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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ワイルドスピードX2

2010-01-28 10:30:55 | 映画(わ)
評価点:55点/2003年/アメリカ

監督:ジョン・シングルトン

ブライアン(ポール・ウォーカー)は、前作で犯人に車を渡したことで、警察官を辞め、ストリートレーサーになっていた。
彼は、深夜にレースをしていると、警察が現れ逮捕されてしまう。
取調室にいた彼が持ちかけられた話は、取引。
麻薬密売人のボス・ベローンの逮捕のため、またしても、おとりとして潜入捜査を依頼される。
彼は、幼馴染のレーサー・ローマン・ピアースを相棒に加えることを条件に取引をのむのだが。。。

▼以下はネタバレあり▼

前作は低予算で、高興行収入をたたき出したという、映画史上、まれに見る成功を果たした映画だった。
実際面白かったし、スポーツ・カーがほしくなった。
しかし、今回は前作のいい部分がなくなってしまい、「普通の」映画になってしまった。
「映画らしい」映画になってしまった。
これでは前作のファンは逃げてしまう。

最大の問題は、スポーツ・カーの位置付けの変化だ。
前作ではスポーツ・カーはいわば、単なる乗り物ではなく、作品の中で魅力そのものだった
今作では、単なる乗り物であり、目的を達成するための手段になってしまった。
だから、乗るのは、どんな車でもいい。
麻薬取引を抑えることができれば、どうでもいいのだ。
物語が、急に二流スパイ映画のようになってしまい、車の存在が、一気に陰を潜めてしまった。

それを端的に表しているのが、台詞の中で、車の専門用語がなくなったことだ。
前作では、マニアにしかわからないような専門用語がバシバシ出てくる
車について素人である観客の大半は、それが何であるかよくわからないだろうが、ただなにやらすごいという印象を受ける。
そして車の奥深さや、映画の中での車の地位の高さを知るのである。
今作にはそれが無い。
爪型のパルス弾を車に打ち込んでも、それがなぜコンピューターを狂わせるか、説明が無い。
車の車種にしても、装備にしても、殆んど説明が無い。
ただ登場人物が「こいつはすげえや」と驚いているだけだ。
これでは、製作者の車への思い入れを知ることはできないし、車の重要性や奥深さが全く伝わらない。
ニトロも、単なる「道具」にすぎていない。
車に対する思い入れが登場人物にさえ、感じられない。

そして全体的なカーチェイスのシーンが減ったことも、車の存在感を希薄にしている。
前作ではなにかにつけて走っていたのが、今回は減ってしまった。
もちろん、普通の映画にしては多い。
けれど、この映画は普通の映画ではない。
なにか些細なトラブルがあれば、レースで解決する。
それが彼らのやり方のはずだ。

しかも、「最後のボス」とのカーチェイスが無い。
これは痛い。
車によって勝つという、カタルシスが全く得られないで物語が終幕してしまう。
彼らが勝ったのは、テクニックではなく、作戦によるものだ。
こんなラストでは、前作のファンは誰も納得できない。
また、些細なことではあるが、前回はゼロヨンだったストリート・レースが、普通のレースになっていた。
詳しくはレースや車について知らないが、これは大きな変化だと思う。
前作にあった「怖いくらいのスピード」感がなくなってしまっている。

この二つの点によって、車が「目的」から「手段」になってしまった。
僕としては最も恐れていた変化だった。

ではその「目的」の方はどうか。これも残念ながら酷評せざるを得ない。
「主人公が警察官を辞める。」
「ストリート・レーサーになる。」
ここまでは許せる。
しかし、「おとり捜査に協力させられる。」
この時点で、疑問がフツフツと沸いてくる。
もともと犯人を逃がしたことで警察官を辞めさせられた人間を、おとり捜査という、犯人に極めてちかい環境に再び追いやるというのは、刑事の脳みそを疑わざるを得ない。
ブライアンに裏切られる可能性を考慮すべき状況だ。
しかも、彼は前回の捜査でもおとりをしていたのだ。
また前回のストックホルム症候群のような状態に陥ってしまうとも考えられる。
単なるドライバーを雇うなら、もっと適した人材を選ぶべきだろう。

相棒にするローマンもよくわからない。
「あの女、奴に惚れてるぜ」と連発することで、無駄に捜査を混乱させる。
同時に観客も混乱させる。
しかも、それなりの根拠もないのに、だ。
そして最後に「リッパだぜ」というわけのわからないお言葉。
なんじゃそれ。
あれだけ疑っていたのは一体なんだったのだ。
無理に物語を「面白く」させようとしていたとしか思えない。

おとり捜査というシチュエーションだけでも007ちっくなのに、その上、ばれている、ばれていないというサスペンス効果まで上乗せされては、陳腐というしかない。
モニカ(エヴァ・メンデス)がおとり捜査官だとばれたシーンでは、「MI:2」でも観ているんじゃないかと疑ってしまった。
あまりに陳腐だ。

肝心のストーリーもこれでは、この映画のいいところを探すのが難しくなる。
個人的には、やはりヴィン・ディーゼルがいてくれたほうが、映画として「助かった」と思う。
これではあまりに中途半端で、前作のよさが死んでしまっている。

余計なことだが、このシリーズでは日本車がメインでレースされる。
前作では、ほとんどの日本人が知っているような日本車が登場して、かなりうれしかった。
しかし、今回ではなぜかアメ車も登場する。
しかも、「アメリカの魂だ」とか抜かす始末だ。
その台詞をローマンが言った瞬間、「トリプルX」の星条旗をまとったヴィン・ディーゼルを思い出した。
だから余計に、スパイ映画ちっくな印象を持ったのかもしれない。

(2003/10/8執筆)

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