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第百九十三回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

2017年01月20日 19時17分09秒 | 特集
平成29年1月20日
第百九十三回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説

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 まず冒頭、天皇陛下の御公務の負担軽減等について申し上げます。現在、有識者会議で検討を進めており、近々論点整理が行われる予定です。静かな環境の中で、国民的な理解の下に成案を得る考えであります。

一 はじめに

 昨年末、オバマ大統領と共に、真珠湾の地に立ち、先の大戦で犠牲となった全ての御霊(みたま)に、哀悼の誠を捧げました。
 我が国では、三百万余の同胞が失われました。数多(あまた)の若者たちが命を落とし、人々の暮らし、インフラ、産業はことごとく破壊されました。
 明治維新から七十年余り経った当時の日本は、見渡す限りの焼け野原。そこからの再スタートを余儀なくされました。
 しかし、先人たちは決して諦めなかった。廃墟と窮乏の中から敢然と立ち上がり、次の時代を切り拓きました。世界第三位の経済大国、世界に誇る自由で民主的な国を、未来を生きる世代のため創り上げてくれました。
 戦後七十年余り。今を生きる私たちもまた、立ち上がらなければならない。「戦後」の、その先の時代を拓くため、新しいスタートを切る時です。
 少子高齢化、デフレからの脱却と新しい成長、厳しさを増す安全保障環境。困難な課題に真正面から立ち向かい、未来を生きる世代のため、新しい国創りに挑戦する。今こそ、未来への責任を果たすべき時であります。
 私たちの子や孫、その先の未来、次なる七十年を見据えながら、皆さん、もう一度スタートラインに立って、共に、新しい国創りを進めていこうではありませんか。

二 世界の真ん中で輝く国創り

(日米同盟)
 かつて敵として熾烈に戦った日本と米国は、和解の力により、強い絆(きずな)で結ばれた同盟国となりました。
 世界では今なお争いが絶えません。憎しみの連鎖に多くの人々が苦しんでいます。その中で、日米両国には、寛容の大切さと和解の力を示し、世界の平和と繁栄のため共に力を尽くす責任があります。
 これまでも、今も、そしてこれからも、日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸である。これは不変の原則です。できる限り早期に訪米し、トランプ新大統領と同盟の絆(きずな)を更に強化する考えであります。
 先月、北部訓練場、四千ヘクタールの返還が、二十年越しで実現しました。沖縄県内の米軍施設の約二割、本土復帰後、最大の返還であります。地位協定についても、半世紀の時を経て初めて、軍属の扱いを見直す補足協定が実現しました。
 更に、学校や住宅に囲まれ、市街地の真ん中にあり、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の全面返還を何としても成し遂げる。最高裁判所の判決に従い、名護市辺野古沖への移設工事を進めてまいります。
 かつて、「最低でも」と言ったことすら実現せず、失望だけが残りました。威勢のよい言葉だけを並べても、現実は一ミリも変わりません。必要なことは、実行です。結果を出すことであります。
 安倍内閣は、米国との信頼関係の下、抑止力を維持しながら、沖縄の基地負担軽減に、一つひとつ結果を出していく決意であります。

(地球儀を俯瞰(ふかん)する外交)
 本年は、様々な国のリーダーが交代し、大きな変化が予想されます。先の見えない時代において、最も大切なこと。それは、しっかりと軸を打ち立て、そして、ぶれないことであります。
 自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する。
 ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携え、アジア、環太平洋地域から、インド洋に及ぶ、この地域の平和と繁栄を確固たるものとしてまいります。
 自由貿易の旗手として、公正なルールに基づいた、二十一世紀型の経済体制を構築する。
 TPP協定の合意は、そのスタンダードであり、今後の経済連携の礎となるものであります。日EU・EPAのできる限り早期の合意を目指すとともに、RCEPなどの枠組みが野心的な協定となるよう交渉をリードし、自由で公正な経済圏を世界へと広げます。
 継続こそ力。就任から五年目を迎え、G7諸国のリーダーの中でも在職期間が長くなります。五百回以上の首脳会談の積み重ねの上に、地球儀を大きく俯瞰(ふかん)しながら、ダイナミックな平和外交、経済外交を展開し、世界の真ん中でその責任を果たしてまいります。

(近隣諸国との関係改善)
 日本海から東シナ海、南シナ海に至る地域では緊張が高まり、我が国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。地域の平和と安定のため、近隣諸国との関係改善を積極的に進めてまいります。
 ロシアとの関係改善は、北東アジアの安全保障上も極めて重要です。しかし、戦後七十年以上経っても平和条約が締結されていない、異常な状況にあります。
 先月、訪日したプーチン大統領と、問題解決への真摯な決意を共有しました。元島民の皆さんの故郷(ふるさと)への自由な訪問やお墓参り、北方四島全てにおける「特別な制度」の下での共同経済活動について、交渉開始で合意し、新たなアプローチの下、平和条約の締結に向けて重要な一歩を踏み出しました。
 この機運に弾みをつけるため、本年の早い時期にロシアを訪問します。七十年以上動かなかった領土問題の解決は容易なことではありませんが、高齢である島民の皆さんの切実な思いを胸に刻み、平和条約締結に向け、一歩でも、二歩でも、着実に前進していきます。
 本年、日中韓サミットを我が国で開催し、経済、環境、防災など幅広い分野で、地域レベルの協力を強化します。
 韓国は、戦略的利益を共有する最も重要な隣国です。これまでの両国間の国際約束、相互の信頼の積み重ねの上に、未来志向で、新しい時代の協力関係を深化させてまいります。
 中国の平和的発展を歓迎します。地域の平和と繁栄に大きな責任を有することを、共に自覚し、本年の日中国交正常化四十五周年、来年の日中平和友好条約締結四十周年という節目を迎える、この機を捉え、「戦略的互恵関係」の原則の下、大局的な観点から、共に努力を重ね、関係改善を進めます。
 北朝鮮が昨年、二度にわたる核実験、二十発以上の弾道ミサイル発射を強行したことは、断じて容認できません。安保理決議に基づく制裁に加え、関係国と協調し、我が国独自の措置も実施しました。「対話と圧力」、「行動対行動」の一貫した方針の下、核、ミサイル、そして引き続き最重要課題であり、発生から長い年月が経つ拉致問題の包括的な解決に向け、北朝鮮が具体的な行動を取るよう強く求めます。

(積極的平和主義)
 真新しい国旗を手に、誇らしげに入場行進する選手たち。
 南スーダン独立後、初めての全国スポーツ大会には、異なる地域から、異なる民族の選手たちが一堂に会しました。
 その会場の一つとなる、穴だらけだったグラウンドに、一千個を超えるコンクリートブロックを、一つひとつ手作業で埋め込んだのは、日本の自衛隊員たちです。
 最終日、サッカー決勝は、奇(く)しくも、政治的に対立する民族同士の戦い。しかし、選手も、観客も、フェアプレーを貫きました。終了後には、勝利した側の選手が、負けた側の選手の肩を抱き、互いの健闘を称(たた)えあう光景が、そこにはありました。
 幼い息子さんを連れて観戦に来ていたジュバ市民の一人は、その姿に感動し、こう語っています。
 「毎日、スポーツが行われるような平和な国になってほしい。」
 隊員たちが造ったのは、単なるグラウンドではありません。平和を生み出すグラウンドであります。自衛隊の活動一つひとつが、間違いなく、南スーダンの自立と平和な国創りにつながっている。
 灼熱(しゃくねつ)のアデン湾では、今この時も、海賊対処に当たる隊員諸君がいます。三千八百隻を上回る世界の船舶を護衛してきました。
 平和のため黙々と汗を流す自衛隊の姿を、世界が称賛し、感謝し、頼りにしています。与えられた任務を全力で全うする彼らは、日本国民の誇りであります。
 テロ、難民、貧困、感染症。世界的な課題は深刻さを増しています。こうした現実から、我が国だけが目を背けるようなことは、あってはなりません。今こそ、「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、世界の平和と繁栄のため、皆さん、能(あた)う限りの貢献をしていこうではありませんか。

