はと@杭州便り

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地方のスモッグ対策、人々は五里霧中

2013-03-13 15:23:02 | その他
南方週末3月7日号より一部翻訳しました。3月7日号には他にも抗日ドラマ製作の背景など面白い記事が満載でしたが、そちらは既に訳されているようなので、大気汚染に関する記事です。
拙訳ですがご興味のある方はどうぞ。。。

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地方のスモッグ対策、人々は五里霧中

『重度污染』の称号を躍起になって勝ち取り、『基準に達した』と見なされる危険を恐れる本末転倒のロジック

速やかに空気管理体制を改善しなければ、手の施しようがない「負のサイクル」に陥ってしまう。

何故『重度汚染都市』の称号が各地で奪い合い、もてはやされるのか?その理由には上からのスモッグ管理の重圧に対し、地方では人材も物的資源も不足し、苦境に立たされているという背景がある。もし解決できなければ、地方都市の空気は『環境基準に達している』ことにされてしまう危険が待っている。

2013年全国両会、灰色に曇る北京は代表委員たちに『良い顔色』を見せてはくれなかった。

「真剣に取り組み、真面目にやって、更にその実績を各地方政府の政治業績として評価すれば、18年と言わず、10年で明らかに改善されるだろう」全国両会人民代表大会代表、鐘南山は中央電視台の特別取材に対してこう答えた。

しかしその内情を知る大気環境専門家は、鐘南山のこの期待を非現実的だと見ている。

現在、スモッグ改善の重圧の中、地方都市ではかえって苦境に立たされていて、『重汚染都市』の称号が『貧困県』と同じようにもてはやされる事態すら起こっている。

「多くの都市では『重汚染都市』に認定され、大気汚染指数の目標値達成までの期限を必死で延ばそうとしている。地方では『全国貧困県』に認定されるのを熱烈に喜ぶのと同じだ。」とある地方環境保護局の職員は話す。

その背景にあるロジックは環境保護部の求める「抗スモッグ戦勝利へのスケジュール表」だ。基準を超える大気汚染物が15%以下の都市2015年に、15%から30%の間の都市は2020年、30%以上の都市は2030年までに基準値まで下げなければならない。つまり大気汚染物が多ければ多いほど、多くの時間を「稼ぐ」ことができるのだ。地方の大気汚染対策は、人的、物的資源が不足し、苦境に陥っている。これもまた、中国の大気汚染基準値が厳格になった後に向き合わざるを得ない現実である。

データもなく、専門家もいない

業界では既に行動が始まっている。

2013年1月、清華大学、環境保護部環境規格研究院など中国の大気汚染対策に関連する10の核心科学研究機構が、細々と「中国清潔空気聯盟」を立ち上げた。

「国は多くの厳しい目標を設定したが、問題はそれを実行できるかどうかにかかっている。各地方の執行能力には差があるため、この公益性のプラットフォームで資源を統合し、地方都市の政策実行のサポートを提供したい。」連盟事務局責任者の解洪興氏はこう話す。

この抗スモッグ戦は既に地方でも展開されている。しかし管理の面でも技術の面でも、地方は大幅に立ち遅れている。

「各地から私に報告書を作りに来てほしいという依頼が来ます。」中国環境科学学会の開いたあるメディア科学普及サロンで、連盟の指導委員の一人、中国環境科学院副院長の柴発合氏はこのように話す。
「ある地方政府のトップは3年でPM2.5を打ち負かさなければならないと言う。しかし彼らはPM2.5が一体どういうものかさえ知らないのです。」

中国の現在の大気汚染はPM2.5、オゾン、VOCなどの汚染物質からなる複合型の汚染で、汚染物質の出所も直接排出と二次転換によるものの二種類が含まれている。異なる汚染物質の間で相互転換が起こり、各項の汚染物質を減らすには協調して制御しなければならず、例えばAの濃度は下がっても、Bの濃度はかえって上昇するという結果になってしまう。これらはすべて多くの地方環境保護部門のこれまでの管理能力を超えるものである。

「地方にとっては、国は目標を定め、審査を行うだけで、何をどのようにすれば目標を達成できるのかという指導は何もないのです。」と解洪興氏は話す。

2012年末に公布された『重点区域大気汚染防治“十二五”規画』では北京・天津・河北省、長江デルタなど三つの地区、117の都市に対し、2015年までにPM2.5濃度を少なくとも5%下げ、さらに規準を超える都市には基準に達するための計画書を提出するように求めている。これが地方都市を巨大な技術の難題に直面させている。

