地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

37.日本の人口減少  地理総合

2019-04-27 17:17:54 | 地理講義

日本史上は4回の人口減少
日本の人口は4回、大きく減少した。縄文時代晩期、鎌倉時代、江戸時代後半、2015年以降である。いずれも人口急増時期のあとの反動ではあった。
6,000年前の温暖期の人口は26万人に増加したが、4,000年前には15万人に減少した。減少の理由は地球の寒冷化による食料不足か、伝染病の流行があったと考えられる。その後、稲作の普及とともに人口が回復増加した。
12~13世紀には戦乱と飢餓が続いて、人口が700万人から600万人に減少した。
15~16世紀にも戦乱と飢餓がくり返されたものの、戦国時代には各大名が富国強兵策を採用、しかも激しい戦乱・飢餓が局地的なものにとどまり、農業生産は拡大した。人口も増加した。
江戸時代全般は元禄の好景気と各藩の新田開発などにより経済は安定的に拡大した。人口も急増した。しかし、江戸後期は人口が増加せず、3,000万人代で停滞した。元禄景気と新田開発が終わり、経済の長期停滞時代が続いたためと考えられる。
明治の富国強兵から第2次大戦後のベビーブーム第2世代まで、経済が一応は順調に発展し、人口増加は爆発的増加をした。日本の人口増加が、日本経済を食いつぶす危機感すらあった。しかし、経済の長期低迷の始まる2015年から、人口の減少も始まった。

 

出生数と死亡数の推移

 出生数は1950年以降、減少傾向をたどっている。出生数の低下は女性の晩婚化と高学歴化、養育費用・教育費用の高騰、男女の非婚率の上昇などが原因である。背景として、経済の長期低迷により、家計収入の実質的な減少がある。
今後、85歳以上までの長命者が増加し、2060年に最も多いのが86歳の者と推定されている。東京への一極集中も顕著である。
これは江戸時代後期の人口増加の低迷時期に、江戸に独身男性が集中して長屋で共同生活、食事はぼてふりから得ていた時代によく似ている。
しかし、今後、大都市圏の20年後、30年後の高齢化ぶりはすさまじい。大都市から地方への高齢者脱出か、大都市の高齢化が目の前である。地方は高齢化が一段落するとともに、大都市からの高齢者の受け入れが盛んになるだろう。

大都市でも進む高齢化
大都市サラリーマンの夢は、都心の超高層マンションに住むことであった。しかし、マンション分譲時には入居者の平均年齢が45歳であったとしても、30年後には高齢者である。
老朽化した超高層マンションでは、入居者の収入は減少し、必要な高額大規模改修は先送りを続けることになる。老朽化した超高層マンションには高齢者だけが住み続ける状態である。資産が十分にある入居者は他の新築マンションや一戸建てに移る。
かつて、大都市の花形であった都心の超高層マンションは、補修もできずにエレベーターは止まり、外壁は傷んだままで、そこに行き所を失った高齢者と、不法占拠の外国人スコッターが住むことになる。

今の農山村の限界集落のような状況が、超高層マンションの一つずつで見られるであろう。買い物のできるコンビニエンスストアや大小商店は潰れ、病院はなくなる。遠くまで出かけるだけの自動車運転免許は高齢化を理由に取り上げられる。頼る身内は遠くの一戸建てに住んでいて、そこへ行く公共交通手段はない。役所の高齢者相談センターからは、生活費のかからない地方移住を強く勧められるだろう。姥捨て山としての地方への移住である。
そのような大都市の限界集落化まで、あと30年である。

 

労働力の不足
2030年頃から世界的な人口減少が予測されている。地域的には著しい人口減少があるように、世界のうくつかの地域には人口爆発による余剰人口があるかもしれない。この余剰人口が、高賃金の日本をめざす潜在的労働者となるであろう。
人口学的には15~64歳の生産年齢人口が、労働力とされる人口である。年少人口の減少と高学歴化が進み、老年人口の壮健さが続けば、日本人の生産年齢人口は22~75歳になる。生産年齢人口の定義を見直さなくてはならない。
それでも日本人労働力が不足するのであれば、労働力の不足する業種をなくすか、外国人にまかせることになる。これからは労働力を得られない業種を退場させるのか、外国人労働者にまかせるのか、あるいは海外に移転するのか、選択の議論を急ぐ必要がある。


 


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