三 力強く成長し続ける国創り

(「壁」への挑戦)
 昨年、大隅良典栄誉教授がノーベル医学・生理学賞を受賞し、三年連続で日本人がノーベル賞を獲得。世界の真ん中で輝く姿に、「やれば、できる」。日本全体が、大きな自信と勇気をもらいました。
 「未来は『予言』できない。しかし、『創る』ことはできる。」
 ノーベル賞物理学者、デニス・ガボールの言葉です。
 五年前、日本には、根拠なき「未来の予言」があふれていました。「人口が減少する日本は、もう成長できない」、「日本は、黄昏(たそがれ)を迎えている」。不安を煽る悲観論が蔓延していました。
 まさにデフレマインド、「諦め」という名の「壁」が立ちはだかり、政権交代後も、「アベノミクスで成長なんかできない」。私たちの経済政策には、批判ばかりでありました。
 しかし、日本はまだまだ成長できる。その「未来を創る」ため、安倍内閣は、この四年間、三本の矢を放ち、「壁」への挑戦を続けてきました。
 その結果、名目GDPは四十四兆円増加。九%成長しました。中小・小規模事業者の倒産は二十六年ぶりの低水準となり、政権交代前と比べ三割減らすことに成功しました。
 長らく言葉すら忘れられていた「ベースアップ」が三年連続で実現しました。史上初めて、四十七全ての都道府県で有効求人倍率が一倍を超えました。全国津々浦々で、確実に「経済の好循環」が生まれています。
 格差を示す指標である相対的貧困率が足元で減少しています。特に子どもの相対的貧困率は二%減少し、七・九%。十五年前の調査開始以来一貫して増加していましたが、安倍内閣の下、初めて減少に転じました。
 「出来ない」と思われていたことが次々と実現できた。かつての悲観論は完全に間違っていた。そのことを、私たち自公政権は証明しました。
 この「経済の好循環」を更に前に進めていく。今後も、安定した政治基盤の下、力を合わせ、私たちの前に立ちはだかる「壁」を、次々と打ち破っていこうではありませんか。

(中小・小規模事業者への好循環)
 景気回復の風を、更に、全国津々浦々、中小・小規模事業者の皆さんにお届けする。
 先月、五十年ぶりに、下請代金の支払いについて通達を見直しました。これまで下請事業者の資金繰りを苦しめてきた手形払いの慣行を断ち切り、現金払いを原則とします。近年の下請けいじめの実態を踏まえ、下請法の運用基準を十三年ぶりに抜本改定しました。今後、厳格に運用し、下請取引の条件改善を進めます。
 四月から、成長の果実を活かし、雇用保険料率を引き下げます。これにより、中小・小規模事業者の負担を軽減し、働く皆さんの手取りアップを実現します。更に、賃上げに積極的な事業者を、税額控除の拡充により後押しします。
 生産性向上のため、今後二年間の設備投資には、固定資産税を三年間半減する。この仕組みを、製造業だけでなく、小売・サービス業にも拡大することで、商店街などにおいても攻めの投資を促します。

(地方創生)
 一日平均、二十人。人影が消え、シャッター通りとなった岡山の味野(あじの)商店街は、その「壁」に挑戦しました。
 地場の繊維産業を核に、商店街、自治体、商工会議所が一体で、「児島ジーンズストリート」を立ち上げました。三十店を超えるジーンズ店が軒を並べ、ジーンズ柄で構内がラッピングされた駅からは、ジーンズバスやジーンズタクシーが走ります。
 まさに「ジーンズの聖地」。今や、年間十五万人を超える観光客が集まる商店街へ生まれ変わりました。評判は海外にも広がり、アジアからの外国人観光客も増えています。
 地方には、それぞれの魅力、観光資源、ふるさと名物があります。それを最大限活かすことで、過疎化という「壁」も必ずや打ち破ることができるはずです。
 自分たちの未来を、自らの創意工夫と努力で切り拓く。地方の意欲的なチャレンジを、自由度の高い「地方創生交付金」によって、後押しします。
 地方の発意による、地方のための分権改革を進めます。空き家や遊休地の活用に関する制限を緩和し、自治体による有効利用を可能とします。
 故郷(ふるさと)への情熱を持って、地方創生にチャレンジする。そうした地方の皆さんを、安倍内閣は、全力で応援します。

(観光立国)
 一千万人の「壁」。政権交代前、外国人観光客は、年間八百万人余りで頭打ちとなっていました。
 安倍内閣は、その「壁」を、僅か一年で突破しました。四年連続で過去最高を更新し、昨年は、三倍の二千四百万人を超えました。
 日本を訪れる外国クルーズ船は、僅か三年で四倍に増加。秋田港で竿燈(かんとう)まつり、青森港でねぶた祭、徳島小松島港で阿波おどり、各地自慢の祭りを巡る外国のクルーズツアーが企画されるなど、地方に大きなチャンスが生まれています。
 民間資金を活用し、国際クルーズ拠点の整備を加速します。港湾法を改正し、投資を行う事業者に、岸壁の優先使用などを認める新しい仕組みを創設します。
 沖縄はアジアとの架け橋。我が国の観光や物流のゲートウェイです。新石垣空港では、昨年、香港からの定期便の運航が始まり、外国人観光客の増加に沸いています。機材の大型化に対応するための施設整備を支援します。
 全国の地方空港で、国際定期便の就航を支援するため、着陸料の割引、入国管理等のインフラ整備を行います。羽田、成田両空港の二〇二〇年四万回の容量拡大に向け、羽田空港では新しい国際線ターミナルビルの建設に着手します。
 いわゆる「民泊」の成長を促すため、規制を改革します。衛生管理などを条件に、旅館業法の適用を除外することで、民泊サービスの拡大を図ります。
 あらゆる政策を総動員して、次なる四千万人の高みを目指し、観光立国を推し進めてまいります。

(農政新時代)
 地方経済の核である農業では、高齢化という「壁」が立ちはだかってきました。平均年齢は六十六歳を超えています。
 しかし、攻めの農政の下、四十代以下の新規就農者は二年連続で増加し、足元では、統計開始以来最多の二万三千人を超えました。生産農業所得も、直近で年間三兆三千億円、過去十一年で最も高い水準まで伸びています。
 更なる弾みをつけるため、八本に及ぶ農政改革関連法案を、今国会に提出し、改革を一気に加速します。
 農業版の「競争力強化法」を制定します。肥料や飼料を一円でも安く仕入れ、農産物を一円でも高く買ってもらう。そうした農家の皆さんの努力を後押しするため、生産資材や流通の分野で、事業再編、新規参入を促します。委託販売から買取販売への転換など、農家のための全農改革を進めます。数値目標の達成状況を始め、その進捗をしっかりと管理してまいります。
 牛乳や乳製品の流通を、事実上、農協経由に限定している現行の補給金制度を抜本的に見直し、生産者の自由な経営を可能とします。
 農地バンクの下、農地の大規模化を進めます。世界のマーケットを目指し、生産行程や流通管理の規格化、JETROの世界ネットワークを活用したブランド化を展開し、競争力を強化します。
 農政改革を同時並行で一気呵(か)成に進め、若者が農林水産業に自分たちの夢や未来を託することができる「農政新時代」を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。

