2006 J1J2 入れ替え戦 第2戦: アビスパ福岡 1-1 ヴィッセル神戸
■ J1をめぐる最後の攻防
前回の第1戦では、両者得点なく0-0のスコアレスドロー。J1の座をめぐる最後の戦いである第2戦が、福岡の博多の森球技場で行われました。
福岡のスターティングメンバーは、前の試合と変わりのない4-4-2です。そして神戸には、頼れる主将の三浦がついに登場です。この三浦、いつもの3トップの左には入りませんでした。その左ウイングは、前回での突破力が買われたのか、引き続いて茂木が担当します。左から茂木、近藤、朴という3トップの下に、今日はセンターハーフとして三浦が起用されます。
福岡は第1戦と同様、サイドチェンジなどを駆使して、中盤の左右からクロスなどを中心として揺さぶって行くサッカーです。
一方の神戸は、ほとんど右サイドからによる攻撃でした。右サイドバック北本、MF田中、そして右ウイングの朴と、3人で厚みのある突進力で、強引にこのエリアを攻略しようとします。これを前にして、福岡の左サイドバックのアレックスは、開始直後に見せていたオーバーラップがほとんど出来なくなり、自陣に釘付けとなりました。
ですが、どうも両チームからは得点できるような雰囲気が漂ってきません。
神戸が前回と比べては、プレスを効果的にかけていたことは確かでしたが、それにしても今日の福岡はどうもつなぎがうまくいきません。連携力を見せられたのは2度ほどだけで、あとは全くパスが噛み合いませんでした。
神戸の方も右サイドをごり押しで進めようとしますが、ここに福岡のDFのアレックスと宮本が、さらにはMFの古賀、ホベルト、佐伯までが駆けつけ、数的優位を作りながら突破を一度も許しません。今日も福岡の粘り強い働きに苦戦を強いられます。
何より、お互いが相当に慎重な立ち上がりでありました。失点することを多大に恐れていた感じです。特に福岡にとっては、失点は神戸のアウェーゴールとなるわけで、致命的になりかねません(2試合戦って両者の勝利数が同じならば、アウェーでより多く得点したチームが総合勝利となるため)。シュート数は両チームで合計たったの8本と、我慢の展開が続いた前半戦でした。
後半になると、さらにひどくなりました。
神戸はただ一人、MF田中だけが、キープに活動量にと健闘を見せます。田中がチームのリズムを作るきっかけとなりそうな感じが大いにありましたが、いかんせん、他の選手たちの動きがそろって控えめもいいところなのです。まさに孤軍奮闘という言葉が適していました。
福岡の方と言えば、より一層にパスミスが多発しています。攻撃に転じる際に、一向に前線へボールのつながりそうな気配がありません。プレッシャーのない場面からでも、きっちり組み立てることが出来ず、前半に増して程度の低い試合運びを見せてしまいました。
そんな中での後半15分です。コーナーキックの流れから、左サイドでキープした三浦が、ゴール前へふんわりとした放り込みをします。そのターゲットは、オーバーラップしてきた北本。ここで福岡、何と3人もの選手がこの北本のマークへとついていってしまったのです。当然、北本にシュートは許させませんでしたが、ホベルトが力なくクリアしたボールは、目の前でフリーとなった神戸FW近藤の下へ。近藤、これを着実に決めて、ついに神戸は総計150分にもわたるスコアレスの拮抗を破り、先制したのです。ペナルティエリア内では福岡の4人に対して神戸は2人と、福岡が競り勝ってしかるべきシーンでしたが、痛恨の守備連携のミスで、福岡はこれを失点としてしまいました。
