした。売上高は市場予想を上回りましたが1年前に比べ5%のマイナスで、直営店からフランチャイズ店への移行などが収益を押し下げました。一方、既存店売上高は全体では2.7%のプラスで、特に日本を含む「基礎的市場」が11%伸びるなど海外市場が好調でした。
 

天皇陛下の退位 有識者会議が論点整理を公表
天皇陛下の退位などを検討する政府の有識者会議はきのう、議論の結果をまとめた論点整理を公表しました。論点整理では退位をめぐり、いまの天皇陛下一代に限る案と将来のすべての天皇を対象とする案の2つを併記し、それぞれの利点と課題を示しています。結論は明記していないものの、いまの天皇陛下に限る案の利点を多く記述していて、事実上、政府が検討する特例法での対応を後押しする形になっています。政府は与野党の議論を踏まえつつ法制化を進め、いまの国会に退位を実現する関連法案を提出する方針です。
 

スマホ発火問題 サムスン「原因はバッテリー」
相次ぐ発火事故で販売中止となったスマートフォン「ギャラクシーノート7」について、サムスン電子はバッテリーの欠陥が原因との調査結果を発表し、謝罪しました。サムスンは、去年の発火事故の後に、原因をサムスンSDI製のバッテリーの欠陥と説明していましたが、バッテリーを中国製に変更した後も発火事故が起きたため本体の設計ミスなどが指摘されていました。きのうの会見でサムスンは、「出荷前に検証できなかったことに責任を痛感する」と謝罪するとともに、2種類のバッテリーそれぞれに別の発火原因があったと説明しました。そのうえで、「スマホ本体の設計には問題なかった」と強調し、今後は安全性を大幅に強化していくとの方針を示しました。
 

日本郵船 横浜にクルーズ船専用港
クルーズ船「飛鳥Ⅱ」を運航する日本郵船は、横浜市と共同で、横浜港にクルーズ船専用のターミナルを建設することを検討していることが分かりました。政府は急増するクルーズ船に対応するため、旅客ターミナルなどを整備した民間企業に対し、港の優先使用を認めるための法案を今の国会に提出する予定で、日本郵船は、この枠組みを活用する方針です。
 

春闘スタート 労使でベア巡り温度差
主要企業の経営側と労働組合が意見を交わす「労使フォーラム」が開催され今年の春闘が事実上スタートしました。経団連の榊原会長は会員企業に賃金水準を一律に引き上げるベアにはこだわらず「年収ベースの賃上げ」を要請しました。一方、連合の神津会長は「ベアは不可欠」という認識を示し両者の間でベアへの姿勢にずれがあることが鮮明になりました。
 

政府 月例経済報告 景気判断は据え置き
政府は1月の月例経済報告を発表し国内の景気判断を据え置きました。「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」と前の月から表現を維持しました。世界経済の先行きについては前の月に続き「政策に関する不確実性」をリスク要因に挙げ、アメリカのトランプ新政権の動向などを注視する考えを示しました。
 

日本出身力士19年ぶり 稀勢の里 横綱昇進が確定
大相撲初場所で優勝した稀勢の里の横綱昇進が確定しました。きのう、日本相撲協会の横綱審議委員会が会合を開き、全会一致で、横綱への推薦が決まりました。1998年3代目若乃花以来となる19年ぶりの日本出身横綱の誕生に国民の期待も高まっています。
 

小池都知事を支持 都議会で新会派結成
東京都の小池知事を支持する都議会議員などがきのう、新会派「都民ファーストの会東京都議団」を設立したことを発表しました。新会派は「かがやけTokyo」に所属していた3人の都議で構成されていて、幹事長には音喜多駿議員が就任します。
 

C型肝炎治療薬 東京でも偽造品が流通
C型肝炎治療薬「ハーボニー」の偽造品が奈良県内で見つかった問題で、厚生労働省はきのう、東京都内でも偽造品のボトル9本が新たに見つかったと発表しました。9本の仕入れ先は卸売販売業の許可を得ていない個人の可能性が高いということです。厚労省は医薬品医療機器法違反の疑いもあるとみて関係自治体に詳しい調査を求めました。
 

大規模な竜巻被害で20人死亡
週末にジョージア州やミシシッピ州などを猛烈な竜巻が襲い、少なくとも20人が死亡しました。これまでに15人が死亡したジョージア州では、ビルや家屋が崩壊するなどの被害が出ていて、州知事が州内の7つの群に非常事態宣言を出しました。アラバマ州でも最大2万9,000戸もの家屋などが停電となりました。20日に就任したばかりのトランプ大統領も被害を受けた州に対し支援を約束する事態となっています。
 


■【リーダーの栞】相模鉄道 滝澤秀之社長
今年、創立100周年を迎える相模鉄道。去年の6月に社長へ就任した滝澤秀之氏がすすめる本は「堀田勉のおごるな上司!」です。滝澤社長がこの本を手のしたのは係長に昇進したばかりの頃。発売されてから20年以上経ちますが、厳しさを増す企業社会を生き抜くための心得が鋭く指摘されている内容だと滝澤社長は話します。
 

■ビジネス書最新ランキング
(1月16日~22日調べ)

1位 嫌われる勇気(岸見一郎/古賀史健/ダイヤモンド社)
2位 地域でいちばんピカピカなホテル(宝田圭一/あさ出版)
3位 やり抜く力(アンジェラダックワース/ダイヤモンド社)
4位 はじめての人のための3000円投資生活(横山光昭/アスコム)
5位 ムダにならない勉強法(樺澤紫苑/サンマーク出版)
 


■【コメンテーター】野村証券/若生寿一氏

・トランプ政権指導、「TPP離脱」に署名

--トランプ大統領が始動し始めましたけれども、TPPは崩壊ということ、どういうふうに今のニュースを受け止められましたか。

「もちろんTPPは残念なニュースではあるんですけれども、これでなにができたかはよく分からなかったところもあるので、それはそれでとりあえず置いておくとして、トランプ大統領は分かりやすい、国民受けするところから始めているなという印象ですね。」

--そういう意味では日本の車が名指しされましたけれども・・・。

「ビジュアル的に分かりやすいんですよね。例えば対中貿易でアメリカが一番損しているのって何ですか、って考えたら、なかなかパッと出てこなかったり、っていうことですね。」

--そうですね。日本だったら、車だという印象があるわけですね。分かりやすいところからと・・・。
 


・今日の経済視点 「EARNINGS FIRST!」

「海の向こうでアメリカ・ファーストとか言っている人がいるので、ちょっとひねってみたんですが、利益第一主義と言うことではなくて、やはり自分自身、株をかんげるという立場からすると、企業の業績というのがまず1番にあって、今の企業業績というのは明らかに競争条件が改善されて、為替が円高修正されて、来期に向けて増益が描ける形になっているわけですから、その意味では株にとって、短期的な過熱感の調整はあったとしても、そんなに心配する状況ではないというところを確認したなと思います。」

--ただ今に関しては為替の影響というのが強いわけですから、これがどこまで行くかという意味では、年末どのくらいの為替を想定していますか。

「年末はまたアメリカが利上げをするわけですから、ですから120円のほうに戻すんあろうなというふうに思ってます。」

--ただそこでトランプ氏の一撃というのが心配されますよね。

「ただ110円あれば、日本企業は十分に戦えますから、そこはそんなに極端に悲観にならないほうがいいと思います。」
 
 

2017.1.23 Newsモーニングサテライト

2017年01月23日 18時26分42秒 | MS
■マーケット

NY株 決算発表に注目
いよいよトランプ政権が始動。今週からは期待ではなく事実を受け止めながらの相場となりそうです。足元は決算発表に注目が集まります。過去のデータでは大統領就任式の後、株価は2週間程度は上昇しやすいという傾向があるようです。トランプ大統領誕生を受けて相場の先行きについて様々な見方が氾濫し、景気の動きを敏感に反映する小型株で構成されるラッセル2,000指数が50日平均を割り込むかどうか。為替ではドルユーロに注目すべきとの声もあります。今週はアルファベットやインテルなど相場に影響を与える大手企業の決算も相次ぎます。金曜日の株価です。揃って反発。ダウは6日ぶりの反発、94ドル高の1万9,827ドル。ナスダックは15ポイントプラスの5,555。S&P500は7ポイントプラスの2,271でした。

専門家インタビュー

・ 「今年のNY株価、静かな展開が」
トランプ政権がいよいよ発足しこれまで以上に新大統領の一挙手一投足に注目が集まります。しかし、専門家は短期的に見て政策による株価への追い風は限定的だと見ています。
《ウェルズ・ファーゴ/スコット・レン氏》
「現在の株価は適正価格でトランプ氏の政策との関連は薄いとみている。今年の株式相場は静かな展開ではないか。S&P500は年末には2230~2330と予想する。現在の株価はその範囲の中間であり、株価は大きく動かないと見通している。」

・ 「米政策効果来年には株価押し上げも」
レン氏はトランプ大統領が唱える政策が着実に実行されれば、来年以降株価を押し上げると予想します。
「減税、インフラ支出、規制緩和など、トランプ大統領の政策は株高にプラスだが、どれほど実現できるのか、いつ実行に移せるのかにかかっている。政策効果が表れるのは来年以降だろう。」
 
【為替見通し】注目ポイントは「米要人発言」
解説は三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作氏

--先週末の為替の動きを振り返っていかがでしょうか。
先週末のトランプ大統領の演説は、選挙期間中の主張の繰り返しで、新味に乏しい内容でした。就任演説後にアメリカ株が伸び悩むとドル円も軟化。本日未明のオセアニア市場では一時114円10銭前後まで下げる場面もありました。

--今日の予想レンジは、113.50~115.00円、注目ポイントは「米要人発言」です。
本日は注目材料が不足しており、明確な方向感は出にくいと思います。ただ最近のドル円相場は配信時刻や内容予測が難しい米国発の要人発言に過敏に反応しやすくなっているので注意が必要です。

--その要人発言でドル安・ドル高、どちらに動きそうでしょうか。
今週は明日からFRB関係の要人がFOMC1週間前の発言自粛期間に入るため、政府側の要人発言が目立ちそうです。先週はトランプ大統領、ニューヨーク連銀のダドリー総裁の発言がドル安材料視された一方、FRBのイエレン議長、ムニューチン次期財務長官の発言がドル高の反応を呼び株価は乱高下しました。それらの事例を見ると、今後の発言内容次第で上下のどちらにも50銭~1円ぐらい急に動くかもしれません。材料難でも油断できない日々がしばらく続きそうです。

【日本株見通し】注目ポイントは「上方修正の有無」
解説は岡三証券の小川佳紀氏

--今日の予想レンジは19000円~19200円、さて週明けどうでしょうか。
先週末のトランプ新大統領の就任演説では、市場が期待していた財政出動などに関する踏み込んだ話題が出ませんでした。加えて今週は決算発表も相次ぎますので、指数よりも個別株の動きがより注目となりそうです。

--その決算発表ですけれども、注目ポイントはどこでしょうか。
今回の決算発表で最も注目度が高いのは、外需関連企業を中心に業績計画の上方修正があるか、無いかです。こちらは日銀短観における大企業製造業の想定為替レートとドル円の実勢レートの推移を表したグラフとなりますが、企業の想定に対して円安がかなり進んでいます。ですから円安の恩恵を受けやすい外需関連企業には上方修正の期待が高まるところです。

--実際に上方修正を発表する企業というのは増えそうですか。
(フリップ1:上方修正の期待高まる)
はい、もちろんその可能性はあります。ただ前回の中間決算で想定レートを円高方向に修正したことに伴って、下方修正を発表した企業がたった数か月で一転して上方修正を行うかには疑問も残ります。上方修正のタイミングが春先辺りに後ずれする場合、期待が高まっていた日本株の重しとなる可能性もありあそうです。
 
(フリップ2:「稼ぐ力」高まっている企業)
一方中間決算の際に、想定レートを円高に見直しながらも、通期の計画を据え置いたり、上方修正した企業もありました。そのような企業は為替に左右されない「稼ぐ力」が高まっていると言えますので、今回の決算発表でより注目度が増すと考えています。
 

■【エマトピ】トルコ 人口増加による内需拡大で新マーケットを開拓
2015年の夏以降、主要都市でテロが相次ぎ発生しているトルコ。現在は市民生活・経済活動ともに大きな影響は出ていない。しかし、治安をめぐる不透明感から通貨リラは今年に入り対ドルで過去最安値を更新。ただ日本企業にとっては、トルコが“欧州の工場”という位置付けで、投資インセンティブ制度も充実していることから、製造拠点として十分魅力的な場所と言える。トルコ企業とうまく協働することにより、今後も新たなマーケットを開拓できるだろう。解説はみずほ銀行の小嶺広展氏。

(フリップ1:約7年ぶりのマイナス成長)
--まずはトルコの経済状況を確認しておきましょう。先月発表されましたトルコの7-9月期のGDP成長率は前年比-1.8%となりました。四半期の成長率がマイナスに転じるのは、2009年7-9月期以来、実に7年ぶりのことです。経済拡大のけん引役である個人消費が↓3.2%、そして企業の設備投資を含む総固定資本形成も↓0.6減少しました。相次ぐテロやクーデター未遂の発生など社会の緊張が長引いていけば、トルコ経済の生命線である海外からの投融資の停滞を招く懸念もあります。
《電話中継:イスタンブール:みずほ銀行/小嶺広展氏》

--トルコでは年末年始の相次いでテロ事件が起きましたけれども、生活環境ンへの影響というのはありますか。
(フリップ2:テロ)
トルコでは2015年の夏以降、首都イスタンブールやアンカラなど主要都市でテロが増えていますが、現在は市民生活、経済活動とも通常通りで大きな影響は出ていません。ビジネス関連の出張者も大きくは減っていませんし、我々駐在員もこれまでとほぼ同様の生活を送っています。ただその一方で外国人旅行者の数は前年比で約3割減少しています。特に日本人観光客はほとんど見かけなくなりました。

