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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

キャビン(V)

2013-11-12 15:37:58 | 映画(か)
評価点:72点/2012年/アメリカ/95分

監督:ドリュー・ゴダード

なんだこれ。

ディナ(クリステン・コノリー)やカート(クリス・ヘムズワース)たち若者男女5人は、カートのいとこがもつ別荘へ短いバカンスを楽しみにむかった。
山間の別荘に向かった彼らは、少しずつ事態の深刻さに気づく。
一方、彼らを監視しているアメリカチームは、彼らを巧みに隠された地下室に誘い込もうとしていた。

ビトレイヤー」を観たときに、予告編で流れていたので興味を持った。
あまりそういう見方をすることは少ないのだが、絶対B級だろうと思いながらTSUTAYAをさまよい歩いてようやく見つけた一本だった。
マイティ・ソー」のクリス・ヘムズワースが出ていたり、「ハプニング」のクリステン・コノリーが出ていたりと若手俳優が出演していることもおもしろい。

ジャンルはホラー映画であることは間違いないのだろうけれど、これまでの常識を覆す「わけのわからないホラー」になっている。
突っ込みどころを探せば多々あると思うが、そこをぐっと堪えられるかどうかが、楽しめるかどうかのラインだろう。
妙な言い方だが、まったくおもしろくない映画ではない。
けれども、たぶん、観ている人の期待に応える映画でもない。
「ふつうのホラーはおもしろくない」という人にはお勧めかもしれない。

▼以下はネタバレあり▼

ラストのラストまでなんの映画がわからなかった。
この感覚は「ウィッカーマン」や「ドリーム・キャッチャー」を思い出す。
しかし、思い切りの良さと、まとまりの良さではダントツにこの「キャビン」がすばらしい。

この映画が他の追随を許さない点(だれもついて行かないけれども)は、ファーストカットから「ネタバレ」をしているところだ。
山荘でのできごとはすべて仕組まれている、ということを惜しげもなく描いてしまう。
しかも、かなりもったいぶった、すわりの悪い描き方で。
だから物語はつねに二重で展開されていく。
仕掛けられている若者たちと、仕掛けている研究者(のような者)たちという対立だ。
この映画が「なんの映画がわからない」という混乱に陥れるのは、まさにこの展開をとったからだった。

一方はオーソドックスなよくあるタイプのホラー映画。
若者たちがなぞの山荘に入り、密室系の危機に遭遇する。
エロさを伴いながら、不穏な雰囲気に飲まれていく。

一方、それを仕掛けている者たちは、仕掛けが残酷なものであっても暗さはない。
賭けをしたり、いやらしい演出になるように仕向けたり、自由奔放に見える。
その一方で「この仕事はきついから息抜きをしないとやってられない」という意味深な発言もある。
観ている者たちは、あきらかにこちら側に感情移入していくことになる。
ホラー映画を観ている立場を、あえて劇中に描くことで、メタ・フィクションを演出する。
これまでホラー映画をいくつか観ていた観客ならば、その斬新さに驚きながらも「なるほど私もこういう目線で観ていたのか」と見透かされた心持ちがする。

話の展開が見えなくなっていくのは、彼らが仕掛けているものたちが本物であるという点だ。
ゾンビが登場するのだが、そのゾンビは本当にゾンビだ。
そしてお気楽に観察しているにもかかわらず、本当に若者たちが死んでいく。
そのギャップが埋まるよい説明方法が見つからない。
「主人公が死ぬかもしれない」という危機感よりも、「この映画はなんの映画なのだ?」というほうが私たち観客はずっと不安だ。
その不安は煽られたまま、シガニー・ウィーバーが登場する。
(おいおい、この映画どれだけわけのわからないキャスティングをするのだ?)

彼女がこの映画がどれだけ茶番であったか、そしてどれだけ深刻なものであったかを説明してくれる。
古代より神々の怒りを抑えるために、様々な形で人を生け贄に捧げてきた。
それは、戦士、淫乱、学者、愚者、処女だった。
その五人を生け贄に捧げるための儀式が、この山荘へのバカンスだったのだ。

そしてその結末は、この映画のテーマそのものだけを説明するのではない。
ホラー映画全体がなぜ存在しうるのかという、ホラー映画論にもなっている。
つまり、人々がこのように殺されてしまうのは、神の捧げ物として必然的な死であるという主張だ。

良くできているのはそのメッセージを伝えるために、仕掛けていた側にも災いをもたらしたということだ。
仕掛けている側はつまり私たち観客だ。
観客にもその災いがふりかかるようにすることで、この恐怖がたんなる「見世物」ではないという危機感をもたらす。
「笑ってホラー映画を楽しんでいたお前、お前もこの儀式の参加者なんだよ!」という強い訴えとなる。

ヒロインのクリステン・コノリーはルーニー・マーラーに似ている。
いや、どうでもいいんだけれども。

先に「すばらしい」と書いたが、その言葉はこの映画にはふさわしくないのかもしれない。
ここまで書いても、やはり「わけがわからん」映画だと思う。


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