紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【師匠キャラの言葉】~比古清十郎編

2011-01-06 22:14:28 | 師匠キャラの言葉
ひさしぶりに、「師匠キャラの言葉」の記事を書いてみます。
すでに、幻海師範アバン先生と師匠キャラの言葉を取り上げてきましたが、
今回は【るろうに剣心】の「比古清十郎」で行ってみたいと思います。
スミマセン、またジャンプ系です。ジャンプの師匠キャラは良いキャラが多いので・・・

他の師匠キャラと比較して、本編への登場は少なかった比古でしたが、その強烈な師匠っぷりは、
発するセリフがことごとく名言となるほど神がかっていたので、ネタには事欠きませんでした。

そんな比古から、良い言葉を賜りましょう



剣は凶器 剣術は殺人術 どんな綺麗事やお題目を口にしても それが真実

弟子である剣心に十五年ぶりに再会した比古が、「教えたはずだぜ」と前置きしてから
この言葉を剣心に投げかけます。
この言葉は剣心が比古の弟子として修行していた頃にさんざん聞かされた言葉のようで、
剣心自身も、まったく同じ言葉を第一話で薫に言い放っています。

平和な時代において、もともとは人を殺すための技術の剣術は、
「人を活かす」ことに重きを置く流派が現れるなど、多様化をみせた。
「剣術によって志を遂げられる」「剣は志のシンボル」というように、剣や剣術を心のよりどころにするのは
大いに結構だが、それを用いることで人の命を奪ってしまうのだということを忘れてはならない。

比古はそのことを悟らせるために、この言葉を剣心に刷り込んだのだと思いますが、
皮肉にも、剣心は14歳の時に「新時代のために剣をふるう」ということを盲目的に信じて
幕末の動乱に身を投じ、多くの人を斬ってしまいました。
剣心が自分の罪の重さに気がついたとき、この言葉の重みも同時に知ったことでしょう。



飛天御剣流は時代の苦難から人々を守るのが本来の理
だが、それはあくまでも どの権力 どの派閥にも属さない自由の剣としてだ


飛天御剣流は非常に強力な剣術です。
その強さゆえ、飛天御剣流が加担した方に必ず勝利をもたらしてしまいます。
この圧倒的な強さを持つ剣術が権力に利用されてしまった場合、
その権力は一方的に自らに都合の悪い者を葬ることのできる力を手に入れたことになるのです。
それゆえ、代々の飛天御剣流の継承者はその力を権力に利用されないように注意してきました。

14歳の剣心にはそれがわからず、ただ「時代の苦難から人々を守る」ということだけを
盲目的に実践しようとしたため、この力を長州藩に利用されてしまうことになったのでした。
本来なら、比古の言う通り「どの権力 どの派閥にも属さない自由の剣」として
幕末の動乱を立ちまわるべきでした。

強力な力を持つ者は、その力の使いどころを誤ってはならないという戒めを持った言葉です。



俺自身が出張れば一番てっとり早えんだが 今更そんな面倒臭え事は御免だ

人斬り抜刀斎に立ち戻らずに志々雄真実と戦うために、剣心は飛天御剣流奥義の伝授を希望しますが、
比古はあーだこーだ言ってゴネていました。でも、結局最後には伝授してくれることになるのです。
その際に放った言葉です。

「奥義伝授してやるけど、お前のためじゃないんだからね!俺が行くの面倒なだけなんだからね!」
という、ツンデレ的な意味でとらえてもいいんでしょうが、ここはやはり、
志々雄真実という幕末の亡霊を生み出すことに間接的にかかわった剣心に責任をとらせることで
剣心の罪の意識の負担が少しでも軽くなるように、という師匠心が働いたのではないでしょうか。
素直じゃないですが、師匠というものは自分の行動の理由をいちいち弟子にくどくど説明しないものです。