--そして治安を巡る不透明感から通貨リラの下落続いていますね。12月には一時3.9リラ台と過去最安値を更新しました。当局は何か対策を考えているんでしょうか。
(フリップ3:今月最安値を更新)
通貨貿易目的の利上げという新興国の常道を、現在のトルコは政治的に使いづらい状況あるんです。それはエルドアン大統領が景気の減速を食い止めることを第一に考え、投資促進のための借り入れコスト低下を強く望んでいるからです。明日、トルコ中央銀行が金融政策委員会を開きますが、去年12月の利上げも見送っているだけに、今回も追加利上げは無さそうです。政策金利の引き下げといった措置がなければ、リラ安に歯止めをかけるのはなかなか難しそうです。

--そういった状況の中、今後、日本企業のトルコへの資本算入はどうなりそうでしょうか。
トルコは平均年齢が31歳という若い世代が中心であり、人口が毎年約100万人増加しています。トルコの内需増加を狙って、また周辺地域への事業拡大のハブとして、販売や製造拠点をつくるということが選択肢として考えると思います。最近では味の素がトルコの食品大手オルジェン社の全株式を2017年3月上旬に取得すると発表し、また去年の8月にはタキイ種苗がトルコのリト社の野菜育種部門を買収し、中東向けのキュウリ・ナスなどの品種開発拠点にしています。トルコは歴史的にみて欧州の工場という位置づけにもあり、投資インセンティブ制度も充実していることから、進出拠点の要件を満たしています。確かに日本から地理的に遠いのですが、歴史的な経緯から親日の国であり、トルコ企業とうまく共存することにより、今後も新たなマーケットを開拓できると思います。
 

■原油開発を促進、トランプ政策に反発
トランプ氏が20日大統領に就任しアメリカで新政権が誕生する。トランプ次期大統領がさっそく行う政策のひとつが環境規制を緩和して原油や天然ガスの開発促進。アメリカ中西部ノースダコタ州では近年、シェールオイルなどの石油開発が盛んな地域。ここにパイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」というノースダコタ州の油田からシカゴ近くの石油基地までおよそ1,900キロを結ぶ計画が進行中。しかし、近くに住むアメリカ先住民が「飲み水が汚染される」と猛反発。雄大な自然と水源を守るよう訴えたため、オバマ政権は工事を中止させた。反対派には多くの寄付が寄せられていて氷点下20度のなかでも約300人がキャンプをはる。しかし、石油業界ではトランプ政権になれば、パイプラインの開発を進むと見る。エネルギー開発を巡って様々な利害が衝突するアメリカ。その現場を緊急取材した。
 
「規制緩和でエネルギー開発」に暗雲?

米国・トランプ大統領は就任当日、新政権の政策をホワイトハウスのウェブサイト上で発表。原油などのエネルギー開発を促進するため、環境規制を緩和する方針を表明。これにより数百万人の雇用を生み出せるとしている。現場を取材すると、実現は簡単ではないようだ。

(フリップ:ダコタ・アクセス・パイプライン)
米国ノースダコタ州は、シェールオイルなどの石油開発が盛んな地域。大規模な石油パイプライン「ダコタ・アクセス・パイプライン」の建設予定地(陸軍が管理する土地)では、建設に反対するアメリカの先住民およそ300人が、陸軍が管理する土地を占拠して、テント村を築いてキャンプを張っている。ノースダコタ州の油田からシカゴ近くの石油基地まで、およそ1900キロを結ぶ計画だ。
開発会社は去年中の開発を目指していたが、近くの居留地に住むアメリカ先住民が「飲料水が汚染される恐れがある」と猛反発。雄大な自然と水源を守るよう訴えたため、オバマ政権は工事を中断させた。

《環境活動家アンドレ・ヌネスさん》
「私たちの先祖は昔この土地を太陽に祈る儀式に使っていました。」

半年前から抗議活動を続けているヌネスさんは、カリフォルニア州から来たアメリカ先住民の血を引く環境活動家。テントの屋根には太陽光発電のパネル。先住民グループには活動に賛同する人たちから、約3億4000万円の寄付金が集まったほか、食料や生活用品が数多く寄付されているという。

《ヌネスさん》 「私たちを支援するため、さまざまな国の人たちが来ています。私たちの思いがパイプラインの建設を止めるでしょう。」

アメリカでは油田を巡る事故がたびたび起きていて、開発を進めたい石油業界と環境保護を求めるグループなどが激しく対立している。トランプ大統領は経済の再生につながるとして、環境規制を緩和し、エネルギー開発を進める方針だ。エネルギー業界は新政権で開発が進むことを期待している。

《IRE(エネルギー研究所)/クリス・ウォレンさん》
「トランプ政権は環境規制を大きく変えると思います。ダコタ・アクセス・パイプラインの建設も推し進めるだろう。大半の地域ではエネルギー開発について、地元住民から多くの支持を得ています。エネルギー開発は地域経済に大きな利益をもたらすからです。」

地元に住み反対活動に従事してきたアメリカ先住民のトルーデルさんは、トランプ大統領の「環境より経済」の姿勢に反発している。

《アメリカ先住民/セージ・トルーデルさん》
「私はトランプ大統領の考え方が全く好きではありません。経済的な利益しか見ていないからです。」

さらにアメリカ先住民がかつて白人に土地を奪われた歴史的背景もあり、パイプラインの建設には到底納得できないと訴える。

《トルーデルさん》 「かって白人たち何もかも奪って小さな居留地に私たちを押し込めた。いま白人たちは石油資源を見つけ、それも欲しい、と言って、私たちに残されたわずかな土地を自分たちのために使おうとしています。」

エネルギー開発を巡って様々な利害が衝突するアメリカ。トランプ大統領が政策を推し進めるのも簡単ではなさそうだ。

このダコタ・アクセス・パイプラインの建設計画には、日本のメガバンクも金融支援をしています。トランプ氏は建設に前向きですが、繁多運動のあるキャップで取材した男性は、トランプ氏が大統領になることで、むしろ反対運動の参加者は増えていくだろうと話していました。
 

■【モーサテ・サーベイ】今週のマーケットを出演者が予想
マーケットや世界経済の先行きを番組のレギュラー出演者へのアンケートから独自に予想します。
(調査期間:1月20日~22日、番組出演者36人)

(1) 今週末の日経平均予想。
予想中央値(19200円)、先週の終値(19137円)

《ニッセイ基礎研究所/井出真吾氏》
(19400円予想)
「10-12月期の決算発表で、業績の上振れ確認できれば、株価はやや強含む展開だと見る。」

《インベストラスト/福永博之氏》
(18600円予想)
「決算発表が本格化する前に、利益確定売りが優勢になる。」
 
(2) 今週末のドル円相場

予想中央値(114.50円)、先週の終値(114.63円)
《ソニーフィナンシャルホールディングス/尾河眞樹氏》
(115.50円予想)
「トランプ政権が具体的な政策に移っていき市場の不安心理も、市徐々に取り除かれる。」
《クレディ・アグリコル銀行/斎藤裕司氏》
(113.50円予想)
「アメリカはトランプ大統領の予算教書待ち、今週は中国圏が旧
正月でポジション調整が出やすく、リスクを取れないため、ドル円の上値は重い。」
 
(3) モーサテ景気先行指数
    (45.8に低下)
 



 
■特集 米トランプ新政権 減税の効果は?
アメリカのトランプ新政権は基本政策に法人税と個人所得税をともに引き下げる大型の税制改革を掲げたが、その実現性や効果は?解説はホリコ・キャピタルマネジメントの堀古英司氏。

--いよいよトランプ政権が誕生しました。共和党の動きが大事なんだというところで、その中でも政策効果が期待できるものは何か、というと減税ですか。
(フリップ1:米法人税は高水準のまま)
「これからいろんな具体策が出てくると思いますけれども、やはり私は大きなピクチャーを見るべきだと思っていて、まず間違いないのは、共和党でまずやるのは資本コストを下げるというのは共通する概念だと思うんですけど、まず法人税率。オバマさんはこれを見て見ぬふりをしてきたんだと思うんですよ。アメリカはもう連邦と地方税を合わせてずっと40%近くの法人税率で、これではアメリカではビジネス出来ないです。やっぱりトランプさんが主張している通商問題とかに発展していっているわけで、これはアメリカが下げれば一気に貿易問題とか、かなりの部分が解決すると思うので、一番先にこれをやると思いますね。」

--でも現実的にどのぐらいまで下げられるか。
「地方税と連邦を合わせて25%ぐらいまで行くと思うので、ヨーロッパや日本の国々を下回るような水準まで、今回持って行くんじゃないかと思います。」

--先ほど資本コストを下げると・・・。これがトランプ政権の狙い、共和党の狙いというふうに見ればいいんですね。
(フリップ2:トランプ政権の狙い)
「銀行からお金を借りる時に金利というのがありますけれども、株で企業が資金を調達するときの、そのコストを下げるということなんですね。」

--はい、ではちょっと分かりづらいことですので、丁寧に具体的に見ていきましょう。

(フリップ3:500万円投資で40万円(8%)の利益)
「投資家が500万円投資で8%ぐらいのリターンを求めているというマーケットの状況だった時とします。
(オバマ政権の場合)
そうすると企業は税引き前で150万円の利益を生まないと、法人税・個人所得税を引くと、ちょうど40万円(8%)の利益になる。優遇税制なしの場合をやっていますけれども、今は150万円の利益を生まないと、こうはならないわけです。
(トランプ政権の場合)
しかし今度トランプさんになると、(たぶん法人税25%ぐらいになりますし、所得税率も下がりますので、)100万円を稼ぐだけで、投資家が要求するリターンを満たせる。結局、企業から見るとコストですので、この資本のコストが、500万円に対して150万円(30%)のコストでしたけれども、これが20%でよくなるので、結局10%も資本コストが下がるという結果になります。」

--ただもちろん資本コストが下がるとは言っても、これからアメリカは金利が上がるのではないかと言われている。その結果はやはり足を引っ張ることになりませんか。
「トランプさんの政策がそのまま本当にうまくいくとすると、経済成長率3~4%にもっていける。そうすると国債の利回りはやはり4~5%に行くわけですよ。それは私はうまくいく限りは覚悟しておかないといけないと思いますが、ただ今国債の利回り2.5%から2~3%上がったとしても、資本コストがこれだけ10%もドカーンと下がってくれますから、金融はほとんど気にしなくていいぐらいになると思うんですよ。」

ーーだからさっき仰っていたように、これからは利益リードで株価が上がっていくだろうと・・・。
「そうですね。」

--では株価の推移を見ていきますと、上昇局面に張っていくという局面ですか。
(フリップ4:米株価は上昇局面入り?)
「グラフは過去のパーセントがよくわかるように対数で示してあります。過去の大きな上昇局面に入る前というのは、必ず財政を緩和しているわけですよ。第2次世界大戦のあとは軍事費が上昇したからですよね。それからレーガノミクスも財政を緩和したからです。次にはトランプさん、共和党が選ばれたことによって財政を緩和することはまず間違いないので、また私は大きな上昇局面に入ったと見ております。」

--これはタームがあるんですね。10年低迷し25年で上昇するという、なんか流れがあるんですね。
「あると思いますね。ITバブル崩壊、同時多発テロ、金融危機なんかがあって、財政が使えなかったので仕方がなかったと思います。ついに今回使えるようになったと思います。」

--ただ財政に関して言いますと、やはりそこまで出せるのかという、減税もどこまでできるのかということがありますね。
(フリップ5:レーガン政権歳入増加)
「歳入の話になると、財政赤字が増えていくト・・・。法人税下げて、減税すると歳入が減るんじゃないかと・・・。そうじゃないんです。レーガン政権の時を見ていると、減税することによって、ビジネスが増えて、歳入が倍になっているんです。これをまず復習しておかないといけないと思います。そしてさらに中身を見ていきますと、確かにレーガン政権で財政赤字が増えたんですけれども・・・。」

(フリップ6:レーガン政権、国防費↑)
--こちらは赤い棒グラフが財政赤字、どんどん増えていってますね。
「それで青い棒グラフが国防費なんですね。ほとんど財政赤字は、国防費またはそれに伴う国債の利払いで説明がつくので、今は冷戦構造とはちょっとかなり違いますから、同じパターンを踏襲するとみるのは違うと思います。」

--そうすると堀古さんはアメリカに対しては強気に見ているわけですね。
「いま共和党が言っている通りのことになるんだったら、かなり楽観的に見ていいと思いますね。」

--となるときになるのは日本なんですね。日本への影響というのはどう見ればいいですか。
「私はアメリカの実質金利が上がっていく話だと思うので、自ずからドル円は上昇トレンドに入ります。そうすると円安で明らかに日本はメリットを受けますね。日銀のイールドカーブコントロールにより実質金利は上がりませんから。しばらくはいいんですけど、そうやって日本が円安によってメリットを受けていると、必ずまた日本は内需を拡大しろという話になると思うので、私は早めに日本も財政を出動すべきだと思います。」

--それは先ほど仰った法人税とかそういうところで・・・
「はい、財政の緩和だったらいいと思いますね。消費税の引き上げみたいな、また逆のことをやらないように注意ですよね。」

--文句を言われる前に早めに動けということですね。
 
■日経朝特急

トランプ首脳外交27日始動
トランプ大統領の首脳外交が始まる。就任後の外国首脳との初会談はEU離脱交渉を控える英メイ首相で、27日にホワイトハウスで開く。31日には、メキシコ・ペニャニエト大統領と会う他、カナダ・トルドー首相ともNAFAT再交渉などに関して近く会談することで合意した。通商分野で米国第一の公約実現を目指して動き出す。

