ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

腕試し鑑賞会 2人目のレポートです!!

2022-04-17 11:12:58 | 対話型鑑賞

京都芸術大学アート・コミュニケーション研究センターが主催する2021年度大学生と学ぶ対話型鑑賞ファシリテーション講座の受講生のお二人目が、みるみるの会で腕試しファシリテーションされたレポートが届きました。

ご覧ください。※作品画像は検索してください。

 

21年度ファシリテーション講座生〔吉澤〕みるみるの会での腕試しレポート

令和4年3月12日20時スタート

ファシリテーター:吉澤 鑑賞者:みるみるの会 5名 21年度講座生 2名

鑑賞作品名 『 枝 』 作家名 マルク・シャガール 制作年 1956年

 

描かれているモチーフ

浮かぶように伸び、寄り添う二人の人物(花嫁・花婿) ・ 花瓶に生けた花束 ・ 赤白黄色の円の中に描かれた動物と人のような存在 ・ 枝についた花々 ・ 鳥たち(3羽) ・ パリと思はれる街の風景 ・ 背景の青い色彩 ・ 背景色に同化した女性の横顔と花束を持って体をそらした人物 

 

□鑑賞者  〇ファシリテーター

【鑑賞の流れ】

 

□ X形の構図 と 細長く傾く二人の人物の描写

□ 着ているものの様相から結婚式の場面

□ 二人の人物の印象 (暗い)

□ 背景色に同化した女性の横顔(はにかむ)花束を持って体をそらした人物(喜び)

  ―2人の人との関係性(心情)

□ 結婚式の場面 花瓶の花束や枝からの花々から喜ばしい印象

□ 花瓶に生けた花束 (現実感)

□ 花瓶に生けた花束と枝についた花々の対比 (萎れていくものと鮮やかなもの)

〇 花・背景・人物 どこからどう見えているのか 〔ディスクリプションを深める〕

□ 街の風景の橋を通して2人の背景とのつながり

□ 赤白黄色の円(太陽のような明るい存在)背景にある月(夜)― 時の対比と共存

□ 赤白黄色の円の中に描かれた動物と人のような存在―目玉焼き―卵―鳥との関係性

□ 二人の人物と共に鳥が対―卵―新しい命―三羽目の小さい鳥―よい兆しと円の中に

↓ 描かれた動物―未来への安定、一方で二人の視線が見つめあってはいない不思議さ

〇 街の風景と二人の関係性は、どうですか

□ 二人の人物の目線や子供を予見させるような鳥や象徴的な円の存在から未来への喜び、

↓ 不安、現実と向き合う覚悟これらをふまえての意見

□ 背景の暗さからの花々の明るさなのか、花々の明るさからの背景の暗さなのか、どち

  らで考えていいのか悩む

□ 結婚の理想と現実を象徴する背景

 

□ 二人の若さと厳しい現実と夢の世界

 

【 振り返り アドバイス 】

◎ 鑑賞に向く作品であった、意見で見え方が変わる

◎ 第一印象から「気になるところは」ときかれるとビックリするので広くきくと良い。

  パラフレーズの一部が良かった。

◎ パラフレーズはしっかりしているとも受け取れるけども、太陽に「熱」を感じていた

  のに「力強い」に変わり、「山羊」を「獣」に変わるとニュアンスがズレてファシリ

  テーターの誘導につながる。

◎ パリの地名を「都」に変換して違和感があるので、聞いた意味はあるのか? 

返答〇 花の都を「花」としてつながりやすいと考え言い換えた。

◎ 最初の段階で「この部分に対して他の方はいかがですか?」は見るところが狭くなる

  ので、より皆さんの今見ているところを聞き出していったほうがスムーズに進められ

  る。

◎ サマライズを後半の時間配分の中でもう少し早くに入れられると、今までの意見をま

  とめやすい。

◎ 鑑賞者の発言していたところから急に別の部分のモチーフに対しての見え方を問われ 

  ると困る。

 

【 春日から 】

◎ ファシリテーターが話続けていると、沈黙の時間が無い。それは鑑賞者が静かに黙

  って考える時間を担保していないということである。ファシリテーターは沈黙を恐

  れないこと。 

◎ 鑑賞者の発言にフラットであることは重要であるが、ファシリテーターも鑑賞者な

  ので、鑑賞者の意見についての「驚き」や「感嘆」の反応はストレートに出てもよ

  いのではないか?その方が、鑑賞者がノッて話せるようになるのではないか。

◎ ファシリテーターのパラフレーズは鑑賞者の発言の中でどの部分が必要かを取捨選

  択することで、鑑賞者がじっくりと考え、話せる時間が確保できるようになる。

     

【 ファシリテーターの振り返り 】

外部の方と初めてのファシリテーターをしてみてやはり緊張していて鑑賞者の話が聞き

取れていないことがあった。「聴く」ことの意味を再度考えてみるべきだと思う。このことを含めて、再度、ファシリテーターにチャレンジしたい。

 

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21年度ファシリテーション講座生(吉澤)みるみるの会腕試しレポート 2回目

令和4年3月19日20時スタート

ファシリテーター:吉澤 鑑賞者:みるみるの会:6名 21年度受講生:2名

鑑賞作品名 『 枝 』 作家名 マルク・シャガール 制作年 1956年

 