第一の難関は大気汚染源排出リストの作成である。「全国でもこのリストを作成しているのは数箇所に過ぎない。」連盟指導委員の一人である南京大学環境学院教授の畢軍氏によると、南京のような科学研究能力の高い都市でさえ、今まだこのリストを作成中だということである。

排出リストの作成は大気汚染予防対策の基礎作業である。地方では以前から環境汚染統計や、全面調査データが作成されていたが、今回のリストでは更に精密なデータが求められている。さらに第二の難関は、一体どのぐらいの期間で目標を達成できるのか、汚染物質を突き止め、対策を施したとして、起こりうる成果と危険性がどのようなものなのかを予測すること。これは技術面での最大の困難である。

しかし実は、地方の大気管理における更に大きな問題は、その管理機構にある。長い間、大気汚染は各地であまり重視されてこなかった。アジア清潔空気センターの万薇氏は以前江蘇省を調査、研究のため訪問した際、環境保護庁の職員が「誇らしげ」に、彼ら7人のチームが大気汚染の担当であると話した。それは(国の)環境保護部汚防司の大気及び騒音汚染予防対策所でさえ4~5人のチームで、大気汚染と騒音公害の両方を兼職していたからだった。

これに対し、アメリカ環境保護局では大気汚染を専門に担当する職員は1400人、車の管理を担当する職員だけでも6~700人を配置している。カリフォルニア州の一州だけでも1200人が、35の空気品質管理区に分配されている。もう一つの参照モデルとして、中国の原子力安全局が挙げられる。中国科学院院士のhao吉明氏は以前から国に空気品質管理局を設立し、原子力安全局並の約1000人のチームを作るべきだと訴えている。

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とにかく専門家も、データも、職員も「ないないづくし」。
省の環境保護庁大気汚染担当者が、たったの7人。
空いた口が塞がりません。

昔、小学校のウサギ小屋の当番だって7人はいたような(爆)。

国は10年で何とかすると豪語してますが、何を根拠に??
この記事は地方の話ですが、北京や上海だってこれよりどれだけマシなもんだかわからないだろうと思います。

貧困県認定についての問題は、こちらに詳しく載っています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20120306/229550/?rt=nocnt

出典:「南方週末」3月7日号 地方治霾:人在囧途
http://www.infzm.com/content/88652

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3 コメント

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日本との温度差 (mwn)
2013-03-13 17:52:08
こんにちは。いつも興味深く拝見しています。

大気汚染の件、皆本当に事態の由々しさを感じているのでしょうか。馬氏が北京で笑ったように、「今回の件では貴賎関係なく、中国にいる限り皆被害を被る」のに。「大変だ!汚染空気がやってくる!!」と緊迫している日本との温度差には呆れてしまうばかりです。

不謹慎ですが、JIONG(囧)の字に笑いました。
本当に今の我々の気持ちを代表していますよね。
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Unknown (はとぽっぽ)
2013-03-15 15:52:43
>msnさま

中国人って刹那的と言うか、「数十年後にやってくるかも知れない健康被害」より「明日のカネ、メシ」なんだと思います。そもそも健康のことをもっと重視していれば、こんなに喫煙率が高いはずがないと思います。
それに日本の人口より多い貧困層にとっては、大気汚染の心配なんかブルジョワの贅沢な悩みに過ぎないでしょう。日本では最高70くらいの汚染で空気清浄機やマスクが飛ぶように売れていると聞くのに、こちらは最高200を超えても町中でマスクをしている人は見かけないし、中国人で空気清浄機を買ったという友人もいません。
K産党の偉い人々はもう何年も前からドイツ製の超高級な空気清浄機を使い、食べ物も皇室の御料牧場のようなところで生産されたものしか口にしてないとか。その上、かわいい子供や孫は皆海外。さすがに今の時代は「人口減ってちょうど良い」とまでは言わなくても、お上が
一般庶民の吸う空気のことなんかどれくらい関心があるんでしょう?

「囧途」は「五里霧中」と訳しましたが、本当は「困り果てている」くらいの意味でしょうか。中国に住むガイジンの私も「囧」途です(爆)
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JIONG,の字のお話ですが (mwn)
2013-03-15 18:40:58
そうそう、前回のコメントに書き忘れていました。

私がJIONGの字に感じ入ったのは、
どうしても眉毛をひそめて口をぽかんとあけている人に
見えてしまうからです。って、見えませんかね(笑)?

何だか、今の我々のようで、苦笑不得・・・。

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