温暖化ガス削減加速
温暖化ガスの削減が加速。日本の主要製造業は2030年度の温暖化ガス国内排出量を2013年度を比べて14.4%と減らせる見通しであることが、日本経済新聞の環境経営度調査でわかった。温暖化対策の国際的枠組みパリ協定を受け、政府が掲げた地球温暖化対策計画の目標6.5%を上回る。自動車業界などで本業の競争力に直結するとして、一段と進化させる動きが相次いでいる。
 
潜在成長率0.8%に修正
内閣府はGDPの算出方法の見直しに伴い、日本経済の中長期の実力を示す潜在成長率を新たに試算した。直近の2016年7~9月は0.8%と従来の0.4%から上振れした。企業の研究開発費を加算するなど算出方法を切り替えたことで過去の経済成長率が高めに修正されたためだ。
 

■日刊モーサテジャーナル

トランプ大統領の就任演説、希望より怒り
トランプ大統領の演説について米国各紙が分析している。
ニューヨークポストは、「これからの主役は一般人だ」との発言を評価する一方、デイリーニュースは現状への怒りに満ちた演説だったと伝えている。
一方、主要紙は揃って、暗く希望が見いだせなかったことに懸念。
ニューヨークタイムズは、「製造業が苦しんでいることなどを、大虐殺という言葉を使って、既存の政治体制を激しく非難したのはやり過ぎだ」と主張、「経済の底堅さや最近の社会的進歩などを無視していて、アメリカの歴史を無理やり書き換えるものだ。」、と批判している。
ウォールストリートジャーナルは、演説は選挙中に白人労働者との集会で話したのと同じだったと指摘し、はれて大統領になったら生まれ変わるのではないか、という期待は完全に無くなったと分析。そもそも大統領の就任式とはもっと崇高なもので人々を鼓舞するはずなのに、と歴史家も驚いていると伝えている。

米国第一主義でアパレル業界に大打撃か(ウォールストリートジャーナル)
就任式で新ためて米国第一主義を掲げたトランプ大統領、ウォールストリートジャーナルは、この方針でどこよりも打撃を受ける業界はアメリカのアパレルだと報じている。理由は、アパレル業界の殆どは輸入に頼っているからだと指摘。
海外の生産品に関税をかけられたら、たとえ法人税が減税されても、百貨店のコールズは17年度の利益が68%減、アーバン・アウトフィッターズは52%減となる見方もある。記事は、ナイキなど、”この製品がなしでは生きていけない”と消費者が思うブランドでない限り、生き残りは難しい、と分析している。
 
米国の投資家“日本株は買い”で一致(週間投資新聞バロンズ)
「混乱するマーケットを生き残るためのマニュアル」と題したおかかえの投資家同士の対談記事。それによると、現在の割高感からアメリカの株価上昇はそれほど期待できないが、日本株投資への期待では一致したと報じている。対談で投資家は、日本の株価を自動的に支える3つの要素は年金ファンドの投資、日銀のETF購入、企業の自社株買いの3つだと歓迎しつつ、今後、今は消極的な個人投資家からの買いも増えるのでは、と期待している。さらにドル高円安はやはり日本経済に追い風で、長期的に見れば1ドル200円もありうるという声も出ている。

・「米国の投資家“日本株は買い”で一致(週間投資新聞バロンズ)」について

--株価が今割高だからアメリカの株価の上昇は期待できないんじゃないかという話がありました。
《ホリコ・キャピタルマネジメント/堀古英司氏》
「株価というのは利益と株価収益倍率(PER)の掛け算になりますけれども、アメリカのマーケットって面白くて、利益が株価の上昇を引っ張るときと、株価収益倍率が引っ張るときと、くっきり分かれるんですけれども、これまでの5年間はPERが引っ張ってきたんですよね。私はこれから利益が引っ張るときになると見ていて、これが実は一番強い時になんですけれども、今まさにそれが伸びようとしち得る時ってPERが高いから割高感という意見が必ず出るんですよね。」

--今PERは19倍ぐらいです。
「ですからまさにバロンズで割高って出てくるのは、そういうことだなと私は見ています。」

--では利益がこれからしっかりついてくると堀古さんは見ているわけですね。
 

■今週の予定

23日 衆議院代表質問(安倍総理の施政方針演説に対する)、1月月例経済報告
24日 米1月製造業PMI、米12月中古住宅販売件数
25日 16年貿易統計(6年ぶり黒字転換の見通し)
26日 英10-12月期GDP、米12月新築住宅販売件数、米決算(アルファベット、インテル)
27日 12月消費者物価指数、米10-12月期GDP
 
■今日の予定

衆議院代表質問
12月全国スーパー売上高
1月月例経済報告
1月主要銀行貸出動向アンケート調査
米決算(マクドナルド)
 
 
■ニュース

欧州各国の極右政党など連携訴え
ヨーロッパ各国の極右・右派ポピュリスト政党の党首らが21日、ドイツで一堂に会しアメリカのトランプ政権発足を歓迎するとともに、反EU・反移民を掲げて連携を訴えました。

《フランス「国民戦線」/ルペン党首》
「2016年はアメリカとイギリスが目覚めた。2017年はヨーロッパが目覚めるとき。我々の勝利はもはや時間の問題だ。」
《ドイツ「ドイツのための選択肢」/ペトリ党首》
「自分の国のことは自分で決める。その自由を奪うことはできない。」

トランプ大統領の誕生やイギリスのEU離脱を追い風に今年の選挙での勝利を誓い合いました。一方、地元の市民らはこの集会に反発し、街頭をデモ行進しました。警察側の発表によりますとデモには5,000人が参加し、一触即発かと思われましたが、大きな混乱もなく終わりました。
 
監視委員会 協調減産を確認
OPEC=石油輸出国機構の加盟国と非加盟国は22日、今月から始めた原油の協調減産の監視委員会をウィーンで開き、各国が減産に乗り出したことを確認しました。すでに全体の目標の80%を超える日量およそ150万バレルを削減したということです。なお、次回の監視委員会は3月後半に開催される予定です。

鴻海・シャープ 米新工場に8,000億円
鴻海精密工業がアメリカへの巨額投資を検討です。郭台銘会長は22日、台北市内で記者会見し、傘下のシャープと共にアメリカでの液晶パネル工場の建設を検討していると発表しました。投資額は70億ドル、およそ8,000億円を超える見通しです。トランプ大統領が製造業のアメリカ国内での投資を訴えていることに応じたもので、アップルも投資する見込みだということです。

千代田区長選の現職決起大会、小池都知事「戦いを勝ち抜く」
夏の東京都議選の前哨戦とされる千代田区長選の告示まで1週間となりました。東京都の小池知事は、現職で出馬表明している石川雅己区長の決起大会に出席しました。小池知事は、決起大会に集まった支援者などおよそ500人に「区民は真の改革者を選ぶと思うので私も応援する」と、石川区長を全面的に支持する姿勢を強調しました。千代田区長選には、与謝野馨元財務大臣の甥で、自民党・東京都連が推薦する与謝野信氏が出馬を表明しています。小池知事は、千代田区長選で勝利をおさめ夏の都議選に向けて勢いを得たい考えです。千代田区長選には、このほかに元会社員の五十嵐朝青氏が立候補を表明しています。

自民、二階幹事長 今国会での改憲発議に言及
自民党の二階幹事長は22日、都内で記者団に対し、いまの国会で安倍総理大臣の悲願である憲法改正を発議することもあり得るとの認識を初めて示しました。国会では自民、公明、維新など憲法改正を目指したり、容認したりする勢力が、衆参両院で発議に必要な3分の2の議席数を占めていて、憲法改正の議論が現実的なものになっています。

豪、メルボルン車暴走 死者5人の中に日本人男性
オーストラリアのメルボルンで20日、繁華街で暴走した車が通行人を次々とはねて5人が死亡した事件で、亡くなった5人の中に日本人が含まれていることがわかりました。外務省のメルボルン総領事館によりますと、亡くなったのは20代の男性で現在、当時の状況の確認を進めているとのことです。

トランプ氏執務室 金色カーテンに
トランプ大統領は早速ホワイトハウスをトランプ色に染めたようです。トランプ大統領は20日の就任早々、大統領執務室のカーテンを金色に替えました。これはトランプ大統領が大統領令などへの署名をメディアに公開した際に判明したものです。トランプ氏はもともと金色を好んでいるとされていて、所有するビルや自宅の内装は金色が目立ちます。なお、オバマ前大統領の時はカーテンは赤茶色で、大統領が交代すると執務室を模様替えするのは通例なんだそうです。
 
 
■【コメンテーター】ホリコ・キャピタルマネジメント/堀古英司氏

・市場が注意すべき“トランプ批判”

--トランプ新大統領の就任演説を含め、どうご覧になりましたか。
「私が今ちょっと気持ち悪いなと感じているのは、メディアの報道がトランプさんを批判していれば、視聴率・読者数・クリック数が増えるようなイメージで皆やっているんですけど、例えば、大統領選挙でクリントンの方が得票数が多かったというのありましたね。でも法案を通すのは議会であって、大統領というのは承認の権限しかありませんので、そうすると、本当は議会のほうが大事で、この間の選挙で議会選挙で上院が70%、下院は55%、国民が共和党に投票しているわけですから、経済政策はそっちのほうを見るべきであって、やはりマーケットを見る人はそういう事実を受け止めて見ていかなければいけないと思います。」
 
・今日の経済視点 「大統領<議会」

「やはり日本の方々に一番伝わっていないところだと思うんですけど、経済政策を決めるのは議会であって、大統領というのは拒否権はあるけれども・・・。拒否権は共和党が議会の3分の2をとってないので有効なんですけど、でも議会でまず通さないとっていうことですね。」

--アメリカに対してポジティブに見ている堀古さんですけど、例えば、S&P500の年末をどう見ていますか。アメリカの専門家は2220~2230ですが・・・。
「私は税率が下がるだけで10%ぐらいの利益の押し上げ効果がありますし、規制緩和とかいろいろ考えると、20%ぐらい上げる実力はあると思いますけれども、ただ4年後にまた勝たないといけないので、たぶん初年度は抑えて10%ぐらいS&P500指数で2400ドル台後半を見ています。」
 

トランプ新大統領の就任演説 全文と和訳

2017年01月21日 18時57分35秒 | 特集
【米政権交代】 「アメリカ第一」 トランプ新大統領の就任演説 全文と和訳
(英語記事 Trump inauguration: Full text of new president's speech
BBC News 1/21(土) 14:28配信
ドナルド・トランプ新米大統領の就任演説は、約16分にわたった。以下が全文とその和訳。
 
Chief Justice Roberts, President Carter, President Clinton, President Bush, President Obama, fellow Americans, and people of the world: Thank you.
ロバーツ最高裁長官、カーター大統領、クリントン大統領、ブッシュ大統領、オバマ大統領、同胞のアメリカ国民の皆さん、世界の人々、ありがとうございます。
 
We, the citizens of America, are now joined in a great national effort to rebuild our country and to restore its promise for all of our people.
私たちアメリカ市民は今、この国を再建し、国民全員への約束を復活させるため、大いなる国家的事業に取り組むべく団結しています。
 
Together, we will determine the course of America, and the world, for many, many years to come.
私たちは一緒になって、今後何年も続くアメリカと世界の進路を、定めていきます。
 
We will face challenges. We will confront hardships. But we will get the job done.
課題に直面するでしょう。困難に直面するでしょう。しかし、私たちはやり遂げます。
 
Every four years, we gather on these steps to carry out the orderly and peaceful transfer of power, and we are grateful to President Obama and First Lady Michelle Obama for their gracious aid throughout this transition. They have been magnificent.
4年ごとに私たちはこの階段に集まり、秩序ある平和的な権限の移行を行います。この政権移行の間、寛大に支援してくれたオバマ大統領とファーストレディのミシェル・オバマ夫人に感謝しています。お2人は素晴らしかった。
 
Today's ceremony, however, has very special meaning. Because today we are not merely transferring power from one administration to another, or from one party to another - but we are transferring power from Washington, D.C. and giving it back to you, the people.
けれども今日の式典には特別な意味があります。なぜなら私たちは今日、単にひとつの政権から次の政権に、あるいはひとつの政党から別の政党に、権力を移しているだけではないからです。私たちは権力をワシントンから、国民の皆さんにお返しするのです。
 
For too long, a small group in our nation's capital has reaped the rewards of government while the people have borne the cost.
今まであまりに長いこと、この国の首都の少数の人たちが政府の恩恵にあずかり、国民がその負担を担ってきました。
 
Washington flourished - but the people did not share in its wealth.
ワシントンは栄えたが、国民はその富を共有しなかった。
 
Politicians prospered - but the jobs left, and the factories closed.
政治家たちは豊かになったが、仕事はなくなり、工場は閉鎖した。
 
The establishment protected itself, but not the citizens of our country.
国の主流派は自分たちを守ったが、この国の市民は守らなかった。
 
Their victories have not been your victories; their triumphs have not been your triumphs; and while they celebrated in our nation's capital, there was little to celebrate for struggling families all across our land.
彼らの勝利はあなたたちの勝利ではなかった。彼らの成功はあなたたちの成功ではなかった。彼らはこの国の首都で祝っていたものの、国中各地で苦しむ家族たちにとって祝うに値することはほとんどありませんでした。
 
That all changes - starting right here, and right now, because this moment is your moment: it belongs to you.
それは一切変わります。まさに今、ここで。なぜならこの瞬間は皆さんの瞬間だからです。これはあなたたちのものです。
 
