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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

タイタニック(V)

2008-07-10 09:46:44 | 映画(た)
評価点:54点/1997年/アメリカ

監督:ジェームズ・キャメロン

97年度のアカデミー賞の主要部門を独占した超話題作。

老女ローズの元へタイタニックの引き上げチームが調査のためにやってきた。
彼女は彼らのために今まで話さなかったタイタニックの事件を語り始める。
イギリスで完成された大型豪華客船タイタニック。
その革新的な構造から浮沈船と呼ばれ、処女航海に出た。
乗客はアメリカを目指す貧民ジャック(レオナルド・ディカプリオ)やイギリスの名家の娘、ローズ(ケイト・ウィンスレット)らが様々な思いを描き、乗船していた。
やがて二人は出会い、そして恋に落ちていくのだった。

上記のストーリー紹介の必要がないほど話題になった映画。
主演のディカプリオ、ヒロインのウィンスレット、そして巨額の撮影費が可能にした迫力の映像など
世間の話題にならないはずのない映画だといえる。

▼以下はネタバレあり▼

3時間を超える映画であるため、観客の注意を引くことが難しいはずだがこの映画は一気に見せる実力がある。
肝心の(ひどい言い方だが)沈没シーンまで時間があるが、当時の時代やタイタニックという船の特殊さなどが忠実に(と聞いた)再現されているので、それほど退屈しない。
沈没シーンも期待を裏切らない出来だ。
今は伝説となった当時の情景がよみがえる。

でも僕は評価しない。
いかにもアカデミー賞は獲りそうな内容と完成度だが、僕は評価しない。
面白くないわけではない。
十分に面白い。
けれど、僕はまったく評価しない。

理由は「面白いだけ」だからだ。
いかにも作られた話で、いかにも作られた演出の中で、まったく物語に深みがない。
主演に起用した役者もいただけない。
金はかけたが、製作者の目は、ドルの字と、オスカー像しか見えていないように思える。

まず、ストーリー。
宝石を捜しにきた調査チームに、百を超えたおばあさんの恋物語など話す理由がない。
過去の男とのラブラブさをアピールされても困るというものだ。
冒頭と回想の物語との隔たりが大きすぎる。
そしてあのラブ・ストーリー。
べたべたすぎる。貧乏人と金持ちの典型的な恋模様。
分かりやすいけれど、感情移入するにはあまりにべたべただ。
ローズの許婚(ビリー・ゼーン)も紋切り型。
少し前の少女コミックのノリだ(読んだことないですけど)。
正直、期待していなかったけれど、僕にはその展開が苦痛で仕方がなかった。

周りを取り囲む人々の描き方も好きになれない。
音楽家たちが沈む船の中、演奏を続けたという実話を元にしたシーンがあったが偽善に満ちている。
いかにも、というシーンに見えて、感動どころか逆に腹立たしい。
一等客席と一般客席との扱いの差も「忠実に」描かれていたけれど、それも、ものすごくステレオ・タイプだ。
これらのシーンはいかにも、「ほれほれここで泣けよ、ほれ」という製作者たちの声が聞こえてきそうで、腹が立ってしまう。
じゃあ、彼らの内面を丁寧に描こうとしていたのかといえば、そんなことはまったくない。
ただ、泣かせるための「アイテム」として配置しているにすぎない。
そのスタンスが許せないのだ。

そしてやっぱりあの「レオ様」。
彼がアカデミー賞(主演男優賞)を獲らなくてよかった。
本当によかったと思う。
あんな薄っぺらい役を射止めて喜んでいるようじゃ、先はないよ。
こんなことを言うとファンに怒られるかもしれないけど、もっといい映画に出て実力を示して欲しい。
「マイ・ルーム」はそれなりに良かった。

結果として、現在では一流の俳優になったと思う。
「ディパーテッド」にしても「ブラッド・ダイヤモンド」にしても、いい役者だと痛感させられる。

映画そのものの文化的価値や芸術的意義は感じられた。
けれど稚拙な脚本は、評価されたものじゃない。
脚本で完全にスポイルされてる。

余談だけど、テレビで放送されたときの吹き替え版の声。
確か竹内結子がローズ役だったけれど、最悪だった。
どれだけ棒読みだと気が済むのかと言いたい。
役者を声優として起用する事の無意味さを知るべきだ。
そもそも、竹内結子が嫌いなことが原因なのかもしれないが……。

(2002/10/17執筆)

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