この1点は神戸にとって貴重であり、福岡としては大変な事態になるものでした。仮に福岡が1点追いついてドローに持ち込み、2試合で両チーム2分けという互角の成績にしても、アウェーゴール数の差により神戸を上回ることができません。すなわち、福岡はもう勝利するほかはなく、ここから2得点が最低必要となってきます。
即座に2人の選手を代えて反撃に出る福岡。神戸は早々に近藤だけをワントップに据えて、全員が守備体勢に入ります。崖っぷちの福岡の猛攻が開始され、試合があわただしくなってきました。
■ 福岡の猛反撃も実らず・・・
正直、神戸は全体的に引き過ぎている感もあり、それで圧倒的に福岡が支配したのですが、その福岡は決定的な場面でトラップをミスしたり、相変わらずつなぎがうまくいきません。結局は先制されてから15分間も、1本のシュートも打つまでに至ることができませんでした。
それでも、守備はもう2バックだけにしてほぼ全員攻撃という姿勢で寄せ、そこから左MF古賀のクロスも多発され、必死と言える勢いだけは絶やしません。そしてそれがついに実りました。
後半38分、絶好の場所での直接フリーキックを、アレックスがファインシュート。神戸のキーパー荻のナイスセーブでこれは阻まれましたが、ここからコーナーキックを得ました。そのコーナーキックの速いクロスに、密集する神戸守備陣の中で河本が体を張ってこれを頭で横にすらし、その先で待ち構えていた布部が執念のヘディングゴール!これまで崩しきることのできなかった福岡は、セットプレーを成功させて、残り5分のところでようやくまず同点に追いつくことができました。
さあ、あと1点です。徹底的にドン引きで守りきろうとする神戸へ、波状攻撃をかける福岡。引き続きフリーなスペースを突く古賀からの、続発されるクロスに全てを託します。そのクロスから、途中出場のFW薮田の、惜しいテクニカルなヒールキックでのシュートがありました。さらにロスタイムには、神戸の三浦のクリアミスから、あとわずかにもう一押しでゴールインだったという、ゴール前での大混戦も生まれました。しかし結局、逆転することは叶わず、無情の試合終了を告げるホイッスルがホーム福岡の競技場で響き渡りました。
次々に倒れこむ福岡のイレブン。歓喜の輪を作り、大騒ぎの神戸陣営。グラウンド上で両者の表情が、余りにも対照的に分かれて映し出されていました。神戸は降格から1年でJ1昇格が、そして福岡は昇格から1年でJ2降格が、それぞれ決定しました。
福岡は第1戦で見せた攻撃時の連動性が、どうしたことか今日はまるで発揮されることがありませんでした。あれほど粗雑なパスを繰り返していては、自滅と言われても仕方のない試合内容です。守備時における、中盤以下の選手たちの献身的な活動は十分に評価に値するため、今後の課題は何と言っても攻撃の精度を高めていくことでしょう。最前線の選手の補強を含めた攻撃力の強化、クロスやフィニッシュなどのここ一瞬にかける技術力の向上。これらを徹底的に鍛え上げて、J1に返り咲けるようなチームの総合力を手にしていってほしいと思っています。
■ 神戸、そして三浦の涙のカムバック
それでは、勝ち上がった神戸の方に目を向けてみましょう。
