5/11 中村浩子 And then 第６話
浩子は母に詳細を聞いてもらった。
それは近所の人でイタリア、フランスと何か個人貿易とかをやっていて
英語でいいのだけど
原語だと返事が速いので自分で読み書きをしているけど
いかんせん大変でということだった。
浩子に頼みたい仕事は週何時間か来て
手紙を訳してほしいとのことだった。
浩子はチラっとメールを見たけどそれほど長くもないので
１通いくらでどうでしょう？と提案した。
おじさんはすぐ招致してくれた。
そしてここに来て、パソコンで返信にして
下に役を入れてくださいと言った。
時々向こうが送ってくるパンフレットの訳なんかもあった。
こうして浩子は簡単な仕事をするようになった。
おじさんは山田 淳という名前で、似合いの奥さんが淳子だった。
お見合いだったけど、同じ名前で興味を持ち合いお付き合いが始まったのだそう。
２人は浩子が来るとまるで娘が来たみたいに仕事はまあまあと言いながら
お茶を出して、お菓子を出しておしゃべりををするのだった。
浩子がパリにいた話をすると、
私たちね、新婚旅行にパリに行きたかったのよねと言った。
でも当時はお金がなくて・・・・・とおじさんが小さい声で付け加え
パリの話はいつもそんな感じで始まった。
おじさんはひょんなことで日本でフランス人の男にあった。
男はリオネル・アーカイブといい、おじさんにフランスのものを
買わないかと提案してきた。
それがおじさんの輸入業の始まりだった。
だが、輸入はお金が要った。
おじさんは考えた。
素敵なものがたくさんある。
これを誰でも買える値段で売るにはどうしたらいいだろう？
値段を上げない一番簡単な方法は仲介を入れない方法、
つまり自分で売ることだったの結論に達した。
おじさんはあちこち見て回った。
それからひょんなことで、古物屋を見つけた。
古物と言っても古道具と言ったほうがいいようなものばかりで
見に行っているうちに話すようになった。
その店は中古の家具なんかがあったせいか
かなり広い店だった。
ある日、出されたお茶を飲みながら、おじさんは古道具屋の店主、木村さんに
実はフランスから輸入しているのだけど、
店の一部を貸してくれないだろうかと切り出した。
翌日、輸入しているもののいくつかを持って見せに来た。
そこにちょうどおじさんの息子の嫁さんと娘が来ていて
まあ、かわいい、これ買うわとたちまち売れてしまった。
それはオルゴールのついた宝石箱風の箱や
可愛い焼き物の人形数体だった。
木村さんもこれは売れるかもしれないと思って
店の外においてある小さい家具の上に
ショーケースを置くのはどうだろう？と提案した。
小物だし、万引きしやすいからケースにいれようという案だった。
淳おじさんはそれは名案とガラスのショーケースを探してみた。
淳子奥さんが日本人情の入っていたケースならあるけどと言った。
それは確かにガラスで人形が見られるようになっているけど
全面ガラスではなかった。
淳おじさんはそれを寝かせて使おうと思いついた。
そうすると上から出し入れすることになるけど
まあ、それはいいだろうと思った。
こうして淳おじさんのフランスからの輸入品は古道具店で売ることになった。
淳おじさんのところにはメールが何通も来る日もあれば
１週間なにも来ないときもあった。
不規則な仕事だったけど、浩子はその仕事が好きになってきた。
浩子はパリの生活を思い出してみた。
淳おじさんが売っているようなものはあの辺でも
あそこの店にもあったなんて思い出していた。
なんとかく自分が買い付けに行けばなんて考えて
淳おじさんに話してみた。
おじさんはそれは興味深い話だ。
だけどね、浩子さん、僕んちはあなたをパリにやるお金もないし
自分で買い付けるって大変よ。
もし、壊したらどうするの？
泣き寝入りするしかない。
自分で壊したんだからね。
浩子はその時、この人は社員を守る気ないんだと思った。
でもね、浩子さんの意見をリオネルに伝えたいのだけどいいかしら？
リオネルがパリにいるんだから彼に働いてもらおうよ。
浩子はパリの地図を出して、浩子の思い出す店や地域に印をした。
