ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

11月の鑑賞会レポートその②「フォリー・ベルジェール劇場のバー」(2017.11.11)

2017-12-03 20:48:44 | 対話型鑑賞


今年度最後の浜田市世界こども美術館での鑑賞会のレポートが届きました!

日時:平成29年11月11日 14:00~14:40
場所:浜田市世界こども美術館 図書室
作品名:「フォリー・ベルジェール劇場のバー」96×130㎝
作 者:エドゥワール・マネ 1881-1882年 
コート―ルド美術研究所(ロンドン)蔵(画像を映写して鑑賞)
ナビゲーター:房野      参加者:4名(内みるみる会員3名)

 いつも会場を提供してくださる「浜田市世界こども美術館」。今回は7年前の「みるみるの会」発足当時と同様、図書室をお借りしてプロジェクターで画像を写して鑑賞会を行いました。
 普段は展示室にかかっている作品を初見でナビしますが、時には「対話型鑑賞」に適したお馴染みの作品を対象にするのもよいと考え、興味深かった作品を扱ってみたいと思いました。その作品は、昨年、京都造形芸術大学のACOPで私も鑑賞者として参加したマネの「フォリー・ベルジェール劇場のバー」です。鑑賞中、人物の後ろの鏡に気付いたとたん、一気に新たな視点が生まれ、見方が深まるという劇的な経験をしたので、ぜひ、鏡、現実と虚像、人物の視線の交錯、女性の心情、19世紀パリの享楽と退廃のムード…などが話題になればいいなぁ、いや、そんなことに気付いていくようなナビをしたい!と思ったからでした。
今回は鑑賞に慣れた方の「大人みるみるの会」です。私の目標は、「①限られた時間に深い鑑賞になるようにテンポよく進めること。」また、前回の反省として「ナビも鑑賞者の一人。けれど、②パラフレイズに勝手に私見を上乗せしすぎてはいけない。鑑賞者の思いと齟齬がないか、確認すること」ということを意識することにしました。そこで基本の「どこからそう思いましたか?」「~ということでしょうか?」という返しを丁寧にするように心がけました。
 反省会で「リラックスして話しやすいナビだった。」「『これは誰からの視線だと思いますか?』など、ナビの投げかけによって新たな視点を与えられて、考えるのが楽しかった。」「確認されているのが良く感じられた」と言われたので、今回は①②は少しは向上したのかな、と思います。

 鑑賞は途切れることのない発言で、どんどん話が進みました。ただ、「鏡」に気付いたのはよいけれど、像の映り方に違和感や、現実にはあり得ない角度で映っている部分(女性の後ろ姿の映り方)があり、「鏡ではないのでは?」と堂々巡りになりそうな瞬間がありました。そこで、「これは鏡です」とナビが情報提供(断定・焦点化)することで、「なぜ、このような描き方をしたのか?」という、作者の意図に対する想像を促しました。これにより、ホステスでありながら楽しくなさそうな女性の表情や、鏡に映る世界とのギャップから「実像と虚像」「理想と現実」など、相反する世界や感情の複層的な表現であることなどが語られました。これについては、反省会で『「鏡」や、「19世紀末のパリ」などの情報提供のタイミングが良かった。それにより、さらに深く考えることができた」との意見をいただきました。ただ、『「19世紀末にパリの酒場などで働く若い女性は地方出身者や貧しい家の出であることが多かった」という情報提供に対して、話の進み方に思考がついていけないことがあった』『「退廃的」という言葉が独り歩きしていた。なぜそう感じるのか、絵から見つけるべきだった』などの反省点も指摘されました。私としては、鏡の右に映る男性を「ドガの描く踊り子の絵の隅にたたずむ紳士=若い娘を性的対象とするパトロンのような存在」として感じていたので、そういう情報提供になったのですが、早計だったかもしれません。そこは、鑑賞者の感じ方の流れをつかむ必要がありました。
 40分があっという間に過ぎ、まだ言い足りない鑑賞者の気持ちを残しつつ終えました。反省点は数々ありますが、今回、初めてこの作品をナビすることができて、とても有意義でした。ACOPで選び抜かれた作品に、鑑賞者として触れることができたおかげだとも思います。年に一度のACOP詣では、ナビのスキルを向上させるにはとても有効だなあと実感しました。今年は残念ながら参加できませんが、来年はぜひ参加したい!「みるみるの会」発足のきっかけにもなったACOPに感謝!です。


次回の「みるみるの会」の鑑賞会は、グラントワ内石見美術館にて。12月17日(日)14:00~です。
石見美術館のコレクション展「あなたはどう見る?-よく見て話そう美術について」の作品をみるみるメンバーとともに楽しみましょう。
 
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