紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【ハチミツとクローバー】花本修司の物語を追う[chapter.3]

2010-10-14 01:04:33 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  モンゴルでの生活~帰国



はぐを東京に残し、恩師・徳大寺先生とともにモンゴルの調査旅行に出た修司であったが、
はげしいはぐシック(?)にかかってしまい、調査に支障をきたすまでになっていた。
このある意味では病気な症状に陥ってしまった修司は調査・研究もままならないまま
一年近くもの間、はぐと離れて過ごすことになるのである。



そして、年も改まって少し経った冬の日。
修司はついに帰国を果たす。
本当は3月に帰国の予定だったところを、はぐシックの限界が来ての帰国だった。



はぐは長野での成人式を終えて、立派な大人へと成長していた(ように修司には見えた)。
修司とはぐ、久しぶりの再会である。



はぐ以外の教え子に会うのも久しぶりなので、先生風を吹かせてみるも、
同席した徳大寺先生の修司弄りによって、もうすっかり立場ナシな修司。
教え子の前では立派な大人なハズの修司も、恩師の前にはすっかり形無しなのであった。


  はぐと森田、はぐと竹本

時は流れ、はぐを取り巻く人間関係に若干の変化がみられた。



なんとなく森田を意識するようになっていたはぐ。
そんなはぐを見て、修司ははぐが森田に惹かれ始めていることにすぐに気が付いた。
修司がモンゴルに出かけている間、二人の間に何かがあったのかもしれない。
少し複雑な気分になった。



そして、春にはさらに決定的な事件が。
戯れていた森田は、ふとした衝動ではぐにキス。
この行動にはぐもビックリ、森田も自分でビックリ!
森田はそのままアメリカへと「仕事」をしに逃亡した。

はぐはその後しばらく知恵熱のようなものを出していたが、
やがて回復して自分の作品づくりに励んでいった。
「森田に帰ってきてほしいか?」
との質問には、
「帰ってきてほしくない。やりたいこと全部やってみれるまでがんばるのがいいと思う」
と答えた。

森田が帰ってきたのは一年後。
映画のモカデミー視覚効果賞を受賞しての凱旋帰国(?)であった。
森田は本当にやりたいことを全部やってから帰ってきたわけである。




竹本は、はぐが早い段階から心を許した数少ない男子学生の友だちだったが、
そんな彼との関係にも変化が。
森田がアメリカから帰国する直前に、竹本は胃潰瘍で入院。
卒業制作が間に合わずに留年することになった。

春、はぐと竹本は同学年の四年生になっていた。
四年生になってほどなく、突然竹本は自転車に乗っての「自分探しの旅」に出発。
稚内まで自転車で北上し、そのまま帰ってきた。
竹本が帰ってきたのは、夏の終わりの頃である。
夏祭りの夜、竹本ははぐに「好きだよ」と告げたのだった。


  はぐの進む道



修司は迷っていた。
はぐに本格的な芸術家の道を歩ませるか否か。
はぐの才能からして、その道の頂点に上り詰めることは可能であった。
しかし、はぐは美大を卒業したら、長野へ帰って細々と作品を作りながら生活するつもりである。
修司も、そんなはぐの気持ちを尊重し、はぐに本格的な作品作りの指導をすることはなかった。



しかし、才能を持ちながらも本格的な道を歩もうとしないはぐの態度は、
時として一部の人間からの反発を買うことにもなる。

はぐは、絵を描きながら、自分がどれだけ進めたかを自分自身で見極めようとしている。
それに対して、自分がどれだけ進めたかを自分以外の世界にぶつけ、その反響で見極める方法もある。
修司は、それはどちらも正しい道だと思う。
大事なのはどちらの道を選んでも、それを言い訳にしないことだ。



道に迷い、創作に煮詰まりつつあったはぐに、修司は「子供絵画教室の先生をやる」という提案をする。
絵を描くということを誰かに教えた経験を持たないはぐに、それを経験させることで
新しい道を開くきっかけにでもなれば、と思ってのことだった。



