secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

デビル(V)

2012-03-22 22:33:13 | 映画(た)
評価点:65点/2011年/アメリカ/80分

監督:ジョン・エリック・ドゥードル

だからエレベーターに乗っちゃだめなんだ。

アメリカ・ニューヨークの高層ビル近くで女性の自殺が起こった。
周囲を市警が調べていたころ、その高層ビルでエレベーターの故障が起こる。
五人が閉じこめられた事故の原因は不明で、調べてみてもどこも異常はない。
すると、突然エレベーターが真っ暗になり、一人の男性が鏡のガラスを首に突き立てて死んでしまう。
パニックになった4人はだれが犯人なのかと疑心暗鬼になる。
駆けつけた市警は外から呼びかけることができても、中からは音声が届かない。
一人の警備員は、これは悪魔の仕業ではないかと言い始める。

TSUTAYAが4本で1000円キャンペーンをしているということで、借りた一本。
ブラッド・ピットやハリソン・フォードが出演している「デビル」ではない。
M・ナイト・シャマランが制作(原案)に関わったという、最近公開されたホラーである。

見に行く予定だったが、シチュエーションのチープさに足が遠のいてしまった。
思ったよりもコンパクトに上手く撮られている。
多少読めるところもあるが、ホラーとしては上々の出来だろう。
オカルトホラーがあまり得意でない(恐がれない)僕にとっても、すんなりなじめる世界観だった。
ちょっとカノジョと観るにはちょうど良い、そんな映画だ(泣)。

▼以下はネタバレあり▼

優れたホラーは時として優れたコメディーとなる。
それは「スペル」で証明されたわけだが、この作品もその予感を抱かせるものだった。
エレベーターに閉じこめられて、次々と死んでいく殺人事件。
その様子をみて、警備員はこんなことを言い出す。
「これは私の信仰にある悪魔に違いない」
多少台詞は異なるが、僕はこの台詞を聞いて笑ってしまった。
「この状況でなぜいきなり悪魔が登場するの?」その感性には脱帽するしかない。
彼は帽子を被っていたけれども。

それはともかく、ホラーとしてよくできている。
きちんと怖いし、かつ、オチがしっかりしているので、楽しめる作品だろう。
短い映画で閉鎖的空間を舞台にしていることもあって、いかんせん、ご都合主義的なところがあるので、それはいただけないが。

このエレベーターが突然故障したりワイヤーが切れたらどうなるのだろう。
誰もが一度は考えたことがある不安である。
何分もエレベーターに乗っているわけではないので、その不安はたいていすぐに解消される。
僕はいつもエレベーターに乗ると確認することがある。
「もし悪漢が襲ってきたらマクレーンのように上から脱出できるだろうか」と。
それはともかく、そうした日常の恐怖を描いているところがこの映画の最大のポイントだ。
外側からは音声が入るが、内部の様子を音声で聴き取ることができない。
外部からは映像が見えるが、内部の人間は外部の状況を知る術がない。
両者共になぜ閉じこめられているのか原因が一切不明である。
電灯が消える度に、ひとり、無惨な死に方で殺されてしまう。
助けようとした外部の人間も死んでしまう。
完全にお手上げ状態なのだ。
しかも、中にいる人間はすべて一癖あるような嘘つきばかりである。
たまたま乗ったにしては、偶然が多すぎるわけだ。

日常から非日常へという移行もうまい。
先に挙げた警備員のセリフは、どう考えても不自然だし、起こりうるはすがないと思ってしまう。
けれども、原因不明の出来事が起こり、かつ中にいる人間が誰も信用できないとわかってくると、それも信じてしまわざるを得ない。
ひょっとしたら、悪魔がいるのかもしれない、と。
音楽の使い方と、原因不明であること、そして死に方があまりにもむごいこと。
いつの間にか、エレベーターがモンスターボックスに変化する。

どうしたらこれは終るんだ。
どうしたら救えるんだ。
と市警が叫ぶ頃には、完全にこの事件を支配しているのは、悪魔になっている。

真相はそれほど複雑ではない。
むしろ、伏線と演出がしっかりしている分、読みやすかったはずだ。
閉じこめられた人間はすべて悪事を働いたことがある人間たちで、最後まで生き残った男は、実は市警の妻子を車でひき殺した犯人だった。
悪魔はそれを告白するかどうかを試していた。
告白できなければ死を与え、告白できれば命だけは救う。
それまでの四人(悪魔とされた女も入れて)は告白できずに死んでしまう。
残った男は、ようやくその意味を理解し、初めて外部に訴える。
「5年前に人を轢いた」と。

真相がわかった(読み通りつながった)カタルシスと、外部にはじめて音声を発することができたという解放のカタルシスが相俟って、その効果は増大する。
それまでずっと悩んでいた、市警の心も救われることで、映画としてのまとまりに驚く。
(いや、よめよめですけれど)
そして、市警はその犯人を「許す」という決断を下す。
非常に、綺麗な終幕である。

僕は意外に楽しめてびっくりしたので、物語の不自然さをそれほど気にしなかった。
けれども、ラスト、被害者遺族が運転する車に加害者一人が乗るようなそんな手抜かりなことが現実に起こるのか、といったご都合主義的なシーンは挙げればキリがないだろう。
なぜ男だけが生き残ったのか、という点も説明不足だ。
(もちろん、映画的には彼が残らなければ話にならないわけだが)
しかし、変な言い回しだが、ホラー映画としては十分好感が持てる映画であることは間違いないだろう。

ホラーにしても、やっぱりきちんとしたシナリオで作られた映画は、面白いものだ。

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1 コメント

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Unknown (ビデル)
2012-04-08 02:26:43
後悔しないで下さい
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