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「楽しい教育」信奉者の再考

2013-05-17 17:59:48 | その他
最近の『新民週刊』から、北京のお受験事情について。
想像を超えるすさまじさです。

杭州でも先月行われた私立小学校の受験競争率は過去最高の13倍を記録したとか。
しかし、北京はさすがに首都だけあって、更にすさまじいです。

ご興味のある方はどうぞ…

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北京における小学校入学、中学校入学は既に立体戦争と化している。ホワイトカラー、ゴールドカラー、富豪、成金、不動産開発業者、政府の官吏……すべて同一のスタートラインから、金銭、権勢、情報、時間、効率、忍耐、教育理念、コネを駆使した総合的な戦いが繰り広げられている。「限界を超えた戦い」という言い方は決して誇張ではない。


「楽しい教育」信奉者の再考

「擇校、占坑、上岸、裸考」。
これらの単語を見てすぐに意味のわからない人は、まだ「親」修行の長い道に足を踏み入れていない人たちである。

「もうどうしようもない、30万元用意して景山に行かせよう!」
「あなたは気でも狂ったの?まだ小学校なのよ、将来中学、高校はどうするの?うちは中流家庭で、成金社長でも何でもないのよ!」

これは依依の家で起きた夫婦喧嘩である。依依の幼稚園「卒業」の前の最も緊迫した期間、家はピリピリした雰囲気に包まれていた。

依依の住む団地にはもともと普通の小学校がある。普通すぎて依依の父はその名前すらはっきり覚えていない。

北京市教育委員会の規定によれば、義務教育段階での学生募集は「無試験、最寄りの学校が原則」である。各小学校は決められた学区の子供を優先に受け入れ、すべての学齢に達した子供が入学できることを保証している。
依依も学区内の小学校に通えば、何の問題もないはずだった。しかし「北京の教育資源は、医療資源と同じく質の差がすこぶる大きい」という軽視できない客観的な現状がある。

名区名門校の意味は言うまでもない。

北京市では2011年の大学入試、600点以上の高得点の受験生の割合は西城区がトップで、600点以上の高得点の受験生の3人に1人が西城区だった。トップ進学校である北京四中では、北京大学、清華大学へ12人が推薦入学、国際班卒業生70人全員がアメリカトップ50大学に合格し、そのうち20人がハーバード、イェール、コロンビアなどアメリカトップ5大学に合格した。

名門校へ入学できなかった子の悲哀について、清華園教育グループ副社長の聞風講氏は彼の同僚とその息子の話をしてくれた。

2008年に息子が中学へ上がる時、周囲の人たちは母親にコネを使って良い学校へ進学させれば、と勧めた。しかし息子の成績は優秀だったし、最悪でもまさかレベルの最も低い中学に決まることはないだろうと思ってコンピューターによる振り分けに参加した。ところが、決まったのはよりにもよってそのレベルの低い中学だったのだ。

母親は苦悩したが、「息子さえしっかり勉強すれば、実力で良い高校に合格できる。大学進学にはきっと影響しないだろう」と思い直した。

母親は息子をマンツーマン指導の塾へ行かせた。塾代は最初は100元/時間だったが、やがて300元/時間になった。いくらお金を使ったか、計算するのも恐ろしかった。母親は給料日になるとすぐ、息子の塾代を払いに走った。

中3の後半までずっとこのような生活を続けて、母親は白髪がどんどん増えて言った。「息子はもうこれ以上やったら耐えられなくなってしまう」と口癖のように言っていた。塾のクラスからは脱落者が次々と増えていき、その空席を見る度泣きたくなったと言う。母親の様子を見ていた同僚達も本当につらかった。

望みが天に通じたのか、息子は海淀区のある重点高校に合格した。多くの保護者は区の重点高校など大したことないと思うだろうが、その高校に合格するためにどれだけの犠牲を払ってきたか、その息子と母親しかわからないだろう。合格通知を受取った日、母親は耐え切れず大声で泣き叫んだ。3年もの長い時間、息子はもちろん、親も精神的、金銭的に重い代償を支払わなければならなかったのだ。

息子は区の重点高校に入学できたと言っても、高1の成績はクラスの中でも優秀な方ではなかった。先生は基礎がしっかりできていないと言う。同じクラスの生徒のほとんどは市の重点高校に不合格だった子供達だ。

教育資源の争奪戦は、既に小学校入学から始まっている。ある調査によれば、市の重点中学、特に実験クラスの生徒の8割以上が「名門小学校」出身者である。北京では良い小学校に入れなければ良い中学に入れず、良い中学に入れなければ良い高校に入れず、良い大学にも入れない…これが多くの親達が子供を名門小学校へ入れたがる背景になっている。

「このような激しい競争の中では、たとえ1%でも使える手があれば、親達は皆その手を試そうとする。それはまさに病院と同じだ。もちろん三流の病院でも病気は診てもらえる。しかし一流の病院があると知っていながら、そこへ行こうとしない人がいるだろうか?」依依の父は記者にこのように言った。
良い小学校へ越境入学させることは、ひとえに娘の将来を思ってこそだ。しかしそれには金だけでなく、コネも必要になる。