(イノベーションを生み出す規制改革)
 チャレンジを阻む、あらゆる「壁」を打ち破ります。イノベーションを次々と生み出すための、研究開発投資、そして規制改革。安倍内閣は、三本目の矢を、次々と打ち続けます。
 医療情報について、匿名化を前提に利用可能とする新しい仕組みを創設します。ビッグデータを活用し、世界に先駆けた、新しい創薬や治療法の開発を加速します。
 人工知能を活用した自動運転。その未来に向かって、本年、各地で実証実験が計画されています。国家戦略特区などを活用して、自動運転の早期実用化に向けた民間の挑戦を後押しします。
 民間の視点に立った行政改革も進めます。長年手つかずであった各種の政府統計について、一体的かつ抜本的な改革を行います。
 本年四月からガスの小売りを完全に自由化します。昨年の電力自由化と併せ、多様なサービスのダイナミックな展開と、エネルギーコストの低廉化を実現します。
 水素エネルギーは、エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札です。これまでの規制改革により、ここ日本で、未来の水素社会がいよいよ幕を開けます。三月、東京で、世界で初めて、大容量の燃料電池を備えたバスが運行を始めます。来年春には、全国で百か所の水素ステーションが整備され、神戸で水素発電による世界初の電力供給が行われます。
 二〇二〇年には、現在の四十倍、四万台規模で燃料電池自動車の普及を目指します。世界初の液化水素船による大量水素輸送にも挑戦します。生産から輸送、消費まで、世界に先駆け、国際的な水素サプライチェーンを構築します。その目標の下に、各省庁にまたがる様々な規制を全て洗い出し、改革を進めます。

四 安全・安心の国創り

(被災地の復興)
 再生可能エネルギーから大規模に水素を製造する。最先端の実証プロジェクトが、福島で動き出しました。
 南相馬では、町工場の若い後継者たちが力を合わせ、災害時に水中調査を行うロボットを開発しました。その一人、金型工場の二代目、渡邉光貴(こうき)さんが、強い決意を私に語ってくれました。
 「南相馬が『ロボットの町』と言われるよう、若い力で頑張る。」
 原発事故により大きな被害を受けた浜通り地域は、今、世界最先端の技術が生まれる場所になろうとしています。
 福島復興特措法を改正し、イノベーション・コースト構想を推し進めます。官民合同チームの体制を強化し、生業(なりわい)の復興を加速します。
 今年度中に、帰還困難区域を除き、除染が完了します。廃炉、賠償等を安定的に実施することと併せ、二〇二〇年には身近な場所から仮置き場をなくせるよう、中間貯蔵施設の建設を急ぎます。帰還困難区域でも、復興拠点を設け、五年を目途に避難指示解除を目指し、国の負担により除染やインフラ整備を一体的に進めます。
 東北三県では、来年春までに、九十五%を超える災害公営住宅が完成し、高台移転も九割で工事が完了する見込みです。農業、水産業、観光業など、生業(なりわい)の復興を力強く支援します。
 熊本地震以来通行止めとなっていた、俵山トンネルを含む熊本高森線が先月開通し、日本が誇る観光地・阿蘇へのアクセスが大きく改善しました。今後、熊本空港ターミナルビルの再建、更には「復興のシンボル」である熊本城天守閣の早期復旧を、国として全力で支援してまいります。

(国土の強靱(じん)化)
 昨年の台風十号では、岩手の岩泉町で、避難が遅れ、九名の高齢者の方々が川の氾濫の犠牲となりました。現場に足を運び、御冥福をお祈りするとともに、再発防止への決意を新たにしました。
 水防法を抜本的に改正します。介護施設、学校、病院など避難に配慮が必要な方々がいらっしゃる施設では、避難計画の作成、訓練の実施を義務化します。中小河川も含め、地域住民に水災リスクが確実に周知されるようにします。
 治水対策の他、水害や土砂災害への備え、最先端技術を活用した老朽インフラの維持管理など、事前防災・減災対策に徹底して取り組み、国土強靱(じん)化を進めます。

(生活の安心)
 糸魚川の大規模火災で被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。一日も早い生活再建、事業再開に向け、国も全力で支援してまいります。
 お年寄りなどを狙った悪質業者が後を絶ちません。被害者の救済を消費者団体が代わって求める新しい訴訟制度が、昨年スタートしました。これを国民生活センターがバックアップする仕組みを整え、より迅速な救済を目指します。
 三年後に迫ったオリンピック・パラリンピックを必ず成功させる。サイバーセキュリティ対策、テロなど組織犯罪への対策を強化します。受動喫煙対策の徹底、ユニバーサルデザインの推進、多様な食文化への対応など、この機を活かし、誰もが共生できる街づくりを進めます。
 昨年七月、障害者施設で何の罪もない多くの方々の命が奪われました。決してあってはならない事件であり、断じて許せません。精神保健福祉法を改正し、措置入院患者に対して退院後も支援を継続する仕組みを設けるなど、再発防止対策をしっかりと講じてまいります。

五 一億総活躍の国創り

 障害や難病のある方も、女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した方も、誰もが生きがいを持って、その能力を存分に発揮できる社会を創る。
 一億総活躍の「未来」を切り拓くことができれば、少子高齢化という課題も必ずや克服できるはずです。
 しかし、家庭環境や事情は、人それぞれ異なります。何かをやりたいと願っても、画一的な労働制度、保育や介護との両立など様々な「壁」が立ちはだかります。こうした「壁」を一つひとつ取り除く。これが、一億総活躍の国創りであります。

(働き方改革)
 最大のチャレンジは、一人ひとりの事情に応じた、多様で柔軟な働き方を可能とする、労働制度の大胆な改革。働き方改革です。
 アベノミクスによって、有効求人倍率は、現在、二十五年ぶりの高い水準。この三年間ずっと一倍を上回っています。正規雇用も一昨年増加に転じ、二十四か月連続で前年を上回る勢いです。雇用環境が改善する中、民間企業でも、定年延長や定年後も給与水準を維持するなど、前向きな動きが生まれています。
 雇用情勢が好転している今こそ、働き方改革を一気に進める大きなチャンスです。三月に実行計画を決定し、改革を加速します。
 同一労働同一賃金を実現します。昇給の扱いが違う、通勤などの各種手当が支給されない、福利厚生や研修において扱いが異なるなど、不合理な待遇差を個別具体的に是正するため、詳細なガイドライン案を策定しました。今後、その根拠となる法改正について、早期の国会提出を目指し、立案作業を進めます。
 一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働による過酷な状況の中、自ら命を絶ちました。御冥福を改めてお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速します。
 抽象的なスローガンを叫ぶだけでは、世の中は変わりません。重要なことは、何が不合理な待遇差なのか、時間外労働の限度は何時間なのか、具体的に定めることです。言葉だけのパフォーマンスではなく、しっかりと結果を生み出す働き方改革を、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。