昇格の喜びに水をさすようで悪いのですが、まずは今日の反省点からです。わずか5本という、この試合でのシュート総数。先制後には一切攻撃をせずに超守備的に切り替えた(これも問題だとは思いましたが)のを考慮しても、いかに神戸の攻撃が機能していなかったのかを物語ります。筆頭に挙げられるのが、茂木の左ウイング起用が大失敗だったことでしょう。前の試合では、後半から切れ味鋭い突進力を見せて、一人で無理やり戦況をひっくり返しましたが、今日はついに前後半通じて彼が攻撃に関与することはありませんでした。これが多大に影響して、左からのサイドアタックは皆無だったのです。一方の右サイドと言えば元気で、北本、田中、朴が存分に働いていて、ここが攻めの中心となっていました。ところが、対峙する福岡の同サイドの守備陣に加え、神戸にとっての左サイドをケアするべきの、福岡の佐伯や千代反田などにも押し寄せられてしまい、完全に封じられてしまいます。右側一辺倒では、やはり無理がありました。せっかく広く散開する3トップなのに、左右の比重のバランスを欠いて、相手を揺さぶれなかったのが最大の要因と考えられます。
三浦も、中央のトップ下というポジションで、あまり輝けてはいませんでしたね。右からは朴の優れた突破力、左からは三浦の高性能なクロス。やはりこれが今現在の神戸にとって、ベストな攻撃布陣の選択なのではないでしょうか。
その主将の三浦の一振りが、値千金の1点を呼び寄せました。三浦は試合の流れの中では余り絡めませんでしたが、さすがにセットプレーでの存在感は抜群で、高度なキックを何本も見せてくれました。先制点を生んだきっかけも、三浦が蹴ったフリーキックのチャンスからでした。この右サイドから上げた、三浦のフリーキックによるクロスは絶妙な軌道で、福岡側はかろうじてコーナーキックに逃げることしかできなかったのです。そしてそのコーナーキックの流れから、最後は三浦自身の放り込みにより、あのゴールがもたらされました。
三浦は試合終了間際、あわや福岡に逆転を許しそうになる致命的なバックパスのミスを犯すなどもあって、決して満足と言えるまでのプレーでなかったことは事実です。しかし決定機を作れない展開の中で、第1戦にはなかった彼のプレースキックという最後の武器は、神戸にとって頼もしい存在であったことに間違いはありません。結果としてそれが間接的に、大きなアウェーゴールへつながったのです。
試合終了後には涙・涙・涙であった三浦。J2降格も「責任を果たすため」と代表復帰もJ1の舞台も捨て、神戸を昇格させる道を選び、苦しく長いJ2での戦いを続けてきました。その彼の、神戸をけん引する姿、そして驚異的なキックによる一撃が、来年はJ1のリーグ戦で披露されることになります。
躍動した右サイドの選手たちの中でも、MF田中のパフォーマンスは優れたものでした。運動量で地味に守備で貢献する一方で、ボールを保持すれば安定したキープ力と丁寧なパスで、神戸にリズムを与えようと試みます。先制するまでの後半の神戸は、彼だけが光る存在でした。シーズン途中から起用された田中は、もうチームにとって欠かせない選手の一人となっています。
そして右サイドバックの北本です。試合序盤から敵陣深くまで攻め上がり、自身も豪快にシュートを放つというアグレッシブさです。神戸の右サイドを重厚にさせた立役者でした。本職の守備も怠らず、ハードなプレスで相手を潰していきます。特に、試合が動いてからの福岡の猛攻時には、一層その耐久性は際立っていました。クロスを上げられてピンチになりそうな局面では体を張ってブロックし、福岡のボールの出し所へは懸命に食らいついていって立ちはだかります。何よりも、サイドバックであるにもかかわらず、ここぞというときのゴール前中央でのカバーリングが秀逸でした。先制点をアシストする格好となったオーバーラップや、終了直前に起きた危機的混戦時においてギリギリでのゴールイン阻止と、攻守にド派手で大車輪の活躍でした。中央に絞り気味だったために、同サイドの福岡の古賀には何度もクロスの機会を与え続けていましたが、総じてはこの試合の殊勲の選手と言っていいでしょう。
■ 昇格組の奮闘に期待!