2012年ネット掲示板に公開された北京名門小学校の学校選択費(択校費=越境入学者が入学に必要な寄付金)は「海淀区:6万~10万元/東城区:3万~10万元/西城区:1.2~4万元」だった。
しかし前述の聞風講氏によると、「景山(小学校)25万、史家13万、府学15万、光明9万、和九8万、育民10万、北京実験二小17万、黄城根10万、中古友谊8万、育翔10万、奮闘8万、北大附小18万、北師大附小16万、中3小13万、中2小11万、中1小11万、人大附10万。」という恐るべきものだった。この2つの統計の違いは2倍以上に上るが、その違いはコネの強さ、社会的権力の強さ、中間にどれだけの人が入っているか、によって決まると言う。

名門小学校へ入学できるかどうかは、コネにかかっている

「別に景山小学校へ行かせたい訳ではなかった。あの小学校は東城区の中ではそれほど良い学校と言うわけではなく、地方出身の商売人や成金社長、有名人の子供が多くてお互いに張り合ってるらしい。でもこの小学校には中学と高校があって、成績がよければ無試験で上がれるから、受験の心配がなくなる。
最も重要なのは、私の使えそうなコネが景山小学校しかなかったことだ。一年前に、長年景山小学校に勤めている先生を捜し当てたんだんだが、その時先生は来年の生徒募集についてはまだ決まっていないからもう少し待つように言ったんだ。ところがその翌年にまたその先生に連絡したら、今頃連絡してくるなんて遅すぎる、と言うので、居ても立ってもいられなくなった。コネを探す親の中には、こんな目に会う人が少なからずいるんだ。」

更に依依の父親を不安にさせたのは、「数年前なら学校の先生の裁量でどうにかなったが、今は先生にその裁量はない。」と言う先生の言葉だった。
景山小学校への入学は予断を許さない、依依の父親は3000元を使ってある名門小学校の「坑班」に申し込んだ。

これはコネやお金で名門小学校へ入学できそうにない子供にとっての唯一とも言える方法で、名門小学校の主催する塾(一般的には学校の上層部が直接経営を行っている)へ通わせるのである。国は公立小学校入学に際し「いかなる入学試験も禁止」しているため、学校では子供達の授業態度や授業中のテストを通じて塾生の中から入学できる子供を選ぶ。いわゆる「青田買い」の性質を持つこのような塾は「坑班」と呼ばれる。

娘の知能指数や学習の面で、依依の父親はとても自身を持っていた。彼自身名門大学を優秀な成績で卒業していたし、幼い頃から娘が聡明なことを知っていた。しかし「坑班」が終わった後、入学通知書を受取って喜びに溢れる親達をよそに、依依の家にはついに入学通知書が届かなかったのである。

依依の父親は娘が不合格だったという『訃報』を到底受け入れられなかった。彼に言わせれば、あり得ない事だった。きっと他に隠された原因があるに違いない、例えば娘が活発なので先生に気に入られなかったとか、小学校では「近視率」を気にして眼鏡をかけている娘を受け入れなかったとか…色々考えても納得いかなかった。
1年たって、娘がいつもテストで最下位から数えて何番目かの成績しか取れないのを見て、依依の父親はやっと目が覚めた。娘はきっと本当に成績が悪いから不合格だったのだ、と。

 「今の教育理念では、早すぎる早期教育は子供を功利主義に導き、健康的な成長に深刻な影響を与えると言われている。まさか他の親はそう考えていないと思わなかった。彼らは私立幼稚園に子供を通わせ、ピンインや20までの加減法、読解までやらせている。多くが専業主婦で、毎日家で子供に勉強させている。子供はまだ小さいし、親達が早すぎる早期教育が良くないことを知らないはずはないのに、それでもそうするしかないのだ。官僚の子でも富豪の子でもなく、強力なコネもない人が子供のためを思えば、そうするしかないのだ。テストを受ければ、のんびり育ててきた依依は、早くから小学生のように勉強してきた子供に比べて、その差は歴然としていた。」

景山小学校入学の希望はほとんど消え、別の小学校の坑班でも不合格。同じ団地に住む子供達は皆入学通知書を受取ったのに、依依だけがまだ決まらない。その間、依依の父親は極度の焦りから、一ヶ月の間に5㎏も痩せてしまった。彼は自分が大学を卒業した時に公務員の道を選んでさえいれば、今のような目には会わなかったのに、と後悔さえした。

依依の父親が最終的にいかにコネを探しつくし、いかに高額の択校費を捻出し、いかに「死線」の中から別の「名門小学校」に娘を入学させることができたのか、その忍耐、波乱、恐怖の長い紆余曲折はまさに一本のドキュメンタリー映画が作れるほどだった。

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出典:『新民週刊』“快楽教育”信奉者的反思
http://news.sohu.com/20130428/n374398423.shtml

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Hiroshi)
2013-05-18 21:32:50
ある現象を別の視点からみたような気になりました。

受験地獄と見るか、躍進の原因とみるか…
(上記URL参照)


