走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

シンポ質疑シリーズ 看護倫理その2

2021年03月17日 | 仕事
こちらは先日の補足。看護倫理の話。TWでの会話をここに貼ります。カナダのケベック州の日本人RNとの会話です。私のものには鉤括弧を入れておきます。


「私が言っていたカスタマイズされた医療の提供 はまさに私が学んだEthics and Politics in Nursing から派生しています。おそらく理解できた方は少数派だったのかな?と感じています。もっと時間が欲しかった。次回の題材かな?」

看護師の研修を受けていた時に同級生の米国人が働いていた病院で、FGMができるクリニックを紹介して欲しいと言われたそうです。また心臓の弁置換術やDMの患者さんで宗教上の理由からbioのものやインシュリンが使えなかったりとかありますね。精神病が受け入れられない人もいます。

「んんんんん、それ系統の倫理ではないのです。だからわかってもらうのが難しいと。グローバルの視点での集団的な医療へのアクセス不公平さ。例えば地域格差、アクセス格差が法律や政治によって起こっている解析です。これ奥深い学問です。医療に対する考え方が変わります。」

道路がなかったり、公共交通機関があまりなくて、高齢者が受信できない。専門医が都市部に多いので、梗塞などの治療開始が遅れる、州ごとの保険なので州を跨いで治療ができない。プログラムの受講回数が決まっているので、それを超えた治療有効でも延長ができないなどでしょうか。

ケベック州では以前フランスのsectorisation(仏語のまま)が適応されていて、精神科は居住区の精神科しか受診できず、地域によって治療に差が出てしまったことがあったそうです。現在は無くなってどの病院でも選べるようになりました。

「そう!それです。インフォストラクチャーだけでなく法律も歴史も習慣も。先住民や移民の平均寿命がカナダ平均より低い理由がわかります。つまり社会が健康に与える因子を解明してシステム的に介入していかなければ国民の健康度は上がらないという事。」

上下水道がないとかもそうですよね。清潔な水を必要としてもアクセスに制限がある。健康な食材が高いとか。

「ああああ、こいう風にトントン拍子で返答が参加者から来たら嬉しかったわ。答えは目の前にあるのに気づかない。日本教育の負の恩恵。って私もSomaさんも日本で教育を受けているのにね(勝手にそうだと思っている)。やはり海外で生き残れる人は何か違うのでしょうか、、、、」

私も日本で教育受けました。こちらではまだ研修だけです。参加者は日本で仕事されているかたが多かったのでしょうか?もしこちらで仕事をしていたらまた変わると思うし、日本でのことも置き換えられると思います。

日本でも以前長野県が塩分過多の食事で平均寿命が短命だったので、保健師が食事指導や運動指導をしてだいぶ平均寿命が伸びたと聞いたことがあります。あとインフラを整えるのは必須ですが、テレクリニックで遠隔地と繋がったり、アップルウォッチのような心電図、血糖測定、血圧など把握できたり、

「今回だけでなく、考える力が強くないと日本のAPNと関わってきて感じます。抽象的な話を自分の経験に結びつける事ができない。答えをすぐ求め自分で考えようとしない。大きな課題です。」

「なので日本人にとって新しいコンセプトを話す時には、時間をかけて砕いてわかるように、と心がけます。でなければ表面的な事をすくってわかった気になってもらっては前進できませんから。10年後に変化が見えますように、って既に3年経ったけど、、、続けますよー」

今のようなオンライン教育だと産休を利用してコースを取ったり、地方在住で必要なことを判る立場の人が移動して勉強しなくて済むのはいいと思いました。大学も対面式に戻らずオンラインを充実させてほしいです。

「日本でオンライン教育への受け入れが始まったのもコロナから。コロナの前だったらここまで参加者は多くなかったはず。それにAPN教育だけではなく看護教育そのものが鎖国状態だから、このような現象が起こるともわかっているのよ。」

「このような現象が起こっていると思っている

の間違い。」


これ、ほんの数分のやり取り。ヒントを与えただけでサクサク返答が返ってくる。これはとても大きな違いです。ちなみに彼女はAPNでもないし修士も持っておられません。

日本の方で私とこのようなやりとりができる人がいるのでしょうか?考えるためには仕事場ばかり見つめずに社会現象やクロスカルチャーとして他の分野の書籍を読んだり講演を聞くことも助けになるかもしれません。答えは貴方の目の前にあるのです。抽象的な話を聞いたら、必ず自分の周りにあるものと結びつけて考えてみましょう。シンポで言ったように答えは一つではないのです。間違えを恐れず声に出してみる。そこまですると演者(教師)は指導してくれると思います。逆にやり方だけ話す講義や講演は、貴方の思考能力を伸ばしません。自分の傾向をまずは考えてみてください。

全ての行動には目的や意味が必ずあるはずです。それを理解せずやっていては周りにどうしてAPNとしてOOをしているのか伝えられないと思います。これも講演で話しましたね。フレームワークから自分の分野や任務に適切な言葉を考え、それがわかるように説明文もつけれてこそ、行動目標が生きてくる。数字や情報に飛びつかず関連性を考え、論理的に説明ができてこそビジョンであり、セオリーでWisdom になるのだと。線が結べられないのなら情報に飛びついているだけですよ!!!!


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2 コメント

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野々内さんの講演を聞いて思い出したオススメの動画 (フォレスト)
2021-03-17 22:04:58
今日の野々内さんのブログを読みながら、先日の野々内さんの講演の内容を思い出し、野々内さんへオススメの講演(対談)動画があるのでシェアさせて下さい(^^) 

演者は野々内さんもご存知の「出口 治明」さんです。
その出口さんの対談動画のリンク↓
https://forbesjapan.com/live/ceo_conference/

動画の途中の 1:47:50〜 の1時間です。出口さんの話し方はゆっくりなので、1.25〜1.5倍速で見ても充分聞けます。リンク先は登録不要で無料で見れます。

野々内さんが話されていた
・日本はなぜ鎖国状態か?
・日本の大学はなぜこうなってしまった?
・オンライン授業や在宅ワークが(海外ではコロナ前から進んでいたにも関わらず)日本ではなぜ進まなかったのか。それがコロナによってなぜ進めることができたのか。それについての構造的な視点での考察
・組織(会社)と自分とが合わないなら辞めて別の会社へ行けばよい。これを出口さんは「脚でかせぐ民主主義」と話していました。
などなど です!

野々内さんが聞いたら、自分と同じこと言ってる、って思うかもしれませんが。。。(^^:

この対談企画自体はForbes Japanという雑誌の経営者向けの企画らしいのですが、出口さんの対談の内容は万人向けの内容なので、是非ぜひ!!
偶然、この動画を知って以来、出口さん講演のお気に入りの動画です(^^)
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Unknown (missy0806)
2021-03-19 06:57:02
フォレストさん

初コメントありがとうございます。出口さんの講演は大好きです。日本の鎖国が看護界だけではなく全てにおいてだと言う事がよくわかります。日本の皆さんにもっと積極的に政治に参加してもらい、おかしいことはおかしいと言える世の中へ。切に願います。
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