はぐは子供たちに丁寧に絵を教え、時には一緒になって楽しんだり、悩んだり、苦しんだりした。
その子供たちの中の、ある男の子の悩みがはぐの悩みと似ていた。
「好きなものを」「楽しんで」という言葉は美しい。
けど、それはとても難しいこと。
はぐは男の子の苦しみと自分の苦しみを重ね、二人は思いっきり泣いた。
ひとしきり泣いたあと、二人は夜空に上がる綺麗な花火を見て、なんとなくスッキリするのだった。

慣れないひと夏の絵画教室を経て、はぐはちょっぴり成長した。


  修司にとってのはぐ



原田の死はいまだに修司の心を縛り続けている。
夜、原田の夢にうなされ、叫びながら目覚めることもあった。



そんな夜は、はぐの笑顔を見ることで心が落ち着いた。
はぐの存在が、今の自分をここまで歩かせてくれたのだと感じた。

修司は自分以上の苦しみを今も味わい続けているだろう、理花のことを思う。
はぐが修司を歩ませてくれたように、理花の隣にいる真山が、理花を明日へと歩ませてくれますように。


  はぐの怪我



浜美祭の前日、不幸な事故がはぐを襲った。
搬入中のガラスパネルが破損し、はぐがガラス片によって大怪我をしてしまったのだ。



命に別状はなかった。しかし。
はぐの右手の神経は破壊されかけていた・・・。

これからはぐを待っているのはリハビリの日々である。
リハビリを続けても、以前のように絵筆を持つことができるかはわからない。
努力だけではどうにもならないかもしれないが、
努力をしなければ確実にこのまま、ただ失ってしまうのだ。



病院にはぐの父が見舞いに訪れた。
しかし、その傍らにははぐの新しい母となる女性の姿があった。
女性のお腹には、はぐの腹違いの妹となるだろう命も宿っていた。

はぐの帰ることのできる場所はすでに姿を変えてしまっていた。



もしも、このまま「描くこと」ができなくなったら・・・。
その恐ろしさを想像して、はぐは嘆く。
修司は黙ってはぐを抱きしめ続けた。


  修司の決断 はぐの決断



修司は浜美大を休職することにした。
とりあえず3年、すべての時間をはぐにつぎ込むことにした。
しかし、この決断をはぐには告げない。
こんなことを知らずに、はぐには選んでもらいたかった。

すでに森田もはぐに対してアプローチを行っている。
はぐがどのような道を選ぶか、それははぐ自身が決めることだ。




はぐが選んだのは、修司とともに生きること。
修司とともにリハビリの日々を過ごし、再び「描ける」ようになることをはぐは願った。
そのために、修司の人生をください、とはぐは言った。
それは、修司の望んでいた答えだった。







修司は浜美大を旅立つ。
これからは、はぐとともに新しい道を歩むことになる。

原田が死んでからの修司は、浜美大にとらわれて先に進むことができなくなっていた。
それは、見る者が見れば、半分あの世に行ってしまったようにも見えた。

しかし、はぐを連れてきてからの修司は徐々にこちら側の世界に戻ってきているように見えた。
まるで、はぐが修司を先に進ませているようでもあった。

旅立つ修司を、理花が見送る。
理花も、真山の存在によって先に進もうとしている。
二人は、原田という大きな存在の死から、ようやく解放されようとしていた。



はぐは、リハビリのための粘土細工で最初に鳩をつくりたいと言った。
最初の一個は、友だちのあゆに。
二つ目は、新しいお義母さんと赤ちゃんにあげたい、と言った。

「間に合うかな?」

「間に合うさ 赤んぼうが生まれるのは春だ」


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2 コメント

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Unknown (ろくはな)
2011-09-12 11:18:29
 取り上げるキャラ(ジェリド、花本先生)が自分の好みと一致してて、紫さん=自分?!と錯覚してまうほど。
 同じ作品見て周囲に誰も賛同者がいなかったのに。
 脇の脇役的なキャラの人生を追うこのシリーズ、たいへん面白いので、続編を期待します。
 作業が大変でしょうが…。
返信する
Unknown ()
2011-09-20 00:53:25
基本的に過去回想が入り乱れるキャラや、度々しか登場しないキャラが
取り上げ甲斐のあるキャラですね。
そういう意味では修ちゃん先生は前者で
ジェリドは後者といったところでしょうか。

作業は、たしかに大変ですw
返信する

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