It belongs to everyone gathered here today and everyone watching all across America.
今日ここに集まった全員のもの、アメリカ全土で見守っているすべての人のものです。
 
This is your day. This is your celebration.
今日はあなたの日です。これはあなたのお祝いです。
 
And this, the United States of America, is your country.
そしてこの、アメリカ合衆国は、あなたの国なのです。
 
What truly matters is not which party controls our government, but whether our government is controlled by the people.
本当に大事なのは、どちらの党が私たちの政府を仕切っているかではなく、私たちの政府を国民が仕切っているかどうかです。
 
January 20th, 2017, will be remembered as the day the people became the rulers of this nation again.
2017年1月20日は、国民が再びこの国の指導者となった日として記憶されるでしょう。
 
The forgotten men and women of our country will be forgotten no longer.
この国の忘れられた人々は、もうこれ以上、忘れられることはありません。
 
Everyone is listening to you now.
誰もが皆さんに耳を傾けています。
 
You came by the tens of millions to become part of a historic movement the likes of which the world has never seen before.
何千万人もの皆さんは、世界が今まで見たこともない歴史的な運動の一部になるため、参加しました。
 
At the centre of this movement is a crucial conviction: that a nation exists to serve its citizens.
この運動の中心には、不可欠な確信があります。国は市民に奉仕するために存在するのだという確信です。
 
Americans want great schools for their children, safe neighbourhoods for their families, and good jobs for themselves.
アメリカ人は子供たちのために最高の学校が欲しい。家族のために安全な地域が欲しい。そして自分たちのために良い仕事が欲しい。
 
These are the just and reasonable demands of righteous people and a righteous public.
正義の人々、そして正義の社会にとって、これは正当で道理のある要求です。
 
But for too many of our citizens, a different reality exists: Mothers and children trapped in poverty in our inner cities; rusted-out factories scattered like tombstones across the landscape of our nation; an education system, flush with cash, but which leaves our young and beautiful students deprived of all knowledge; and the crime and the gangs and the drugs that have stolen too many lives and robbed our country of so much unrealised potential.
しかしこの国の市民のあまりに多くが、これとは別の現実の中にいます。都市の中心部では母親と子供たちが、貧困に囚われている。この国のあちこちで、さびついた工場が墓石のように散らばっている。資金を大量につぎこまれた教育制度は、若く美しい生徒たちに何の知識も与えないままだ。そして犯罪とギャングと麻薬が、あまりにも多くの命を奪い、あまりにも多くの可能性を実現しないままこの国から奪い去った。
 
This American carnage stops right here and stops right now.
このアメリカ内部の殺戮(さつりく)は、まさにここで、たった今、終わります。
 
We are one nation - and their pain is our pain. Their dreams are our dreams; and their success will be our success. We share one heart, one home, and one glorious destiny.
私たちはひとつの国です。苦しむ人々の痛みは、私たちの痛みです。彼らの夢は、私たちの夢です。その成功は、私たちの成功となるでしょう。私たちはひとつの心、ひとつの家、そしてひとつの栄光ある運命を共有しているのです。
 
The oath of office I take today is an oath of allegiance to all Americans.
私が今日行う就任の宣誓は、すべてのアメリカ人に対する忠誠の誓いです。
 
For many decades, we've enriched foreign industry at the expense of American industry;
何十年も前から私たちは、アメリカの産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきました。
 
Subsidised the armies of other countries while allowing for the very sad depletion of our military;
この国の軍隊が悲しくも消耗していくのを許しながら、外国の軍隊を援助してきました。
 
We've defended other nations' borders while refusing to defend our own;
自分たちの国境防衛を拒否しつつも、外国の国境を守ってきました。
 
And spent trillions and trillions of dollars overseas while America's infrastructure has fallen into disrepair and decay.
そしてアメリカのインフラが荒廃し衰退する一方で、海外では何兆も何兆もの金を使ってきました。
 
We've made other countries rich while the wealth, strength, and confidence of our country has dissipated over the horizon.
我々は、この国の富と力と自信が地平線の向こうで衰退していく間に、よその国々を金持ちにしてきたのです。
 
One by one, the factories shuttered and left our shores, with not even a thought about the millions and millions of American workers that were left behind.
工場はひとつひとつ、次々と閉鎖し、この国を出て行きました。取り残された何百万人ものアメリカの労働者のことなど、何ひとつ考えないまま。
 
The wealth of our middle class has been ripped from their homes and then redistributed all across the world.
この国の中産階級の富は無理やり奪い取られ、世界中に再配分されていきました。
 
But that is the past. And now we are looking only to the future.
しかしそれは過去のことです。そして今の私たちは、ただひたすら未来だけを見つめています。
 
We assembled here today are issuing a new decree to be heard in every city, in every foreign capital, and in every hall of power.
今日ここに集まった私たちは、すべての都市、すべての外国の首都、そしてすべての権力の回廊に聞かせるため、新しい布告を発します。
 
From this day forward, a new vision will govern our land.
今日から今後は、新しいビジョンがこの国を統治します。
 
From this day forward, it's going to be only America First, America First.
今日から今後は、ただひたすら「アメリカ第一、アメリカ第一」です。
 
Every decision on trade, on taxes, on immigration, on foreign affairs, will be made to benefit American workers and American families.
貿易、税金、移民、外交に関するすべての決断は、アメリカの有権者とアメリカの家族の利益となるよう行われます。
 
We must protect our borders from the ravages of other countries making our products, stealing our companies, and destroying our jobs. Protection will lead to great prosperity and strength.
私たちは、私たちの製品を作り、私たちの企業から盗み、私たちの職を破壊する外国の侵害から、この国の国境を守らなくてはならない。保護によって、繁栄と力は拡大します。
 
I will fight for you with every breath in my body - and I will never, ever let you down.
私は自分の命すべてをかけて皆さんのために闘います。そして決して、絶対に、がっかりさせません。
 
America will start winning again, winning like never before.
アメリカはまた勝ち始めます。かつてないほど勝ち始めます。
 
We will bring back our jobs. We will bring back our borders. We will bring back our wealth. And we will bring back our dreams.
この国の仕事を回復させます。国境を回復します。富を回復させます。そして私たちの夢を復活させます。
 
We will build new roads, and highways, and bridges, and airports, and tunnels, and railways all across our wonderful nation.
私たちはこの素晴らしい国の全土で、新しい道路、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道を造ります。
 
We will get our people off of welfare and back to work - rebuilding our country with American hands and American labour.
国民がもう生活保護を必要としないように、仕事に戻れるようにします。この国をアメリカ人の手とアメリカ人の労働で再建します。
 
We will follow two simple rules: Buy American and hire American.
私たちは2つの素朴なルールに従います。アメリカのものを買い、アメリカ人を雇うのです。
 
We will seek friendship and goodwill with the nations of the world - but we do so with the understanding that it is the right of all nations to put their own interests first.
私たちは世界の国々との間に友情、そして友好を求めます。しかしその前提には、すべての国は自国の利益を優先する権利があるという認識があります。
 
We do not seek to impose our way of life on anyone, but rather to let it shine as an example - we will shine - for everyone to follow.
私たちは自分たちの生き方をほかの誰にも押し付けようとはしませんが、むしろお手本として輝くように、私たちは輝きますから、ほかの人たちが見習うべきお手本として輝くようにします。
 
We will reinforce old alliances and form new ones - and unite the civilised world against radical Islamic terrorism, which we will eradicate completely from the face of the Earth.
私たちは古い同盟関係を強化し、新しい同盟を結びます。そして、文明世界を一致団結させて、イスラム過激主義のテロと戦います。イスラム過激主義のテロは、この地上から完全に消し去ります。
 
At the bedrock of our politics will be a total allegiance to the United States of America, and through our loyalty to our country, we will rediscover our loyalty to each other.
私たちの政治の礎となるのは、アメリカ合衆国に対する完全な中世です。そして自分たちの国への忠誠心を通じて、私たちはお互いへの忠誠心を再発見するでしょう。
 
When you open your heart to patriotism, there is no room for prejudice.
自分の心を愛国心に向けて開けば、偏見が入り込む余地はありません。
 
The Bible tells us: "How good and pleasant it is when God's people live together in unity."
聖書はこう教えています。「神の人々がひとつになって暮らすのは、なんて善い、心地良いことでしょう」と。
 
We must speak our minds openly, debate our disagreements honestly, but always pursue solidarity.
私たちは思ったことを自由に発言し、意見が違えば議論しなくてはなりませんが、常に連帯を目指すべきです。
 
When America is united, America is totally unstoppable.
アメリカが団結すれば、アメリカを食い止めることなど不可能です。
 
There should be no fear - we are protected, and we will always be protected.
恐れるべきではありません。私たちは守られているし、常に守られていくので。
 
We will be protected by the great men and women of our military and law enforcement and, most importantly, we will be protected by God.
私たちは軍隊と法の執行機関の偉大な人々に守られているし、何よりも神が私たちを守ってくれます。
 
Finally, we must think big and dream even bigger.
最後に、私たちは大きく考え、さらに大きく夢見なくてはなりません。
 
In America, we understand that a nation is only living as long as it is striving.
アメリカの私たちは、国とは努力し続けなければ生き続けられないものだと理解しています。
 
We will no longer accept politicians who are all talk and no action - constantly complaining but never doing anything about it.
私たちは、口先だけで行動しない政治家をもうこれ以上受け入れません。文句を言うだけで何もしない政治家など。
 
The time for empty talk is over.
空虚なお話の時間はもう終わりです。
 
Now arrives the hour of action.
行動の時がやってきました。
 
Do not allow anyone to tell you that it cannot be done. No challenge can match the heart and fight and spirit of America.
そんなことは無理だと誰かに言われても、決して信じてはいけません。アメリカの心とファイトとスピリットに勝る挑戦などありません。
 
We will not fail. Our country will thrive and prosper again.
私たちは失敗しません。私たちの国は再び、栄えて繁栄します。
 
We stand at the birth of a new millennium, ready to unlock the mysteries of space, to free the Earth from the miseries of disease, and to harness the energies, industries and technologies of tomorrow.
私たちは新しい千年紀の誕生と共にあります。宇宙の神秘の扉を開き、病の苦しみから地球を解き放ち、未来のエネルギーや産業や技術を活用しようという、その時に立っています。
 
A new national pride will stir our souls, lift our sights, and heal our divisions.
国民としての新しい誇りが私たちの魂でうごめき、展望を引き上げ、分断を癒してくれるでしょう。
 
It is time to remember that old wisdom our soldiers will never forget: that whether we are black or brown or white, we all bleed the same red blood of patriots, we all enjoy the same glorious freedoms, and we all salute the same great American Flag.
この国の兵士たちが決して忘れない古い格言を思い出すべき時です。黒だろうが茶色だろうが白だろうが、私たちは全員が、赤い愛国者の血を流すのだと。全員が同じ素晴らしい自由を享受し、全員が同じ偉大なるアメリカ国旗に敬礼するのだと。
 
And whether a child is born in the urban sprawl of Detroit or the windswept plains of Nebraska, they look up at the same night sky, they fill their heart with the same dreams, and they are infused with the breath of life by the same almighty Creator.
そして大都市デトロイトの裾野(すその)で生まれようが、風吹きすさぶネブラスカの平原で生まれようが、同じ夜空を見上げた子供は、同じ夢で心を満たし、同じ偉大なる創造主によって生命を吹き込まれるのです。
 
So to all Americans, in every city near and far, small and large, from mountain to mountain, and from ocean to ocean, hear these words:
なのですべてのアメリカ人は、この言葉を聞いて下さい。あらゆる都市にいる人、遠い近いを問わず、大小を問わず、山から山へ、海から海へ、聞いて下さい。
 
You will never be ignored again.
あなたは二度と無視されたりしません。
 
Your voice, your hopes, and your dreams, will define our American destiny.
あなたの声、あなたの希望、あなたの夢は、私たちアメリカの運命を決定するものです。
 
And your courage and goodness and love will forever guide us along the way.
そしてあなたの勇気と善と愛が、永遠に私たちを導いてくれます。
 
Together, we will make America strong again.
一緒に、アメリカをまた強くします。
 
We will make America wealthy again.
アメリカをまた豊かにします。
 
We will make America proud again.
アメリカをまた誇り高くします。
 
We will make America safe again.
アメリカをまた安全にします。
 
And, yes, together, we will make America great again.
そしてそうです。一緒に、私たちはアメリカをまた偉大にするのです。
 
Thank you, God bless you, and God bless America. Thank you. God bless America.
ありがとう。神様の祝福を。神様がアメリカを祝福しますように。ありがとう。神様がアメリカを祝福しますように。
 

第百九十三回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

2017年01月20日 19時17分09秒 | 特集
平成29年1月20日
第百九十三回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

動画が再生できない方はこちら(政府インターネットTV)
 まず冒頭、天皇陛下の御公務の負担軽減等について申し上げます。現在、有識者会議で検討を進めており、近々論点整理が行われる予定です。静かな環境の中で、国民的な理解の下に成案を得る考えであります。

一 はじめに

 昨年末、オバマ大統領と共に、真珠湾の地に立ち、先の大戦で犠牲となった全ての御霊(みたま)に、哀悼の誠を捧げました。
 我が国では、三百万余の同胞が失われました。数多(あまた)の若者たちが命を落とし、人々の暮らし、インフラ、産業はことごとく破壊されました。
 明治維新から七十年余り経った当時の日本は、見渡す限りの焼け野原。そこからの再スタートを余儀なくされました。
 しかし、先人たちは決して諦めなかった。廃墟と窮乏の中から敢然と立ち上がり、次の時代を切り拓きました。世界第三位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を、未来を生きる世代のため創り上げてくれました。
 戦後七十年余り。今を生きる私たちもまた、立ち上がらなければならない。「戦後」の、その先の時代を拓くため、新しいスタートを切る時です。
 少子高齢化、デフレからの脱却と新しい成長、厳しさを増す安全保障環境。困難な課題に真正面から立ち向かい、未来を生きる世代のため、新しい国創りに挑戦する。今こそ、未来への責任を果たすべき時であります。
 私たちの子や孫、その先の未来、次なる七十年を見据えながら、皆さん、もう一度スタートラインに立って、共に、新しい国創りを進めていこうではありませんか。

