ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

出雲JC文教委員会の皆さんと2回目の学習会を行いました

2014-04-27 16:28:35 | 対話型鑑賞
出雲JC文教委員会の皆さんと2回目の学習会を行いました


4月23日(水)に出雲JC文教委員会の皆さんと2回目の学習会を行いました。
出雲JC文教委員会の皆さんは5月例会での研修会を開催しようと企画中です。かねてから委員長と交流のある私は「対話型鑑賞」の意義について折に触れて語っていました。5月例会で「ヴィジュアル・シンキング」をテーマに研修会を企画し、実践しようと思い立たれた委員長は私に協力を要請、3月に続いて2回目の学習会となりました。
 前回は「対話型鑑賞」とは何かをまず体験してもらう学習会でした。そこで「対話型鑑賞」の面白さに気づかれた委員の皆さんは、出雲JC会員全員にこの体験をさせたいと感じてくださいました。そこで今回は5月例会での実践をイメージして本番(例会)に即したワークショップとしました。

メニューは
Ⅰ)ブラインド・トーク
Ⅱ)対話型鑑賞 3作品(3名の方がナビゲーターの練習ができるようにしました)
です。

Ⅰ)ブラインド・トークの作品は3月の京都造芸大のセミナーで使用した作品を造芸大から頂いて行うつもりでしたが、2作品目(熊谷守一)をパワポで解説中に誤って投影したので、差し替えてベン・シャーンの「解放」にしました。トーク中の様子は画像にもあるのでご覧ください。実践してみての感想は
「描かれているものを一つ一つを細かく説明されると、そのことについてはよくわかるけれど、それではなかなか全体像がつかめないので、全体と部分の説明の兼ね合いが大切。」「物の名前を言われてもそれぞれの思い浮かべるイメージは違う。くしと言われても、ブラシのようなものを思う人もいれば、櫛を思う人もいるので、名前に頼らず、もう少し詳細な説明が必要。」「説明を聞いていて、よくわからない時は、聞く(質問する)ことが大事。そうすると自分の欲しい情報を得ることができる。」などが出ました。これらの思いを共有しながら少し休憩をはさんで、いよいよナビの実践となりました。

Ⅱ)最初の作品は雪舟の「慧可断臂図」です。
 1作品目のナビ担当者には事前に作品をみてもらいました。しかし、この作品の背景にあるものをナビに事前に知らせるのには時間が足りないと感じ、「情報が無くてもナビはできるので、みる人たちと同じ立場でこの作品をみながらナビしてください。」とアドバイスし、対話型鑑賞は始まりました。

2作品目は「カラカラ帝」です。この作品を使って例会行事を行うといいと考えています。やる気のある会員の方が手を挙げられました。休憩時間に少し画像をみせてイメージトレーニングしてもらいました。ローマ時代の大理石彫刻で、この皇帝は母と弟を殺して皇帝の座についたこと。残忍な面もあるが勇猛で兵士からはとても慕われていたことを簡単に伝えました。でも、みた人が話すことに耳を傾けてナビをすればいいことを1作品目と同様に伝えました。

 3作品目は熊谷守一の「陽の死んだ日」です。本当はブラインドトークの2回目の作品用でしたが、間違ってスクリーンに映してしまいましたので、ナビ実践の3作品目に変更しました。これまでみてきた作品とは一変してマチエールのある激しい作品です。何が描かれているのかを判別するのも難しい作品です。しかし、本日3作品目なのでどのくらいの対話が展開されるのか、私にとっては参加者の皆さんの実力テストのようなイメージの作品となりました。

 3作品のナビはそれぞれ違う方が担当され、持ち時間はどれも20分弱、十分な対話はできませんが、より多くの方にナビの経験をしてもらうならこの方法しかないかなと考えました。ブラインド・トークと3作品の実践と振り返りを入れての2時間はあっという間に過ぎました。7時30分から始まって、気が付くと時計の針は10時になろうとしていました。

