東京に行ってきました。新国立劇場のワーグナー楽劇『トリスタンとイゾルデ』を観てきました。去年の『タンホイザー』に続き、新国立のワーグナー。もちろんトリスタンは初めて見ます。そして神戸から夜行バスでの往復。みなさんから呆れられますが、これが一番安いし、時間もたっぷりで、慣れれば楽ちんなんですよ。当日の朝7時に東京駅に到着。午前中は、東博での『中尊寺金色堂』の特別展を観て、新宿ディスクユニオン経由で、新国立に行きました。
26日の公演でしたが、実は27日には東京春音楽祭でヤノフススキ指揮N響でのトリスタンが東京文化会館でありました。その方が指揮や歌手などには魅力があったのですが、演奏会形式。大分考えたのですが、やはり舞台上演の方がいいかな、でこっちにしました。しかし、二日間連続でトリスタンが上演されるとは、東京ってすごい街ですねえ。ただ、主役ふたり交替があったりで、なんだか落ち着かない雰囲気はありましたねえ。
それで、キャストはトリスタン~ゾルターン・ニャリ、マルケ王~ヴィルヘルム・シュヴィングハマー、イゾルデ~リエネ・キンチャ、クルヴェナール~エギルス・シリンス、メロート~秋谷直之、ブランゲーネ~藤村実穂子、牧童~青地英幸、舵取り~駒田敏章、若い船乗りの声~村上公太。大野和士指揮の東京都響。演出はイヴィッド・マクヴィカーでありました。歌手については、外国人のみなさんは、あまり聴いたことない人たちでしたね。
しかし、トリスタンは休憩を挟んで約5時間半。長丁場です。幕間の休憩も45分。まして、この楽劇、物語的にもそれほどの起伏がなく、男女の恋愛のみ。言うなれば単調。それでこの時間、前夜は夜行バス、うーん大丈夫かなあ、と少々不安はありました。しかし第一幕は少々のところもありましたが、2幕以降は、まったく集中が途切れることもなく、あっという間の展開でありました。総じて実によかった。これまで観た中でも本当によかった公演でありました。これだけのお話の設定で、これほどの深い、そして人を惹きつけるとは、ワーグナーは凄いです。
まず、大野さんと都響。初めて聴きますが、やはり東京のオケは違うなあと実感。ベルティーニやインバルにも鍛えられたんですかね。ガンガン鳴るし、精度も高い。音色もきれいです。なにより、歌手に寄り添い、歌唱を補完するような演奏がとてもよかった。また、終幕に愛の死でも、イゾルデのキンチャの強靱な声に決して劣らず、しっかりと自己主張でありました。ただ、私の席からは、オケの様子や大野さんは身を乗り出さないと見れないが残念でしたねえ。
そして、外人4人組には脱帽でした。ワーグナーの主役級の歌手は日本人では声が少し物足りないですよねえ。これに対して、この4人は圧倒的な声量でそれだけでも大満足。シュヴィング濱ーのマルケ王は、マルケ王の苦悩がもう少し欲しいなとも思ったし、シリンスのクルヴェナールも、多少の落ち着きが、とも思ったが、それでも十分に惹きつけられました。キンチャのイゾルデは、まったくもって不足ない声量を駆使して、立派なイゾルデでしたが、力でねじ伏せられた印象。これだけの歌があれば十分ですね。4人の中で最も印象深かったのはニャリのトリスタン。声の軽さが気になりながらも、苦悩するトリスタンでありました。第3幕のトリスタンの「私が作り、私に注がれ、恍惚として味わったその薬…」と歌うまでのモノローグは、あまりの凄まじさにもう耳や目が歌唱と舞台に釘付けとなりましたねえ。実によかった。感動ものでした。そして、そして、やはり藤村さんですねえ。イゾルデの声量には及びませんが、その歌唱の繊細さや明瞭さ、ブランゲーネの優しさ、すべてが心に訴えかけます。声も極上の美音に聞こえてきます。第二幕の「気をつけてください。夜が明けます」は、歌も表情も、また可憐な存在感も、もう涙がでそうでしたねえ。最高のブランゲーネでした。