二 世界の真ん中で輝く国創り

(日米同盟)
 かつて敵として熾烈に戦った日本と米国は、和解の力により、強い絆(きずな)で結ばれた同盟国となりました。
 世界では今なお争いが絶えません。憎しみの連鎖に多くの人々が苦しんでいます。その中で、日米両国には、寛容の大切さと和解の力を示し、世界の平和と繁栄のため共に力を尽くす責任があります。
 これまでも、今も、そしてこれからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である。これは不変の原則です。できる限り早期に訪米し、トランプ新大統領と同盟の絆(きずな)を更に強化する考えであります。
 先月、北部訓練場、四千ヘクタールの返還が、二十年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後、最大の返還であります。地位協定についても、半世紀の時を経て初めて、軍属の扱いを見直す補足協定が実現しました。
 更に、学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にあり、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を何としても成し遂げる。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めてまいります。
 かつて、「最低でも」と言ったことすら実現せず、失望だけが残りました。威勢のよい言葉だけを並べても、現実は一ミリも変わりません。必要なことは、実行です。結果を出すことであります。
 安倍内閣は、米国との信頼関係の下、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つひとつ結果を出していく決意であります。

(地球儀を俯瞰(ふかん)する外交)
 本年は、様々な国のリーダーが交代し、大きな変化が予想されます。先の見えない時代において、最も大切なこと。それは、しっかりと軸を打ち立て、そして、ぶれないことであります。
 自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する。
 ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携え、アジア、環太平洋地域から、インド洋に及ぶ、この地域の平和と繁栄を確固たるものとしてまいります。
 自由貿易の旗手として、公正なルールに基づいた、二十一世紀型の経済体制を構築する。
 TPP協定の合意は、そのスタンダードであり、今後の経済連携の礎となるものであります。日EU・EPAのできる限り早期の合意を目指すとともに、RCEPなどの枠組みが野心的な協定となるよう交渉をリードし、自由で公正な経済圏を世界へと広げます。
 継続こそ力。就任から五年目を迎え、G7諸国のリーダーの中でも在職期間が長くなります。五百回以上の首脳会談の積み重ねの上に、地球儀を大きく俯瞰(ふかん)しながら、ダイナミックな平和外交、経済外交を展開し、世界の真ん中でその責任を果たしてまいります。

(近隣諸国との関係改善)
 日本海から東シナ海、南シナ海に至る地域では緊張が高まり、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。地域の平和と安定のため、近隣諸国との関係改善を積極的に進めてまいります。
 ロシアとの関係改善は、北東アジアの安全保障上も極めて重要です。しかし、戦後七十年以上経っても平和条約が締結されていない、異常な状況にあります。
 先月、訪日したプーチン大統領と、問題解決への真摯な決意を共有しました。元島民の皆さんの故郷(ふるさと)への自由な訪問やお墓参り、北方四島全てにおける「特別な制度」の下での共同経済活動について、交渉開始で合意し、新たなアプローチの下、平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出しました。
 この機運に弾みをつけるため、本年の早い時期にロシアを訪問します。七十年以上動かなかった領土問題の解決は容易なことではありませんが、高齢である島民の皆さんの切実な思いを胸に刻み、平和条約締結に向け、一歩でも、二歩でも、着実に前進していきます。
 本年、日中韓サミットを我が国で開催し、経済、環境、防災など幅広い分野で、地域レベルの協力を強化します。
 韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国です。これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新しい時代の協力関係を深化させてまいります。
 中国の平和的発展を歓迎します。地域の平和と繁栄に大きな責任を有することを、共に自覚し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年という節目を迎える、この機を捉え、「戦略的互恵関係」の原則の下、大局的な観点から、共に努力を重ね、関係改善を進めます。
 北朝鮮が昨年、二度にわたる核実験、二十発以上の弾道ミサイル発射を強行したことは、断じて容認できません。安保理決議に基づく制裁に加え、関係国と協調し、我が国独自の措置も実施しました。「対話と圧力」、「行動対行動」の一貫した方針の下、核、ミサイル、そして引き続き最重要課題であり、発生から長い年月が経つ拉致問題の包括的な解決に向け、北朝鮮が具体的な行動を取るよう強く求めます。

(積極的平和主義)
 真新しい国旗を手に、誇らしげに入場行進する選手たち。
 南スーダン独立後、初めての全国スポーツ大会には、異なる地域から、異なる民族の選手たちが一堂に会しました。
 その会場の一つとなる、穴だらけだったグラウンドに、一千個を超えるコンクリートブロックを、一つひとつ手作業で埋め込んだのは、日本の自衛隊員たちです。
 最終日、サッカー決勝は、奇(く)しくも、政治的に対立する民族同士の戦い。しかし、選手も、観客も、フェアプレーを貫きました。終了後には、勝利した側の選手が、負けた側の選手の肩を抱き、互いの健闘を称(たた)えあう光景が、そこにはありました。
 幼い息子さんを連れて観戦に来ていたジュバ市民の一人は、その姿に感動し、こう語っています。
 「毎日、スポーツが行われるような平和な国になってほしい。」
 隊員たちが造ったのは、単なるグラウンドではありません。平和を生み出すグラウンドであります。自衛隊の活動一つひとつが、間違いなく、南スーダンの自立と平和な国創りにつながっている。
 灼熱(しゃくねつ)のアデン湾では、今この時も、海賊対処に当たる隊員諸君がいます。三千八百隻を上回る世界の船舶を護衛してきました。
 平和のため黙々と汗を流す自衛隊の姿を、世界が称賛し、感謝し、頼りにしています。与えられた任務を全力で全うする彼らは、日本国民の誇りであります。
 テロ、難民、貧困、感染症。世界的な課題は深刻さを増しています。こうした現実から、我が国だけが目を背けるようなことは、あってはなりません。今こそ、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄のため、皆さん、能(あた)う限りの貢献をしていこうではありませんか。

三 力強く成長し続ける国創り

(「壁」への挑戦)
 昨年、大隅良典栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞し、三年連続で日本人がノーベル賞を獲得。世界の真ん中で輝く姿に、「やれば、できる」。日本全体が、大きな自信と勇気をもらいました。
 「未来は『予言』できない。しかし、『創る』ことはできる。」
 ノーベル賞物理学者、デニス・ガボールの言葉です。
 五年前、日本には、根拠なき「未来の予言」があふれていました。「人口が減少する日本は、もう成長できない」、「日本は、黄昏(たそがれ)を迎えている」。不安を煽る悲観論が蔓延していました。
 まさにデフレマインド、「諦め」という名の「壁」が立ちはだかり、政権交代後も、「アベノミクスで成長なんかできない」。私たちの経済政策には、批判ばかりでありました。
 しかし、日本はまだまだ成長できる。その「未来を創る」ため、安倍内閣は、この四年間、三本の矢を放ち、「壁」への挑戦を続けてきました。
 その結果、名目GDPは四十四兆円増加。九%成長しました。中小・小規模事業者の倒産は二十六年ぶりの低水準となり、政権交代前と比べ三割減らすことに成功しました。
 長らく言葉すら忘れられていた「ベースアップ」が三年連続で実現しました。史上初めて、四十七全ての都道府県で有効求人倍率が一倍を超えました。全国津々浦々で、確実に「経済の好循環」が生まれています。
 格差を示す指標である相対的貧困率が足元で減少しています。特に子どもの相対的貧困率は二%減少し、七・九%。十五年前の調査開始以来一貫して増加していましたが、安倍内閣の下、初めて減少に転じました。
 「出来ない」と思われていたことが次々と実現できた。かつての悲観論は完全に間違っていた。そのことを、私たち自公政権は証明しました。
 この「経済の好循環」を更に前に進めていく。今後も、安定した政治基盤の下、力を合わせ、私たちの前に立ちはだかる「壁」を、次々と打ち破っていこうではありませんか。

(中小・小規模事業者への好循環)
 景気回復の風を、更に、全国津々浦々、中小・小規模事業者の皆さんにお届けする。
 先月、五十年ぶりに、下請代金の支払いについて通達を見直しました。これまで下請事業者の資金繰りを苦しめてきた手形払いの慣行を断ち切り、現金払いを原則とします。近年の下請けいじめの実態を踏まえ、下請法の運用基準を十三年ぶりに抜本改定しました。今後、厳格に運用し、下請取引の条件改善を進めます。
 四月から、成長の果実を活かし、雇用保険料率を引き下げます。これにより、中小・小規模事業者の負担を軽減し、働く皆さんの手取りアップを実現します。更に、賃上げに積極的な事業者を、税額控除の拡充により後押しします。
 生産性向上のため、今後二年間の設備投資には、固定資産税を三年間半減する。この仕組みを、製造業だけでなく、小売・サービス業にも拡大することで、商店街などにおいても攻めの投資を促します。

(地方創生)
 一日平均、二十人。人影が消え、シャッター通りとなった岡山の味野(あじの)商店街は、その「壁」に挑戦しました。
 地場の繊維産業を核に、商店街、自治体、商工会議所が一体で、「児島ジーンズストリート」を立ち上げました。三十店を超えるジーンズ店が軒を並べ、ジーンズ柄で構内がラッピングされた駅からは、ジーンズバスやジーンズタクシーが走ります。
 まさに「ジーンズの聖地」。今や、年間十五万人を超える観光客が集まる商店街へ生まれ変わりました。評判は海外にも広がり、アジアからの外国人観光客も増えています。
 地方には、それぞれの魅力、観光資源、ふるさと名物があります。それを最大限活かすことで、過疎化という「壁」も必ずや打ち破ることができるはずです。
 自分たちの未来を、自らの創意工夫と努力で切り拓く。地方の意欲的なチャレンジを、自由度の高い「地方創生交付金」によって、後押しします。
 地方の発意による、地方のための分権改革を進めます。空き家や遊休地の活用に関する制限を緩和し、自治体による有効利用を可能とします。
 故郷(ふるさと)への情熱を持って、地方創生にチャレンジする。そうした地方の皆さんを、安倍内閣は、全力で応援します。

(観光立国)
 一千万人の「壁」。政権交代前、外国人観光客は、年間八百万人余りで頭打ちとなっていました。
 安倍内閣は、その「壁」を、僅か一年で突破しました。四年連続で過去最高を更新し、昨年は、三倍の二千四百万人を超えました。
 日本を訪れる外国クルーズ船は、僅か三年で四倍に増加。秋田港で竿燈(かんとう)まつり、青森港でねぶた祭、徳島小松島港で阿波おどり、各地自慢の祭りを巡る外国のクルーズツアーが企画されるなど、地方に大きなチャンスが生まれています。
 民間資金を活用し、国際クルーズ拠点の整備を加速します。港湾法を改正し、投資を行う事業者に、岸壁の優先使用などを認める新しい仕組みを創設します。
 沖縄はアジアとの架け橋。我が国の観光や物流のゲートウェイです。新石垣空港では、昨年、香港からの定期便の運航が始まり、外国人観光客の増加に沸いています。機材の大型化に対応するための施設整備を支援します。
 全国の地方空港で、国際定期便の就航を支援するため、着陸料の割引、入国管理等のインフラ整備を行います。羽田、成田両空港の二〇二〇年四万回の容量拡大に向け、羽田空港では新しい国際線ターミナルビルの建設に着手します。
 いわゆる「民泊」の成長を促すため、規制を改革します。衛生管理などを条件に、旅館業法の適用を除外することで、民泊サービスの拡大を図ります。
 あらゆる政策を総動員して、次なる四千万人の高みを目指し、観光立国を推し進めてまいります。

(農政新時代)
 地方経済の核である農業では、高齢化という「壁」が立ちはだかってきました。平均年齢は六十六歳を超えています。
 しかし、攻めの農政の下、四十代以下の新規就農者は二年連続で増加し、足元では、統計開始以来最多の二万三千人を超えました。生産農業所得も、直近で年間三兆三千億円、過去十一年で最も高い水準まで伸びています。
 更なる弾みをつけるため、八本に及ぶ農政改革関連法案を、今国会に提出し、改革を一気に加速します。
 農業版の「競争力強化法」を制定します。肥料や飼料を一円でも安く仕入れ、農産物を一円でも高く買ってもらう。そうした農家の皆さんの努力を後押しするため、生産資材や流通の分野で、事業再編、新規参入を促します。委託販売から買取販売への転換など、農家のための全農改革を進めます。数値目標の達成状況を始め、その進捗をしっかりと管理してまいります。
 牛乳や乳製品の流通を、事実上、農協経由に限定している現行の補給金制度を抜本的に見直し、生産者の自由な経営を可能とします。
 農地バンクの下、農地の大規模化を進めます。世界のマーケットを目指し、生産行程や流通管理の規格化、JETROの世界ネットワークを活用したブランド化を展開し、競争力を強化します。
 農政改革を同時並行で一気呵(か)成に進め、若者が農林水産業に自分たちの夢や未来を託することができる「農政新時代」を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。

