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びわ湖ホール・プロデュースオペラ「ワルキューレ」(3月4日)

2018年03月06日 | オペラ
昨年の「ラインの黄金」に続く2作目「ワルキューレ」の幕が切って落とされた。昨年同様ミヒャエル・ハンぺの演出、へニング・フォン・ギーゲルの美術・衣装、そして沼尻竜典の指揮によるニュープロダクションである。色々な読み替えや奇を衒ったプロダクションが横溢するなか、ワーグナーのスコアを忠実にそして真摯に再現し、同時に最新の映像技術をリアルな装置とバランスよく組み合わせた美しく解りやすい舞台だ。今に生きる日本の聴衆の「指輪」受容は、ヴィーランド・ワーグナーの抽象舞台から始まり、その後は様々な読み替えへと進んでいった歴史を持つ。そう考えると我々は案外「基本」に接する機会を持たずにその派生を評価していたのではなかったか。そういう意味でこの舞台をびわ湖ホールが提供してくれた意味は極めて大きい。しかしその価値は、そうした歴史的意味に留まらず、我々に素直な感動を届けてくれたことにもある。二日目の4日は全員日本人歌手だったが、それぞれの歌唱も演技も充実したもので、ストーリーを素直に体感でき、それが大きな感動につながった。とりわけ堂々たる存在感を発揮したボータンの青山貴、表現豊かなにフリッカを歌った中島郁子、若々しい歌唱で切れ味の良いブリュンヒルデを歌い上げた池田香織が印象に残った。ただ気になったのは、ジークムントの望月哲也とジークリンデの田崎尚美の舞台上の声の響きにむらがあったことだ。感情に満ちた良い歌を歌っているのだが、それがオケを越して響いてこない時が時としてあった。これはオケの問題というよりも、舞台上の位置の問題のようにも思われた。しかしこれまで幾度となくこの劇場でオペラを聞いたが、これほど不自然に感じられたことはなかったことも事実だ。しかし、そんなことは微細なことに感じられる程総体的な感動は大きかった。沼尻指揮する京都市交響楽団も、十分な力感を湛えながら瑞々しい美しい流れも作りつつ公演の成功に大きく貢献した。