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クレモナ・ドニゼッティ劇場の「アンナ・ボレーナ」(1月16日)

2007年01月16日 | オペラ
この日のプリマは、私のオペラ鑑賞歴の中でも、1980年ウイーン国立歌劇場来日公演でのグルベローヴァ(ツェルビネッタ)以来の絶唱であった。一幕のカーテンコールで、すでに東京文化会館の客席はブラヴァーの嵐に包まれた。テオドッシュウの歌唱は、開館以来この舞台で繰り広げられた数々の歴史的名唱に肩を並べられるものだったと思う。そんな歴史の一ページに同席できた幸せを20年振りに心より感じた。美しいppから鋭い切れ味の超高音のffに至るまで、極めて円滑にコントロールされたその声は、とても人間技とは思えない程素晴らしい。エネルギー配分が完璧で、これと言うときに蓄てきた全力を噴出し、信じられないようなパワーを炸裂させるその歌唱法こそ、彼女の歌の説得力の秘密であり、同時にこの歌手独特のものである。その声を聞くだけでも感動して涙してしまう程である。恋敵役のパラテオスも全力でこれに対峙し舞台を盛り上げたが、相手が相手だけに分が悪い。しかし、一般的な尺度ではその彼女も充分な名唱であった。問題はフォリアーニの指揮で、残念ながら彼らの名唱を万全にサポートできていたとはいい難い。とりわけ感動的な終幕のアリア・フィナーレでは、常に「ぎくしゃく感」が付きまとったが、最終的にはデオドッシュウが自分のテンポを守り抜いてネジ伏せた感がある。また相手役のテノールや合唱が弱いなど、不満な点も数々あったが、所詮プリナドンナオペラは、プリマよければ全て良しで、ここまで歌われてしまうと、そうした不満も吹っ飛んでしまう。最終幕のカーテンコールも大きな盛り上がりを見せいつまでも続いた。とりわけテオドッシュウのはしゃぎ振りが印象に残ったが、きっと彼女にとっても会心の出来であったのだろう。マリア・カラスの再来というフレコミでデビューした彼女であったが、初来日のフェ二ーチェのビオレッタでは今一つ印象に乏しかった。しかし、ここに来て才能が全開した感がある。とにかく思い出すだけで身震いを禁じ得ない舞台であった。秋にはビオレッタで再来日の予定があるとのこと、再度のヴェルディでどんな歌唱を示してくれるか楽しみである。

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