(イノベーションを生み出す規制改革)
 チャレンジを阻む、あらゆる「壁」を打ち破ります。イノベーションを次々と生み出すための、研究開発投資、そして規制改革。安倍内閣は、三本目の矢を、次々と打ち続けます。
 医療情報について、匿名化を前提に利用可能とする新しい仕組みを創設します。ビッグデータを活用し、世界に先駆けた、新しい創薬や治療法の開発を加速します。
 人工知能を活用した自動運転。その未来に向かって、本年、各地で実証実験が計画されています。国家戦略特区などを活用して、自動運転の早期実用化に向けた民間の挑戦を後押しします。
 民間の視点に立った行政改革も進めます。長年手つかずであった各種の政府統計について、一体的かつ抜本的な改革を行います。
 本年四月からガスの小売りを完全に自由化します。昨年の電力自由化と併せ、多様なサービスのダイナミックな展開と、エネルギーコストの低廉化を実現します。
 水素エネルギーは、エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札です。これまでの規制改革により、ここ日本で、未来の水素社会がいよいよ幕を開けます。三月、東京で、世界で初めて、大容量の燃料電池を備えたバスが運行を始めます。来年春には、全国で百か所の水素ステーションが整備され、神戸で水素発電による世界初の電力供給が行われます。
 二〇二〇年には、現在の四十倍、四万台規模で燃料電池自動車の普及を目指します。世界初の液化水素船による大量水素輸送にも挑戦します。生産から輸送、消費まで、世界に先駆け、国際的な水素サプライチェーンを構築します。その目標の下に、各省庁にまたがる様々な規制を全て洗い出し、改革を進めます。

四 安全・安心の国創り

(被災地の復興)
 再生可能エネルギーから大規模に水素を製造する。最先端の実証プロジェクトが、福島で動き出しました。
 南相馬では、町工場の若い後継者たちが力を合わせ、災害時に水中調査を行うロボットを開発しました。その一人、金型工場の二代目、渡邉光貴(こうき)さんが、強い決意を私に語ってくれました。
 「南相馬が『ロボットの町』と言われるよう、若い力で頑張る。」
 原発事故により大きな被害を受けた浜通り地域は、今、世界最先端の技術が生まれる場所になろうとしています。
 福島復興特措法を改正し、イノベーション・コースト構想を推し進めます。官民合同チームの体制を強化し、生業(なりわい)の復興を加速します。
 今年度中に、帰還困難区域を除き、除染が完了します。廃炉、賠償等を安定的に実施することと併せ、二〇二〇年には身近な場所から仮置き場をなくせるよう、中間貯蔵施設の建設を急ぎます。帰還困難区域でも、復興拠点を設け、五年を目途に避難指示解除を目指し、国の負担により除染やインフラ整備を一体的に進めます。
 東北三県では、来年春までに、九十五%を超える災害公営住宅が完成し、高台移転も九割で工事が完了する見込みです。農業、水産業、観光業など、生業(なりわい)の復興を力強く支援します。
 熊本地震以来通行止めとなっていた、俵山トンネルを含む熊本高森線が先月開通し、日本が誇る観光地・阿蘇へのアクセスが大きく改善しました。今後、熊本空港ターミナルビルの再建、更には「復興のシンボル」である熊本城天守閣の早期復旧を、国として全力で支援してまいります。

(国土の強靱(じん)化)
 昨年の台風十号では、岩手の岩泉町で、避難が遅れ、九名の高齢者の方々が川の氾濫の犠牲となりました。現場に足を運び、御冥福をお祈りするとともに、再発防止への決意を新たにしました。
 水防法を抜本的に改正します。介護施設、学校、病院など避難に配慮が必要な方々がいらっしゃる施設では、避難計画の作成、訓練の実施を義務化します。中小河川も含め、地域住民に水災リスクが確実に周知されるようにします。
 治水対策の他、水害や土砂災害への備え、最先端技術を活用した老朽インフラの維持管理など、事前防災・減災対策に徹底して取り組み、国土強靱(じん)化を進めます。

(生活の安心)
 糸魚川の大規模火災で被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い生活再建、事業再開に向け、国も全力で支援してまいります。
 お年寄りなどを狙った悪質業者が後を絶ちません。被害者の救済を消費者団体が代わって求める新しい訴訟制度が、昨年スタートしました。これを国民生活センターがバックアップする仕組みを整え、より迅速な救済を目指します。
 三年後に迫ったオリンピック・パラリンピックを必ず成功させる。サイバーセキュリティ対策、テロなど組織犯罪への対策を強化します。受動喫煙対策の徹底、ユニバーサルデザインの推進、多様な食文化への対応など、この機を活かし、誰もが共生できる街づくりを進めます。
 昨年七月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります。

五 一億総活躍の国創り

 障害や難病のある方も、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる社会を創る。
 一億総活躍の「未来」を切り拓くことができれば、少子高齢化という課題も必ずや克服できるはずです。
 しかし、家庭環境や事情は、人それぞれ異なります。何かをやりたいと願っても、画一的な労働制度、保育や介護との両立など様々な「壁」が立ちはだかります。こうした「壁」を一つひとつ取り除く。これが、一億総活躍の国創りであります。

(働き方改革)
 最大のチャレンジは、一人ひとりの事情に応じた、多様で柔軟な働き方を可能とする、労働制度の大胆な改革。働き方改革です。
 アベノミクスによって、有効求人倍率は、現在、二十五年ぶりの高い水準。この三年間ずっと一倍を上回っています。正規雇用も一昨年増加に転じ、二十四か月連続で前年を上回る勢いです。雇用環境が改善する中、民間企業でも、定年延長や定年後も給与水準を維持するなど、前向きな動きが生まれています。
 雇用情勢が好転している今こそ、働き方改革を一気に進める大きなチャンスです。三月に実行計画を決定し、改革を加速します。
 同一労働同一賃金を実現します。昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど、不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、詳細なガイドライン案を策定しました。今後、その根拠となる法改正について、早期の国会提出を目指し、立案作業を進めます。
 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働による過酷な状況の中、自ら命を絶ちました。御冥福を改めてお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速します。
 抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わりません。重要なことは、何が不合理な待遇差なのか、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです。言葉だけのパフォーマンスではなく、しっかりと結果を生み出す働き方改革を、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。

(女性の活躍)
 「人は、幾つからでも、どんな状況からでも、再出発できる。」
 十六年間子育てに専念した後、リカレント教育を受け、再就職を果たした、島千佳さんの言葉です。役職にも就き、仕事に大変やりがいを感じているそうです。島さんは、笑顔で、私にこう語ってくれました。
 「子育ての経験をしたからこそ、今の職場で活かせることがたくさんある。」
 子育てや介護など多様な経験を持つ人たちの存在は、企業にとって大きなメリットを生み出すはずです。
 「百三万円の壁」を打ち破ります。パートで働く皆さんが、就業調整を意識せずに働くことができるよう、配偶者特別控除の収入制限を大幅に引き上げます。
 出産などを機に離職した皆さんの再就職、学び直しへの支援を抜本的に拡充します。復職に積極的な企業を支援する助成金を創設します。雇用保険法を改正し、教育訓練給付の給付率、上限額を引き上げます。子どもを託児所に預けながら職業訓練が受けられる、また、土日・夜間にも必要な講座を受講できるなど、きめ細かく、再就職支援の充実を図ります。

(成長と分配の好循環)
 保育や介護と、仕事の両立を図る。
 子育てを理由に仕事を辞めずに済むよう、育休給付の支給期間を最大二歳まで延長します。地方と連携し、子育て世帯に対する住宅ローン金利を引き下げ、三世代の近居や同居を支援します。
 「待機児童ゼロ」、「介護離職ゼロ」。その大きな目標に向かって、保育、介護の受け皿整備を加速します。国家戦略特区で実施してきた都市公園に保育園や介護施設の建設を認める規制緩和を全国展開します。
 人材を確保するため、来年度予算でも処遇改善に取り組みます。介護職員の皆さんには、経験などに応じて昇給する仕組みを創り、月額平均一万円相当の改善を行います。保育士の方々には、概ね経験三年以上で月五千円、七年以上で月四万円の加算を行います。
 加えて、全ての保育士の皆さんに二%の処遇改善を実施します。これにより、政権交代後、合計で十%の改善が実現いたします。他方で、あの三年三か月、保育士の方々の処遇は、改善するどころか、引き下げられていた。重要なことは、言葉を重ねることではありません。責任を持って財源を確保し、結果を出すことであります。安倍内閣は、言葉ではなく結果で、国民の負託に応えてまいります。
 年金受給資格期間を二十五年から十年に短縮します。消費税率引上げを延期した中でも、十月から、新しく六十四万人の方々に年金支給を開始します。自治体による国保の安定的な運営のため財政支援を拡充します。最低賃金が大きく上昇を続ける中、失業給付について、若い世代への支給期間を延長するなど改善を実施します。
 来年度予算では、政権交代前と比べ、国の税収は十五兆円増加し、新規の公債発行額は十兆円減らすことができました。こうしたアベノミクスの果実も活かし、「成長と分配の好循環」を創り上げてまいります。
 同時に、将来にわたり持続可能な社会保障制度を構築するため、改革の手も決して緩めません。
 薬価制度の抜本改革を断行します。二年に一回の薬価改定を毎年実施することとし、国民負担の軽減と医療の質の向上の両立を図ります。医療保険で、高齢者の皆さんが現役世代より優遇される特例に関し、一定の所得がある方については見直しを実施します。
 累次の改革が実を結び、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、今年度予算に続き来年度予算においても、五千億円以下に抑えることができました。引き続き、経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを同時に実現しながら、一億総活躍の未来を切り拓いてまいります。

六 子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り

(個性を大切にする教育再生)
 我が国の未来。それは、子どもたちであります。
 子どもたち一人ひとりの個性を大切にする教育再生を進めます。
 先般成立した教育機会確保法を踏まえ、フリースクールの子どもたちへの支援を拡充し、いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちが、自信を持って学んでいける環境を整えます。
 実践的な職業教育を行う専門職大学を創設します。選択肢を広げることで、これまでの単線的、画一的な教育制度を変革します。

(誰にでもチャンスのある教育)
 「邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」
 明治日本が、学制を定め、国民教育の理想を掲げたのは、今から百四十年余り前のことでした。
 それから七十年余り。日本国憲法が普通教育の無償化を定め、小・中学校九年間の義務教育制度がスタートしました。
 本年は、その憲法施行から七十年の節目であります。
 この七十年間、経済も、社会も、大きく変化しました。子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育もまた、全ての国民に真に開かれたものでなければなりません。学制の序文には、こう記されています。
 「学問は身を立(たつ)るの財本(もとで)ともいふべきもの」
 どんなに貧しい家庭で育っても、夢を叶(かな)えることができる。そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。
 高校生への奨学給付金を更に拡充します。本年春から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が、無利子の奨学金を受けられるようにします。返還についても卒業後の所得に応じて変える制度を導入することで、負担を軽減します。
 更に、返還不要、給付型の奨学金制度を、新しく創設いたします。本年から、児童養護施設や里親の下で育った子どもたちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に、先行的にスタートします。来年以降、一学年二万人規模で、月二万円から四万円の奨学金を給付します。
 幼児教育についても、所得の低い世帯では、第三子以降に加え、第二子も無償とするなど、無償化の範囲を更に拡大します。
 全ての子どもたちが、家庭の経済事情にかかわらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。そうした日本の未来を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。

七 おわりに
 子や孫のため、未来を拓く。
 土佐湾でハマグリの養殖を始めたのは、江戸時代、土佐藩の重臣、野中兼山(けんざん)だったと言われています。こうした言い伝えがあります。
「美味しいハマグリを、江戸から、土産に持ち帰る。」
 兼山(けんざん)の知らせを受け、港では大勢の人が待ち構えていました。しかし、到着するや否や、兼山(けんざん)は、船いっぱいのハマグリを全部海に投げ入れてしまった。ハマグリを口にできず、文句を言う人たちを前に、兼山(けんざん)はこう語ったと言います。
 「このハマグリは、末代までの土産である。子たち、孫たちにも、味わってもらいたい。」
 兼山(けんざん)のハマグリは、土佐の海に定着しました。そして三百五十年の時を経た今も、高知の人々に大きな恵みをもたらしている。
 まさに「未来を拓く」行動でありました。
 未来は変えられる。全ては、私たちの行動にかかっています。
 ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても、何も生まれません。意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこうではありませんか。
 自らの未来を、自らの手で切り拓く。その気概が、今こそ、求められています。
 憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。
 未来を拓く。これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります。
 世界の真ん中で輝く日本を、一億総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本の未来を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか。
 御清聴ありがとうございました。
 

2017.1.20 Newsモーニングサテライト

2017年01月20日 17時12分08秒 | MS
■マーケット

NY株 そろって下落
19日のNY株式市場は午後に入り下げ幅を拡大。良好な経済指標など材料はあったものの、さすがに政策の先行きを確認するまでは動きにくいようです。20日の就任式でトランプ次期大統領が何を語り、どんな政策を打ち出すのか、市場の関心はそこに集中しています。次期財務長官のムニューチン氏が公聴会で「長期的なドルの強さは重要」と述べたことも材料視され為替も上下に動きました。良好な雇用や住宅指標を受け10年債利回りが年初来の高値水準となる2.5%に接近し、ドル買いを支えた面もあるようです。終値です。ダウは5日続落、72ドル安の1万9,732ドル。ナスダックは反落、15ポイント低下し5,540。S&P500も反落8ポイントマイナスの2,263でした。
 

【NY証券取引所中継】米住宅改善基調 続く
解説は三井住友アセットマネジメントNYの曽根良太氏

--今日はやはり買いの手が伸びませんね。

朝方発表された経済指標は堅調な内容でしたが、トランプ次期大統領の就任式をあすに控えて、一部で波乱含みが見込まれ、様子見姿勢が強まっており、主要3指数は軟調に推移しています。

