地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

2018年地理B第4問解答解説 西アジア

2018-10-24 17:57:44 | 地理講義

2018年センター試験地理B第4問

 

 

 

解答
【19】④
解説 西アジアの地形高度。
(ア) サウジアラビアのネフド砂漠。ここは高度1,000m前後の山岳地帯である。
(イ) イラクのティグリス川とユーフラティス川合流点。標高100m以下の低地。
(ウ) イランのザグロス山脈。標高は5,000m以下である。
(エ) パキスタンのヒンドゥークシ山脈。最高高度は8,000mを越える。
 
詳細な解説
(ア) 砂漠は低地とは限らない。サウジアラビアのネフド砂漠西部は標高1,000mを越えるトゥワイク山脈がある。なお、サハラ砂漠にはアハガル高原があり、そこの最高峰タハト山は標高2,918mである。
(イ) メソポタミアはティグリス川とユーフラティス川の形成した沖積平野であり、洪水のおこりやすい低地。
(ウ) ザグロス山脈の最高峰はザルド山4,548mである。ザグロス山脈からイラン高原にかけての高山は標高4,000m~5,000mである。
(エ) 世界の屋根といわれるヒンドゥークシ山脈からパミール高原にかけては、7,000mを越える高山地域で、ナンガパルバット山は標高8,125mである。ヒンドゥークシ山脈からパミール高原にかけての山岳地域は、ヒマラヤ山系に含まれる。新期造山帯。



解答 
【20】③
解説 乾燥地域の農業。
①◯ Aートルコ西部の地中海性気候の地域。地中海式農業としてオリーブが栽培される。
②◯ B-サウジアラビアの砂漠では、アメリカのセンターピボット農業を導入した。
③× Cーイランの砂漠であり、農業不適地。コーヒー栽培は高温多雨の気候が適する。
④◯ Dーアフガンのラジスタン地方は乾燥地域であり、羊の遊牧が見られる。

詳細な解説
①Aーオリーブは夏乾季の地中海性気候に適した作物である。栽培の多い国は、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコである。
②B-センターピボット農法はアメリカのグレートプレーンズのような半乾燥地域の灌漑農業である。地下水を汲み上げ、自動散水する。広い土地と大きな資本を必要とする。サウジアラビアでは豊富な石油収入によってセンターピボット農法を採り入れ、食料の国内自給に力を入れた。しかし、塩害の問題や地下水の枯渇のため、センターピボット農法は2016年で中止した。

③C-コーヒー栽培はサバナ気候でも比較的降水量の多い地域で栽培され、年降水量は1,000mm~3,000mm、年平均気温は16℃~22℃。収穫時期に乾燥する地域。北緯25度~南緯25度までがコーヒーベルトといわれる。
④D-アフガン南部は砂漠であり、カレーズを利用したオアシス農業と羊の遊牧が見られる。アフガンでは地下用水路はカレーズだが、イラン・イラクではカナートと呼ばれる。

 

 


 

解答
【21】②
解説 イスラム教国家のイランとアラブ首長国連邦の区別。
① イラン。イスラム教国家。
② アラブ首長国。イスラム教国家。フィリピン・インドなどからの出稼ぎが多い。
③ レバノン。キリスト教徒とイスラム教徒の各派がつくるモザイク国家である。
④ イスラエル。ユダヤ人国家。

詳細な解説
① イランはイスラム教国家でありイラン=イスラム共和国が正式国名である。シーア派86%、スンナ派10%。なお、イランはアラブ系ではなく、インド=ヨーロッパ系であり、ペルシャ語が公用語である。
② アラブ首長国連邦は原油輸出収入が多い。不足する労働力を出稼ぎで補う。インドからの出稼ぎ労働者はヒンドゥー教、フィリピンからの出稼ぎ労働者はキリスト教徒が多い。なお、アラブ首長国連邦の公用語はアラビア語である。
③ レバノン。キリスト教徒各派とイスラム教徒各派が領地争奪の内戦をくり返してきた。民族的にモザイク国家になっている。公用語はアラビア語である。キリスト教徒には旧宗主国のフランス語を使用する者が多い。
④ イスラエル。1948年にユダヤ教国家として独立した。先住のアラブ人との対立がパレスティナ問題であり、中東戦争に発展したことがある。公用語はヘブライ語とアラビア語である。