最後のイゾルデの愛の死が終わった後も、終わったことへの無念さを感じ、、そしてもう一度みたい、と切に思ったのでありました。今回は4階席の最前列でしたが、ここでも十分でありました。そして、来年は『さまよえるオランダ人』か、と期待にワクワクしながら、夜行バスで神戸に帰りました。
26日の公演でしたが、実は27日には東京春音楽祭でヤノフススキ指揮N響でのトリスタンが東京文化会館でありました。その方が指揮や歌手などには魅力があったのですが、演奏会形式。大分考えたのですが、やはり舞台上演の方がいいかな、でこっちにしました。しかし、二日間連続でトリスタンが上演されるとは、東京ってすごい街ですねえ。ただ、主役ふたり交替があったりで、なんだか落ち着かない雰囲気はありましたねえ。
それで、キャストはトリスタン~ゾルターン・ニャリ、マルケ王~ヴィルヘルム・シュヴィングハマー、イゾルデ~リエネ・キンチャ、クルヴェナール~エギルス・シリンス、メロート~秋谷直之、ブランゲーネ~藤村実穂子、牧童~青地英幸、舵取り~駒田敏章、若い船乗りの声~村上公太。大野和士指揮の東京都響。演出はイヴィッド・マクヴィカーでありました。歌手については、外国人のみなさんは、あまり聴いたことない人たちでしたね。
しかし、トリスタンは休憩を挟んで約5時間半。長丁場です。幕間の休憩も45分。まして、この楽劇、物語的にもそれほどの起伏がなく、男女の恋愛のみ。言うなれば単調。それでこの時間、前夜は夜行バス、うーん大丈夫かなあ、と少々不安はありました。しかし第一幕は少々のところもありましたが、2幕以降は、まったく集中が途切れることもなく、あっという間の展開でありました。総じて実によかった。これまで観た中でも本当によかった公演でありました。これだけのお話の設定で、これほどの深い、そして人を惹きつけるとは、ワーグナーは凄いです。
まず、大野さんと都響。初めて聴きますが、やはり東京のオケは違うなあと実感。ベルティーニやインバルにも鍛えられたんですかね。ガンガン鳴るし、精度も高い。音色もきれいです。なにより、歌手に寄り添い、歌唱を補完するような演奏がとてもよかった。また、終幕に愛の死でも、イゾルデのキンチャの強靱な声に決して劣らず、しっかりと自己主張でありました。ただ、私の席からは、オケの様子や大野さんは身を乗り出さないと見れないが残念でしたねえ。
そして、外人4人組には脱帽でした。ワーグナーの主役級の歌手は日本人では声が少し物足りないですよねえ。これに対して、この4人は圧倒的な声量でそれだけでも大満足。シュヴィング濱ーのマルケ王は、マルケ王の苦悩がもう少し欲しいなとも思ったし、シリンスのクルヴェナールも、多少の落ち着きが、とも思ったが、それでも十分に惹きつけられました。キンチャのイゾルデは、まったくもって不足ない声量を駆使して、立派なイゾルデでしたが、力でねじ伏せられた印象。これだけの歌があれば十分ですね。4人の中で最も印象深かったのはニャリのトリスタン。声の軽さが気になりながらも、苦悩するトリスタンでありました。第3幕のトリスタンの「私が作り、私に注がれ、恍惚として味わったその薬…」と歌うまでのモノローグは、あまりの凄まじさにもう耳や目が歌唱と舞台に釘付けとなりましたねえ。実によかった。感動ものでした。そして、そして、やはり藤村さんですねえ。イゾルデの声量には及びませんが、その歌唱の繊細さや明瞭さ、ブランゲーネの優しさ、すべてが心に訴えかけます。声も極上の美音に聞こえてきます。第二幕の「気をつけてください。夜が明けます」は、歌も表情も、また可憐な存在感も、もう涙がでそうでしたねえ。最高のブランゲーネでした。
最後のイゾルデの愛の死が終わった後も、終わったことへの無念さを感じ、、そしてもう一度みたい、と切に思ったのでありました。今回は4階席の最前列でしたが、ここでも十分でありました。そして、来年は『さまよえるオランダ人』か、と期待にワクワクしながら、夜行バスで神戸に帰りました。