--さて去年12月の住宅着工件数は強い数字でしたね。

前月が予想以上に減少していたため、金利上昇による影響が出るのか懸念していましたが、全体の数字は安心感があった。ただ中身を見ますと集合住宅の反動が全体を押し上げていて、主力である一戸建て住宅は2ヵ月連続で減少しております。

《2016年12月住宅着工件数(前月比)+11.3%》
・ 集合住宅 +57.3%
・ 一戸建て -4.0%(11月-4.6%)

--今後、金利上昇が懸念されている中で、影響はどうなんでしょうか。

そんなに心配しなくてもいいのではないか、と思っています。今日同時に発表された着工件数の先行指標となる2016年12月住宅着工件数は、一戸建て住宅は5ヵ月連続の増加と堅調に推移しています。着工件数は天候要因などで、単月でのブレが大きくなる傾向がありますが、今後緩やかな金利上昇にとどまれば、改善基調は続くと思います。
 
 

【NY証券取引所中継】シェール会社の思惑
解説は三井住友アセットマネジメントNYの曽根良太氏

--シェールオイル企業の増産懸念が最近、価格の重しになっているようなんですが、実際、増産はあるのでしょうか。

(フリップ:原油生産は増加)
はい、実際、足下でアメリカの原油生産は増加していることが確認できます。ただこの先は逆に生産調整が想定され、原油価格が底堅く動く可能性が高いと思っています。その理由は今後、損益分岐点の上昇が予想されるからです。損益分岐点の上昇は利益の減少を意味し、シェール会社としては採算が合わない生産を積極的に行うとは考えずらく、結果的に生産量の伸びが抑制され、価格を下支えする可能性があります。

--損益分岐点が上昇するのはどうしてですか。

それはコストの上昇が予想されるからです。最近、関連企業を取材したところ、井戸の仕上げに関する一部の費用が20%程度上昇しているということでした。シェール会社が実際の開発などを委託している油田サービス会社が、掘削リグの稼働数の増加傾向を理由に、強気に転じているそうです。

--ただOPECの減産が進んでいることは価格維持にはいい材料ですね。

はい、しかしOPEC以外の材料、例えばドル高、アメリカの原油在庫の増加、先物の買いポジションの積み上がりなど、多くがすべて弱気材料です。短期的には2月中旬には明らかになるOPECの生産量で、積極的な減産への取り組みが印象付けられないと、一時的に50ドル割れの可能性は高いと思います。
 


【為替見通し】注目ポイントは「強いドル」
解説は三菱東京UFJ銀行の平井邦行氏

--NY市場を振り返っていかがでしょうか。

はい、ECBのドラギ総裁が緩和スタンスの維持を表明する一方で、アメリカの次期財務長官ムニューチン氏が強いドルに言及したこともあって、ドルは対主要通貨で全面高の展開となり、ドル円も115円半ばまで上昇、その後は114円後半での取引となりました。

--今日の予想レンジは、114.50~115.50円です。

市場はNY時間のあすのトランプ次期大統領の就任式に注目しており、様子見気分が強くなっています。よって小幅な値動きを予想しています。

--そして今後の注目ポイントは「強いドル」です。

今年に入りドル円はいわゆるトランプ相場の調整が行われてきました。ただ次期政権の方針に大きな変更があったわけではなく、就任式を終えれば再び楽観論が台頭し、ドル円は上昇に転じると予想しています。
トランプ次期大統領のドルは高すぎるとした発言についても、昨日の次期商務長官のロス氏や本日のムニューチン氏の発言からするに、中国など一部特定の国に対して行ったもので、ドルの強さは変わらないとみています。それ以上に次期政権の減税策や好調な米国企業の決算を受けて、アメリカの金利は上昇していくとみており、結果として日米金利差は拡大、ドル円も120円を目指す展開になると予想しています。


【日本株見通し】注目ポイントは「日経平均とEPS」
解説はインベストラストの福永博之氏
 
--今日の予想レンジは18900円~19200円です。

今晩、トランプ新大統領の就任式が予定されているため、東京市場は様子見ムードが広がる可能性がありますが、日中に中国の10-12月のGDPや12月の鉱工業生産、小売売上高の発表が予定されておりますので、結果を受けて上下に振れることも考えられ、ちょっと注意しておきたいところですね。

--注目ポイントは「日経平均とEPS(1株当たり利益)」です。

(フリップ:企業収益の改善がカギ)
第3四半期の決算発表が始まる前の昨年末から、直近までの日経平均株価の1株当たりの水準を見てみますと、1180円を上回っていたところから、徐々に低下しているのが分かります。これは小売りなどの決算が冴えなかったことが要因として考えられますが、日経平均もEPSとほぼ連動する形で下落しています。そのためこれから本格化する決算発表を受け、EPSが上昇するかが注目ポイントです。また決算発表の後半で、輸出関連の製造業などがEPSの低下をリカバリーできるかも注目ポイントになると思われます。仮にEPSが上昇するようですと、日経平均株価も19000円を固めて上昇することが考えられる反面、さらにEPSが低下するようですと、日経平均株価の水準が切り下がり、18000円台前半まで下落することも考えられますので、注意が必要になるのではないかと思われます。
 
 

■【プロの眼】ECB理事会を読み解く

【ニュース】
ECB 金融政策を現状維持
ECB=ヨーロッパ中央銀行は19日開いた理事会で、金融政策の現状維持を決めました。原油相場の回復を背景に物価上昇率の伸びが拡大しているものの、今後の行方を慎重に見極めたい考えです。ECBは政策金利を過去最低のゼロ%、そして、金融機関がECBに余剰資金を預けた時に課される中銀預入金利をマイナス0.4%にそれぞれ据え置きました。また、今年の年末まで実施期間を延長した量的緩和政策をめぐって、ECBは、「必要であれば、今年の年末以降も量的緩和を続ける」との考えを表明しました。一方、イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱による影響について、理事会終了後に記者会見したドラギ総裁は「判断するのは時期尚早と述べる」にとどめました。

前回の会合は、単に資産買入れを本年末まで続けると決めた重要な会合だったということでなく、今後の政策を展望する上で大事なヒントをくれるものだった。ただ、資産買入れを展望するための要素は明らかになったが、結論はむしろ不透明さを増したように思える。その意味では、資産買入れの「検証」に際してECBや各国中央銀行が行った調査や分析のエッセンスを順次公表して欲しい。日銀の「総括的検証」ではそれが実現したし、外部から見て有用だった。解説は野村総研の井上哲也氏。

--今回も・・・となるのかもしれませんが、やっぱり意見がずいぶん分かれたみたいですね。

「そうですね。もともとはドイツ対それ以外の対立だったわけですが、今回はイタリアのような問題国が量的緩和を大規模に続けてほしいという主張し出したので、3方に分かれてしまったという感じがありますね。」

--より複雑に意見が分かれてしまっているという状態ですね。そういう中でドラギ総裁がとにかく言い続けたのは、忍耐しろということですか。

「そうですね。12月のインフレ率が非常に上がりましたので、ドイツなどは量的緩和をそろそろやめてほしいというぐらいの意見になっているわけですね。でもやはりヨーロッパ全体のことを考えると続けていかなければならないので、ドイツの人たちもちょっと我慢してね、という感覚だったですね。」

--その忍耐問言葉に、今の難しさが表れていると思うんですが、いわゆる物価の上昇というものもさることながら、そもそも国債の買い入れも厳しくなってきているということですね。それが12月の議事要旨を見ると、より分かるということですね。

(フリップ1:クーレ理事が明言)
「先週公表されたんですけど、ちょっと面白かったですね。執行部側からクーレさんが説明されたわけなんですけれども、前回決めたのは、今年の4月から買い入れペースを800から600に落とすという話ですね。一部の人たちは800を続けて欲しいと言っていたわけですけれども、800を続けると買い入れ対象を拡大してもどこかでもう持たなくなりますよ、とハッキリと言っていましたね。」

--明言していると・・・。しかも(預金ファシリティ金利)マイナス4%以下の債券というのを既に買い入れ始めてしまっている・・・。

「ええ、報道によると、もう買い入れ始めたのではないかと・・・。これはもともと本当はバッファーとして取っておきたかった部分なんですけれども、もう既に買ってしまっているんじゃないかという議論が出ていますね。」

--ですからそれだけ追い詰められていることは間違いない・・・。

「ええ、やっぱり皆さんが思っていたよりも、この資産買い入れについて、かなり制約がかかってきているんじゃないか、というところが見えました。」

(フリップ2:対立する意見)
--ですから意見も本当に対立しています。ご覧のように分かれてきているんですね。買い入れについて積極的な人たちと、多数派、それから保守派はもっと減額してほしいというところ。狙いがあります。やはり積極派(上段)は・・・?

「積極派は今まで800やってきたんだから続けてほしいという話もありましたし、市場もそれを期待しているということを強調したかったわけですけれども、やはりイタリアも含めていろんな意味で不安を持っている人たちはたくさん買ってほしいなということですね。」

--そして保守派(下段)のほうは大幅に減額してほしいというのは、やっぱり・・・。

「もともとこういう政策というのは緊急対策だったですね、という話ですね。特に先月ドイツの利率が1.7%に上がりましたので、ドイツからするともうやめてもいいじゃないのという感覚を持っていると思いますね。」

--ただ結果的に落ち着いたのはここ(中断:多数派)でしたね。これは考え方としては・・・。

「一応減額しますけれども、今年いろんな政治イベントがある。フランスの大統領選、ドイツの連邦選挙ということもありますので、ですからそれに備えてのり代を確保したほうがいいのではないか、という少し冷静な意見ということですが、これが多数派で決まったわけですね。」

--となりますと政治的リスクというものは今年1年間、ヨーロッパは続きますね。

「ええ、そうですね、政治イベントが非常に多いですよね。先ほど申し上げた以外にもオランダの総選挙もありますし、それからトランプさんのドルに対するメッセージとかもやっぱりヨーロッパに対して大きな影響を持つわけです。」

--となると政策としましては、しばらくの間は今のものを様子を見て続けるというスタンスですか。

「ええ、それで、昨日もドラギさんが言ってましたように、何かあったら増やしますよ、というスタンスをずっと維持するとということだと思います。」



■【中国NOWCAST】
今回の中国ウオッチャーはSMBC日興証券の肖敏捷さんです。今週のピックアップトピックスは「2017年の成長目標を下方修正?」「住宅価格下げは一時的?」「外資の上場可能に」です。ダボス会議で習国家主席は2016年の成長見通しを6.7%と発表しましたが、中国国内ではすでに今年の成長見通しについての議論が活発化。地方政府やシンクタンクでは目標値引き下げの見通しが相次いでいます。

(フリップ:中国NAWCAST)
 (1) 2017年成長目標、下方修正?
 (2) 住宅価格、下げは一時的?
 (3) 外資の上場可能に
 

(1) 2017年成長目標、下方修正?

中国のGDP成長率については、習近平国家主席はダボス会議で2016年は6.7%の見通しだと発表、安定成長が続いていることを強調した。IMFも政府の経済刺激策に期待するとして今年の成長見通しを上方修正した。しかし3月に予定されている全人代の前に中国国内では目標引き下げをめぐる議論が活発化している。上海市では既に今年の成長率を、去年の6.5~7%の見通しから約6.5%へと下方修正、政府系シンクタンクも約6.5%成長になる見通しだと発表した。
こうした議論が高まる背景について、肖さんは、構造改革と環境汚染問題解決に向けた動きがあると言う。

《SMBC日興証券/肖敏捷》
「去年の後半あたりから足下もそうですけれども、PM2.5などの大気汚染が例年に比べてもっと深刻になった。例えば鉄鋼の場合には、違法で生産した地下工場が汚染物質出したい放題のところがいっぱいありますので、そういうところが景気が良いからとどんどん大量に生産する。そういう投資型の景気回復のやり方は、環境汚染をさらに深刻化させてしまった。成長率を引き下げて、その代わり問題に真剣に取り組む。」

--中国は空気がきれいになると、改革が進んでいるというシグナルになるということなんですが、今は景気を優先して道半ばということになるんでしょうか。
 

(2) 住宅価格、下げは一時的?