結局、J1昇格を目指して最後まで火花を散らした、J2のトップ3が昇格するということになりました。お互いに、この長いマッチレースでライバルとなった間柄。この3チームがまた、J1という舞台でせめぎ合うというのが面白くなりますよね。オフシーズンの動向を見てからでないと判断できませんが、おそらく各チームともJ1残留圏内からあわよくば中位へ、というのが来年の目標になるのでしょう。横浜FC、柏、神戸。それぞれが独自の個性を持っていて、J2を大いに楽しませてくれた3チームです。その特徴の方向性を変えることなく伸ばし、この1年に確立させたスタイルそのままでもって、J1に挑戦する姿を観たいというのが私の希望です。
2006年度のJリーグも、今日でもって全て終了いたしました。来年度も激戦となって盛り上がってくれることを期待したいですね。
■ J1をめぐる最後の攻防
前回の第1戦では、両者得点なく0-0のスコアレスドロー。J1の座をめぐる最後の戦いである第2戦が、福岡の博多の森球技場で行われました。
福岡のスターティングメンバーは、前の試合と変わりのない4-4-2です。そして神戸には、頼れる主将の三浦がついに登場です。この三浦、いつもの3トップの左には入りませんでした。その左ウイングは、前回での突破力が買われたのか、引き続いて茂木が担当します。左から茂木、近藤、朴という3トップの下に、今日はセンターハーフとして三浦が起用されます。
福岡は第1戦と同様、サイドチェンジなどを駆使して、中盤の左右からクロスなどを中心として揺さぶって行くサッカーです。
一方の神戸は、ほとんど右サイドからによる攻撃でした。右サイドバック北本、MF田中、そして右ウイングの朴と、3人で厚みのある突進力で、強引にこのエリアを攻略しようとします。これを前にして、福岡の左サイドバックのアレックスは、開始直後に見せていたオーバーラップがほとんど出来なくなり、自陣に釘付けとなりました。
ですが、どうも両チームからは得点できるような雰囲気が漂ってきません。
神戸が前回と比べては、プレスを効果的にかけていたことは確かでしたが、それにしても今日の福岡はどうもつなぎがうまくいきません。連携力を見せられたのは2度ほどだけで、あとは全くパスが噛み合いませんでした。
神戸の方も右サイドをごり押しで進めようとしますが、ここに福岡のDFのアレックスと宮本が、さらにはMFの古賀、ホベルト、佐伯までが駆けつけ、数的優位を作りながら突破を一度も許しません。今日も福岡の粘り強い働きに苦戦を強いられます。
何より、お互いが相当に慎重な立ち上がりでありました。失点することを多大に恐れていた感じです。特に福岡にとっては、失点は神戸のアウェーゴールとなるわけで、致命的になりかねません(2試合戦って両者の勝利数が同じならば、アウェーでより多く得点したチームが総合勝利となるため)。シュート数は両チームで合計たったの8本と、我慢の展開が続いた前半戦でした。
後半になると、さらにひどくなりました。
神戸はただ一人、MF田中だけが、キープに活動量にと健闘を見せます。田中がチームのリズムを作るきっかけとなりそうな感じが大いにありましたが、いかんせん、他の選手たちの動きがそろって控えめもいいところなのです。まさに孤軍奮闘という言葉が適していました。
福岡の方と言えば、より一層にパスミスが多発しています。攻撃に転じる際に、一向に前線へボールのつながりそうな気配がありません。プレッシャーのない場面からでも、きっちり組み立てることが出来ず、前半に増して程度の低い試合運びを見せてしまいました。
そんな中での後半15分です。コーナーキックの流れから、左サイドでキープした三浦が、ゴール前へふんわりとした放り込みをします。そのターゲットは、オーバーラップしてきた北本。ここで福岡、何と3人もの選手がこの北本のマークへとついていってしまったのです。当然、北本にシュートは許させませんでしたが、ホベルトが力なくクリアしたボールは、目の前でフリーとなった神戸FW近藤の下へ。近藤、これを着実に決めて、ついに神戸は総計150分にもわたるスコアレスの拮抗を破り、先制したのです。ペナルティエリア内では福岡の4人に対して神戸は2人と、福岡が競り勝ってしかるべきシーンでしたが、痛恨の守備連携のミスで、福岡はこれを失点としてしまいました。
