走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

看護界のトレンド

2019年08月11日 | 仕事
DNPについて少し

アメリカで急成長しているのがDoctor of Nursing Practice (DNP)。DNP課程を持つ大学も増え、DNP修了者も増え、APNの資格の規定をDNPに釣り上げる話も。これを「やっぱりアメリカは進んでるな、すごいな」と思っている方にちょっと待った!!!

この現象を違う角度から見てみましょう。
まずDNPとP.h.D Nursing についての違いは以前書きました。こちらから

スカラーたちがDNP移行への風潮に警笛を鳴らしている事について書いたのはこちらから

これを読んでもピンと来ないかも。付け足しを。スカラーはフィロソファーなので研究そのものの他に、研究を元にもしくは研究の元になる議論で知識の構築をするのが得意。DNPのような実践家は目の前に起こっている事を数字化し、それを元に結果の構築。つまり知識の構築をするのが得意。今のEBPムーブメントとDNPムーブメントが重なり、議論が減り数字を追い回す傾向になるのでは?!これがスカラーの警笛です。以前に書いたように看護学は数字では測りきれないものが多く、質的研究を持ってしても全てではない特異的な学問です。だから今の傾向の為に看護の核になっていた議論が失われる警笛です。これは看護に限らず心理学や教育学にも共通して起っていることです。

で、話は戻って一番始めに書いたAPNの資格の釣り上げはどこかで似たような話がありませんか?それは看護師の資格が3年制から4年制の学士課程に変わったのと同じ原因なんですよ。看護が病院の付属の看護学校で教えられていたのは日本以外でも同じ。しかしスカラーの登場により、「いえいえ、看護は職業訓練に留まらず、学問とするべき」の主張により3年制の廃止。職業訓練校的な付属病院看護学校の廃止。他の学問と同様に教育環境の整っている大学での学士化が起こったわけです(日本は未だに過渡期なのか踏み切れないのか、そうする気はないのか?)。

アメリカでのAPNの歴史は60年以上と長い。APNは実践家なので実践臨床科目が多く、フィロソフィー的なコアなコースがどうしても少なくなってしまう。初期のAPN教育はそのバランスが悪かった為、スカラー系の修士学者と並ぶ事が出来なかった。最近のAPN教育課程は改善された。しかし初期の頃の卒業生はどうなる???その人たちに教育のチャンスを与えるのがDNP課程なのです。APN後発国であるカナダではDNP課程がありません。後発国なのでアメリカでの失敗から学びコアにしっかり時間を割きつつ臨床実践科目をこなすプログラムになっています。なのでDNP課程を作る必要性を感じていないのが現状です。カナダのNPの中にはアメリカのDNPを取りに行く人もいます。数人知っているのですが、どうだった?と聞くと感想に共通点があり、「簡単だった」「修士で学んだことと然程変わらなかった」と。逆に自国のP.h.DへNPから行った人も知っています。彼女は「辛かったし時間もかかった」と言っていました。

日本の現時点の診療看護師の教育課程はコアがかなり弱いと私は思っています。それはアメリカが辿った失敗をまさに繰り返していると思います。そして同じようにDNP課程が日本でも誕生しましたね。これをアメリカに並べ追いつけのために必要な事と思うかどうか?貴方はどう思いますか?


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