紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

今さら【ハチミツとクローバー】の結末について語る

2010-10-03 04:09:11 | コミック全般
【ハチミツとクローバー】は、僕にとって思い入れ深い作品です。
この作品は、美大を舞台にして男女の片想いを描く恋愛漫画で、
「登場人物全員片想い」と言われるほど「片想い」に特化した作品でした。

思い入れが深いのは、この作品を読んでた頃、ちょうど僕も大学生だったからでした。
この作品の主人公・竹本くんが就職活動で悩んでいるころ、ちょうど僕も就職活動真っ只中。
竹本くんにはずいぶんと思いを重ねたりしたものでした。うんうん。

さて。
この作品の連載が終了したのは2006年7月。
この頃には、僕はもうしっかりと社会人となり、忙しい毎日を送っていました。

この結末が、またなかなかに考えさせられるものでした。
それで、今回の記事の本題に入るわけですが、結末について語るわけですから、
当然ながら物語の核心にベタベタ触れまくります。
【ハチミツとクローバー】未読の方はご注意ください。

では、本題へ入ります。


  ハチクロの恋愛模様

ハチクロの物語のメインの流れとなるのは、ヒロイン・花本はぐみを巡る、
竹本祐太(たけもとゆうた)と森田忍(もりたしのぶ)の関係性の変化のドラマです。
(他にもいろいろな人の恋愛が描かれますが、今回ははぐみを巡る流れのみに焦点を当てます)




美大の美術史教師・花本修司(はなもとしゅうじ)が、いとこの娘・はぐみを
大学に連れてきたところから、物語は回りはじめます。


はぐを見た竹本は、はぐに一目惚れ。


竹本の先輩である森田もはぐを気にいってしまいます。

その後、いろいろあって、なんとなく以下のような関係になります。

森田 ←【お互い意識】→ はぐ ←【竹本の片想い】― 竹本

森田とはぐは、それぞれ芸術に関して特有の才能を持っており、お互いを意識する関係になりました。
竹本は芸術に関して突出した才能は持っていないため、はぐと芸術の上で意識し合う関係には
なれませんでしたが、自分探しの旅を経て吹っ切れ、はぐに告白をしました。
(はぐ、返事はハッキリとはせず)

この恋愛模様は、物語のお約束から行って、はぐと森田がくっつくのが自然な流れでした。
実際、物語ははぐと森田がくっつくような方向に流れている空気がありました。
しかし、ある事件をきっかけに、物語は意外な方向へ転びます。


  はぐの怪我

ハチクロ全10巻中の9巻目。
はぐが大学に搬入中のガラスパネルが落下する事故によって、負傷してしまいます。
命に別状はありませんでしたが、はぐが再び絵筆を握れるようになることは困難でした。

森田も竹本も、はぐと一緒になって彼女を支えて生きていくことを考えます。
そして、それぞれが最後のアプローチを行います。

はぐが選んだ答えは



自分の父親代わりのような存在、花本修司と一緒に生きることでした。
勿論、今まで通りの保護者としてではなく、共に人生を歩む者として、という意味です。


  花本修司

これは、物語のお約束的に言うと、超意外な選択です。
修司は、言ってみればハチクロの中の「お父さん的キャラ」だったのです。
それぞれの片想いに悩み苦しむ若いハチクロキャラたちを見守ったり、
背中を押したりするような存在でした。
そんなキャラがダークホースのように、メインヒロインとくっつくなんて、
ハチクロ10巻で、この場面を読んだときには腰抜かしましたよ、正直。

・・・でも、冷静になって考えてみればこれは当然の選択のように思えます。
修司は、はぐが小さい頃から時折一緒に遊ぶ仲でした。
長野の山村で祖母と一緒に閉塞的に暮らしていたはぐを外の世界へ解放したのも修司でした。
はぐは、そんな修司を「雨みたい」と形容します。

一緒にいると深く息ができて、草や木みたいにぐんぐん伸びてゆけそうな気がする。
いつも困ったような顔でやさしく笑う 私のだいじなだいじなひと

と。
これから待っている長いリハビリ生活の苦をはぐと共にするのは修司しかいないと思えます。

そんなはぐのことを修司は・・・



「ああ好きさ、大好きさ!」
これは、今までの溺愛描写ではぐを可愛がってたときのニュアンスとは明らかに違います。
今まで、「はぐーー」とかやってたの、実はあれガチだったの、先生!?
まあ、どっかで「好き」のニュアンスが変わる「境目」はあったんでしょうけどね。
ただ、修司は恥ずかしいからその「境目」について説明したくないらしい。
うーん、いつだろう・・・。


