地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

19. パーム油  地理総合

2019-01-28 18:55:18 | 地理講義

アフリカのギニア湾岸で自生していたアブラヤシは、1900年ころにマレーシア・インドネシアに移植された。アブラヤシは第2次大戦後、天然ゴムの代わりに生産が増加した。

パーム油は安くて使いやすいため、食品・洗剤などに大量に使われる。大豆・菜種などの油脂類を越える消費量である。



20世紀まではアブラヤシの栽培には天然ゴム園からの転換では小規模であり、加工場のフル稼働にはならなかった。そこで加工場近くに、新たに熱帯雨林を広範囲に伐採し、アブラヤシを植えた。アブラヤシ農場の面積は、大きいものは10km×10kmつまり1万haもある。アブラヤシのプランテーションの増加により、東南アジアの熱帯雨林は、1990年から2010年までの20年間に360万ha(3.6万㎢)は減少したと見積もられている。


アブラヤシのプランテーションは熱帯雨林を広範囲に伐採し、さらに熱帯雨林の湿地から水を抜いて泥炭地を乾燥させる。泥炭中の温室効果ガスが大量に放出され、パーム油1トンを生産すると、石炭換算で温室効果ガスは3トン~30トン放出されて、地球温暖化を促すことになる。また泥炭地が失われて自然発火の山火事が多発して、熱帯雨林の面積はさらに減少した。

先住民の、熱帯雨林の所有権は明確ではない。土地の境界も曖昧である。都市の資本家は熱帯雨林の所有概念の乏しいことにつけ込み、ただ同然で熱帯雨林を手にいれて、皆伐する。熱帯雨林を失った先住民をアブラヤシのプランテーションの造営事業に雇い入れ、完成後はプランテーションの低賃金労働者として雇う。熱帯雨林の喪失と生活の激変に抵抗する先住民は、プランテーション経営者としばしば激しく対立する。警察・軍は資本家と政治家の命令に従い、プランテーションの経営に抵抗する先住民を厳しく取り締まる。

マレーシアやインドネシアでは、アブラヤシのプランテーションの労働者として現地の先住民を低賃金で雇う。加工場では、都市あるいは海外からの出稼ぎ労働者も雇われるが、賃金先払いの債務労働者が多い。
プランテーションの労働者には高いノルマが課され、長時間の過酷な労働だが、手にする賃金は少ない。また、強力殺虫剤を多用するため、農薬被害を訴える労働者もいる。

熱帯雨林を守りつつ、パーム油(アブラヤシの油)の生産過剰による値下がりを防ぐため、プランテーションの新規開発を抑制するようになった。
「持続可能なパーム油のための円卓会議(Roundrable  on  Sustainable  Palm  Oil)」により、2004年から、適切な生産加工のパーム油には認証マーク(RSPO)を発行している。

しかしながら、違法なアブラヤシのプランテーションの開発が続いているのが現実である。発展途上国の環境問題への意識の乏しさ、政治家・軍・警察の汚職、先住民の貧困が大きな原因とされる。

パーム油は飽和脂肪酸であるパルチミン酸が多ければ、常温では固体の植物性油脂である。食品としてはマーガリン・チョコレート・アイスクリームなどに使われる。
オレイン酸の多いパーム油は液体であり、食用油として利用される。ポテトチップス・カップ麺・フライドポテトなどに使われる。食用以外に、塗料・化粧品・洗剤に大量に使われる。日本でのパーム油消費量は、1人年間4kgである。


軍事用の焼夷弾はナフサ(石油)とパーム油(ヤシアブラ)から作る。ナフサとパーム油から作られた爆弾だからナパーム弾と呼ぶ、と信じられている。しかし、正しくはナフテン酸、パルミチン酸、アルミニウム塩の頭文字の略称である。



 


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