お前一人が全てを背負って犠牲になるくらいで守れる程 明治という時代は軽くねえはずだ

奥義の伝授の前に剣心にかけた言葉です。
何かを守るために自分一人で全てを背負おうとする傾向のある剣心に釘を刺すための一言なのですが、
言い方にシャレが効いていて比古らしくて良いですね。
さらに、「覚えておけ どんなに強くなろうとお前は一介の人間 仏や修羅になる必要はないんだ」
とよりわかりやすい言葉を剣心にかけます。

「話は終わりだ 始めるぞ」

この後、地獄のしごきがはじまりますが。



手取り足取りで教えられた技は身につかない
一度喰らってそこから学び取った技こそいざって時に役に立つ


ハイ、比古の教育方針がよくあらわれてるセリフですね。
技を教える際、比古は弟子にその技を喰らわせることで覚えさせていたようです。
そんなムチャクチャな! と思うかもしれませんが、案外他の師匠キャラも
これに似た教育方針が多かった気がします。

 アバン先生は、ダイにくたくたになるまで剣を振らせて大地斬を覚えさせたり、
 ドラゴラムでダイに炎を吹きかけて海破斬を覚えさせたりしましたし、

 マトリフはポップにメドローアを教える際、ひとしきり理屈を説明したあと、
 実際にメドローアをポップに向けて放っています。

 幻海師範も、霊光波動をはねかえす修行で幽助に容赦のない霊光波動を浴びせたりしました。

こういう師匠の教育はジャンプの伝統なのかもしれませんねー。



弟子は本当に大変ですが・・・。



次は少し長めの言葉です。


人を斬り 許多の命を奪ったお前は その悔恨と罪悪感のあまり
自分の命をすぐ軽く考えようとする
自分の命もまた一人の人間の命だという事実に目を伏せて

それがお前自身の真の強さを押さえる結果となり
時として心に巣喰った人斬りの自由を許してしまう




それを克服するためには お前が今 生と死の間で見出した
生きようとする意志が不可欠なんだ

愛しい者や弱き者を仏の慈愛を以って 己を犠牲にして守った所で
その者達の中には悲しみが残り 本当の意味での幸福は訪れない

時代の危難を修羅の激情を以って 命を捨てて鎮めた所で
それは所詮 連綿と続く時代の 一時だけの事に過ぎない




生きようとする意志は何よりも強い・・・
それを決して忘れるな

さすればお前は自在に 天翔龍閃を使いこなし
志々雄一派はもちろん 己の中の人斬りにすら 決して負けたりはせん


解説するなんて野暮なことはしませんが、この時の剣心に進むべき道を示す重要な言葉でした。


最後です。
ひたすらに「強い」比古ならではの言葉です。


今の一刀はなかなか良かったぜ不二
衝突の際に手の内を締めるという「剣術の基本」がしっかり守られていた

理知を知らぬ馬鹿や まして化物や怪物の類じゃ
とてもこうはいかねェよな


そろそろお前自身の意志で 「自分の闘い」を選んでみちゃあどうだ
過ぎた強さってのは 時として周囲に「卑怯」と取られることがある
ましてやお前の場合は どんなに望んでもその図体だけに
既に「正々堂々」とはいかないときている



だが今日は違う
お前が全力を出しても倒せない男が
こうして目の前に立ってやっているんだぜ



志々雄十本刀の一人である、巨人のように大きな男・不二に言い放った言葉です。
一見すると、理性のない化物のように見える不二ですが、比古は不二の一刀を受けただけで
不二に理知があることを見抜きます。
さらに、その巨大さゆえに今まで正々堂々の闘いというものが出来なかったのであろうと
不二の内に秘めた悩みすらも見抜いてしまうのです。
その上で、自分はお前よりも強いのだから、今はお前の望む正々堂々の闘いができるぞ
という、実に気持ちのよい言葉を放ちます。

この言葉に言い知れない衝撃を受けた不二は涙を流し、比古との勝負に望みます。
不二念願の、正々堂々の勝負でした。
結果は比古の圧勝。敗北した不二は、しかし満足そうに笑ったのでした。