とにかく。
今まで、「お父さん的キャラ」というだけで修司を恋愛圏外に置いていた読者に対して、
これは衝撃的な展開でした。



そりゃ、山田さんみたいなリアクションになりますよ。
このときの山田さんは読者の気持ちを十二分に代弁してます。



そして、フラレ男二人組もボーゼン。
泣け。今は存分に泣くがよい。

しかし、この結末は最初は驚いたけど、一番スッキリする結末。
正直、森田や竹本とくっつくとなると、刹那的に「よかったねー」と思うかもしれないけど、
これからのはぐのリハビリ生活のことを考えると、ちょっと不安になるというか・・・。

その点、修司と一緒の安心感は異常。
修ちゃんと一緒なら、つらいリハビリ生活も二人で和みながらやっていけそう!
なんたって修ちゃんは、はぐの超絶料理を何年も笑顔で食い続けた漢だからね。
そんじょそこらの若造とは気合いの入りが違うってものよ!


  おまけ

アニメ版ハチクロでは、毎回挿入曲がスピッツとスガシカオの楽曲から選ばれてました。
これは、【ハチミツとクローバー】というタイトルが、スピッツの「ハチミツ」というアルバムと
スガシカオの「Clover」というアルバムから取られているのを受けてのことだと思われます。

スピッツもスガシカオも大好きな自分にとって、このアニメ版はまさに俺得な内容でした。
毎回、挿入曲に何がかかるかwktkしながら木曜のノイタミナの時間帯を心待ちにしたのも良い思い出。
ことに最終回の挿入曲が何になるかずっと楽しみにしていたところ、
なんと予想のナナメ上を行く、スピッツの「田舎の生活」。
これがホントにぴったりでした。







盛岡行きの新幹線での、はぐと竹本の別れで「田舎の生活」を流すなんて、
選曲GJと言わざるを得ない。
竹本くんと一緒に、俺も男泣き!!

誰得かわからないですけど、一応以下に全挿入曲リスト付けときますね。


[第一期]
1話 「ハチミツ」 by スピッツ
2話 「8月のセレナーデ」 by スガシカオ
3話 「月とナイフ」 by スガシカオ
4話 「波光」 by スガシカオ
7話 「多摩川」 by スピッツ
10話 「魚」 by スピッツ
13話 「そろそろいかなくちゃ」 by スガシカオ
14話 「Y」 by スピッツ
15話 「夜を駆ける」 by スピッツ
18話 「ユビキリ」 by スガシカオ
19話 「黄金の月」 by スガシカオ
22話 「月に帰る」 by スピッツ
23話 「Room201」 by スガシカオ
24話 「スピカ」 by スピッツ

[第二期]
1話 「仲良し」 by スピッツ
2話 「プール」 by スピッツ
3話 「ココニイルコト」 by スガシカオ
4話 「ほのほ」 by スピッツ
5話 「ジュテーム?」 by スピッツ
6話 「Happy Birthday」 by スガシカオ
7話 「夏陰~なつかげ~」 by スガシカオ
8話 「リンゴ・ジュース」 by スガシカオ
9話 「風なぎ」 by スガシカオ
10話 「涙」 by スピッツ
11話 「ふたりのかげ」 by スガシカオ
12話 「田舎の生活」 by スピッツ

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【ハチミツとクローバー】花本修司の物語を追う

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18 コメント

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Unknown (ロラ)
2011-04-24 22:09:38
お初です!
ネットサーフィンしてて偶然辿り着きましたw
他の記事も見ましたが、個人的に思いいれが
非常に強かったハチクロにて初コメさせていただくことに。

自分はノイタミナで放送されて、初めてハチクロの存在知りました。
当初観始めた目的は、「スピッツが挿入歌で使われてる!」というアニメとは関係ない事がキッカケでしたが^^;
でもいつの間にか物語にも惹かれて、共感したり考えさせたり・・と、特別なアニメになっていましたねw

最終回の「田舎の生活」で自分も泣いたのよく覚えてます。
アニメでマジ泣きしたの初めてかも・・・
ハニーアンドクローバー入りのパン、
あの時は世界一美味しそうに見えました!

