走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

悪循環の結果

2015年03月20日 | 仕事
マーティンは強度の不安症がある。夏に出会い定期的に診察に来ていた。数ある病状を改善するために一つずつ計画実行していっていたが突然消えてしまった彼。不安症のお陰で電話もない彼を見つけることはできなかった。

冬になり突然現れたマーティン。退院したばかりだと。足に塞栓が飛び、手術に成功したので、下肢切断にはならなかった。しかしそれ以来切断の夢ばかり見て眠れない、と彼の不安症状は以前より悪化している。それなのにその後も彼は消えてしまった。

春になった。彼が入院するたびに連絡が入る。フォローアップの診察に来ない、出した検査にはいかないので、抗血栓剤の治療がうまくいかない。入院の度にこのままでは下肢切断をせざるおえない、と耳にタコができるほど言われているにも関わらず、彼の態度は変わらない。不安症状のために外に出れない、検査には行けないから、在宅に血液検査のスタッフを送るようにした。それにも時間がかかった。定期的に検査ができるようになっても、検査結果による薬の変更を知らせようとしても電話をとらない(今は電話がある)。定期的な検査が必要ない新薬の抗血栓剤の使用も検討した。しかし先日これ以上手術はできないと血管外科医は手術を断った。下肢切断が決定した。

それに非常に腹をたてるマーティン。自業自得と言う言葉は使いたくない。プライマリケアプロバイダーとしては力不足と落ち込みたくなるが、ぐっと我慢する。私は神様でも救世主でもない。説明を何度もした。電話も幾度となくかけた。そして本人が選んだ一つ一つの決断が今の結果を導いた。責める必要はどこにもない。前向きに彼をサポートしていくこと、それだけだ。



標高2000mあたりにあるリゾートのベース。道路に全く雪がないなんて。最悪の暖冬の年です。

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