この言葉とこのエピソードは、比古の気持ちのいい性質ととてつもない強さを同時に
魅せた象徴的なものだったと思います。
この不二との闘いに、比古清十郎の魅力のほとんどが詰まっていると言ってもいいでしょう。
すなわち、

相手の力量を正確に読み取る聡明さ
相手の痛みがわかる優しさ
相手を完膚なきまでに打ちのめす、その圧倒的な強さです。

作中、比古は本当にいろんな意味で強キャラでした。
師匠キャラのお約束として、弟子にその強さを超えられることはなく、
むしろ物語終盤、その小さな体躯が災いして剣心が飛天御剣流を使えなくなって戦いを引退しても、
比古はそのマッチョな体躯から全然引退の気配もなく、五十近い年齢で現役バリバリっぽかったです。
(OVA星霜編で剣心の息子に飛天御剣流を教えてました)

作者の和月先生も、比古をトランプの「ジョーカー」に例えて、使いどころが難しかったという旨を
キャラクター製作秘話で明かしています。


【※追記】
痕跡さんのリンク紹介で気付いたんですが、大事な言葉を取り上げ忘れてました!
京都編を読み返しただけで満足していたぜ、あぶねーあぶねー。



春には夜桜 夏には星 秋に満月 冬には雪
それで十分 酒は美味い
それでも不味いんなら それは自分自身の何かが病んでいる証だ


完全に飲み助の言葉ですね。なんだか李白の詩を詠んでるみたい!
単純に比古がお酒の魅力を剣心に語っているだけなのですが、
人斬り仕事を数多くこなしていくうちに酒の味が血の味に感じられるようになってしまった剣心は
比古のこの言葉を思い出して、自分の内のなにかが病んできていることに気が付きます。
そして、比古と喧嘩別れしたあの日に、師は何故自分を止めようとしたのだろうと
思い返すに至るのです。

比古にしてみれば、何気なく酒の魅力を語った言葉にすぎなかったかもしれませんが、
剣心はこの言葉を思い出すことで、自身の歩む修羅の道に疑問を感じるきっかけとなりました。

それにしても、比古にはお酒がよく似合います。
常に万寿の酒瓶持ってるイメージだなぁ。
そして、花鳥風月を肴に酒飲むだけで美味いという言葉通り、比古がツマミと一緒に
酒飲んでる場面はまったくありません。
酒オンリーでぐいぐい行ってるのです。胃壊しますよ!!
「男でも女でも美味い酒の味も知らんで成仏するのは不幸だからな」
と言って、お墓に酒を注ぐシーンも印象的でした。

師匠お酒大好き!


と、まあこんな感じで、比古清十郎の言葉を紹介してきましたが
心に響いた言葉はあったでしょうか?
あらゆる意味で「強い」比古清十郎の言葉は、不条理あふれる現代社会に
まっすぐ突き刺さるはずです。

ありがとう、比古清十郎!!



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5 コメント

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Unknown (kyu.)
2011-08-19 22:43:51
比古清十郎は外見が若すぎて、今ひとつ師匠キャラがしっくりこない気がします。
行動・言動自体は師匠らしいのですが。

個人的には、師匠キャラというとキャプテン・ブラボーの方が印象深いです、師弟対決で破れるところも含めて。
返信する
Unknown ()
2011-08-21 03:37:09
>外見若すぎ

たしかに、オッサンぽいか老人の方が師匠っぽいですね。
ブラボーはキャラとして好きなんですが、
一度でもカズキを殺そうとしちゃったからなー
返信する
Unknown (DD)
2012-10-30 00:33:20
比古の「生きようとする意志は何よりも強い」という考えを、武装錬金では敵キャラであるパピヨンが持っているのも面白いポイントだと思います。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-03-23 18:10:47
師弟対決で負けたとかどう読んでんだよ

読解力なさすぎwww
返信する
Unknown (Unknown)
2015-08-08 01:33:23
かなり前の記事にコメントするのもアレですが…
比古師匠、剣心の息子に飛天御剣流教えてなかったと思いますよ?
教えてくれない、って劇中で息子君が愚痴ってたと思いますが…
返信する

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