(女性の活躍)
 「人は、幾つからでも、どんな状況からでも、再出発できる。」
 十六年間子育てに専念した後、リカレント教育を受け、再就職を果たした、島千佳さんの言葉です。役職にも就き、仕事に大変やりがいを感じているそうです。島さんは、笑顔で、私にこう語ってくれました。
 「子育ての経験をしたからこそ、今の職場で活かせることがたくさんある。」
 子育てや介護など多様な経験を持つ人たちの存在は、企業にとって大きなメリットを生み出すはずです。
 「百三万円の壁」を打ち破ります。パートで働く皆さんが、就業調整を意識せずに働くことができるよう、配偶者特別控除の収入制限を大幅に引き上げます。
 出産などを機に離職した皆さんの再就職、学び直しへの支援を抜本的に拡充します。復職に積極的な企業を支援する助成金を創設します。雇用保険法を改正し、教育訓練給付の給付率、上限額を引き上げます。子どもを託児所に預けながら職業訓練が受けられる、また、土日・夜間にも必要な講座を受講できるなど、きめ細かく、再就職支援の充実を図ります。

(成長と分配の好循環)
 保育や介護と、仕事の両立を図る。
 子育てを理由に仕事を辞めずに済むよう、育休給付の支給期間を最大二歳まで延長します。地方と連携し、子育て世帯に対する住宅ローン金利を引き下げ、三世代の近居や同居を支援します。
 「待機児童ゼロ」、「介護離職ゼロ」。その大きな目標に向かって、保育、介護の受け皿整備を加速します。国家戦略特区で実施してきた都市公園に保育園や介護施設の建設を認める規制緩和を全国展開します。
 人材を確保するため、来年度予算でも処遇改善に取り組みます。介護職員の皆さんには、経験などに応じて昇給する仕組みを創り、月額平均一万円相当の改善を行います。保育士の方々には、概ね経験三年以上で月五千円、七年以上で月四万円の加算を行います。
 加えて、全ての保育士の皆さんに二%の処遇改善を実施します。これにより、政権交代後、合計で十%の改善が実現いたします。他方で、あの三年三か月、保育士の方々の処遇は、改善するどころか、引き下げられていた。重要なことは、言葉を重ねることではありません。責任を持って財源を確保し、結果を出すことであります。安倍内閣は、言葉ではなく結果で、国民の負託に応えてまいります。
 年金受給資格期間を二十五年から十年に短縮します。消費税率引上げを延期した中でも、十月から、新しく六十四万人の方々に年金支給を開始します。自治体による国保の安定的な運営のため財政支援を拡充します。最低賃金が大きく上昇を続ける中、失業給付について、若い世代への支給期間を延長するなど改善を実施します。
 来年度予算では、政権交代前と比べ、国の税収は十五兆円増加し、新規の公債発行額は十兆円減らすことができました。こうしたアベノミクスの果実も活かし、「成長と分配の好循環」を創り上げてまいります。
 同時に、将来にわたり持続可能な社会保障制度を構築するため、改革の手も決して緩めません。
 薬価制度の抜本改革を断行します。二年に一回の薬価改定を毎年実施することとし、国民負担の軽減と医療の質の向上の両立を図ります。医療保険で、高齢者の皆さんが現役世代より優遇される特例に関し、一定の所得がある方については見直しを実施します。
 累次の改革が実を結び、かつて毎年一兆円ずつ増えていた社会保障費の伸びは、今年度予算に続き来年度予算においても、五千億円以下に抑えることができました。引き続き、経済再生と財政再建、社会保障改革の三つを同時に実現しながら、一億総活躍の未来を切り拓いてまいります。

六 子どもたちが夢に向かって頑張れる国創り

(個性を大切にする教育再生)
 我が国の未来。それは、子どもたちであります。
 子どもたち一人ひとりの個性を大切にする教育再生を進めます。
 先般成立した教育機会確保法を踏まえ、フリースクールの子どもたちへの支援を拡充し、いじめや発達障害など様々な事情で不登校となっている子どもたちが、自信を持って学んでいける環境を整えます。
 実践的な職業教育を行う専門職大学を創設します。選択肢を広げることで、これまでの単線的、画一的な教育制度を変革します。

(誰にでもチャンスのある教育)
 「邑(むら)に不学の戸なく、家に不学の人なからしめん」
 明治日本が、学制を定め、国民教育の理想を掲げたのは、今から百四十年余り前のことでした。
 それから七十年余り。日本国憲法が普通教育の無償化を定め、小・中学校九年間の義務教育制度がスタートしました。
 本年は、その憲法施行から七十年の節目であります。
 この七十年間、経済も、社会も、大きく変化しました。子どもたちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育もまた、全ての国民に真に開かれたものでなければなりません。学制の序文には、こう記されています。
 「学問は身を立(たつ)るの財本(もとで)ともいふべきもの」
 どんなに貧しい家庭で育っても、夢を叶(かな)えることができる。そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。
 高校生への奨学給付金を更に拡充します。本年春から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が、無利子の奨学金を受けられるようにします。返還についても卒業後の所得に応じて変える制度を導入することで、負担を軽減します。
 更に、返還不要、給付型の奨学金制度を、新しく創設いたします。本年から、児童養護施設や里親の下で育った子どもたちなど、経済的に特に厳しい学生を対象に、先行的にスタートします。来年以降、一学年二万人規模で、月二万円から四万円の奨学金を給付します。
 幼児教育についても、所得の低い世帯では、第三子以降に加え、第二子も無償とするなど、無償化の範囲を更に拡大します。
 全ての子どもたちが、家庭の経済事情にかかわらず、未来に希望を持ち、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。そうした日本の未来を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。

七 おわりに
 子や孫のため、未来を拓く。
 土佐湾でハマグリの養殖を始めたのは、江戸時代、土佐藩の重臣、野中兼山(けんざん)だったと言われています。こうした言い伝えがあります。
「美味しいハマグリを、江戸から、土産に持ち帰る。」
 兼山(けんざん)の知らせを受け、港では大勢の人が待ち構えていました。しかし、到着するや否や、兼山(けんざん)は、船いっぱいのハマグリを全部海に投げ入れてしまった。ハマグリを口にできず、文句を言う人たちを前に、兼山(けんざん)はこう語ったと言います。
 「このハマグリは、末代までの土産である。子たち、孫たちにも、味わってもらいたい。」
 兼山(けんざん)のハマグリは、土佐の海に定着しました。そして三百五十年の時を経た今も、高知の人々に大きな恵みをもたらしている。
 まさに「未来を拓く」行動でありました。
 未来は変えられる。全ては、私たちの行動にかかっています。
 ただ批判に明け暮れたり、言論の府である国会の中でプラカードを掲げても、何も生まれません。意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこうではありませんか。
 自らの未来を、自らの手で切り拓く。その気概が、今こそ、求められています。
 憲法施行七十年の節目に当たり、私たちの子や孫、未来を生きる世代のため、次なる七十年に向かって、日本をどのような国にしていくのか。その案を国民に提示するため、憲法審査会で具体的な議論を深めようではありませんか。
 未来を拓く。これは、国民の負託を受け、この議場にいる、全ての国会議員の責任であります。
 世界の真ん中で輝く日本を、一億総活躍の日本を、そして子どもたちの誰もが夢に向かって頑張ることができる、そういう日本の未来を、共に、ここから、切り拓いていこうではありませんか。
 御清聴ありがとうございました。
 

