チキチキ読書日記

無駄に読み散らかした本の履歴です。

郊外の社会学 若林幹夫 ちくま新書

2007年04月06日 20時05分50秒 | 建築・都市
郊外で育った作者による、郊外の分析である。
10年前の神戸児童連続殺傷事件の舞台となったのが、郊外の新興住宅地であったことから、郊外と犯罪との結びつきが語られるようになり、それに呼応するかのように、郊外「病」という「病理」が語られるようになった。

しかし、それは本当に病理と呼ぶべき事象なのだろうか。

同じく、地方都市の郊外の団地に育った私は一連の「郊外論」に対して思う所が結構ある。
郊外には郊外のコミュニティーがあり、土地の歴史的な連続性から切り離されているとはいえ、何年かするとしだいに地域に根を張るものである。

そこに醸成される新たなコミュニティーは「希薄なもの」というラベリングがなされるのが常である。

三浦展による一連の著作も、基本的には「郊外性悪説」に基づいているように思う。
しかし、本書は著者自らが郊外出身ということもあり、できるだけフェアに観ようとする努力をひしひしと感じる。

高度経済成長期につくられたニュータウンは軒並み高齢化を向かえ、世代の更新がままならないようである。
人口が減り、都市が縮小傾向に向かっていくこれから、郊外は滅びの一途をたどるのか。
それとも見直されるのだろうか。