昨日お伝えしたように、中国の12月の新築住宅価格指数は、70都市のうちで20都市で価格が下落、政府管轄の北京、四川、上海でも値下がりした。去年10月の国慶節以降に実施された引き締め政策が功を奏したとみられる。

これに対し肖さんは、「過去十数年の間で不動産向け融資が制限されるたびに住宅ブームは沈静化に向かうのはパターンだ、現在、中国政府が海外への資金移動を厳しく制限している中では、再びバブルを引き起こす環境は整っている。本当に不動産バブルが収まるのかは疑問だ。」としている。
 

(3) 外資の上場可能に

中国国務院は金融や産業など外資系企業の投資規制の緩和を発表した。規制緩和されるのは銀行、証券、保険、会計処理など。これらの企業は上海や深圳証券取引所への上場が初めて認められるほか、中国国内で社債などのさまざまな債権の発行が可能になる。中国国務院は今回の決定について声明で、「国内企業と外資を平等な立場に置き、投資環境の透明性を高める」としている。

《SMBC日興証券/肖敏捷》
「このタイミングでの開放措置は背景にトランプ氏の存在がある。アメリカと海外企業の争奪戦とまではいかなくても、少なくとも中国も魅力的な投資先だとアピールすることが一番の狙いだ。米中貿易摩擦が激化するの必死ですので、避けて通れないので、トランプ氏は中国に市場開放を求めるだろう。うるさく言われる前に最初にやってしまおうと、先手を打ったのだろう。」

・ 「外資の上場可能に」について

--トランプ氏の存在で背中を押されたという格好で、先手を打ったということなんですけれども、これに関してはどういう見立てですか。

《野村総研/井上哲也氏》
「やはり中国は長期的に見た場合には非常に魅力的な市場ですから、企業にとってっ非常にメリットのある話ですね。ただもうちょっと前にやったほうがよかったですね。中国の景気がもっと良かった時にやれば、もっと企業を引き付けることができたかもしれないですね。短期的には少し残念なタイミングですね。」
 
 

■日経朝特急

「米国第一」を世界へ
20日に誕生するトランプ新政権についての記事。
 

残業、月60~80時間上限
政府は企業の残業時間に上限を導入する。月60~80時間を軸に検討する。現在は労働基準法の特別な条項を使えば事実上、青天井で従業員を残業させることが可能。これを改正して違反企業に対する罰則も設け、長時間労働是正につなげる。労使ともに働き方の大幅な見直しを迫られる。
 

主婦の就労支援へ保育料
厚生労働省は2018年度にも、シングルマザーや専業主婦などが子供を保育所に預けて職業訓練を受ける際に、北稜を支給制度を設ける。子ども1人当たり月額最大6万6000円もらえ、結婚や出産などで離職した主婦らが手に職をつけ就労しやすくする。労働市場の人手不足解消にもつながるとみている。
 

中国保有の米国国債、急減
中国保有の米国国債が減っている。去年11月末は10月末に比べ664億ドル減った1兆493億ドル(約120兆円)と6年ぶりの低水準となった。国別保有額では2ヵ月連続で日本に首位を譲った。去年の資金流出額は3053億ドルと過去最大を記録。中国人民銀行による人民元の買い支えが主因とみられる。
 

キリン、ブラジル撤退
キリンがブラジルのビール事業から撤退。キリンホールディングスは、業績低迷が続く子会社のブラジルキリンをオランダのハイネケンに年内にも約1000億円で売却する。再生に向け他社との提携を模索していたが、一括売却に切り替える。キリンは今後、成長が期待できるアジア・オセアニアに海外事業を集中する。
 



■日刊モーサテジャーナル

世界の気温が3年連続で過去最高
ニューヨークタイムとワシントンポストは、去年、地球全体の年間気温が過去最高を記録したとして、止まらない地球温暖化に危機感を表している。世界の平均気温が20世紀半ばの平均と比べどれだけ高いか低いかを示したグラフ、去年は2月3月と1度以上高くなった。地球全体の平均気温は3年連続で過去最高を更新。ニューヨークタイムによると、3年連続は初めてで、記事は、「大きな変化が起きている兆しだ」との専門家の声を紹介している。またワシントンポストは、「パリ協定が気温上昇を抑える重要な一歩となるはずだったが、温暖化はでっち上げだとの独自の考えを掲げるトランプ大統領の誕生で不透明な状況に陥った」、と今後の温暖化対策を不安視している。
 

ネットフリックス好業績、海外会員の増加がけん引
有料動画配信サービス世界最大手のネットフリックスが18日に発表した決算は増収増益、けん引役は海外の会員数の急増だ、とウォールストリート・ジャーナルなどが伝えている。16年10-12月期の決算は前年比、売上高24億7754万ドル(↑36%、純利益6674万ドル(↑55%)。
またねとふりっくすが力を入れてきた海外での会員数は去年12ヵ月末までの3か月で↑512万人。米国を含む世界全体で700万人増えるなど、四半期ベースで最高の伸びを記録した。ネットフリックスは、世界でインターネットテレビの時代が到来したことの表れだとしている。
 

ドイツ銀行、ボーナス削減
住宅ローン担保証券の不正販売をめぐり経営危機に揺らぐドイツ最大の金融機関ドイツ銀行が、管理職以上を対象にボーナス削減を決めたことについて、フィナンシャルタイムズなどが報じている。ボーナス削減の影響を受けるのは、従業員約10万人の25%、ボーナス削減の額などは明らかになっていないが、関係者の話によると、従業員への報酬が2015年比で数億ドル削減できる見込みだという。
 

・ 世界の気温上昇中、目をつぶるトランプ政権

--地球温暖化は本当に気になるんですけれども、トランプ大統領誕生になると、その対策は本当に不透明ですか。

《野村総研/井上哲也氏》
「そうですね。もともと信じないと仰っていたし、それから規制緩和を進めようとされているので、その点ではこれは対立してしまうわけですよね。

--規制緩和を進めるとどういう影響が出るんですか。

《井上氏》 「特にやっぱりエネルギー産業の規制緩和をトランプさんは非常に重視している。ですからパイプラインを作ったりだとか、シェールの開発なを進めるなど。環境に対して若干負荷がかかるような規制緩和ということになりますよね。」
 


■今日の予定

通常国会召集
中国、16年10-12月期GDP
中国、16年12月小売り売上高
米大統領就任式
米決算(GE)
 


■ニュース

米 次期財務長官 「長期的な観点から強いドル重要」
トランプ次期政権の為替政策に注目が集まる中、次の財務長官に指名されたムニューチン氏は19日「長期的な観点から強いドルは重要だ」と明言しました。議会上院で開かれた公聴会に出席したムニューチン氏はこのように述べるとともに「ドルは、長期にわたり最も魅力的な通貨であり続けている」との見方を強調しました。トランプ次期大統領がアメリカの新聞とのインタビューの中でドル高に対する懸念を表明したことについて、ムニューチン氏は「短期的なことについての言及だ」と説明しました。
 
 
ECB 金融政策を現状維持
ECB=ヨーロッパ中央銀行は19日開いた理事会で、金融政策の現状維持を決めました。原油相場の回復を背景に物価上昇率の伸びが拡大しているものの、今後の行方を慎重に見極めたい考えです。ECBは政策金利を過去最低のゼロ%、そして、金融機関がECBに余剰資金を預けた時に課される中銀預入金利をマイナス0.4%にそれぞれ据え置きました。また、今年の年末まで実施期間を延長した量的緩和政策をめぐって、ECBは、「必要であれば、今年の年末以降も量的緩和を続ける」との考えを表明しました。一方、イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱による影響について、理事会終了後に記者会見したドラギ総裁は「判断するのは時期尚早と述べる」にとどめました。
 
 
米住宅着工↑11% 予想上回る
アメリカの去年12月の住宅着工件数は、122万6,000戸と、前の月より11.3%増加し、市場予想を上回りました。一戸建てが減ったものの、集合住宅は50%を超える増加となりました。一方、先行指標とされる住宅着工許可件数は、0.2%減少しました。

・ 2016年12月住宅着工件数(前月比):1戸建て・↓4.0%、集合住宅・↑57.3%。
・ 2016年12月住宅着工許可件数(前月比):↓0.2%。
 
 
フィラデルフィア連銀指数 製造業景況感 予想超える改善
フィラデルフィア連銀が19日発表した1月の製造業景気指数は23.6で、前の月から大きく上昇しました。また、市場予想を上回りました。このほか、6ヵ月先の見通しを示す指数も前の月から大幅に上昇しました。
 
 
東芝 政策投資銀に支援要請
アメリカの原発事業の影響で多額の損失が見込まれる東芝は、日本政策投資銀行に金融支援を要請したことがわかりました。東芝の原発事業の損失額は最大7,000億円規模に膨らむ可能性があり、負債が資産を上回る債務超過に陥る恐れが出ています。東芝は、日本政策投資銀行への支援要請に続き、きのう、三井住友銀行などの主力取引銀行に対して損失状況を説明し、事業売却などの自助努力を前提に支援を要請しました。株式市場では不安が広がり、東芝株が急落。終値は242円と去年の5月以来の安値となりました。東芝は今月中に損失額を確定する見込みで2月中旬の決算発表で状況を詳しく説明すると見られます。
 
 
星野リゾート バリ島に高級宿泊施設
高級旅館やホテルを運営する星野リゾートはきょう、インドネシアのバリ島に『星のやバリ』をオープンします。星野リゾートが施設の企画から運営まで手がけるのは、海外では今回が初めてです。およそ3ヘクタールの敷地には運河を模したプールが3つあり、全ての宿泊施設から直接入ることができます。また、客室にはバリ彫刻が施されるなど「文化リゾート」として楽しめるのが特徴です。年々、外国人観光客の数が増えているバリ島で、星野リゾートは日本旅館を運営するノウハウを持ち込んで勝負したい考えです。
 
 
日生 3時間半勤務を導入
日本生命保険は、介護や育児中の営業職員を対象に、1日の労働時間をフルタイムの半分の3時間半にする新たな勤務形態を4月に導入します。新制度では原則として午前9時から午後1時半までの間で勤務します。組織で営業活動を支援するため、報酬は平均的にみて新制度前の85%ほどを確保できるとしています。労働環境を改善することで優秀な人材の確保を狙います。
 
 
菅長官 アップルの研究施設を視察
菅官房長官はきのう、アメリカのアップルが去年12月に横浜市に設立した研究開発拠点を視察しました。新施設はアップル初のアジア地域の研究施設で、今年度中の稼働を目指しています。菅長官は、海外企業の対日投資額を2020年に35兆円にするという目標に向けて、法人税率の引き下げなど、今後も投資環境の整備を進める考えを改めて強調しました。
 
 
富士フイルム 高画質ミラーレスデジカメ発売へ
富士フイルムは、高画質なミラーレスデジタルカメラ「GFX50S」を2月下旬に発売すると発表しました。画像センサーは、「35ミリフルサイズ」のおよそ1・7倍の大きさになる「中判」を採用し、小さいボディーでも高い表現力を実現しました。富士フイルムはGFXなどの投入で、デジタルカメラ事業の売り上げを今後、3割程度引き上げる考えです。
 

米トランプ次期大統領 就任目前のトランプ氏 支持率低迷
トランプ氏は20日、首都ワシントンで開かれる就任式で第45代のアメリカ大統領に正式に就任します。支持率は記録的な低水準で、大規模なデモが計画されるなど歓迎ムードとはほど遠い状況です。トランプ氏は19日、大統領専用機で家族とともにワシントンに到着しました。トランプ氏は先ほど、アーリントン墓地で戦没者に献花するなど、就任式前日の行事をこなしています。20日の就任演説でトランプ氏は貿易問題や雇用の創出など具体的な課題に触れる見通しで大統領報道官に就くスパイサー氏は「非常に前向きな演説になる」との見通しを示しました。またトランプ氏は就任初日に4つか5つの分野で大統領令を発令する方針でTPP=環太平洋経済連携協定からの離脱や不法移民対策などを発表する可能性があります。こうしたなかトランプ氏の就任前の支持率は43%と、近年で最も低くなっています。また就任式に合わせたデモがワシントン市内でおよそ100件計画されています。
 
 
駐韓大使の帰任 見送り
安倍総理大臣は岸田外務大臣と韓国で慰安婦を象徴する少女像が設置されたことへの対応について協議し、一時帰国している韓国駐在の長嶺大使の帰任を当面、見送る方向となりました。政府関係者は、「韓国側に変化がなく、日本から先に動く必要はない」として、今後、韓国の対応を見極め、帰任の時期を検討するとしています。
 
 
新千歳で全日空機オーバーラン
きのう北海道の新千歳空港で、全日空の旅客機が着陸時に滑走路を外れて、積った雪の中で停止しました。この旅客機には乗客・乗員合わせて25人が乗っていましたが、けが人はいませんでした。国の運輸安全委員会は、事故につながりかねない「重大インシデント」と認定し、調査官5人を現地に派遣しました。
 


■【コメンテーター】野村総研/井上哲也氏

・ トランポノミクス・いよいよ始動へ

--いよいよトランプ氏が大統領に就任しますが、井上さんは最近ニューヨークに行かれてFRBやマーケット関係者とお会いしてきたと・・・。どういった点に一番関心を持っていましたか。

「今日は政治的な話が多いと思いますけれども、経済政策としてみた場合には、法人税と個人所得税の減税、それから通商政策、インフラ投資、この3本は見ておく必要があると皆さんが仰っていました。」

--税制改正は議会とは一致しているところですね。

「共和党は去年6月に詳細な案を発表しているんですけれども、それはトランプ氏が9月に発表したものとほぼ一体ですので、これはたぶん議会対策もそんなに必要なく通るのではないか、という感覚を持っておられますね。」

--そうなると効果としてはどうみればいいですか。

「まだなかなか細かい所が決まっていないので難しい所があるが、ブルッキングス(研究所)によると、ピーク時には1%以上、GDPを押し上げるとの試算を出している。ちょっとそれは大きいかなという話もありましたけれども、それなりに大きな効果を持つだろうという話はありましたね。」
 
 

・ 今日の経済視点 「望ましいドル相場?」

「やはり放っておくとどんどんドル高になってしまうわけですけれども、アメリカはそんなにドル高が進むと困るわけですよね。せっかくアメリカ企業を国内に戻そうとしているわけなので。それから中国を含む新興国もあまりドル高で自国通貨安が進むと、資本流出がしてしまうのでそれも困りますね。今まではそれに対して、日本とヨーロッパは自国通貨安を望んでいたわけなんですけれども、ヨーロッパがちょっと微妙に変化してきているかなというところがありますよね。ドイツのインフレが上がってきたり、イタリアの問題が起こったりということで、ユーロ安がどんどん進むのはどうかなという意見が出てくる。そうすると円安を望んでる、自国通貨安を望んでる、あるいはドル高を望んでいるのは日本だけかなというふうに見えるところもあります。」

--今仰ったユーロ圏でもドイツとイタリアでは環境が違うわけですね。

「ドイツはインフレが過熱するのが嫌だから、もうユーロ安はやめてほしいと・・・。イタリアはあまりユーロ安が進むと自国から資本が流出してしまうという問題があります。今までは日本と同じように、デフレから脱却するために、ユーロ安がいいね、と言っていたわけですけれども、ちょっと変わってきたかもしれない。」