MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2046 定年格差にどう向き合うか

2021年12月21日 | 社会・経済


 総合経済誌「週刊東洋経済」の12月11号の特集は、「勝ち組シニア、負け組シニア」というシビアな内容です。おおよそ30年間の継続雇用の後、早ければ50代前半で岐路が訪れる中、見切りをつけられるのは果たして企業なのか人なのかと問うています。

 働き手の数は年々減り続け、雇用者における高齢者の比率は上がるばかり。長い「老後」に待ち受ける厳しい「定年格差」にどう向きあうかは、これからの世代にとって重要な問題となるでしょう。

 止まらない高齢化の下、60歳を過ぎても会社に必要とされる人と「お荷物」扱いされる人が出てくるのは、(ある意味)やむを得ないことかもしれません。年金だけでは生活がままならない現状にあって、(いずれにしても)老後も働かなくてはならないシニアが勝ち残るためにできることは何なのでしょうか。

 経済同友会が今年の9月に開催した夏季セミナーで、新浪剛史・サントリーホールディングス社長が唱えた「45歳定年制」が、反発とともに大きく話題となったのは記憶に新しいところです。

 早期定年制は「強者」の理論。要は、体の良い「リストラ」ではないかという意見にも一理あるでしょう。とはいえ、「長生き」というリスク社会をタフに生き残るには、セカンドキャリアを見据えたそれなりの準備期間が必要なのも事実です。

 進む長寿命化により、すでに日本人の平均年齢は男性が81.6歳、女性が87.7歳と、90歳の大台はもう目前。社会保障制度を持続あるものにするため、公的年金(老齢厚生年金)の支給開始年齢は段階的に60歳から65歳へと延長されましたが、平均寿命に達するのはそこからさらに30年後という(気の遠くなるような)先の話です。

 また、現在のように実質定年が60歳のままであれば、65歳で年金をもらうまでの収入の空白期間を私たちも(なんとか)食いつないでいかなくてはなりません。頼りの年金も、それだけで生活できるほどの金額になるわけではなく、それすら先送りされるのも時間の問題だとされています。

 一方で、15歳から64歳までの生産年齢人口は、1995年の8716万人をピークに下降を続けており、高齢化率は既におおむね3割(28%)を占めています。労働市場の高齢化はすでに現実のもの。働き手が減り人手不足が常態化した日本社会では、シニアや女性、外国人なしでは、もう経済が成り立たないのが現実です。

 こうした中、雇用延長に際しての企業の選択肢は大きく分けて以下の3つ。①70歳までの定年引き上げ、②70歳までの再雇用制度の導入、③定年廃止、だというのが(東洋経済の)記事の指摘するところです。

 中でも、その柔軟性から言って、最も現実的なのは(再)雇用の(再)延長と言えるでしょう。とはいえ、雇用延長は正社員としての定年を過ぎた後なので、ほとんどは「嘱託」「契約社員」「アルバイト」などの肩書で残るのが普通です。

 記事によれば、そうした場合、収入は定年時に比べ50%から75%程度の水準に下がり仕事内容も簡単になるケースが多く、かつての部下が自分の上司となる逆転現象も往々にして起こるということです。

 もとより、定年前の50代後半に役職定年を設けている企業も多く、すでにその段階でガクッときてしまう人も決して少なくありません。さらに今後DXなどが急速に進めば、リモートなどの新たな技術にうまく対応できない中高年が肩身の狭い思いを募らせるのは目に見えています。

 特に大企業の社員はプライドも高く、定年後、いかにモチベーションを保つかは大きな課題だと記事も指摘しています。そうした人たちが、60歳を過ぎてからも会社に「すがって」生きなければならないというのは、心身にかなり堪えることでしょう。

 「45歳定年制」発言の背景にあるのは、(そうならないためにも)40代のうちから目標をもって、セカンドキャリアに向けた準備を始めておく必要があるというアドバイスだと、まずは受け止める必要がありそうです。

 もちろん、これ以上「働かないおじさん」を大量生産しないよう、企業自身もシニアがモチベーションを保ちながら働けるような仕組みを整えることが急務になっています。

 経験のあるベテラン社員に戦力として(例え安い給料でも)意欲をもって働いてもらえないようでは、企業としても未来はありません。「ジョブ型雇用」や「同一賃金・同一労働」などの様々な働き方を組み合わせ、自由度の高い仕事へのアプローチ方法を考えてみる必要がありそうです。

 なお、「第2の人生こそ初心に帰る必要がある」として、記事は最後に『再雇用に当たっての心がけ』というものが掲げているので、参考までに紹介しておきたいと思います。

 1 挨拶は自分から
 2 身だしなみには気を使う
 3 かつての部下でも「さん」と呼ぶ
 4 自慢話は1回まで
 5 以前の職場ルールはそのまま通じない
 6 給料はお客様からいただく
 7 謙虚な気持ちで仕事に取り組む

 なかなか難しい時もあるかもしれませんが、まずは初心に帰って(できれば元気よく)やっていきたいものです。



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