今回もコロニャ(新型コロナウイルス)関連の話。
イタリアでのウイルス感染状況については、日本のメディアにも良く取り上げられているので、皆さんご存知だと思うが、一応概説しておく。
イタリアでは、初めに感染者が確認されたコドーニョがあるロンバルディア州を始めとする北部でのウイルス感染拡大・死者の増加が著しく、2月23日に同州とヴェネト州の計11の自治体が封鎖された。この地域を「イタリアの武漢」と呼ぶメディアもあった。封鎖後も感染拡大は止まらず、コンテ首相は3月8日、ミラノ・ヴェネツィアを含むより広い地域の封鎖を発表。しかし、発表直前にこの政令の草案がメディアに漏れたため、ミラノの住民が大挙して南部に「逃亡」する様子が見られた。この翌日の9日の夜、首相は全土での移動制限や集会の禁止、休校、飲食店の営業時間の制限(6~18時)、店内での客同士の距離を1メートル取る等の措置を発表したのだ。期限は4月3日(金)。いわゆる「封鎖」よりは緩い内容で、必要な場合は居住地域からの移動が認められている。そして11日には、さらに厳格な措置が発表され、食料品店・スーパー・薬局以外の店が閉鎖されることとなった(3月12~25日)。バールやリストランテ等の飲食店も当然閉鎖。これ以前に封鎖令が出されていた北部地域はともかく、他地域の住民はさぞ戸惑ったことだろう。
なお、なぜイタリアでこれほど感染が広まったかについては諸説があり、どれも決め手に欠けると思われるので、ここでは省く。初期の感染発覚・拡大の経緯については、この記事に詳しく書かれている。
https://jp.reuters.com/article/china-health-italy-paralysis-idJPKBN20Q03R
これまで感染が限定的だったトスカーナ州のフィレンツェ(私がかつて約5年住んだ街)でも、当然これらの措置は適用され、観光客や地元住民であふれかえっていたチェントロ・ストーリコ(市内中心部の歴史的地区)の通りが無人に近い状態になっているという。なお、トスカーナ州でも感染は次第に拡大しており、13日の発表によると、感染者数は470人(フィレンツェは101 人)、死者5人。全国での感染者数は17660人、死者数は1266人。
最近イタリア人の間では、感染の危険を顧みず夜遊びする若者たちや旅行等に出かける人々に対し、「感染拡大をできるだけ防いで自分や周りの人たちの身を守り、休みなく働いている医療関係者を助けよう!」という趣旨の下で、SNSでハッシュタグ「#iorestoacasa」(io resto a casa=私は家に留まる)を用いて、自宅に籠るよう互いに呼びかけるキャンペーンが起こっている。「#restateacasa」「#restiamoacasa」等のバリエーションもある。そもそも、首相が9日に発表した政令の通称名が「#iorestoacasa」だったのだ(イタリアの法律には、なぜか通称名があることが多い)。その発令直後から、政治家・著名人や一般の国民がこのハッシュタグを用いてキャンペーンを開始した。また、「#tuttoandrabene」(tutto andra' bene=何もかもよくなるだろう、全ては上手くいくだろう)というハッシュタグを用いたポジティブなキャンペーンも起こっている。
世界的に著名な盲目のテノール歌手、アンドレア・ボチェッリ氏も「家にいよう」運動に参加。すっかりロマンスグレーだね。
https://www.instagram.com/tv/B9hjoHoo-ej/?utm_source=ig_web_button_share_sheet
しかし、全土で上記の厳格な措置の実行が始まってからも、感染者数・死者数は増える一方だ。バールにもサッカー観戦にも美容院にも行けず、結婚式も葬式も出来ずに家にひたすらこ籠るような生活を、イタリア人がいつまで続けられるだろうか・・・今年のパスクア(イースター)は4月12日(日)だが、その頃イタリアはどうなっているだろう?
フィレンツェ在住の友人に、現地での様子を教えてほしいとお願いしたら、街で写真を撮ってきてくれたので、以下に貼っておく。ありがとう、フィレンツェ特派員さん~
フィレンツェにしては(失礼)お洒落なお菓子屋さん「DOLCI PENSIERI」(ドルチ・ペンシエーリ)(HP)の閉店の告知。
(和訳)
A seguito del decreto emanato dal president del consiglio dei ministri del 9 Marzo 2020, abbiamo deciso di chiudere fino a data da destinarsi per la vostra e nostra salute. Ora piu’ che mai ognuno di noi Puo’ FARE LA DIFFERENZA. Torneremo piu’ forti di prima. A presto! Lo staff di Dolci Pensieri
「2020年3月9日に首相が発した政令に従い、皆さんと私たちの健康のため、当面店を閉めることを決意しました。これまでのどんな時よりも、今こそ私たちそれぞれの行動が状況を変えることが出来ます。(この苦境を乗り越えることによって)以前よりも私たちは強くなれるはずです。近々また会いましょう! ドルチ・ペンシエーリのスタッフ一同」
もう1つは、ドゥオーモ付近の観光客向けレストランの閉店の張り紙
「コロナウイルス」とだけ書いてあって、とってもわかりやすい図だ。
フィレンツェがんばれ、イタリアがんばれ~ Forza Firenze, Forza Italia~
冒頭の写真引用元
ちなみに、アメリカや日本のメディアでは、「イタリアでは医療崩壊のため、生き延びる確率の高い人や若者が優先的に治療を受けている」と報じられているが、これに対してイタリアの医師らが「それはフェイクニュースだ」「高齢者を治療しないで放置するということはありえない」と断言している動画等も出回っている。また、同様に日米のメディアでは、「イタリアでは感染の判定のためのテスト(イタリア語ではTAMPONEタンポーネ)を軽症者にもやりすぎ、その過程で感染が広がった」といった報道もみられるようだが、ロンバルディア州の病院内で感染が広がった経験から学んで、トスカーナ州等では病院の外にテントを設けてテストが必要な人を選別し、テストを行うべき人は専用入り口から病院内の隔離スペースに入らせる等の工夫をしている。コロニャに関しては、様々なデマが出回っているので(ダジャレ)、事実と単なる憶測、フェイクの見分けが難しい。
全然関係ないが、おまけとしてイタリアでよく食べられる野菜「チーマ・ディ・ラーパ」についての記事のリンクを張っておく。献立のヒントになるかも? (唐突な…)
(終わり)