はと@杭州便り

中国杭州で仕事&子育てしているはとぽっぽのページです。

中国「居民」

2014-05-15 23:53:50 | その他
中国に「国民」は存在しない?
中国のミニブログで見つけた記事が面白かったので、ご紹介します。

日本でも報道されていますが、最近杭州では郊外にアジア最大級のゴミ処理場の建設が予定されており、
それに反対する地元住民や市民グループが署名活動や政府への陳情を行っていましたが、
先週ついに数千人のデモ隊が警察と衝突して、死者やケガ人が出る騒ぎになっています。

普段こちらで生活していても時に忘れがちになりますが、そもそもこの国における「国民」の定義が
根本的に先進国とは違う、ということ。
自分たちの住む町のことを自分たちでは何も決められない、という現実。
そんなことを考えていた時に見つけた記事です。

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僕たちは中国「国民」ではなく、「居民」に過ぎない。


先日タイの友人とお互いの身分証を見せあったとき、突然「君はまだ中国の国民じゃないの?」と聞かれた。

「僕は中国の国民に決まってるじゃないか。この身分証だって本物だ。」と答えると、
友人は笑って「君の持ってるのは中華人民共和国の居民身分証で、国民の身分証じゃないじゃないか。」と言う。



不思議に思って「それって何が違うの?」と聞き返してみると、友人はこのように説明してくれた。

「中国人の考え方は知らないけど、タイ人の僕らにとっては国民と居民っていうのは全然違うものなんだ。
国民っていうのはその国の人民で、国民の待遇、つまり参政権を持っている。でも居民というのはその国に一時的に住んでいる人のことで、
参政権を持っていないんだ。タイにも中国国民党の末裔が住んでいて、合法的にタイに居住することが認められているけど、タイ人のように国民としての待遇、つまり参政権は与えられていない。ほら、僕の身分証には『タイ国国民身分証』って書いてあるだろう?」。

タイの友人のこの話はまさに目からウロコだった。今までそんなこと考えたこともなかったからだ。
新華字典(中国で一番権威のある国語辞典)を調べてみてさらに驚いた。新華字典には『国民』はおろか、『公民』の項目もなく、『居住』の項目を見ると「比較的長い期間一つの場所に住むこと」と書いてあった。
『中華人民共和国身分証法』を調べてみると、「中華人民共和国国内に居住する公民としての身分を証明し、公民の合法的権益を保障し、その社会活動を助け、社会秩序を守るためにこの法律を制定する。」と書いてある。


僕は今までずっと自分が五千年の歴史を持つ礼儀の国、中国人であると思い、それを誇りに思ってきたのに、実はただの「比較的長い期間この国に居住する」人に過ぎなかったことに、今さら気付かされたのだ。
もちろん、この事は中国の言う「中国特色的社会主義の道」というのがどのようなものであるか、よく説明していると言えるかも知れない。
選挙権、被選挙権がないのは、僕らが居民であって国民ではないからだ。土地、家屋の所有権がないのも、僕らが居民であって国民ではないから、土地が没収されたり家屋が強制的に壊されるのも仕方がない。国が提供するべき福利が受けられないのも、僕らが居民であって国民ではないからなのだ。
そうだ、僕らは国内のどの町に転居しても、その町の政府から「居住証」を発行してもらえば合法的にその町に住むことができるが、その町の住民と同じ福利や参政権は与えられないのと同じように。だって僕らはただの居民であって、国民ではないから。

「共産党がなければ、国がなければ中国人は何もない。」と言う共産党のスローガンがあるが、今の中国人は共産党も、国もあっても、やはり何もないままだ。いや納税が課せられる外には、何もないのだ!しかもこの国の国民でさえない、ただの居民だったのだ!

国民と居民、わずか一字の違いに含まれた意味の違いは雲泥の差だ。
国民というのは国のすべてが人民のものであり、人民には自分たちの政府を管理する権限がある。でも居民というのは人民のすべてが政府のものであり、人民に国家を管理する権限はない、根本的に相反する二つの概念なのだ。自国の国民に居民身分証を発行する国が、世界にどのくらい有るだろう?


これが執政者による故意なのかそうでないのか、単なる文字のいたずらなのか僕にはわからない。
これが故意でないと言うなら、戸籍法を改革して国民の権利を僕たちに返し、「中国国民身分証」を発行し、僕たち中国人を居民扱いせず、正々堂々と中国国民にしてほしい。僕たち中国人は先祖代々この土地に暮らしてきて、生まれた時から合法的な中国国民だ、居民であるはずがない!

