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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

アトランティスのこころ(V)

2008-06-29 13:04:14 | 映画(あ)
評価点:50点/2001年/アメリカ

監督:スコット・ヒックス

アンソニー・ホプキンス主演、スティーヴン・キング原作の感動作。

父親のいないボビーは11歳の誕生日を迎えたが、母親は残業で祝うことができなかった。
落ち込んでいたボビーは、その日に隣に引っ越してきた、
謎の老人デッド(アンソニー・ホプキンス)に、自転車なんて貰わなくても図書館のカードで十分だ、と励まされる。
それをきっかけにして二人の交流がはじまった。
テッドは週1ドルでボビーを雇い、ボビーは代わりに不思議なことを頼まれた。
やがてボビーは、テッドが心を読むことができることに気づく。

▼以下はネタバレあり▼

心を読むことができる老人と、片親に育てられた少年との心の交流を描いた作品である。
この設定、かなり奇抜でSFっぽいのだが、あまりその能力を見せずに物語を展開させるので、それほど違和感はなかった。
少年のほうの成長や家庭環境がむしろクローズアップさせたためにすんなりその設定を飲み込むことができた。

サイド・ストーリーである母親の奔放ぶりもうまく絡んでいた。
父親のことを愚痴る様子や、ドレスを買いあさり浪費家である様子を
物語の終盤におこる事件に対する伏線としては、きちんと機能していた。

問題点は、物語を思い出すデビッド・モース(ボビーの成人後役)が思い出すという設定なのだが、これが思い出す内容といまいちマッチしないことだ。
キャロル(ガール・フレンド)とサリー(友人)との三人の友情を思い出そうとしているような導入なのに、実際の思い出す内容は、ホプキンスとの交流だ。
サリーのお葬式が彼を動かしたはずなのにサリーとの友情はほとんど描かれないのは、いかがなものか。
だから、注意深く冒頭の現在を見ていると肩透かしを食らう。
グローブなどの伏線はあるものの、かなりどうでもいい要素だ。
もう少し、テッドの存在をにおわせる導入にしてほしかった。
物語のギャップが大きすぎる。

そして物語の最後。
テッドが何者かに連れられていくのはあまりに残酷だ。
あのままお金を受け取らずにメモか何かをのこして無言で去ってほしかった。
じゃないと後味が悪い。
車にくくりつけてあった自転車が、それはもしかして、テッドのお金なんじゃないのか、とツッコミたくなった。
こうなると母子のしたたかさのほうが気になる。

ハリー(ホモの悪がき)がキャロルを襲ったあと、母親が彼女を介抱したテッドを勘違いして殴る。
その後、分かりあえないで母親とボビーが反目しあうことにも違和感をもった。
テッドに触れたのだから、心が読めてもいいのに、何もない。
もし読めていたら、お互いが分かり合えたはずなのに。
もしそうだとしたら、心を読むことがとても意味のある要素として
生きてくるのに、とも思った。

タイトル「アトランティスのこころ」も正直不満だ。
原題でも「haets in Atlantis」だったが、的外れな気がした。
確かに「アトランティス」と何度か台詞にあったが、どうもぴったりこない。
そういうタイトルならもっと効果的に読心術を使ってほしかった。
意味ありげなタイトルにしては大した含蓄もないくせに。
そのあたりは、原作を読まないとわからないのかもしれない。

テッドの雰囲気は好きだ。
もっとミステリアスにしてほしかったが、キャラクターとしてはうまいと思った。

母親が襲われるシーンとキャロルが襲われるシーンを重ねたのは、よかった。
その後、二つの出来事がつながるのもいい。

「ビューティフル・マインド」よりもはるかに感動的だった。
さすがキング作品といったところ。
アンソニー・ホプキンスはどうしても「羊」のイメージがあったけど。

(2002/11/05執筆)

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2 コメント

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Unknown (めしいのウィリー)
2016-05-31 15:08:19
>サリーのお葬式が彼を動かしたはずなのにサリーとの友情はほとんど描かれないのは、いかがなものか
見当違い。原作がそうなんだし、ボブと関係ない戦争のエピソード「アトランティス」が全部はぶかれてるから。
「こころ」が何かも映画には説明が無いでしょ。
製作も「読ませ」のキャッスルロックだよ。
原作が超ベストセラーなのを考慮しないと、キャッスルロックはわからないと思う。
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言い訳しますね (menfith)
2016-06-05 22:01:58
管理人のmenfithです。

>めしいのウィリーさん
書き込みありがとうございます。

言い訳しますね。
正直、この映画を見たのは10年以上前でほとんど覚えていません。
ですので、ご指摘いただいた点についてなんとも言いようがありません。
すみません。

ただ、ひとつだけ。
キングの原作を考慮しなければわからない作品なら駄作と私は評価します。
映画という表現手段で、自律性がないのなら、それは失敗だと思うからです。
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