2017.1.20 Newsモーニングサテライト

2017年01月20日 17時12分08秒 | MS
■マーケット

NY株 そろって下落
19日のNY株式市場は午後に入り下げ幅を拡大。良好な経済指標など材料はあったものの、さすがに政策の先行きを確認するまでは動きにくいようです。20日の就任式でトランプ次期大統領が何を語り、どんな政策を打ち出すのか、市場の関心はそこに集中しています。次期財務長官のムニューチン氏が公聴会で「長期的なドルの強さは重要」と述べたことも材料視され為替も上下に動きました。良好な雇用や住宅指標を受け10年債利回りが年初来の高値水準となる2.5%に接近し、ドル買いを支えた面もあるようです。終値です。ダウは5日続落、72ドル安の1万9,732ドル。ナスダックは反落、15ポイント低下し5,540。S&P500も反落8ポイントマイナスの2,263でした。
 

【NY証券取引所中継】米住宅改善基調 続く
解説は三井住友アセットマネジメントNYの曽根良太氏

--今日はやはり買いの手が伸びませんね。

朝方発表された経済指標は堅調な内容でしたが、トランプ次期大統領の就任式をあすに控えて、一部で波乱含みが見込まれ、様子見姿勢が強まっており、主要3指数は軟調に推移しています。

--さて去年12月の住宅着工件数は強い数字でしたね。

前月が予想以上に減少していたため、金利上昇による影響が出るのか懸念していましたが、全体の数字は安心感があった。ただ中身を見ますと集合住宅の反動が全体を押し上げていて、主力である一戸建て住宅は2ヵ月連続で減少しております。

《2016年12月住宅着工件数(前月比)+11.3%》
・ 集合住宅 +57.3%
・ 一戸建て -4.0%(11月-4.6%)

--今後、金利上昇が懸念されている中で、影響はどうなんでしょうか。

そんなに心配しなくてもいいのではないか、と思っています。今日同時に発表された着工件数の先行指標となる2016年12月住宅着工件数は、一戸建て住宅は5ヵ月連続の増加と堅調に推移しています。着工件数は天候要因などで、単月でのブレが大きくなる傾向がありますが、今後緩やかな金利上昇にとどまれば、改善基調は続くと思います。
 
 

【NY証券取引所中継】シェール会社の思惑
解説は三井住友アセットマネジメントNYの曽根良太氏

--シェールオイル企業の増産懸念が最近、価格の重しになっているようなんですが、実際、増産はあるのでしょうか。

(フリップ:原油生産は増加)
はい、実際、足下でアメリカの原油生産は増加していることが確認できます。ただこの先は逆に生産調整が想定され、原油価格が底堅く動く可能性が高いと思っています。その理由は今後、損益分岐点の上昇が予想されるからです。損益分岐点の上昇は利益の減少を意味し、シェール会社としては採算が合わない生産を積極的に行うとは考えずらく、結果的に生産量の伸びが抑制され、価格を下支えする可能性があります。

--損益分岐点が上昇するのはどうしてですか。

それはコストの上昇が予想されるからです。最近、関連企業を取材したところ、井戸の仕上げに関する一部の費用が20%程度上昇しているということでした。シェール会社が実際の開発などを委託している油田サービス会社が、掘削リグの稼働数の増加傾向を理由に、強気に転じているそうです。

--ただOPECの減産が進んでいることは価格維持にはいい材料ですね。

はい、しかしOPEC以外の材料、例えばドル高、アメリカの原油在庫の増加、先物の買いポジションの積み上がりなど、多くがすべて弱気材料です。短期的には2月中旬には明らかになるOPECの生産量で、積極的な減産への取り組みが印象付けられないと、一時的に50ドル割れの可能性は高いと思います。
 


【為替見通し】注目ポイントは「強いドル」
解説は三菱東京UFJ銀行の平井邦行氏

--NY市場を振り返っていかがでしょうか。

はい、ECBのドラギ総裁が緩和スタンスの維持を表明する一方で、アメリカの次期財務長官ムニューチン氏が強いドルに言及したこともあって、ドルは対主要通貨で全面高の展開となり、ドル円も115円半ばまで上昇、その後は114円後半での取引となりました。

--今日の予想レンジは、114.50~115.50円です。

市場はNY時間のあすのトランプ次期大統領の就任式に注目しており、様子見気分が強くなっています。よって小幅な値動きを予想しています。

--そして今後の注目ポイントは「強いドル」です。

今年に入りドル円はいわゆるトランプ相場の調整が行われてきました。ただ次期政権の方針に大きな変更があったわけではなく、就任式を終えれば再び楽観論が台頭し、ドル円は上昇に転じると予想しています。
トランプ次期大統領のドルは高すぎるとした発言についても、昨日の次期商務長官のロス氏や本日のムニューチン氏の発言からするに、中国など一部特定の国に対して行ったもので、ドルの強さは変わらないとみています。それ以上に次期政権の減税策や好調な米国企業の決算を受けて、アメリカの金利は上昇していくとみており、結果として日米金利差は拡大、ドル円も120円を目指す展開になると予想しています。


【日本株見通し】注目ポイントは「日経平均とEPS」
解説はインベストラストの福永博之氏
 
--今日の予想レンジは18900円~19200円です。

今晩、トランプ新大統領の就任式が予定されているため、東京市場は様子見ムードが広がる可能性がありますが、日中に中国の10-12月のGDPや12月の鉱工業生産、小売売上高の発表が予定されておりますので、結果を受けて上下に振れることも考えられ、ちょっと注意しておきたいところですね。

--注目ポイントは「日経平均とEPS(1株当たり利益)」です。

(フリップ:企業収益の改善がカギ)
第3四半期の決算発表が始まる前の昨年末から、直近までの日経平均株価の1株当たりの水準を見てみますと、1180円を上回っていたところから、徐々に低下しているのが分かります。これは小売りなどの決算が冴えなかったことが要因として考えられますが、日経平均もEPSとほぼ連動する形で下落しています。そのためこれから本格化する決算発表を受け、EPSが上昇するかが注目ポイントです。また決算発表の後半で、輸出関連の製造業などがEPSの低下をリカバリーできるかも注目ポイントになると思われます。仮にEPSが上昇するようですと、日経平均株価も19000円を固めて上昇することが考えられる反面、さらにEPSが低下するようですと、日経平均株価の水準が切り下がり、18000円台前半まで下落することも考えられますので、注意が必要になるのではないかと思われます。
 
 

■【プロの眼】ECB理事会を読み解く

【ニュース】
ECB 金融政策を現状維持
ECB=ヨーロッパ中央銀行は19日開いた理事会で、金融政策の現状維持を決めました。原油相場の回復を背景に物価上昇率の伸びが拡大しているものの、今後の行方を慎重に見極めたい考えです。ECBは政策金利を過去最低のゼロ%、そして、金融機関がECBに余剰資金を預けた時に課される中銀預入金利をマイナス0.4%にそれぞれ据え置きました。また、今年の年末まで実施期間を延長した量的緩和政策をめぐって、ECBは、「必要であれば、今年の年末以降も量的緩和を続ける」との考えを表明しました。一方、イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱による影響について、理事会終了後に記者会見したドラギ総裁は「判断するのは時期尚早と述べる」にとどめました。