 
 

 

 

解答
【22】⑤
解説 西アジア各国の経済指標の特徴。イスラエルとアフガンに注目する。
(カ) イスラエルとサウジアラビアが高位であり、人口1人当たりGNI。
(キ) イスラエル、トルコ、アフガンは低位だから、石油輸出割合。
(ク) トルコ、イラク、イラン、アフガンで高位だから、農業の割合。

詳細な解説
イスラエルは金融とハイテク産業で1人当たり国民総所得は33,930ドル。
サウジアラビアは原油輸出は総輸出額の78%、1人当たり国民総所得は26,260ドル。
イエメンは原油輸出は総輸出額の46%を占めるが、1人当たり国民総所得は1,330ドル。
アフガンは石油製品を輸入する。農業国であり、1人当たり国民総所得は690ドル。
トルコは石油製品を輸入。農業から工業へ転換中。1人当たり国民総所得は10,970ドル

 

解答
【23】①
解説
①◯ トルコ。イスタンブールへの観光客が多い。治安が良い。
②× サウジアラビア。メッカへのイスラム教徒巡礼者が多い。
③× カタール。観光客は少ないが、ハマド国際空港の利用者が多い。
④× イラク。渡航中止が日本政府などから呼びかけられている。

詳細な解説
①トルコ イスラム教国家だが、異教徒には寛容である。政治的にも正教分離を建前としている。イスラム文化に触れようとする観光客が多い。

②サウジアラビア 海外からの一般観光客の入国に厳しい制限がある。その一方で、イスラム教徒は巡礼を目的にメッカを訪れることを奨励している。日本からの国際便はない。
③カタール 2014年、カタールの首都ドーハにハマド国際空港ができ、観光客を集めている。また、ハマド国際空港はハブ空港として、アジア・ヨーロッパ・アフリカの乗り換え客でも賑わっている。カタール航空は王族出資の巨大航空会社であり、日本に直行便を運行している。
④イラク 日本政府からイラクへの旅行についての渡航情報はレベル3(渡航中止勧告)、北部はレベル4(避難勧告)がだされている(2018年)。シリア内戦の影響で治安が安定していないためである。このため一般旅行者は少ない。

 

解答
【24】⑤
解説 局地的な民族対立が他国の軍事介入があり、本格的な戦争になることがある。
(サ)Z アフガニスタン。アメリカの2001年9月11日事件首謀者がアフガンに逃亡した。
(シ)X キプロス。北のイスラム教徒と南のギリシャ正教徒とが対立した。
(ス)Y クウェート。イラクがクウェートに侵攻し、1991年に湾岸戦争が勃発した。

詳細な解説
(サ)アフガニスタン。2011年9月11日に、アメリカでは、イスラム原理主義者による同時多発テロが発生した。それを支援していたのがアフガン政府であったとして、アメリカ軍がアフガンを軍事攻撃した。アフガンでは過激派の政権が倒れたあともイスラム原理主義者の支配地が残り、アメリカ軍は長期間の戦闘を継続した。
(シ)キプロス。キプロス島北部にトルコの支援を受けたイスラム教徒が30万人、島南部にギリシャの支援を受けたギリシャ正教徒80万人が居住する。1975年、イスラム教徒は北キプロス=トルコ共和国として独立を宣言、トルコ軍が駐留する。国連軍が南北の軍事衝突を避けるために派遣されている。なお、キプロスはEUに加盟しているが、北キプロス=トルコ共和国は加盟を拒否している。
(ス)クウェート。1990年8月にイラク軍が侵攻、1991年1月にアメリカを中心とする多国籍軍が反攻(湾岸戦争)、1か月でイラク軍の侵略は失敗に終わった。イラク軍のクウェート侵攻の目的は、ペルシャ湾に面するクウェートが原油の大量輸出を続け、国際価格下落原因になっているためといわれる。


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