この1点は神戸にとって貴重であり、福岡としては大変な事態になるものでした。仮に福岡が1点追いついてドローに持ち込み、2試合で両チーム2分けという互角の成績にしても、アウェーゴール数の差により神戸を上回ることができません。すなわち、福岡はもう勝利するほかはなく、ここから2得点が最低必要となってきます。
即座に2人の選手を代えて反撃に出る福岡。神戸は早々に近藤だけをワントップに据えて、全員が守備体勢に入ります。崖っぷちの福岡の猛攻が開始され、試合があわただしくなってきました。
■ 福岡の猛反撃も実らず・・・
正直、神戸は全体的に引き過ぎている感もあり、それで圧倒的に福岡が支配したのですが、その福岡は決定的な場面でトラップをミスしたり、相変わらずつなぎがうまくいきません。結局は先制されてから15分間も、1本のシュートも打つまでに至ることができませんでした。
それでも、守備はもう2バックだけにしてほぼ全員攻撃という姿勢で寄せ、そこから左MF古賀のクロスも多発され、必死と言える勢いだけは絶やしません。そしてそれがついに実りました。
後半38分、絶好の場所での直接フリーキックを、アレックスがファインシュート。神戸のキーパー荻のナイスセーブでこれは阻まれましたが、ここからコーナーキックを得ました。そのコーナーキックの速いクロスに、密集する神戸守備陣の中で河本が体を張ってこれを頭で横にすらし、その先で待ち構えていた布部が執念のヘディングゴール!これまで崩しきることのできなかった福岡は、セットプレーを成功させて、残り5分のところでようやくまず同点に追いつくことができました。
さあ、あと1点です。徹底的にドン引きで守りきろうとする神戸へ、波状攻撃をかける福岡。引き続きフリーなスペースを突く古賀からの、続発されるクロスに全てを託します。そのクロスから、途中出場のFW薮田の、惜しいテクニカルなヒールキックでのシュートがありました。さらにロスタイムには、神戸の三浦のクリアミスから、あとわずかにもう一押しでゴールインだったという、ゴール前での大混戦も生まれました。しかし結局、逆転することは叶わず、無情の試合終了を告げるホイッスルがホーム福岡の競技場で響き渡りました。
次々に倒れこむ福岡のイレブン。歓喜の輪を作り、大騒ぎの神戸陣営。グラウンド上で両者の表情が、余りにも対照的に分かれて映し出されていました。神戸は降格から1年でJ1昇格が、そして福岡は昇格から1年でJ2降格が、それぞれ決定しました。
福岡は第1戦で見せた攻撃時の連動性が、どうしたことか今日はまるで発揮されることがありませんでした。あれほど粗雑なパスを繰り返していては、自滅と言われても仕方のない試合内容です。守備時における、中盤以下の選手たちの献身的な活動は十分に評価に値するため、今後の課題は何と言っても攻撃の精度を高めていくことでしょう。最前線の選手の補強を含めた攻撃力の強化、クロスやフィニッシュなどのここ一瞬にかける技術力の向上。これらを徹底的に鍛え上げて、J1に返り咲けるようなチームの総合力を手にしていってほしいと思っています。
■ 神戸、そして三浦の涙のカムバック
それでは、勝ち上がった神戸の方に目を向けてみましょう。
昇格の喜びに水をさすようで悪いのですが、まずは今日の反省点からです。わずか5本という、この試合でのシュート総数。先制後には一切攻撃をせずに超守備的に切り替えた(これも問題だとは思いましたが)のを考慮しても、いかに神戸の攻撃が機能していなかったのかを物語ります。筆頭に挙げられるのが、茂木の左ウイング起用が大失敗だったことでしょう。前の試合では、後半から切れ味鋭い突進力を見せて、一人で無理やり戦況をひっくり返しましたが、今日はついに前後半通じて彼が攻撃に関与することはありませんでした。これが多大に影響して、左からのサイドアタックは皆無だったのです。一方の右サイドと言えば元気で、北本、田中、朴が存分に働いていて、ここが攻めの中心となっていました。ところが、対峙する福岡の同サイドの守備陣に加え、神戸にとっての左サイドをケアするべきの、福岡の佐伯や千代反田などにも押し寄せられてしまい、完全に封じられてしまいます。右側一辺倒では、やはり無理がありました。せっかく広く散開する3トップなのに、左右の比重のバランスを欠いて、相手を揺さぶれなかったのが最大の要因と考えられます。