前回の会合は、単に資産買入れを本年末まで続けると決めた重要な会合だったということでなく、今後の政策を展望する上で大事なヒントをくれるものだった。ただ、資産買入れを展望するための要素は明らかになったが、結論はむしろ不透明さを増したように思える。その意味では、資産買入れの「検証」に際してECBや各国中央銀行が行った調査や分析のエッセンスを順次公表して欲しい。日銀の「総括的検証」ではそれが実現したし、外部から見て有用だった。解説は野村総研の井上哲也氏。

--今回も・・・となるのかもしれませんが、やっぱり意見がずいぶん分かれたみたいですね。

「そうですね。もともとはドイツ対それ以外の対立だったわけですが、今回はイタリアのような問題国が量的緩和を大規模に続けてほしいという主張し出したので、3方に分かれてしまったという感じがありますね。」

--より複雑に意見が分かれてしまっているという状態ですね。そういう中でドラギ総裁がとにかく言い続けたのは、忍耐しろということですか。

「そうですね。12月のインフレ率が非常に上がりましたので、ドイツなどは量的緩和をそろそろやめてほしいというぐらいの意見になっているわけですね。でもやはりヨーロッパ全体のことを考えると続けていかなければならないので、ドイツの人たちもちょっと我慢してね、という感覚だったですね。」

--その忍耐問言葉に、今の難しさが表れていると思うんですが、いわゆる物価の上昇というものもさることながら、そもそも国債の買い入れも厳しくなってきているということですね。それが12月の議事要旨を見ると、より分かるということですね。

(フリップ1:クーレ理事が明言)
「先週公表されたんですけど、ちょっと面白かったですね。執行部側からクーレさんが説明されたわけなんですけれども、前回決めたのは、今年の4月から買い入れペースを800から600に落とすという話ですね。一部の人たちは800を続けて欲しいと言っていたわけですけれども、800を続けると買い入れ対象を拡大してもどこかでもう持たなくなりますよ、とハッキリと言っていましたね。」

--明言していると・・・。しかも(預金ファシリティ金利)マイナス4%以下の債券というのを既に買い入れ始めてしまっている・・・。

「ええ、報道によると、もう買い入れ始めたのではないかと・・・。これはもともと本当はバッファーとして取っておきたかった部分なんですけれども、もう既に買ってしまっているんじゃないかという議論が出ていますね。」

--ですからそれだけ追い詰められていることは間違いない・・・。

「ええ、やっぱり皆さんが思っていたよりも、この資産買い入れについて、かなり制約がかかってきているんじゃないか、というところが見えました。」

(フリップ2:対立する意見)
--ですから意見も本当に対立しています。ご覧のように分かれてきているんですね。買い入れについて積極的な人たちと、多数派、それから保守派はもっと減額してほしいというところ。狙いがあります。やはり積極派(上段)は・・・?

「積極派は今まで800やってきたんだから続けてほしいという話もありましたし、市場もそれを期待しているということを強調したかったわけですけれども、やはりイタリアも含めていろんな意味で不安を持っている人たちはたくさん買ってほしいなということですね。」

--そして保守派(下段)のほうは大幅に減額してほしいというのは、やっぱり・・・。

「もともとこういう政策というのは緊急対策だったですね、という話ですね。特に先月ドイツの利率が1.7%に上がりましたので、ドイツからするともうやめてもいいじゃないのという感覚を持っていると思いますね。」

--ただ結果的に落ち着いたのはここ(中断:多数派)でしたね。これは考え方としては・・・。

「一応減額しますけれども、今年いろんな政治イベントがある。フランスの大統領選、ドイツの連邦選挙ということもありますので、ですからそれに備えてのり代を確保したほうがいいのではないか、という少し冷静な意見ということですが、これが多数派で決まったわけですね。」

--となりますと政治的リスクというものは今年1年間、ヨーロッパは続きますね。

「ええ、そうですね、政治イベントが非常に多いですよね。先ほど申し上げた以外にもオランダの総選挙もありますし、それからトランプさんのドルに対するメッセージとかもやっぱりヨーロッパに対して大きな影響を持つわけです。」

--となると政策としましては、しばらくの間は今のものを様子を見て続けるというスタンスですか。

「ええ、それで、昨日もドラギさんが言ってましたように、何かあったら増やしますよ、というスタンスをずっと維持するとということだと思います。」



■【中国NOWCAST】
今回の中国ウオッチャーはSMBC日興証券の肖敏捷さんです。今週のピックアップトピックスは「2017年の成長目標を下方修正?」「住宅価格下げは一時的?」「外資の上場可能に」です。ダボス会議で習国家主席は2016年の成長見通しを6.7%と発表しましたが、中国国内ではすでに今年の成長見通しについての議論が活発化。地方政府やシンクタンクでは目標値引き下げの見通しが相次いでいます。

(フリップ:中国NAWCAST)
 (1) 2017年成長目標、下方修正?
 (2) 住宅価格、下げは一時的?
 (3) 外資の上場可能に
 

(1) 2017年成長目標、下方修正?

中国のGDP成長率については、習近平国家主席はダボス会議で2016年は6.7%の見通しだと発表、安定成長が続いていることを強調した。IMFも政府の経済刺激策に期待するとして今年の成長見通しを上方修正した。しかし3月に予定されている全人代の前に中国国内では目標引き下げをめぐる議論が活発化している。上海市では既に今年の成長率を、去年の6.5~7%の見通しから約6.5%へと下方修正、政府系シンクタンクも約6.5%成長になる見通しだと発表した。
こうした議論が高まる背景について、肖さんは、構造改革と環境汚染問題解決に向けた動きがあると言う。

《SMBC日興証券/肖敏捷》
「去年の後半あたりから足下もそうですけれども、PM2.5などの大気汚染が例年に比べてもっと深刻になった。例えば鉄鋼の場合には、違法で生産した地下工場が汚染物質出したい放題のところがいっぱいありますので、そういうところが景気が良いからとどんどん大量に生産する。そういう投資型の景気回復のやり方は、環境汚染をさらに深刻化させてしまった。成長率を引き下げて、その代わり問題に真剣に取り組む。」

--中国は空気がきれいになると、改革が進んでいるというシグナルになるということなんですが、今は景気を優先して道半ばということになるんでしょうか。
 

(2) 住宅価格、下げは一時的?

