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南英世の 「くろねこ日記」

実力

『考えて、考えて、考える』 藤井聡太、丹羽宇一郎著 を読んだ。講談社から2021年8月25日に発行されたばかりの対談集である。丹羽さんが主に聞き役として藤井聡太棋士の考えを引き出す形式で対談が進められる。しかし、元伊藤忠社長、元中国大使の丹羽さんの考えが随所に現れ、これが面白い。例えば「実力」について語る場面。

実力とは、将棋をたくさんさした時の平均値と考えれば、実力以上の力が出るときも実力以下の時もある。(藤井)

実力の評価は難しい。僕が入社したころ課長から怒られた。「お前、自分で自分を評価しているんじゃないか。俺は優秀だ、俺は偉いんだと思っているだろう。自分の本当の力が100点だとすると、自分では150点くらいだと思っている。でも、他人から見ると50点とか、良くて70点だ」。他人の認識、自分の認識、本当の実力、これらはすべて乖離している。それから僕はちょっと謙虚になった。(丹羽)

目的と結果についての話も面白い。

科学者はノーベル賞をもらうことを目的に研究しているのではなく、研究の結果としてノーベル賞が贈られる。それと同じことが経営でも言える。社長になりたい、最高益を出したいなどといった、本来「結果」であるべきことを「目的」にしてはいけない。名誉や権力、お金なんて、一時的な欲望を満たしてくれるに過ぎない。たかが知れている。困難に挑戦し乗り越えるという行為そのものが非常に大事なことなのだ。(丹羽)

将棋では必ず勝敗がある。勝つことを目的としないで、その局面での最善手を探求する。負けた将棋で一番気になるのは、形勢の均衡が崩れた局面。どうして崩れたのか、その要因を考え、言語化する。それが次につながる。(藤井)

この二人のやり取りを読んでいて「さすがだなあ」と思う。

最近、囲碁から遠ざかっている。理由は簡単。「負けるのが嫌だから」。

ちょっと反省した。

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