三浦も、中央のトップ下というポジションで、あまり輝けてはいませんでしたね。右からは朴の優れた突破力、左からは三浦の高性能なクロス。やはりこれが今現在の神戸にとって、ベストな攻撃布陣の選択なのではないでしょうか。
その主将の三浦の一振りが、値千金の1点を呼び寄せました。三浦は試合の流れの中では余り絡めませんでしたが、さすがにセットプレーでの存在感は抜群で、高度なキックを何本も見せてくれました。先制点を生んだきっかけも、三浦が蹴ったフリーキックのチャンスからでした。この右サイドから上げた、三浦のフリーキックによるクロスは絶妙な軌道で、福岡側はかろうじてコーナーキックに逃げることしかできなかったのです。そしてそのコーナーキックの流れから、最後は三浦自身の放り込みにより、あのゴールがもたらされました。
三浦は試合終了間際、あわや福岡に逆転を許しそうになる致命的なバックパスのミスを犯すなどもあって、決して満足と言えるまでのプレーでなかったことは事実です。しかし決定機を作れない展開の中で、第1戦にはなかった彼のプレースキックという最後の武器は、神戸にとって頼もしい存在であったことに間違いはありません。結果としてそれが間接的に、大きなアウェーゴールへつながったのです。
試合終了後には涙・涙・涙であった三浦。J2降格も「責任を果たすため」と代表復帰もJ1の舞台も捨て、神戸を昇格させる道を選び、苦しく長いJ2での戦いを続けてきました。その彼の、神戸をけん引する姿、そして驚異的なキックによる一撃が、来年はJ1のリーグ戦で披露されることになります。
躍動した右サイドの選手たちの中でも、MF田中のパフォーマンスは優れたものでした。運動量で地味に守備で貢献する一方で、ボールを保持すれば安定したキープ力と丁寧なパスで、神戸にリズムを与えようと試みます。先制するまでの後半の神戸は、彼だけが光る存在でした。シーズン途中から起用された田中は、もうチームにとって欠かせない選手の一人となっています。
そして右サイドバックの北本です。試合序盤から敵陣深くまで攻め上がり、自身も豪快にシュートを放つというアグレッシブさです。神戸の右サイドを重厚にさせた立役者でした。本職の守備も怠らず、ハードなプレスで相手を潰していきます。特に、試合が動いてからの福岡の猛攻時には、一層その耐久性は際立っていました。クロスを上げられてピンチになりそうな局面では体を張ってブロックし、福岡のボールの出し所へは懸命に食らいついていって立ちはだかります。何よりも、サイドバックであるにもかかわらず、ここぞというときのゴール前中央でのカバーリングが秀逸でした。先制点をアシストする格好となったオーバーラップや、終了直前に起きた危機的混戦時においてギリギリでのゴールイン阻止と、攻守にド派手で大車輪の活躍でした。中央に絞り気味だったために、同サイドの福岡の古賀には何度もクロスの機会を与え続けていましたが、総じてはこの試合の殊勲の選手と言っていいでしょう。
■ 昇格組の奮闘に期待!
結局、J1昇格を目指して最後まで火花を散らした、J2のトップ3が昇格するということになりました。お互いに、この長いマッチレースでライバルとなった間柄。この3チームがまた、J1という舞台でせめぎ合うというのが面白くなりますよね。オフシーズンの動向を見てからでないと判断できませんが、おそらく各チームともJ1残留圏内からあわよくば中位へ、というのが来年の目標になるのでしょう。横浜FC、柏、神戸。それぞれが独自の個性を持っていて、J2を大いに楽しませてくれた3チームです。その特徴の方向性を変えることなく伸ばし、この1年に確立させたスタイルそのままでもって、J1に挑戦する姿を観たいというのが私の希望です。
2006年度のJリーグも、今日でもって全て終了いたしました。来年度も激戦となって盛り上がってくれることを期待したいですね。
J1は18チームの制度になってから、関西地方のチームが最も少ない2つになってしまいましたね。今年も大阪、京都、福岡が脱落と、Jリーグは東高西低の傾向が止まりません。西部地方ももっと奮起し、日本列島全体で盛り上がってほしいところですね。
