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南英世の 「くろねこ日記」

徒然なるままに、思いついたことを投稿します。

国際金融のトリレンマ

2011年08月28日 | 日常の風景
国際金融のトリレンマといわれるものがある。「為替レートの安定」と「自由な資本移動」と「金融政策の自由度」という3つの選択肢は、同時には達成できないという基本原則である。


たとえば、日本は自由な資本移動を認め、自由に金利を誘導することができる。その代わり、固定相場制は放棄している。もし、固定相場制のもとで(たとえばインフレを抑えるために)高金利政策を採ったとしよう。この場合、もし自由な資本移動を認めれば、高金利をねらって海外から膨大な資金が流入する。固定相場を維持しようとすれば、政府は流入するドルをすべて買い続けなければならない。しかしそんなことは不可能だから、結局は固定相場を維持するためには、内外の資本移動を規制する必要がある。現在の日本は、自由な資本移動を認め、その代わり変動相場制を採用(=為替レートの安定を放棄)しているのである。


一方、先進国の多くが変動相場制を採用している中にあって、EU加盟国の間では固定相場制がとられている。EUでは固定相場制と資本の自由な移動を認める代わりに、各国が独自の金融政策を採ることを放棄している。

もし、EUの中で、各国が自由に金融政策をとることが認められてある国が金融の引締めを行ったとしよう。その国の高金利を求めて、やがて資本が大量に流入し、固定相場制は崩壊してしまう。
 そうした事態を防ぐには、国際資本取引を規制するか、独自の金融政策を放棄するしかない。EUは各国独自の金融政策を放棄し、金融政策をECB(欧州中央銀行)に一元化することによって、資本移動の自由と固定相場制を維持している。


野宿

2011年08月25日 | 日常の風景
生田(いくた)武志氏(野宿者支援ネットワーク)の講演を聴く機会があった。「貧困――野宿者と『襲撃』から考える――」というテーマである。現在、大阪の釜ヶ崎には約2万人の日雇い労働者がいる。今は不景気で1日1万円の「おいしい仕事」はほとんどない。野宿している人に声をかけると、「自分で働いているから人の世話になりたくない」と答える人も多いという。

アルミ缶1個1.5円。段ボールは1キロ9円である。1年前までは1円と6円であったから、少しは値上がりしている。それでも1日働いてアルミ缶だと1000個、段ボールだと200キロはなかなか集まらない。最近は女性の野宿者も多い。女性が野宿するきっかけは、失業(派遣切りなど)とDVである。若い女性の野宿者も増えている。

日本では野宿者は「年輩者」というイメージがあるが、ヨーロッパでは若者が多い。日本の場合、若者の半分は非正規雇用だが、親と同居することによって貧困が表面化していない。野宿者に対する襲撃事件は10代の少年グループによって夏休みに起きることが多い。生卵を投げられた、殴る蹴るの暴行を受けた、エアガンで撃たれた、ガソリンをかけられて火をつけられた、なかには、いきなりナイフで目をえぐられた事件まである。

野宿者を襲うのは「ハウス」があっても、家に自分の居場所である「ホーム」がない少年たちではないか。家に帰っても親がいない、いてもケンカばかりしている。お金もない。そんな家庭の子どもたちが襲撃しているのではないか。そうした子どもたちに対して、われわれ大人に何ができるか。今、それが問われている。

他力本願

2011年08月24日 | 日常の風景
 梶田真章(かじたしんしょう)法然院貫主の講話を聞く機会に恵まれた。
「他力本願の他力とは「仏力」のことである。ところが、私ども僧侶が説法をさぼってきたために「他力本願」は他人の力の意味で使われるようになってしまった。僧としてまことに申し訳ない。」

 「800年前の悪人というのは、仏と比較してのことだから人間皆悪人(=アホ)だ。ところが、今は悪人の基準は法を守っているかどうかになってしまっている。死んでも千の風にならない。菩薩になるのだ。墓の下に眠っているのではない。浄土に行っているのだ。人間は皆自己中で、自分が正しいと思っている。だから争いがなくならない。仏教では愛は地球を救わない。愛国心が戦争の原因になってきた。」
実にわかりやすい。歯に衣着せぬ物言いは、聞いていてすかっとした。

 当時の仏教は圧倒的に比叡山(天台宗)の教えが強かった。比叡山では仏になるためには、経を唱え、座禅をし、山を駆けめぐるなど、自力であらゆる修行を実践しなければならなかった。浄土へ行くために貴族たちは、寺を建て、寄進をし、仏像を作った。貴族たちは、人間には聖人と凡夫があると考えていた。

 比叡山に修行をしていた親鸞は、修行をしても煩悩を抑制できない自分に苦しみ、29歳の時ついに比叡山を下り、そして69歳の法然と出会う。他力本願によって悪人も浄土に行けると説く法然や親鸞の教えは革命的であり、貴族たちにすれば「非常識な教え」「トンデモ論」であったに違いない。

 ヨーロッパで人間が平等であると最初に説いたのはルターであるが、日本ではその300年前に法然、親鸞が仏の前の平等を説いていることに改めて驚いた。


格付け会社

2011年08月11日 | 日常の風景
スタンダード&プアーズが巻き起こした余波がまだ収まらない。
ここで、格付け会社のおさらいを少々。

1.格付け会社とは
 国や会社の借金を返す力を調査する会社のことを格付け会社という。
S&Pのほかに、ムーディーズがよく知られている。S&Pの格付けは

  AAA
  AA
   A
  BBB
  BB
  B
  CCC
  CC
  C

の9段階に分けられており、さらにAAは
  AA+ AA AA- 
のように3段階に分けられるというしくみである。
今回、アメリカはAAAから一段階引き下げられて、AA+になったというわけだ。
ちなみに、日本は2011年1月にAAからAA-に1段階引き下げられた。

BBBまではデフォルトが起きる確率はほとんど無い。1~2%以下だ。
しかし、BBになると約10%、Bだと約25%、CCCになると50%位に跳ね上がる。
BB以下は投機的とされるゆえんである。
ギリシャは今CCである。


2.格付け会社はどうやってもうけているのか。
 企業が借金をするとき、自分の会社の格付けをしてほしいと手数料を払って格付けを依頼する。
その手数料が格付け会社の収益となる。


3.格付け会社は信用できるか?
 ここが問題である。かつてS&Pはリーマンブラザーズが破綻するとき、その直前までAの格付けを与えていた。
それにもかかわらず、あっという間に倒産してしまった。
今回も、S&Pの計算に2兆ドル(160兆円)の誤りがあったという。

格付け会社の実力なんて、そんな程度のものなのかもしれない。
それにもかかわらず、これほど大きな影響を与えるということは、たとえS&Pがアメリカ国債の格下げをしなかったとしても、いずれは同じことが起きたのかもしれない。


S&Pの格付けは、S&Pのホームページから、
信用格付け → ソブリン
のサイトで見ることができる。