昨日お伝えしたように、中国の12月の新築住宅価格指数は、70都市のうちで20都市で価格が下落、政府管轄の北京、四川、上海でも値下がりした。去年10月の国慶節以降に実施された引き締め政策が功を奏したとみられる。

これに対し肖さんは、「過去十数年の間で不動産向け融資が制限されるたびに住宅ブームは沈静化に向かうのはパターンだ、現在、中国政府が海外への資金移動を厳しく制限している中では、再びバブルを引き起こす環境は整っている。本当に不動産バブルが収まるのかは疑問だ。」としている。
 

(3) 外資の上場可能に

中国国務院は金融や産業など外資系企業の投資規制の緩和を発表した。規制緩和されるのは銀行、証券、保険、会計処理など。これらの企業は上海や深圳証券取引所への上場が初めて認められるほか、中国国内で社債などのさまざまな債権の発行が可能になる。中国国務院は今回の決定について声明で、「国内企業と外資を平等な立場に置き、投資環境の透明性を高める」としている。

《SMBC日興証券/肖敏捷》
「このタイミングでの開放措置は背景にトランプ氏の存在がある。アメリカと海外企業の争奪戦とまではいかなくても、少なくとも中国も魅力的な投資先だとアピールすることが一番の狙いだ。米中貿易摩擦が激化するの必死ですので、避けて通れないので、トランプ氏は中国に市場開放を求めるだろう。うるさく言われる前に最初にやってしまおうと、先手を打ったのだろう。」

・ 「外資の上場可能に」について

--トランプ氏の存在で背中を押されたという格好で、先手を打ったということなんですけれども、これに関してはどういう見立てですか。

《野村総研/井上哲也氏》
「やはり中国は長期的に見た場合には非常に魅力的な市場ですから、企業にとってっ非常にメリットのある話ですね。ただもうちょっと前にやったほうがよかったですね。中国の景気がもっと良かった時にやれば、もっと企業を引き付けることができたかもしれないですね。短期的には少し残念なタイミングですね。」
 
 

■日経朝特急

「米国第一」を世界へ
20日に誕生するトランプ新政権についての記事。
 

残業、月60~80時間上限
政府は企業の残業時間に上限を導入する。月60~80時間を軸に検討する。現在は労働基準法の特別な条項を使えば事実上、青天井で従業員を残業させることが可能。これを改正して違反企業に対する罰則も設け、長時間労働是正につなげる。労使ともに働き方の大幅な見直しを迫られる。
 

主婦の就労支援へ保育料
厚生労働省は2018年度にも、シングルマザーや専業主婦などが子供を保育所に預けて職業訓練を受ける際に、北稜を支給制度を設ける。子ども1人当たり月額最大6万6000円もらえ、結婚や出産などで離職した主婦らが手に職をつけ就労しやすくする。労働市場の人手不足解消にもつながるとみている。
 

中国保有の米国国債、急減
中国保有の米国国債が減っている。去年11月末は10月末に比べ664億ドル減った1兆493億ドル(約120兆円)と6年ぶりの低水準となった。国別保有額では2ヵ月連続で日本に首位を譲った。去年の資金流出額は3053億ドルと過去最大を記録。中国人民銀行による人民元の買い支えが主因とみられる。
 

キリン、ブラジル撤退
キリンがブラジルのビール事業から撤退。キリンホールディングスは、業績低迷が続く子会社のブラジルキリンをオランダのハイネケンに年内にも約1000億円で売却する。再生に向け他社との提携を模索していたが、一括売却に切り替える。キリンは今後、成長が期待できるアジア・オセアニアに海外事業を集中する。
 



■日刊モーサテジャーナル

世界の気温が3年連続で過去最高
ニューヨークタイムとワシントンポストは、去年、地球全体の年間気温が過去最高を記録したとして、止まらない地球温暖化に危機感を表している。世界の平均気温が20世紀半ばの平均と比べどれだけ高いか低いかを示したグラフ、去年は2月3月と1度以上高くなった。地球全体の平均気温は3年連続で過去最高を更新。ニューヨークタイムによると、3年連続は初めてで、記事は、「大きな変化が起きている兆しだ」との専門家の声を紹介している。またワシントンポストは、「パリ協定が気温上昇を抑える重要な一歩となるはずだったが、温暖化はでっち上げだとの独自の考えを掲げるトランプ大統領の誕生で不透明な状況に陥った」、と今後の温暖化対策を不安視している。
 

ネットフリックス好業績、海外会員の増加がけん引
有料動画配信サービス世界最大手のネットフリックスが18日に発表した決算は増収増益、けん引役は海外の会員数の急増だ、とウォールストリート・ジャーナルなどが伝えている。16年10-12月期の決算は前年比、売上高24億7754万ドル(↑36%、純利益6674万ドル(↑55%)。
またねとふりっくすが力を入れてきた海外での会員数は去年12ヵ月末までの3か月で↑512万人。米国を含む世界全体で700万人増えるなど、四半期ベースで最高の伸びを記録した。ネットフリックスは、世界でインターネットテレビの時代が到来したことの表れだとしている。
 

ドイツ銀行、ボーナス削減
住宅ローン担保証券の不正販売をめぐり経営危機に揺らぐドイツ最大の金融機関ドイツ銀行が、管理職以上を対象にボーナス削減を決めたことについて、フィナンシャルタイムズなどが報じている。ボーナス削減の影響を受けるのは、従業員約10万人の25%、ボーナス削減の額などは明らかになっていないが、関係者の話によると、従業員への報酬が2015年比で数億ドル削減できる見込みだという。
 

・ 世界の気温上昇中、目をつぶるトランプ政権

--地球温暖化は本当に気になるんですけれども、トランプ大統領誕生になると、その対策は本当に不透明ですか。

《野村総研/井上哲也氏》
「そうですね。もともと信じないと仰っていたし、それから規制緩和を進めようとされているので、その点ではこれは対立してしまうわけですよね。

--規制緩和を進めるとどういう影響が出るんですか。

《井上氏》 「特にやっぱりエネルギー産業の規制緩和をトランプさんは非常に重視している。ですからパイプラインを作ったりだとか、シェールの開発なを進めるなど。環境に対して若干負荷がかかるような規制緩和ということになりますよね。」
 


■今日の予定

通常国会召集
中国、16年10-12月期GDP
中国、16年12月小売り売上高
米大統領就任式
米決算(GE)
 


■ニュース

米 次期財務長官 「長期的な観点から強いドル重要」
トランプ次期政権の為替政策に注目が集まる中、次の財務長官に指名されたムニューチン氏は19日「長期的な観点から強いドルは重要だ」と明言しました。議会上院で開かれた公聴会に出席したムニューチン氏はこのように述べるとともに「ドルは、長期にわたり最も魅力的な通貨であり続けている」との見方を強調しました。トランプ次期大統領がアメリカの新聞とのインタビューの中でドル高に対する懸念を表明したことについて、ムニューチン氏は「短期的なことについての言及だ」と説明しました。
 
 
ECB 金融政策を現状維持
ECB=ヨーロッパ中央銀行は19日開いた理事会で、金融政策の現状維持を決めました。原油相場の回復を背景に物価上昇率の伸びが拡大しているものの、今後の行方を慎重に見極めたい考えです。ECBは政策金利を過去最低のゼロ%、そして、金融機関がECBに余剰資金を預けた時に課される中銀預入金利をマイナス0.4%にそれぞれ据え置きました。また、今年の年末まで実施期間を延長した量的緩和政策をめぐって、ECBは、「必要であれば、今年の年末以降も量的緩和を続ける」との考えを表明しました。一方、イギリスのEU=ヨーロッパ連合からの離脱による影響について、理事会終了後に記者会見したドラギ総裁は「判断するのは時期尚早と述べる」にとどめました。
 
 
米住宅着工↑11% 予想上回る
アメリカの去年12月の住宅着工件数は、122万6,000戸と、前の月より11.3%増加し、市場予想を上回りました。一戸建てが減ったものの、集合住宅は50%を超える増加となりました。一方、先行指標とされる住宅着工許可件数は、0.2%減少しました。