 3名の方のナビの腕前は、さすが日ごろから人の前に立つ役職にある方たちなのでとてもお上手で、初めてとは思えない進行でした。(前回の私のデモンストレーションもよかったということでしょうか???)また、みる側の方々も、普通に根拠に基づいて発言がされていて、その辺りも普段の仕事ぶりが垣間見えるというか、論理的な思考に基づいてお仕事をされているのだろうということが推察される発言でした。
 「なるほど。」という発話者の発言を受けとめ、「どこからそう思いますか?」と根拠を問い、沈黙が続くと二者択一の質問を投げかけるなど、ナビをなさっている方は無意識ではあるのだろうけれど、必死で会話を繋げようと奮闘している姿がみられました。そしてそれが的外れでないところが素晴らしいと思いました。
 パラフレーズもとても上手で、慧可断臂図で達磨大師が向かい合っている岩の向こうにまだ人が隠れているという発言に対して「この岩の向こうに隠れた第三者がいるということですね。」などと軽妙な言いかえをなさったり、カラカラ帝が彫像となって残っているので当時のトップクラスの地位にいた人ではないかという発言に対して「つまり当時の英雄ということですかね?」と誰もがイメージしやすい「英雄」という言葉にまとめたりと、どなたもびっくりするようなパラフレーズをされました。きっと仕事の上で様々な人と情報交換をする際にパラフレーズな場面がたくさんあるのではないかと推察しました。
 また、最後の作品は描かれているものを判別するのが困難な作品で「どこに顔があるのか分かりません。」という発言に対して、ナビが説明するのではなく、「顔」と発言した人にスクリーンに出てきてもらって説明をしてもらうように仕向けたのも素晴らしいナビぶりであると感心するばかりでした。(みるみるの会員も見習わないといけません!!)

 こうして3作品のナビは終了しましたが、ナビをされた3名の方は参加者から厳しい指摘を受けてもめげずに、うんうんとうなずきながら、「何でも言って!!何でも聞くよ!!」とおっしゃられ、笑いを誘っていました。その雰囲気からも、この文教委員会のメンバーの仲の良さが対話型鑑賞の実践にも出ていたと感じました。自分では真剣に考えたことでも話すと失笑を買いそうなことや突飛なことでも、受けとめてくれる仲間という安心感が話しやすさやナビのしやすさの要因になっていると感じました。そういう場が対話型鑑賞を行う上ではかなり重要なので、すでにその素地ができている所から出発しているので、ナビもスムーズだったのだろうと思いました。親和的な素地が大切と改めて感じました。
 また、「どこからそう思うか?」については皆さん、無意識に発言できていたように思います。でももう一歩踏み込んだ「そこからどう思うか?」まで言及するところまでいけませんでした。それは時間の関係もあったと思います。どの作品もあと10分話せたら、そこまでたどり着けたのではないかと思いますが、ナビも意識して「そこからどう思うか?」を促すことができたらよかったと思います。このことは、みるみるでも今後の課題だと感じていることです。

 こうして出雲JC文教委員会の皆さんとの2回目の学習会は終わりましたが、この後会場を居酒屋さんに移して反省会となりました。
 「脳をフル稼働させた。」という会員さんや「絵をみに行きたくなりました。」と語られる方。「美術館って敷居が高かったけど、こうやってみればいいとわかると、行きやすくなりますね。」と話してくださる方もおられて、ひそかに普及に役立っていると手応えを感じました。大人対象の実践なので鑑賞後に作品についての情報を伝えました。情報を知ることによる虚しさ(自分たちが会話したことは何だったのか。と、感じること)はないかと尋ねたところ、「別に感じない。」「話し合った後だからこそ、謎解きをされるような気持ちで、聞くことができる。」「これをしてもらえないと、ずっとモヤモヤが続く。」と話されました。情報を開示することについては是非があると思いますが、文教委員会の皆さんについては、有りなのかなと感じました。ここで私は失礼しましたが、皆さんは2次会もされたようで、そこでも絵の話が続き、影響は大きいと、委員長さんから翌日報告を受け、とてもうれしく感じました。ぜひ、5月例会で研修会が開催される運びとなることを祈っています。

 さて、最後に5月からのみるみる例会は浜田市世界こども美術館での企画展関連イベントに協力します。ご都合のつく方は、参加をお待ちしています!!浜田市内に眠っていた名作が一堂に会される展覧会となっています!!
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