描かれているモチーフ

上記同上

 

□鑑賞者 〇ファシリテーター

【鑑賞の流れ】

 

□ 2人の人物のウエディングドレスと赤いジャケット衣装と長く伸びて傾き浮かんで

↓ いる(不思議さ)

□ 右下の花瓶の花束 特にカスミソウと思われる花の白さが印象的

□ 花瓶の花束と枝からの花々との赤色のつながり 白いカスミソウは対角線で左上の

↓ 円の中の白色とのつながり(色彩の関係性)

 

□ 新郎のジャケット衣装の違和感から考えられる解釈(ダンスの場面)

□〇 新郎新婦の表情や目線が周りの花々と比較(幸福感が無い)

↓ 

□ 背景の色彩の青色と月の印象(夜)(悲しみを湛えている)パリの街の風景と二人

↓ の関係性背景の青色と比較して赤白黄色の円 (二人の未来への希望の象徴)

□〇 二人の目線と背景の青色と花瓶の花束の萎れた花色との関係性(過去)

□ 背景の青色の濃淡(暗さ)それに同化した女性の横顔と反った姿の人物 これらの

↓ 構図と存在(不思議さ)

〇 二人の人物との関係性は?□ まだそこまでは考えていません

□ 男性のズボン柄(道化師)と背景の反った人物・女性の横顔とウエディングドレス

↓ の女性人物の関係性(対照的な位置)(未来と過去)

□ 二人の人物から左側枝からの花々(未来)右側花瓶の花束萎れた花がある(過去)

↓ 背景のパリの街の風景と女性との関係性・花瓶の花束と男性との関係性

□ 花瓶の花束(色彩)からの男性女性の関係性と赤白黄色の円が左側の未来に位置し

↓ ている事と色彩の繋がり

□ 過去にとらわれている男性と未来へ連れ出そうする女性 

〇 背景の鳥たちのディスクリプション

□ 鳥たちと二人の関係性が(祝福されているような明るい未来)

〇 赤白黄色の円の中に描かれたもののディスクリプション 

□ 円の中の黄色が花瓶の花束の中に描かれた小さい黄色とのつながり

↓ 太陽や目玉焼きのようにも感じられて、中に描かれた人物や動物から二人の子供を感じる

□ 赤白黄色の円から玉子―生命―子供―誕生―生活と明るい未来を連想する

〇 今での意見をまとめて鑑賞会を終える

 

【 振り返り アドバイス 】

◎ 丁寧に聞いてくれている、色彩についてのフレーミングが良かった。

◎ 意見を引き出されていたので鑑賞を楽しめた。

◎ 新郎新婦の見え方が今までと違ってきて、踊りや未来や過去といった皆さん意見が

  楽しめた。

◎ ファシリテーターが鑑賞者の意見で出ていないところをコネクトしていた。(月→

  夜→過去)

◎ 青い鳥として見えていない人もいる、つまり一部の意見で見えているものを断定し

  ない方がよい。

◎ 最後に鑑賞者に画面全体を通しての意見を引き出せたら、ファシリテーターがまと

  めに入りやすい。

◎ 人物から背景に話の促しがあった際に、左側が未来・右側が過去という話題になっ

  ていたのに補足がないまま背景全体としての見え方の話題にしたので、つなげ方と

  して強引さを感じた。

 

【 春日から 】

◎ 2週続けてファシリテーションすることで、変化(成長)が感じられた。

◎ フォーカシングが無かったので、作品をどのようにみてきたかの意見が痕跡とし

  て残っていないから、まとめに困るのだと思う。

◎ 丁寧に拾うのは悪いことではないが、くどすぎるので、今まで出ていないトピック

  のみを拾って繋げる。無駄な時間が省ける。

◎ ある解釈について、他の鑑賞者に「ほかの方はどうですか?」と問うのは多様な見

  方を担保するのに有効な手段ではあるが、すべてのものに対してやることはどうな

  のか?を考えながらやる。コンセプトを意識する。

◎ 上記と逆。ひとつのものに対して、一つの解釈で「よし」としないこと。あえて異

  なる見方を出させることで、見え方や解釈が拡がることを意識しておく。

◎ 場数を踏むと、場に慣れ、無駄な緊張が無くなるので、このような体験は積極的に

  行うとよい。

  

【 ファシリテーターの振り返り 】

2回ファシリテーターとして実施し、皆さんの意見を必死に聴こうとしていたが文脈をしっかりと把握できていなかった。ただそこからもう一つ大切な要素について気づきを得ることができた。それは、鑑賞者の意見を自分も含めて他の鑑賞者も聞き取れているか、この視点を持つことがよりききとる事につながるのではないかということだ。より鑑賞者目線になってファシリテーションをしていくことが大切ではないかと授業で学んだことを再度気づかせてもらえる機会になった。

いつも練習会を開いているメンバーとは違うことで、鑑賞の見え方の違いや意見の文脈の違いから、今までにない解釈やそこから生まれる繋がりや結びつきがあったことで、当初考えていたコンセプトがより作品を考えうる意味に近づけることができたように思えた。

 

皆様との対話型鑑賞をさせていただく貴重な機会を、ありがとうございました。


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