その中でも、関西勢では唯一リーグ制覇を成し遂げている、G大阪だけは光る存在です。今年も素晴らしい戦いぶりで、今後も天皇杯や来期リーグに期待が持てます。ぜひ西の代表として、そちらを引っ張っていってほしいと思っています。
関西同士が優勝争いの主役となり続ける時期が、いつかやって来るといいですね。
閲覧ありがとうございました。
ガンバサポですが、海外リーグも好きですし、私の勤めている会社がJFLチームを持ってますので地域リーグやJFL等も好きだったりします。
私は関西の人間ですので、J1関西が1チームと言う最悪の事態を免れ、ほっとしております(笑
来年はC大阪と京都に自動昇格してもらって再来年こそは関西4チームともJ1で見たいものです。(アウェイ費浮きますしね)
これからも楽しい試合評を楽しみにしております。
気になって調べてみたところ、仙台は、福岡とJ2において2年間だけ対戦していて、通算成績は仙台の1勝3分け4敗。うーん、確かに相性は悪いかもわかりませんねー・・・。
しかしながら、過去のデータなんて、今後の各チームの強化次第では、さほど気にするようなものでもないと思いますよ。
今年の序盤に見せた、あの仙台の勢いでもってすれば、福岡ほどのチームも飲み込むことができることでしょう!(多分・・・)
Jだけでなく欧州サッカーの観戦も趣味なものですから、ちょっと時間的に制限はありますが、J2の存在も見過ごさないでいきたいと思っています。
とても丁寧なレポートですね。私もTVで見てたかぎり北本のアグレッシブさと堅実さは素晴らしいと思ってましたが、MF田中までは目がいきませんでした。確かにタメを作り攻守にわたって組みたて役を果たしていましたね。
ベガルタ的には福岡とはこれまであまり相性がよくないので(去年の最終節ドローで入替戦の権利を逆転で甲府にさらわれたことなど…)嫌な相手が帰ってきたな~というのが正直なところですね。
お時間が出来たときにでも来期のJ2の展望などお書きいただければうれしいです。
確かに、あまり褒められるべきではない内容の試合展開だったかも知れませんね。それでも、両チームのJ1へかける意気込みと必死さだけは、十分伝わってきました。
これからも、時間の許す限り、試合の感想を観たそのままに表現して記載していきたいと思っています。よろしくお願いします。
そうだったのですか。私は、福岡の事情には深く存じていなかったものですから、批判されているクラブ側の努力さの怠慢が大きな要因の一つだったとは知りませんでした。
来年のそのクラブ側の方針は、地元の有力若手選手を中心に育成していくことが固まりつつあるらしいですね。
この度の降格は、非常に残念でしたとしか申し上げられませんが、上記のとおり、来年のJ2もチームは過渡期に入って苦戦が予想されるかもしれません。
どうか根気よく、我慢強い応援で福岡を後押ししてあげてください。
コメント、閲覧どうもありがとうございました。
もちろん、今シーズンでもナビスコカップを連覇したという、千葉の「話題の」決勝戦もちゃんと記載しましたよー。よかったら閲覧してみて下さい(笑)
当然のこと、来年度に千葉が国内で暴れまくるようならば、じゃんじゃん観戦してレポートしていきたいと思っています。
そのためにも、まずは阿部の流出は防がないと・・・!
その理由は、私の感じた「この試合は決してレベルの高い試合ではない」という感想が、具体的な項目となって触れられているからです。是非、いろいろな試合のレポートをこれからも作ってください。
1点を取る事への執念が90分の試合中の数%の時間しか見せられない選手しか揃え切れないようなフロントでは、「お前ら、クラブとして勝つ気はあるの?」と批難されても(地元紙などはそういう論調)仕方がないです。クラブ経営の考え方から意識改革しないとJ2でもお荷物クラブに成り下がる事も有り得ます。
辛辣ですが、地元民の怒りはこんな感じです。
TBありがとうございました。実況&解説見ているようで面白いです。
話題の試合を中心に書かれているそうですね。来シーズンは我がジェフ千葉が圧倒的に話題の中心になっていく予定ですので(笑)、その際はよろしくお願いします(*^^)v