「早く帰って」「ごはんだよ」漁船転覆、奇跡信じ夫へメール(読売新聞) - goo ニュース
低気圧の接近で荒波の中で操業していた、福島県いわき市小名浜漁港所属の巻き網漁船「第58寿和(すわ)丸」が、千葉県の犬吠埼沖で転覆・遭難し、20人の乗組員のうち、7人が仲間の船に救助され、うち4名が死亡、3名が生存、以前13名の行方不明者となっている事故から、今日で1週間となります。
転覆した「第58寿和(すわ)丸」の仲間の漁船7隻での捜索が、現在でも遭難現場付近で行われているのですが、昨日29日(日)母港の「小名浜港」に、いったん帰港し、港では、行方不明者の家族らが乗組員に駆け寄る姿があったそうです・・・・。
行方不明となっている操機長(51)の奥さん(47)は、戻ってきた同僚の船の乗組員と肩を寄せ合い、事故やその前夜の事を真っ先に聞きたかったのだそうです。
先週22日(日)は長男(22)の誕生日で、夜に長男の携帯電話に「おめでとう」と電話があり、奥さんとも「お互いに頑張ろうな」と言葉を交わしていたそうで、操機長は好きなテレビドラマの話をするなど、くつろいでいたそうです。
操機長は、中学を卒業すると漁師になったそうで、若い船員から「尊敬できるお父さんみたいな人」と、仕事仲間から大変人望が厚かったそうで、結婚記念日や誕生日には必ず、海から電報を送るなど細やかな気配りも欠かさず、船舶電話などで「声を聞かないと気がおかしくなりそう」と連絡を絶やさなかったとのことです。
奥さんは、「私や息子の顔を見たいなら早く帰ってきて」「ごはんの時間だよ」……と今も、一日3回、操機長の携帯電話にメールを送り続け、携帯電話の旦那さんの写真を見ながら「奇跡を信じています」と語りかけるそうです。
事故から3日間、奥さんは、何ものどを通らなかったそうです。
「太っていた方がいいんだから、いっぱい食べろ。」
旦那さんの言葉を思い出し、あふれ出る涙をこらえながら食事をすることもあるそうですが、2人の息子さんから「お父さんはそんな顔で会いたくないよ。腹から笑え」と励まされているのだそうです。
この日、奥さんは同僚の乗組員から、船内で撮影した写真をもらい、携帯電話の待ち受け画面にしたそうです。すでに1週間近くになり、体力的にも疲労は限界になっているのですが、それでも奥さんは携帯電話の写真を見ながら、こう言ったそうです。
「お父さんの方が大変だから……奇跡を信じています」
魚群を見分ける役目の「魚見(うおみ)」の乗組員(55)は、間もなく生まれる孫と会うことを心待ちに漁に出ていたそうです。
妊娠8か月の長女(33)は男児を出産予定で、孫娘が3人いる乗組員にとって初めての男の孫だそうで、定年で船を下りたら「新しい家を建てて、孫たちと過ごす」と話していたそうです。
それぞれの「想い」で、肉親や家族の無事を祈る「悲痛な表情」が思い出されます。
3ヶ月前、海上自衛隊のイージス艦衝突事故で、先日「死亡宣告」を海上保安庁から受けることになった、漁船の「親子」のことを思い出します。
原油高騰や魚資源の過激な獲得競争など、「漁業」を取り巻く環境は、近年厳しさを増しておりますが、今回は「行方不明者」が10人を越える中での大変な捜索活動となります。ひとりでも多くの生存者が救助されることを切に願います。