「オペラ座の怪人」と言えば、有名なアンドリュー・ロイド=ウエーバーによる1986年初演の作品があるが、これは全く別の作品である。劇作家にして演出家のケン・ヒルにる1976年に初演された作品であるが、1984年に基本構想を含めた大改訂を経て現在のものになっている。驚くべきことに、現代作品であるにもかかわらず、ギルバート&サリバンのサヴォイ・オペラ的な様式を踏襲していて、更に要所のアリアではモーツアルト、ドニゼッティ、ウェーバー、ビゼー、ドヴォルザーク、オッフェンバック、ヴェルディ、ボイート、そしてグノーの有名アリアの旋律が元のテクスト内容とはほぼ無関係に利用されている。まあ言うならばいかにもオペラ好きのイギリス人に愛されそうなパロディ作品に仕上がっている。ゆえに有名なロイド=ウエーバー版のような劇的なドラマを味わうというよりも、オペラの旋律とコミカルなタッチに心をくすぐられる快感を味わうことが主眼の作品なのである。だから前者を期待した観衆にはいささかの失望もあったろう。ただ作品自体は、この種の物としては、中々よく出来ていると思う。ピットも含めて外来ミュージシャンによるもので、もちろん台詞も歌詞も英語で、そのベタベタのキングズ・イングリッシュのリズムが何とも心地よかった。ただし字幕が小さすぎて見づらかったのは残念。暮れも押し詰まった29日に、予想もしなかったイギリス流のお楽しみをもらって、ちょっと嬉しくなった。
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