MVCメディカルベンチャー会議

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第124回MVC定例会in大阪 特別セミナー

2017年03月11日 | MVC定例会
特定非営利活動法人ジャパンハート事業推進チームの吉岡春菜氏をお迎えし、「医療の届かないところへ医療を届ける~ジャパンハートの活動を通して~」というテーマでご講演いただきました。


(1)特定非営利活動法人ジャパンハートの吉岡と申します。2003年に川崎医科大学を卒業後、独立行政法人岡山医療センターで小児科医専門医研修を受け、同年末にジャパンハート代表の吉岡秀人と結婚致しました。2004年ミャンマーへ渡りジャパンハートの国際医師実地研修に参加し、2005年重井医学研究所附属病院で勤務をしながらジャパンハートへの活動に参加していました。2011年の東日本大震災での医療支援がきっかけでジャパンハートへ入職し、東日本大震災医療支援活動を行うと共に小児がんの患者と家族を支援する、すまいるスマイルプロジェクトリーダーを務めています。

(2)当初はミャンマーで活動が始まりましたが、現在ではカンボジアやラオスでも医療支援を行っています。8割が子供の外科疾患、2割が大人の外科疾患です。医療の届かないところへ医療を届けるというのは国外だけのことではなく、国内での僻地や離島にも医療者を派遣しています。

(3)なぜ最初にミャンマーで活動を始めたかというと、ミャンマーで亡くなった日本人は多く、遺族や帰還した人が毎年慰霊の旅に出ます。中には医療者の付き添いが必要な人も居り、そういった方へ付き添うために最初ミャンマーへ行きました。その土地で亡くなった人の遺族にとって、土地で新しく生まれる命というのは他人ではないんですよね。その国の人たちが医療を受けられないという現状があった際に、なんとか支援ができないかと声をかけていただいたことが活動のきっかけです。

(4)ミャンマーでは口唇裂の子どもが多いです。医師が圧倒的に少なく、村の人は病院にかかることができません。きれいにすることで表情が変わります。学校も行けるし、結婚もできます。手術によって村で一人で死ぬことは回避できたのではないかと思います。医療は命を救うことももちろん本質にありますが、人生が変わるということもあるなと感じました。




(5)口の中に悪性腫瘍ができた赤ちゃんがお母さんと来院しました。おっぱいが飲めないということでお母さんがつれてきたんですね。口の中に悪性腫瘍が占拠している状態でした。化学療法もできず治療が完結できないので、理性的に考えると確実に助けられる子に資源を投入するべきだという判断もあると思います。このお母さんはおそらく病院につれてくることでもう一度子供に医療を受けさせたい。治療することでお母さんは赤ちゃんにおっぱいを飲ませ、お腹いっぱいの満足している子供を抱っこできます。子どももお腹いっぱいの満足感が得らます。最後は亡くなるとしても心が救われる医療。それも一つの医療の形ではないかと思います。届かないところに届けるというのはこういった形でも実現できるのではないかと考えています。

(6)首に腫瘍ができている男の子がいました。患部に悪臭があるしハエが卵を産み付けていてウジが沸いています。そのような状態でも村の人が男の子を大事にしている。最後の時を良いように迎えられるよう見守っている状況でした。腫瘍は良性のため、取りさえすれば生きられるのではと思われました。当時軍事政権だったので、医療は自分達で賄えるというのが建前。海外に連れ出し医療を行うと活動の許可が得られないのではないかと懸念されました。しかし実際には事情を話すと協力してくださり、岡山の病院で治療してもらうことができました。この男の子はミャンマーに帰り現在も元気で学校に通っています。

(7)ジャパンハートの最大の財産とは何だろうと考えたとき、志を持った人たちが集まってくれることが財産だと思いました。日本人もミャンマー人も一緒に医療をし、日本人の良いところを学んでくれます。若い医師はミャンマーで働きながらボランティアで活動に参加し、手術を行って勉強しています。志を持ったミャンマーの若い医師が育つ土壌があるのが一番の財産ではないかと考えています。ミャンマーでは民主化が進み医療制度が整ってきました。よりオフィシャルな形で医療を提供できないかと考え、日本からやってきた大学チームに技術移転をしてもらっています。より専門的な医療を提供する橋渡しもわたしたちの役割ではと考えています。少数民族は勢力争いもあり、制度が整わないのではと考え、そのような地域に医療を届けています。少数民族の助産師さんに緊急時の対応などのセミナーを行っています。知識をお伝えするだけでなく、寄付金を集めて機器を購入したり現地への寄贈や使い方のセミナーを行ったりもしています。時代のニーズに合わせて医療活動を行っています。

(8)カンボジアで6月に新しい病院がオープンしました。ここでは難しいお産を引き受けることにしており、助産師さんや産婦人科医、小児科医が対応しています。周産期を診れる病院が少なく重宝されています。この病院の大きな特徴は、日本から薬剤師が行き、薬の教育はもちろん手術室での手伝いなどを積極的に行っていることです。できる人ができることをやるという状況です。日本でもこれから在宅医療などで薬剤師が薬局を出て活躍する場面がたくさんあると思います。実際に触れて得られる情報は多いと思うので、薬剤師さんも患者さんにふれてもらうと良いのではと思います。

(9) 僻地離島の医療も行っています。離島での研修を看護師の研修に組み入れています。都会の病院では専門的な限られたところで仕事を行いますが、離島ではできる人ができることをやるのが前提です。医師がいない中でどこまで考えて動けるかが要求されるので、海外に行く前の勉強にもなります。

(10)先日ソーシャルビジネス会議があり、ノーベル平和賞を受賞したユヌス博士が「15年以内には人工知能が人知を超える。衣食住にお金を使わなくてよくなるだろう。何のために仕事をするのか、何のためにお金を使うのかというと、人生を豊かにするために使うのではないか。」というようなことを仰っていました。活動に参加している人たちは、活動を通して自己認識を高めることが対価になっているのかもしれないと思います。持続性のある形を見つけながら、みなさんの人生も豊かになるという場を提供できたらと考えています。

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