・ 2016年12月住宅着工件数(前月比):1戸建て・↓4.0%、集合住宅・↑57.3%。
・ 2016年12月住宅着工許可件数(前月比):↓0.2%。
 
 
フィラデルフィア連銀指数 製造業景況感 予想超える改善
フィラデルフィア連銀が19日発表した1月の製造業景気指数は23.6で、前の月から大きく上昇しました。また、市場予想を上回りました。このほか、6ヵ月先の見通しを示す指数も前の月から大幅に上昇しました。
 
 
東芝 政策投資銀に支援要請
アメリカの原発事業の影響で多額の損失が見込まれる東芝は、日本政策投資銀行に金融支援を要請したことがわかりました。東芝の原発事業の損失額は最大7,000億円規模に膨らむ可能性があり、負債が資産を上回る債務超過に陥る恐れが出ています。東芝は、日本政策投資銀行への支援要請に続き、きのう、三井住友銀行などの主力取引銀行に対して損失状況を説明し、事業売却などの自助努力を前提に支援を要請しました。株式市場では不安が広がり、東芝株が急落。終値は242円と去年の5月以来の安値となりました。東芝は今月中に損失額を確定する見込みで2月中旬の決算発表で状況を詳しく説明すると見られます。
 
 
星野リゾート バリ島に高級宿泊施設
高級旅館やホテルを運営する星野リゾートはきょう、インドネシアのバリ島に『星のやバリ』をオープンします。星野リゾートが施設の企画から運営まで手がけるのは、海外では今回が初めてです。およそ3ヘクタールの敷地には運河を模したプールが3つあり、全ての宿泊施設から直接入ることができます。また、客室にはバリ彫刻が施されるなど「文化リゾート」として楽しめるのが特徴です。年々、外国人観光客の数が増えているバリ島で、星野リゾートは日本旅館を運営するノウハウを持ち込んで勝負したい考えです。
 
 
日生 3時間半勤務を導入
日本生命保険は、介護や育児中の営業職員を対象に、1日の労働時間をフルタイムの半分の3時間半にする新たな勤務形態を4月に導入します。新制度では原則として午前9時から午後1時半までの間で勤務します。組織で営業活動を支援するため、報酬は平均的にみて新制度前の85%ほどを確保できるとしています。労働環境を改善することで優秀な人材の確保を狙います。
 
 
菅長官 アップルの研究施設を視察
菅官房長官はきのう、アメリカのアップルが去年12月に横浜市に設立した研究開発拠点を視察しました。新施設はアップル初のアジア地域の研究施設で、今年度中の稼働を目指しています。菅長官は、海外企業の対日投資額を2020年に35兆円にするという目標に向けて、法人税率の引き下げなど、今後も投資環境の整備を進める考えを改めて強調しました。
 
 
富士フイルム 高画質ミラーレスデジカメ発売へ
富士フイルムは、高画質なミラーレスデジタルカメラ「GFX50S」を2月下旬に発売すると発表しました。画像センサーは、「35ミリフルサイズ」のおよそ1・7倍の大きさになる「中判」を採用し、小さいボディーでも高い表現力を実現しました。富士フイルムはGFXなどの投入で、デジタルカメラ事業の売り上げを今後、3割程度引き上げる考えです。
 

米トランプ次期大統領 就任目前のトランプ氏 支持率低迷
トランプ氏は20日、首都ワシントンで開かれる就任式で第45代のアメリカ大統領に正式に就任します。支持率は記録的な低水準で、大規模なデモが計画されるなど歓迎ムードとはほど遠い状況です。トランプ氏は19日、大統領専用機で家族とともにワシントンに到着しました。トランプ氏は先ほど、アーリントン墓地で戦没者に献花するなど、就任式前日の行事をこなしています。20日の就任演説でトランプ氏は貿易問題や雇用の創出など具体的な課題に触れる見通しで大統領報道官に就くスパイサー氏は「非常に前向きな演説になる」との見通しを示しました。またトランプ氏は就任初日に4つか5つの分野で大統領令を発令する方針でTPP=環太平洋経済連携協定からの離脱や不法移民対策などを発表する可能性があります。こうしたなかトランプ氏の就任前の支持率は43%と、近年で最も低くなっています。また就任式に合わせたデモがワシントン市内でおよそ100件計画されています。
 
 
駐韓大使の帰任 見送り
安倍総理大臣は岸田外務大臣と韓国で慰安婦を象徴する少女像が設置されたことへの対応について協議し、一時帰国している韓国駐在の長嶺大使の帰任を当面、見送る方向となりました。政府関係者は、「韓国側に変化がなく、日本から先に動く必要はない」として、今後、韓国の対応を見極め、帰任の時期を検討するとしています。
 
 
新千歳で全日空機オーバーラン
きのう北海道の新千歳空港で、全日空の旅客機が着陸時に滑走路を外れて、積った雪の中で停止しました。この旅客機には乗客・乗員合わせて25人が乗っていましたが、けが人はいませんでした。国の運輸安全委員会は、事故につながりかねない「重大インシデント」と認定し、調査官5人を現地に派遣しました。
 


■【コメンテーター】野村総研/井上哲也氏

・ トランポノミクス・いよいよ始動へ

--いよいよトランプ氏が大統領に就任しますが、井上さんは最近ニューヨークに行かれてFRBやマーケット関係者とお会いしてきたと・・・。どういった点に一番関心を持っていましたか。

「今日は政治的な話が多いと思いますけれども、経済政策としてみた場合には、法人税と個人所得税の減税、それから通商政策、インフラ投資、この3本は見ておく必要があると皆さんが仰っていました。」

--税制改正は議会とは一致しているところですね。

「共和党は去年6月に詳細な案を発表しているんですけれども、それはトランプ氏が9月に発表したものとほぼ一体ですので、これはたぶん議会対策もそんなに必要なく通るのではないか、という感覚を持っておられますね。」

--そうなると効果としてはどうみればいいですか。

「まだなかなか細かい所が決まっていないので難しい所があるが、ブルッキングス(研究所)によると、ピーク時には1%以上、GDPを押し上げるとの試算を出している。ちょっとそれは大きいかなという話もありましたけれども、それなりに大きな効果を持つだろうという話はありましたね。」
 
 

・ 今日の経済視点 「望ましいドル相場?」

「やはり放っておくとどんどんドル高になってしまうわけですけれども、アメリカはそんなにドル高が進むと困るわけですよね。せっかくアメリカ企業を国内に戻そうとしているわけなので。それから中国を含む新興国もあまりドル高で自国通貨安が進むと、資本流出がしてしまうのでそれも困りますね。今まではそれに対して、日本とヨーロッパは自国通貨安を望んでいたわけなんですけれども、ヨーロッパがちょっと微妙に変化してきているかなというところがありますよね。ドイツのインフレが上がってきたり、イタリアの問題が起こったりということで、ユーロ安がどんどん進むのはどうかなという意見が出てくる。そうすると円安を望んでる、自国通貨安を望んでる、あるいはドル高を望んでいるのは日本だけかなというふうに見えるところもあります。」

--今仰ったユーロ圏でもドイツとイタリアでは環境が違うわけですね。

「ドイツはインフレが過熱するのが嫌だから、もうユーロ安はやめてほしいと・・・。イタリアはあまりユーロ安が進むと自国から資本が流出してしまうという問題があります。今までは日本と同じように、デフレから脱却するために、ユーロ安がいいね、と言っていたわけですけれども、ちょっと変わってきたかもしれない。」