そんな羽海野チカさんが現在描いてる
「3月のライオン」も面白いので、
是非とも読んでみてくださいな^^
それでは長文失礼しましたm(_ _"m)ペコリ
返信する
Unknown ()
2011-04-26 21:57:31
>ロラさん

コメントありがとうございます。
ハチクロは良かったですねぇ。
最後のハチミツクローバーパンの場面に田舎の生活はマジで忘れられません。
「3月のライオン」ももちろん読んでますよ。
物語の内容も面白いですが、登場する食べ物が
ぜんぶ美味しそうなんですよねぇ
返信する
Unknown (シロ)
2013-02-17 20:24:18
ありがとうございました
助かりました
 私 森田くんとはぐがくっつくのかと・・・
ハチクロは今までのと違って面白かったです
ありがとうございました
返信する
感動すまんが? (オスカルえっちゃん)
2013-10-21 11:49:43
検索からきました、漫画だいすきです、ハチクロのアニメ、また見てます。涙なしではみられないせつない話は、この作品がいちばんかなあ。まやまの恋がみのれば、いいなあ。
返信する
まさに青春 (はぐみ(^-^)v)
2014-01-08 23:32:13
私も大学入学が2002年でしたので、まさにはちクロと共に青春をむかえました。
当時はわからないことも、去年通信の芸大の院に再入学してようやくわかりました。
やはり、美大、芸大は独特の空気が流れていますね。
時のながれがとまったような、木材の香りやペンキの香りにほっとします。
わたしの昔通っていた大学は史学科でせまくて、高校より小さかったので、私は年間5回くらいしか通わないので通信としてではなく、学部生として、こんなおおきな学校に通い、はちクロみたいな青春をおくることができる若者を本気で羨ましくおもいます。
ちなみに私は真山くんがやはり好きです。私自身はあゆより、はぐみに似ていますが。
この作品の素敵なところは、忍×あゆ 真山×はぐ
など、お互い恋をしていない男女はちゃんと友情がめばえ、お互いの相談にのりあうシーンがたくさんあるところでしょう。そういうシーンはなぜかほっとしました。
返信する
ブラコン詐欺じゃんか (ホトトギスをほっといてゲス)
2016-04-03 06:04:45
許せない展開!しゅうちゃんは、お兄ちゃんであって恋人じゃないのに!!話に行き詰まってこうなっちゃった感あるー!許せぬ!!最後のフラれコンビになんか望んでた事があるのかと言われたら違うけど だってだって(泣)マジでダークホースだろ!!!(怒)
返信する
Unknown (Unknown)
2016-04-03 19:05:25
ハチクロ途中まで読んでて、後半の展開は知らなかったのですが
はぐが最終的に修ちゃんとくっついたと聞いて「え!!??」と否定的な驚きがあったのですが、
こちらの記事を読んで、なんだかすごく納得できました。どうもありがとうございました。
確かに男女として考えたら、一番理解し合え、安心できる相手は先生だと思いました。

突然恋愛圏内に引っ張り込まれて余裕をなくしてる先生が、今まで見せなかった表情で可愛らしいです。
返信する
Unknown (ななし)
2019-05-24 20:13:54
最近読みました。
若い子が読んでるだけの軽い青春ものだと思ってたけど、すごく面白かったです。
面白いというかすごいと思いました。
出てくる人物の殆どが魅力的で実在感があるっていうか、話自体は完結してるんだけど、どこかでまだ生きてるような気がするほど。
羽海野チカさんが最後に「連載が終わって抜け殻のようになってしまった」みたいなことを書いていらしたけど、それに違い気持ちになりました。
締め出されたみたいな置いてかれたみたいな。
私にとっては「三月のライオン」より強烈かな。
返信する
Unknown (A)
2019-05-27 21:45:29
幽白記事を検索しててこちらのブログたどり着きました。面白いです、すごく。懐かしかった~。
仙水忍の存在とか忘れてましたが思い出して、大人になった今思うと、すごく好きかも、とか。
そしてこちらハチクロ、大好きです。最終回まで完璧な終わり方と思っています。記事にしてくださってありがとうございます。めぐりあえてうれしいです。
アニメは見てなかったのですが、spitz好きなので見ればよかったな、挿入曲情報ありがとうございました。

返信する
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2020-07-10 01:35:45
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