来週から家族が団体(笑)で杭州からやってきます。温泉巡りを計画中~~♪
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Unknown (はとぽっぽ)
2013-05-22 16:00:19
>Hiroshiさん

皮肉なことに大卒の就職難と賃金の停滞が、教育熱の低年齢化に拍車をかけている気がします。
去年の大卒の就職率は3割、初任給も低い水準のままでは、余程のレベルの大学に合格しなければ自分で自分を養うこともままならない、ということになってしまいます。

杭州のある高校生がネットに「杭州でトップ3の進学校に進学できる見込みのない人は、普通高校をあきらめて職業高校へ行くべきだ。」と書き込んでいました。5年制の職業高校卒では普通大学卒に比べて求人数が2倍、というデータもあります。日本もそうですが、中国でも二極化が激しくなっていくと思います。
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Unknown (つばめ)
2013-06-08 16:19:26
記事、拝見しました。
北京のど真ん中にいながら、こんな北京受験事情を全然知らずに過ごしていました。もし中国語版の記事をお持ちなら、教えていただけませんでしょうか。夫に読ませたいです(笑)。
私は記事にある景山小学や史家小学のすぐそばに住んでいるのですが、近所の噂では、景山は10万程度と聞いていますが、本当に25万もかかるのでしょうか。だったらうちは無理です。。。ちなみに史家は13万と書かれていますが、ここは総理大臣の孫とかが通う学校で、13万程度で入れるとはとても思えません。もしそんなんで入れるなら、申し込み殺到すると思います。記事にも書かれているとおり、コネの強さによって金額が違うということもあるかと思いますが、聞風講氏の挙げる数字にもどれだけ信ぴょう性があるか少し疑問に感じたのと、記事自体にもかなり誇張が入っているようにも感じました。
いやでも、ボーッとしているつばめの頭にはいい刺激になりました。とにかく、お金かかりそうですね。。。泣
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Unknown (はとぽっぽ)
2013-06-08 18:30:28
>つばめさん

記事の中国語版は

出典:『新民週刊』“快楽教育”信奉者的反思
http://news.sohu.com/20130428/n374398423.shtml
↑こちらのページからご覧下さい。
『新民週刊』のこの号にはさらに詳しい情報が色々載っていました(私は書店で立ち読みしましたが)。

雑誌なので、記事の表現に誇張は入ってると思います。ただこの記事の続きに出てくる、子どもに片っ端から私立小学校を受験させる親の話とか、リアルな部分もありました。

ちなみにネットの噂では景山は9年制で中学も無試験で上がれるため、この値段になっているようです。他の小学校の場合、中学入学の際に有名中学だとまた10万ほどお金がかかるんだそうです…(絶句)。
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Unknown (つばめ)
2013-06-09 16:43:15
そう、確かに景山は9年制だけど、25万?ほんとですか?
私の記事の中で、A校と書いているのが灯市口小学で3~5万、B校が景山小学で約10万というのが近所のママ友間での噂。この2校はそんなにレベル差があるのかと聞いたところ、大差ないが、景山は中学まであるので10万と高額になっているとママ友から聞きました。ま、これも噂なので真相は不明だし、うちの子が小学校に上がる数年後には、また値段が変わっていることでしょう。ああ、大変。。。
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25万は仲介費込み (つばめ)
2013-06-21 17:33:42
「景山は25万らしいよ~」と、この記事の中国語版を夫に見せたところ、夫、「この数字は仲介会社や仲介人が取る仲介費込みの値段だよ」とのことでした。自分でコネを探せば、仲介会社の取り分の部分は省略できるはずですね。
「景山よりずっと入りにくいはずの歴家は13万だって、景山よりずっと安いし、こっちのほうが可能性あるんじゃない?」と水を向けると、史家はお金の問題ではなく、市長クラスの子息親戚とか相当強力なコネがないと無理なはずとのこと。
夫は、25万も払うなら、もともとの決まった学区の普通の小学校に行かせたらいいという気持ちのようです。
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Unknown (はとぽっぽ)
2013-06-24 18:36:46
>つばめさん

すべての親が名門校入学に必死になってるかと言うとそうでもなく、「今は中国も都市では大学全入時代だし、どこでもよければ大学には入れるんだから気にしない」「いざとなれば国外留学という選択肢もあるし」という意見も結構ありますね。

昔のように大学を出れば必ずいい仕事が見つかるわけでもないので、名門大学を目指す意義が薄くなってるのかも。学歴があってもコネと金がなければ就職が難しい今、逆に考えればコネと金さえあれば学歴はそんなに重要ではないと考える人が増えてもおかしくないと思います。

北京は首都ですから、きっとたくさん選択肢があると思います~。
返信する
チンタオからです (Aoshima)
2013-11-04 11:50:44
チンタオ在住で、子供は、私立に通っています。

外国人で、私は中国語もおぼつかないので、公立は考えもしませんが、英語ができる周囲のママ友たちからは、北京みたいなすごい感じには、思えません。。。

田舎でよかった、、、

はとぽっぽさんには、いろいろな記事を翻訳してアップしてくださりありがとうございます。中国語がんばりたいなと思いました。

またよろしくお願いします!

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