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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング

2025-06-01 06:32:43 | 映画(ま)
評価点:74点/2025年/アメリカ/169分

監督:クリストファー・マッカリー

トム・クルーズの肉体にフォーカスしたアクション映画の“卒業アルバム”。

二本の十字の鍵を手に入れたイーサン・ハント(ほぼトム・クルーズ本人)は、宿敵ガブリエルにその「扉」となる潜水艦の場所を聞き出そうと動き始める。
そのキーとなるのは、かつて仲間だった殺し屋のパリス(ポム・クレメンティエフ)だった。
彼女をさらったハントは、護衛についていたドガ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)を仲間に引き入れて、ガブリエルがくるパーティーに潜入する。
ロンドンのパーティーでグレース(ヘイリー・アトウェル)と合流したハントだったが、ガブリエル一味に拘束される……。

ちょっとストーリーが長くなった。
どこまで書けば良いのかわからないけれど、とにかく話全体が長い。
上映時間も長く、トイレが心配になるレベルだ。

これで一つの区切りとなるのか、さらに続くのかそれはわからない。
だが、一つのエンターテイメント作品として確立させた功績は大きいだろう。
私は事情があって、今回吹き替え版で見ることになった。

結果、日本語吹き替えの方が情報量が多く、「戸田奈津子の字幕はまあまあ厳しいなあ」という別の知見を得ることもできた。
それは余談である。

▼以下はネタバレあり▼

スタントなし、まじで演じる。
それがこのシリーズの醍醐味であり、メイキングまでまるごと楽しむべきなのが正しい鑑賞態度である。
もはやストーリーやそこにあるメッセージ性などはどうでもよくて、いかに「トム・クルーズ死ぬで!」というのを応援しながら見るのがよい。

さて、これだけAIが生活に浸透してきたとき、全世界がオンラインでつながっている世の中で、「もしAIが暴走したら?」という誰でも思いつきそうな設定から始まった本作。
核兵器のコードがエンティティに奪われて、次々と核戦争の危機に向かっていく。
既視感たっぷりなのは、やはり既に「ターミネーター」でそれが描かれてしまっているからだろう。
このあたりは、説得力はあっても、目新しさはない。

さらに良くなかったのは、展開がかなり無茶であることだ。
鍵を手に入れられるのはたしかにイーサン・ハントしかいないのかもしれない。
けれども、そのイーサンに、わざわざ空母を貸し出して、潜水艦まで用意させて、一人でロシアの潜水艦に潜らせて、さらにはノアの箱舟と呼ばれる施設に数人のチームだけで潜入させる。

そんなことがあり得るのか。
絶対もう少し人数をかけてやったほうがいいし、少数というか一人でやるべきミッションではない。
さらに言えば、どうしても一人でやらなければならないことはほとんどない。
誰も信用できなくなった、という展開だが、それでも多くの人が作戦に関わることになっていく。
いくらなんでもむちゃくちゃすぎるし、計画や陰謀が大きくなればなるほど説得力に欠けていく。

そしてスケールが大きくなってしまったことで、「見知らぬ誰か」の命がほとんど描かれない。
世界を相手にしているはずなのに、ほとんどのシークエンスが密室で行われる。
群衆や一般人が巻き込まれるアクションが皆無なのだ。
だから、「世界を救っている」という口上はけっこうだが、結局狭い世界のテーブルの上での議論に終始してしまっている。
それがとても悲しい。

核兵器を押すかどうか、その選択がアメリカの大統領に握られているという展開自体が、すでにアメリカのエゴイスティックなところで、時代錯誤なのだ。
アメリカはそんな役目を担おうとしてこなかったし、そもそもそんな役回りがいまのリアルでは回ってこない。
脚本家は理想と現実とを描きながら、物語を設計していくものだが、今回の作品は明らかに錯誤がある。

いや、むしろトランプ政権になって、アメリカの役割が変わりつつあることを鑑みての「理想」なのだろう。
しかし、本当にそれが「大きな物語」になるとは思えない。

さて、今回の話の特徴は、そしてこれがラストだと思わせる展開だったのは、チームがどんどん広がっていったという点だ。
敵が味方になっていく展開、といってもいい。
ガブリエルの側近が味方に加わり、しかも彼女は英語がしゃべれない。
イーサンを追っていたエージェントが感化されて協力者になり、チームの一員になる。
かつて自分がそうだったように、多種多様な人間が仲間と見知らぬ誰かのために命を賭ける。
それはお金じゃない、名誉じゃない。
その展開は今までにない、「広がり」を描いている。

閉じられた世界でのやりとりを描きながら、世界が広がっていく様子をまた描いている。
それは、あなたもまたその一員だと言いたげである。
まさにスパイ映画から、ヒーロー映画になったということであろう。

その中でもルーサーの死は私個人としてはとても痛かった。
仲間は死なない。
仲間は裏切らない。
それが、このシリーズの掟であり、「ルール」だった。
それを破ってまで果たして描く価値のある物語だったのか。

最後の最後で、「実は数秒のタイムラグを利用して生き残った」というオチを見せてくれることを期待していた。
あんな、USBでの説教臭い台詞は要らなかった。
だってこれは映画だもん。
最後まで映画であってほしかった。
私にとっては、とても大事な30年間ともにした作品だから。

だが、醍醐味はやはりトムクルーズのマゾヒズム全開のアクションだ。
今回は肉体をどれだけいじめられるか、できないことをやってのけるかというのがテーマだった。
陸海空とすべての場所で無茶をし続けた。
やや空中戦は長すぎたが、それでもすごいことには変わらない。
やっぱり見終わったら、全力疾走したくなる。

すべてをきれいに、これでラストだったと思われても大丈夫なように。
「ラビットフッド」の真相や、破られることのなかったセキュリティの開発者ウィリアム・ダンローの登場、エリカ・スローンが大統領になっていたり。
伏線回収に躍起になる余り、ものすごく長い映画になってしまった。

ただ、これが卒業アルバムなのだと言われれば、それもまたありかもしれない。
もう一度、トム様の地声を楽しむために、映画館に行くだろう。
(いや、万博もあるし、厳しいか。)

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