マグリットの空と雲

旅,空,猫,馬,Champagne&美酒,美食,art,色,海&船…時にsurrealな、好きなもの写真雑記帳。

ミシマダブル@シアターコクーン

2011-02-02 | Art/芸術・絵画
三島由紀夫の戯曲2篇を同一キャストで交互上演するという前代未聞の演劇ミシマダブルがついに開幕!今日はその初日で《サド侯爵夫人》の上演を鑑賞!

前にも書いたけど蜷川幸雄演出でオールメール、主演に東山紀之×生田斗真+怪優・平幹二朗 豪華キャスト。
貞淑な侯爵夫人ルネをヒガシ、体面を重んじるルネの母モントルイユ夫人を平さん、奔放な妹アンヌを斗真が演じるw 

ジャニのおふたりは端正なお顔立ちだから、化粧映えしてキレイ!はじめの登場シーンでこそ笑ってしまったが、細身でスラッとしているので、ロココ調の衣裳に身を包んだ姿も美しかった。

舞台は、白いバルコニーを中心に、二階まで届きそうな大きな鏡を四面囲っただけのシンプルなもので、BGMには能楽の囃子と謡ありの演出。
劇は三幕、18年間に及ぶ歳月をすべて台詞だけで紡いでいく、まさに会話劇。真剣そのもの。

セルフ回しこそ女言葉だが、発声はとくに意識するわけでなく、地声なので、ヒガシが熱い思いを独白するシーンでは、いつのまにか男性に戻っているような場面も何度かあった。一番気になったのは、最初の登場シーン、いくら遠い城から母恋しさに旅を急いだにしろ、台詞が早い早い。そんなに畳み掛けなくてもと思って聞いていると、応じる母・平さんがとてもゆっくりした間合いでドッシリ、ペースを戻しているようだった。

平さんは、格式と体面ばかりに固執する老婆を、野太い声を巧みに使い、ときに威圧的に、ときにコミカルに、なんとも余裕をもった重厚な演技で、ルネと対峙する場面がぐっと締まっていたと思う。

斗真も可憐さの残る無邪気なアンヌ、ときに女として姉を口撃する残酷さをちらりと見せたりするところが巧いの。やっぱジャニきっての演技派だけあるわ。さらに、ヒットラーも演じるというのがまったく想像できないほど女子だものw

あと、圧巻なのは、悪女・サンフォン伯爵夫人演じる木場勝己さん。
第一場では、馬鞭を片手に振りながら、前提となる「マルセイユの娼館」事件のストーリーテラーとなるのだが、それはまるで朗読劇を聴いているかのよう。のっけからかなり過激な内容で、耳をふさぐシミアーヌ男爵夫人をからかいながら、軽快に語るのだけれど、とにかく巧い!


さてさて物語も佳境に入ると、後半には橋田寿賀子もビックリなルネの長台詞が続くのだが、熱気を帯びた肉声でたたみかけるように語られる場は、もうストイックな格闘の世界。
しかし、やはりここでもヒガシの台詞は早すぎ、一本調子でちょっと抑揚に欠けていたのはザンネン。
文字で読んでも固い三島文学。ふんだんに盛り込まれた例え、情景を思い浮かべるには、もうすこし緩急がないと聴くほうも疲れてしまう。

けれどヒガシ、さすがダンサーだけだって、ハンカチーフを持つ手がしなやかに揺れ、悶え倒れるシーンも舞うように美しく、貞節にかけては頑として譲らないルネの芯、高貴なまでの凛々しさが、ヒガシ・ルネのの立ち姿に憑依し、ふとオリジナルの、そう、あの現実離れした、“貞淑のモンスター”ルネをつくり上げていたように見えてきたのも確か。
しかも、明日には全く別の今度は「男性」を演じるのだから、台詞はもちろん所作のすべてが全く異なるのだから、驚くしかない!!
……蜷川さんこそ、ドSでしょw

今日は初日だし、あの台詞の文量、三時間の劇を考えると、これから千秋楽までにもう少し余裕が出るのかもしれないが……、もう一度観る機会はあるのだろうか。一時間ごとに休憩があるとはいえ、立ち見はきびしいなぁ。

しかし人って、こんなに台詞を覚えられるものなんだ!そこは大いに感心!面白い舞台だった。

つぎは軍人四人だけの会話劇。
連続で観たいところだが、連夜はちょっと調整つかず、わたしがもう1作《わが友ヒットラー》を鑑賞するのは、二週間後のお楽しみ♪……、いや、ちょっと間を置きすぎたかも。

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