走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

愛する人と一緒に逝く

2018年04月03日 | 仕事
カナダで医療者による死(MAiD)が法制化されてもうすぐ2年が経とうとしている。
こちらは73年間連れ添った夫婦が同時にMAiDで亡くなった記事。
https://www.theglobeandmail.com/canada/article-medically-assisted-death-allows-couple-married-almost-73-years-to-die/
写真を見て伺えるように高齢であっても避けられない死が迫っている感はない。

カナダではじめてのケース。どう思いますか? このケースについて議論が交わされるのは必須。記事の中ではその論点が挙げられています。

まず、厳しいMAiDのガイドランに沿って行われたかどうかだ。ガイドラインがあるのはMAiDが乱用されないためだ。女性の方は早くにMAiDが認められた。しかし男性の方は2人目の(MAiDの決断は2人の医療者によって別時期に行われなければならない) 医療者によって否定された。これといった疾患名がなかったからだ。

その後原因不明のめまいと意識障害が起こるようになって、再審査で認められたケース。

同様のケースがBC州であった。しかしBC州の医師はCMPA(医師を守るための弁護士組織)へ相談した結果、夫婦の意思が「一緒に死にたい」と言う一方の願がプレッシャーになって本心を語れない状態でない事を明確化するために4日間を置いてMAiDが施行されたのだ。この記事のケースでは審査を行った医師たちはCMPAへ相談しなかった。

んんんーなかなか難しいケースだと思う。2年前までMAiDは違法で、行えば医療者は殺人罪に問われる状態が法制化され、治ることない病気に苦しみ、現在の医療では緩和できない症状に苦しんでいる人たちの死ぬ権利が認められるようになった。高齢による衰弱はこれに入っていない。MAiDの境界線を少し拡大させたケースに思える。

しかしその一方で、長年連れ添った愛する人と手を繋いで、家族に囲まれて最期の時を過ごせたストーリーは究極のラブストーリーにも思える。そこに法という名の矛をかざすのは野暮ったいとも思う。BC州のカップルの家族はこのケースを聞いてショックを受けただろうな、とも思う。死ぬことが第1目標であっても、愛する人と一緒にを求めた2人の思いは届かなかったのだから。

しかし議論を交わす事は将来への一歩。交わされるからこそ法の透明化が図られ、国民の理解も高まるからだ。ご冥福を祈る。そして難しいケースを扱った4人の医療者にも敬服の念を、、、、。


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