MVCメディカルベンチャー会議

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第124回MVC定例会in大阪

2017年03月11日 | MVC定例会
経済産業省商務情報局ヘルスケア産業課、医療・福祉機器産業室の八代聖基氏をお迎えし、「経済産業省における医療機器産業政策について」とのテーマでご講演頂きました。

(1)私は、2001年3月岡山大学自然科学研究科博士課程後期(生体調整科学専攻)を修了し、2007年4月独立行政法人産業技術総合研究所健康工学研究センターに任期付き研究員として採用されました。2016年10月からは経済産業省商務情報局医療・福祉産業機器室で室長補佐をしています。研究内容としては、感染症マラリアの簡易迅速診断法の開発を行っていました。産総研はつくばに本拠地があり、だいたい2500人、ポスドク含めると8000人規模となる日本最大の研究施設です。物を作るうえではいろいろな技術をたくさんもっていますので、みなさんに技術的な問題があれば健康工学研究部門の医療機器開発支援ネットワークにアクセスしてもらえればと思います。

(2)マラリアは日本ではほとんど関係なくピンとこないと思います。世界規模でいいますと年間100万人が亡くなり、感染者は3億人にもなります。1900年当初開発されたクロロキン(キニーネ)以上の薬があまり出ておらず、この前ノーベル賞を取られたアルトミシリンにも耐性が出てきました。しかし対策がHIVなどに比べるとできていないのが現状です。問題の一つは耐性で、もう一つは診断法です。顕微鏡下で赤血球のなかにマラリアがあるかを診るには数時間かかり、正確性は技術者に依存しています。早期発見には、人の手がかからない且つ誰でもできるような診断法がなければと思い、細胞チップを用いたマラリア診断法を開発しました。

(3)ですが、実際に企業に持っていくと誰も使ってくれません。なぜかというと、実際にアフリカでのビジネスプランが定かでないからです。そのため、「早期発見に続く適切な早期治療よって重篤になる前に回復が可能となる。また海外から帰国した人を誰でも早く簡単に診断できれば、感染源の流入(流出)を防止することができる。」というコンセプトに変えました。このコンセプトのもと、本当に使えるのかどうかの実証試験をアフリカで行いました。従来は1千万円ほどする機械を診断に使っていたのですが、アフリカではとても高価で使えない。なるべくマラリアに特化し、電気を使わないものが良いのでは、という話を開発企業としました。そしてなるべく小さく簡単な機械でマラリアを見つけられる診断機器を作りました。もうそろそろ世の中に出せるのではというところまで来ています。この開発経験から学んだことは、最初のコンセプトについてたくさんの人と話した方が良いということ、ビジネスプランは経験のある人に聞くということです。もしくはそのような経験のある方々と連携することが大事です。

(4)我が国の医療機器産業についてお話します。私は自身で研究を進めている時は、医療機器分野は自分で気がついた問題を解決しうる物をつくれば売れるものと思っていました。しかし実際には医療機器は少量多品種なのが特徴です。ある部品を作っても、「何個売れるの」「それ使える人どこにいるの」と聞かれると、特殊な人にしか使えないというものもあります。医療機器の分野を大きく分けると、診断機器、治療機器、その他に分けられます。少量多品種ですが市場全体は毎年伸びております。伸びが大きいのは治療系の医療機器です。しかし実際に業績を伸ばしている治療機器は、海外製品がほとんどです。日本の医療機器市場は輸入超過になっているのが現状です。

(5)医療機器開発に関して、経産省は様々な支援策を用意しています。その一つは医工連携事業。中小企業含めた高い技術を持つ企業と大学等を含む医療機関を合わせて、医療機器開発を盛り上げていこうとしています。私自身の担当は医療機器開発支援ネットワークです。医療機器開発は知財や規制、保険収載といった独特問題を含んでおり、それらの問題をワンストップで相談を受け、専門家によるアドバイスにより解決する窓口をつくっています。

(6)また別の支援策の一つとしてアイディアボックスという医療従事者が抱えるニーズを登録するページを立ち上げています。医療機器は企業側からすると、開発したいけど実際自分の技術が何に繋がるのかわからない、ということを良く聞きます。そこでニーズを登録してもらい、それが世の中に広く横たわっているニーズなのか、AMEDのニーズ抽出委員会が判断し、広い問題となればHP上で紹介し企業とのマッチングを行ったりしています。

(7)みなさんが新しく何か始めたいとき、企業と一緒に来て下さればフォローしやすいかと思います。地域経済産業局の次世代産業課などに声をかけていただければと思います。なるべく開発初期の段階でお声がけして頂き、上手く国が持つサービスを使ってください。私がアフリカに行く前に、このような部署に話を通していれば、コンセプトや販路、価格面など、もっと早く課題を抽出でき、製品化までの時間をもっと短縮できたのではと思います。

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