2017年の11月以来4年ぶりのアンドレアス・ホモキのプロダクションの再演である。前回はプロダクションの本拠地であるベルリン・コミッシュオペラのように額縁を小さくした舞台で繰り広げられる凝縮したドラマが、歌役者達の好演もあって感銘を呼んだことを覚えている。今回二日目を観たが、印象はそれとはそうとうに異なった。アイゼンシュタイン小林啓倫、アルフレード金山京介、ファルケ加來徹、プリント大川信之の男性陣は歌唱も演技も比較的よく、それなりに楽しませてくれた。しかし一方の女性陣がアデーレのベテラン木下美穂子以下揃っていけなかった。日頃ヴェルディ、プッチーニといった悲劇的なイタリア物で本領を発揮する木下にとっては、「ドイツ物」そして「オペレッタ」と輪をかけたハードルがあったようだ。ホモキは前回2017年のプログラムに掲載されている対談で、「[こうもりでは]登場人物たちは、台詞では真実を語りますが、そこに付けられて音楽は、ポルカ、ワルツ、カドリーユなどの既成の形式で作曲されているので、本音が伝わりにくい。..... [だから]この作品では、歌手はいつも以上に役者のように演じなければなりません。」と述べている。だから彼らのいささか間をはずした台詞まわしと稚拙な演技では、ドラマの本質が残念ながらスムーズには伝わらない結果となった。ならばせめて歌唱が秀でていればと思うのだが、それさえも十分な満足を得るには至らなかった。今回はフロッシュに森公美子を起用したが、これはちょっと筋を外れた語りが長すぎたかなという印象だ。ならばいっそのことミュージカルの一曲でも歌って欲しかった。それと東北訛りをギャグにするのは、このご時世いかがなものなのかなと思った次第。川瀬賢太郎のピットは、予想通り大層威勢のよい元気溌剌の音楽だったが、もう少し力を抜いたところから「オペレッタの大人の楽しみ」は始まるのではないか。そんなわけで、年末の楽しみで出かけた舞台だったが、ちょっと期待外れで家路についた。
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