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この記事を読んで、さて日本人はどうだったか?と急に不安になった私。
日本には身分証がないので、とりあえず手元のパスポートを調べてみる。



「日本国民である本旅券の所持人」
あああ、良かった!
一応私は日本「国民」らしいということを、とりあえず確認。

…え?じゃあ中国人のパスポートは?



直訳:「中華人民共和国外交部は各国軍政機関に対し、パスポート所持人に通行の便利と必要な協力を与えられるよう要請する」

「パスポート所持人」!??

…相方、これを見た瞬間、自分のパスポートを床に落としてました。

そういえば町で見るスローガンも中国「公民」とは書いてあっても、「国民」と書いてあるのは見たことアリマセン。
身分証は「居民」証だし、パスポートは「パスポート所持人」。

五千年前から先祖代々ここに住んでいても、「比較的長い期間その土地に住んでいる人」でしかない中国人って、一体…!??

出典:http://blog.sina.com.cn/s/blog_6a7251a50101inee.html
「原来我们都不是中国国民!只是居住在大陸的中国人!」

追記;

香港と台湾はどうなっているんだろう?というご質問にお答えして。

香港



「永久性居民身分証」
「永久性」がついている分、大陸より高級??
でもやっぱり中国の一部には違いない…。

台湾



こちらは「国民」、さすが!と言うべきか。

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7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
確かにそうかも・・・ (mwn)
2014-05-16 10:34:58
非常に面白い内容ですね。
でも上がそうだから、下の思考もフレキシブルなのかな。中国のヒトは便宜のためにいともあっさりと国籍を変えてしまいますよね。日本人にはなかなかできないこと・・・。以前はそれに非常に抵抗がありましたが、こちらに長く住んでいると、彼らの合理性がよく理解できる気がします。
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居民... (nanashi)
2014-05-17 13:38:00
たいへん面白い内容でした。
単なる言葉の問題では無いですね。
香港、台湾ではどうなんでしょう??
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Unknown (はとぽっぽ)
2014-05-19 18:36:09
>mwnさま

以前タクシー運転手に、「俺は国を愛しているが、国が俺を愛してくれない。」と言われたことがありますが、まさにそうだなと思います。

娘の中国籍でちょっとややこしい事になってるんですが、公安の窓口担当にまで「まさか中国籍いるの?いらないよね?」と言われるこの国の国籍って、一体…。

でもきっと世界的に見れば、そういう国の方が多いんでしょうね。アメリカ国籍を目指して危険を冒して密入国する中南米の人々もいますし。

>nanashiさま

コメント有難うございます。
追記に香港、台湾を追加しましたので、ご覧下さい。

台湾はこれだけ民主化が進んでしまえば、中国と一緒になるのはほとんど不可能ではないかと個人的には思っています。
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Unknown (Rikorin)
2014-05-21 13:47:44
有意思ですね。
なるほどと思いました。

いつもぽっぽさんのブログ勉強になります。
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Unknown (ごんれい)
2014-05-26 18:10:44
べつに中国政府の肩を持つわけではありませんが、「国民」が一等で「居民」が二等などとがっかりしなくてもいいのではないでしょうか。国内に民族問題を抱えているという事情もあります。なにより近代的な国民国家が成立するはるか前から「中国は中国」としてあるわけですから。
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Unknown (はとぽっぽ)
2014-05-28 00:06:43
>ごんれいさま

タイと違って、そもそも中国大陸に住む中国人全員が「居民」で、「国民」は存在しないので、別に二等だとがっかりしている訳ではないと思います。

「居民」も「国民」も単なる字の違いで意味は同じだという意見や、そもそも中国の戸籍は地方政府が管理しているため、その戸籍のある市や鎮、村の「居民」証明書なのでは?という意見もあります。

しかし中華民国時代は「国民身分証」が発行されていたことを引き合いに出して、そこにK産党との関連を察する意見も多いようです。
やはり土地所有権と参政権の2つが無い、というのが「居民」になっている所以ではないかと勘ぐるのは自然ではないかと思います。
旧共産圏の国や北朝鮮ではどうなっているのか、調べてみましたがわかりませんでした。

「居民」と言うなら、中国に長期滞在している外国人にもくれても良さそうなんですが(爆)
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追記ありがとうございました! (nanashi)
2014-05-29 22:37:28
お礼が遅くなりましたが、
香港、台湾の分も調べていただき、
ありがとうございました。

>台湾はこれだけ民主化が進んでしまえば、
>中国と一緒になるのはほとんど不可能では
>ないかと個人的には思っています。
私もそう思います。
不可能を可能にするために、
きな臭いことが起きないことを祈るばかりです...
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