外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

ハトと少女と私

2015-08-14 18:25:34 | ハトやスズメなど


先日も書いたが、私はハトを餌付けするのがだいすきだ。

日暮れ前、近所の某スーパー前広場の片隅のベンチに座って、チューハイか発泡酒を飲みつつハトにパンくずをばらまくのが、私の娯楽のひとつだ。

手順としては、
1.まず近所の安惣菜屋で買った耳付きのサンドイッチを食べる。その際、耳部分と具の入っていない部分のパンをハトのために残す。
2.残したパンを、ハトが食べやすいようになるべく細かくちぎる。
3.そのへんを徘徊しているハトにパンくずを投げる。
4.それをどこかから見ていた別のハトたちが、わっと集まってきて奪い合う。
5.なるべく均等に行き渡るよう注意しながら、少しずつパンくずを投げる。
6.パンくずがなくなったらゲームオーバー。
という具合だ。

ハトの餌付けはタイミングがむつかしい。
日がとっぷり暮れて暗くなったら、ハトたちはおうちに帰ってしまうので、エサをあげる相手がいなくて寂しい思いをすることになる。
(彼らはおそらくスーパーの屋内駐車場の最上階辺りに住んでいる)
一方、あまり早い時間に行くと、ベンチに日が照って暑いし、しかも犬の散歩の人が多過ぎてハトが落ち着かない。
現在は大体17時半から18時くらいに開始するのがベストだ。
それにしても、犬の散歩中の女の人たちは、どうやったらあんなに長い間立ち話ができるのか。
疲れて座りたくなったりはしないのだろうか(余計なお世話か)

私がハトを餌付けしていると、周りで遊んでいた子供が寄ってくることがたまにある。
子供という生き物には、ハトの群れを蹴散らして楽しむというシャイターン(悪魔)のような習性があるので、彼らが寄ってくると私は人相が悪くなりがちだ。
しかし、中にはハトをいじめず、魅入られたようにその食事風景を凝視する子もいる。
そういう見所のある子供たちにはパンくずを分けてあげ、一緒にエサやりをすることにしている。
将来のハト好きを増やすための、啓蒙運動の一環である。


これは全然関係ない近所の猫たちの餌付け風景 中休みに~



まだ暑くなる前、いつものようにハトの餌付けを楽しんでいたある日、小学校中学年くらいのおかっぱ頭の可愛らしい女の子と出会った。
その子はきみどり色の地に白い水玉の入ったワンピースを着て、明るい赤のカーディガンを羽織り、チェックの肩掛けカバンを斜めがけしていた。

しゃがみ込んでハトに見入るその子に、私はパンくずをひと握り渡してあげた。
女の子は嬉しそうに受け取り、「食べてるねえ。可愛いねえ~」とつぶやきながら、1個ずつていねいに投げていた。

しばらくしてその子は、私の顔を見ずに、唐突にこう言った。
「お父さんはウシクに住んでるの」

ウシク?
ウシクってどこ?
東京都牛区?
牛区とか馬区とか犬区とか猫区とか、聞いたことないけど・・・
(後で調べたら、茨城県牛久という地名を発見したので、そこかもしれない)

私は質問してみた。
「ウシクってどこ?東京?」

女の子はそれには答えず、少し沈黙した後、さらに言葉を重ねた。
「お母さんは埼玉に住んでるの。
お母さんはめったに家に帰ってこないの。
お母さんは忙しいの」

子供って、突然語りだすことがあるんだよな・・・

話を総合すると:
女の子はお父さんと一緒にウシクに住んでいる。
お母さんは別居中もしくは離婚済みで、埼玉在住。めったにウシクには行かない。
女の子は一時的にここ埼玉の母親の許に来ていて、お母さんが留守の間1人で遊んでいる。
という状況だと推測できた。

女の子はこういった身の上話を、ハトたちを眺めながら見知らぬ私に淡々と話すのだった。
その小さな背中からは寂寥感がじわじわとにじみ出て、私のそれと混ざり合う。

何も言うことが見当たらないので、引き続き一緒にハトと戯れていたら、
やがて、30代後半くらいの小柄な女性が現れ、猜疑心に満ちた表情で近づいてきた。
「○○ちゃん、お母さんが呼んでるよ。おうちに帰ろう」
どうも彼女は女の子の母親の知り合いで、女の子を呼びに来たようだった。
女の子が明るいうちから酒を飲んでいる怪しい女(私)と一緒にハトにエサをやっていることが、あまりお気に召さなかったようだ。
まあ、そりゃ無理もないですが。

女の子は素直にうなずいて立ち上がり、「ばいば~い!」と私とハトに手を振ってから、その女性に連れられて行ってしまった。

私はエサやりを終了して再びベンチに座り、チューハイの続きをちびちび飲みながら、少しの間女の子の人生に思いを馳せた。


これはイスタンブルのかもめ かもめの餌付けはハト以上に楽しい






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする