前後編記事の後編を書いている最中だったんですが、
今週号(2012年10月6日発売)のジャンプで、好評連載中の
ラブコメ『ニセコイ』にて気になる展開があったので
触発されて突発的に筆をとってしまいました。
気になる展開とは、ざっと以下のようなものです↓
これは先週号のヒキです。
主人公・一条楽に想いを寄せるヒロインの一人、
小野寺小咲ちゃんがとつぜんの「キスしてもいい?」発言!
普段の小野寺さんはとても奥手の性格で
とてもじゃないけどこんなこと言う娘ではないので、
これには読者も相当驚いたことかと思います。
で、それに対する今週号の展開がどうなったかというと・・・?
で、でたぁ~~~!!!
出ました、昨今のラブコメ主人公共通の秘奥義・「まるで聞いてない」
だぁ~~!!
たいていは強風とかで聞こえてないパターンだったりしますが、
この一条さんは寝ぼけてて聞いてないということで、かなりタチが悪いです。
このあまりにもあんまりな一条さんを見て私は危惧を覚えました・・・。
昨今のラブコメ主人公どものひよりっぷりといったらどうだ!
だいたいこの手のどたばたラブコメの主人公は判で押したように
似たような感じのやつが多いです。
特徴としては、
1.没個性である
キャラとしてクセのない造形がなされる場合が多いので、
主人公でなかったらモブキャラにでもなってるんじゃないかってほど
無個性なやつが多いです。
一条さんの場合は、「ヤクザの頭の息子」「料理が得意」といった
付加価値はありますが、キャラに強烈に影響を与えている要素ではありません。
2.鈍感である
自分に好意を寄せる女子がいても、決して気が付きません。
また、自分がだれが好きなのかということに対しても気が付いていない
パターンが多いです。
気が付きそうになっても、必ず何らかの理由をつけて否定します。
3.自分から行動することはあまりない
意中の女子とどこかへ行くというシチュエーションがあったとしても、
それは決して自分発信の行動ではありません。
たいていは友人からのお誘いとかです。
イベント発生待ちが基本スタイルです。
4.八方美人である
意中の女子以外にもフラグを立てるのはラブコメ主人公のパッシブスキルです。
フラグを立てられた女子は、なんとなく主人公を好きになってしまいます。
5.優柔不断である
上記の八方美人に関係しますが、フラグを立てた女子に対して、
そのフラグを自分から折ることはまずありません。
たいていの主人公には意中の女子がいますが、関係ない女子の
フラグも無自覚に温存します。
この辺、2.の鈍感スキルも併用しているのでかなりタチが悪くなっています。
6.ラッキースケベである
犬も歩けば棒に当たると言いますが、ラブコメ主人公の場合は
歩けば、女子の裸に当たります。
7.すべてにおいてタイミングが悪い
最初に紹介した一条さんの「女子の重大発言を聞いていない」に象徴されますが、
ラブコメ主人公は、関係のない女子といるところを偶然、意中の女子に見られたり
言葉や行動の一端だけ取られて誤解されたりすることを宿命的に体験します。
以上、ラブコメ主人公七つの大罪を挙げてみましたよっと。
なぜこんな大罪をもった輩がヒロインからモテまくるのか不思議でしょう?
まぁ、ここで私が言いたいことはですね。
ここで挙げた大罪の何個かが引っかかってしまうような主人公君は
ぜひとも、『密・リターンズ!』の主人公・端島 密(はしじまひそか)を
見習っていただきたい、とこう声を大にして言いたいのです。
前置きが長くなりましたが、
今回は『密・リターンズ!』の主人公・端島 密の魅力に迫ります。
『密・リターンズ!』概要
まず、『密・リターンズ!』は週刊少年ジャンプに
1995年~1996年まで連載されていたラブコメ作品です。
詳しい作品内容は別記事でさんざん書いたので、
密を知らない人はあとでそれを読んでいただくとして、
一言で作品内容を言ってしまうと、
他人の姿になってしまった主人公が、かつての恋人と再び恋をする
(その際、自分の正体を告げてはいけない)
というのがコンセプトとなっています。
主人公の高校教師・端島密は一度死んでしまい、
高校生の鳴神源五郎の姿に転生します。
ヒロインの星崎理都は密の婚約者でしたが、
密が死んでしまったことですっかり消沈してしまいます。
自分が死んでしまったことによってどん底に
陥ってしまった理都と、他人の姿で結ばれなければならない
という、密にとって非常に困難な状況からの物語スタートとなります。
と、前提条件が把握できたところで、
以下より密かの魅力を語っていきます↓
ここがすごいぞ、端島 密!
密が転生した鳴神源五郎は、川に身投げをした高校生で、
端島密はそんな源五郎を助けようとして川に飛び込み、
帰らぬ人となりました。
理都にとって源五郎は、恋人を(間接的にとはいえ)
死に追いやった人間であり、ヒロインとの好感度が最悪の状態
から物語は始まります。
たいていのラブコメ主人公はヒロインから潜在的に好かれているものですが、
密(が転生した源五郎)の場合はガチで嫌われており、
恋愛成就への道は超ハードモードです。
普通の人はこの時点でくじけてしまうものですが、密は違います。
密が理都に対して行った最初の大きな事。
それは、いつまでも端島密の死に消沈する理都の部屋へ乗り込み、
端島密の形見であるアンモナイトの化石を叩き壊すことでした。
いくら生前の自分がプレゼントしたものとはいえ、
故人の大切な形見をぶっ壊すって・・・。
案の定、理都からこれ以上ないくらい嫌われてしまいますが、
この事件がきっかけとなり、自室に引きこもっていた理都は
教師の職に復帰することになりました。
好感度はどん底になりましたが、密はあくまで前向き。
「大嫌い」って気持ちは一度裏がえっちまえば「大好き」になる
いちばんよくねえのは「好きでも嫌いでもねえ」ってやつだからな
って超名言だと思いませんか。
密は自分の気持ちに極めて正直であり、前向きです。
上で延べた七つの大罪の「鈍感」なんて言葉は密には絶対に当てはまりませんね。
そして、行動はきわめて計算的です。
端島密が生前に世話をしていた猫の餌やりを口実にして、理都と話をする作戦!
密はイベント発生をただ待っている日和見主人公とは違い、
必ず自分から行動を起こしてヒロインに接近するようにしています。
この辺り、七つの大罪の3番目とは真逆ですなー。
さらにすごいのは、猫の餌やりの時間だけではラチが開かないと、
理都が教師を務める高校に転校してしまうのです!
他のラブコメで、主人公を追って幼なじみの新ヒロインが転校してくる
というシチュはよく見ますが、主人公自らがヒロインを追って転校する
なんて、こいつぐらいなものでしょう。
まぁ、こんな彼なので当然、他の女子からも注目されます。
源五郎として転入した先のクラスは、かつて端島密が担任を
務めていたクラスです。
そのクラスをわざわざ指定して入ってきたこの源五郎って何者?
と興味を持ったクラス委員長の鶫原ちなみちゃんが
ちょっとした勘違いから一気に密(源五郎)に惚れてしまいます。
ちなみちゃんは想いこんだらまっすぐ!といった娘で、
伯父さんちでつくったロールキャベツが会心の出来だったという
だけで、それを源五郎に食べてもらおうと大雨のなか
十数キロも歩いて届けに来るという、今で言ったら
ちょっとだけ愛が重い娘なのですが、
密は、そんなちなみの想いをしっかりと受け止めます。
あれ、八方美人にならない?大丈夫?
大丈夫でした。
密はちなみの本気の想いを感じつつ、中途半端な付き合いはできないと
きっぱりとちなみを拒絶することを決意します。
これは優柔不断でも八方美人でもないぞ!
でも、大雨のなか長距離を歩いたあと高熱を出したちなみに
今そういう話をするわけにはいかないといった気遣いもみせます。
大人の対応ですな!
(おっと、そういえば中身は大人だった)
まぁ、でもちなみに惚れられていることは
理都にばっちり気付かれてちょっと誤解されているので、
この辺「タイミングが悪い」という属性はどうしても
付いてしまいます・・・。
でも、密の偉いところは付いてしまった誤解やらそういったものを
自分で行動してなんとかしようとするところです。
とはいえ、自分は車も経済力もない高校生の姿・・・。
自分が理都に対して出来ることといえば・・・?
身体を張って好きな女を守ることだ!
うむ、たいへんシンプルかつ爽やかな答えがよろしい!!
ここでは、酒癖のわるい父兄のもとへ家庭訪問に行った理都を追い、
オジサンに絡まれていた理都を見事助け出しました。
お見事・・・!
こんな感じで、密は理都の好感度を上げ続け、
ついにはデレる状況をつくり出すまでに至りました。
うーん、ここまで長かった。
感慨無量です。
この後、恋のライバルとなるイケメン教師の烏丸が登場しますが、
高校生の姿で互角に渡り合えそうな頼もしい姿もみせてくれます。
いいねぇー。
まぁ、こんな感じで順当にいけばあと一歩で、理都が
源五郎の姿をした密にデレてくれるかなーというところまで
物語が進んだところで、この作品としては悲劇となる
ストーリー展開へのテコ入れが入ってしまうのが
非常に残念ですが、ここまで書いた段階で、『密・リターンズ!』の
主人公の魅力を伝えられたかなーと思います。
テコ入れに関しては、以下の記事に詳細書いてますので
興味のある方はどうぞ↓
打ち切りさんいらっしゃい! 【密・リターンズ!】
まぁ、ここまでさんざん語ってきましたが、
別に本気でラブコメ主人公に怒ってるわけじゃなく、軽い「ネタ」です。
じっさい、密は姿は高校生でも中身は酸いも甘いもかぎ分けた
大人であるので、こういった行動を取ることができるという面もあり、
それを現役中高生だかの小僧に押し付けるのもいかがなもんでしょう。
うん、いろいろ言ってすまんかった一条くん。
でも、ヒロインの重要発言中に居眠りはやっぱりまずいぞ?
『密』タイプの主人公は、物語をつくる上での欠点もあって、
ヒロインを魅力的に見せづらいという状況をつくってしまいがちです。
『密』のヒロイン・理都は良いところもたくさんあるのですが、
密の動きっぷりが目立つせいか、どうしても受け身で地味な印象を受けてしまいます。
密がそんな惚れる要素がどこにあるのかーって・・・。
おっと、これじゃラブコメ主人公とヒロインの立場が逆転?
うーん、難しい!
この辺のラブコメのキャラクター考察はまた別にやってみたいかも。
とりあえず、今日はここまで!
※追記※
なお、『密・リターンズ!』は、現在「Jコミ」で全巻読むことができます。
興味を持った人は以下URLへGO!!
http://www.j-comi.jp/book/comic/3441
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なんかハーレム系ラブコメが少年漫画を中心に多すぎる気がしますね。ニセコイも最初は良かったのですがこの頃微妙に感じてきてしょうがありません。
多分、マガジン赤松健とか。美少女ゲームの影響なんでしょうけれど、それとジャンプを読んでいる男の子が基本的に恋愛に興味がなさそうというのも要因かもしれません
つい最近始まったジャンプ恋愛漫画三作なら、パジャマな彼女が一番まともだと思っていました、でも連載終了しちゃったんですよね。あの漫画も最後のシーンもヒロインが告白して終了なんですよね
ちょっとだけなんだかなぁという気分になりました。あそこは男の子の方から告白して欲しかった・・・
密リターンズは、ジャンプで読んでました。面白いとおもっていたのですが、人気が出なかったのが切なかったです。ジャンプで恋愛漫画って鬼門ですね
興味深くこちらの記事を拝見させて頂きました。
ターゲットとなる読者層に対し、理都のようなタイプより、
小野寺さんタイプの方がストーリーを動かしやすいんでしょうね。
宜しかったらトラックバックさせて頂けませんか?
ただ主人公に行動力がありすぎるせいか?展開が急すぎる面が有ったような。
連載開始直後ならともかく、掲載位置的にも好位置にいて
普通の漫画なら安定期に入るところで、ガンガン次のステージに進んでしまうのが
もったいないなと当時思っていました。
コンセプトは面白そうだったんですけどね。
半幽霊ヒロインとのどたばたラブコメ。
後半、ものすごいテコ入れが入ってましたが・・・。
>漫画道場さん
トラックバックOKです!
小野寺さんは応援してあげたくなる系ヒロインなので
密みたいにガンガン来られたら魅力半減でしょうね。
ラブコメではないですが、最近ジャンプで始まった
「クロスマネジ」の主人公は読み切り版では
アクの強そうなキャラだったのに、連載版では
没個性なラブコメ主人公型に変えられてました。
やっぱり主人公が前に出るとヒロインの魅力が
死んでしまう(と思われてる)んでしょうねー。
>主人公に行動力がありすぎて急展開
たしかにガンガン次の展開にいってましたね。
遊び回が一切なかった気が・・・。
この連載が始まったとき、マンガなんて書いてたんだ!と
ビックリしました。
ラブコメとしてならこれよりはニセコイのが断然いいですね
主人公もニセコイの方が距離が近くていい
19歳にもなって(アニメではすでに20歳)中学生を続けている主人公坂口松太郎が自分のおこした狼藉のせいで中学教師を辞めた南令子先生を追って雷神部屋に角界入りしました。南先生の実家はなんと雷神部屋と目と鼻の先だったのであります。
アニメでは打ち切りで終わり南先生と結ばれるとこまで生きませんでしたが、原作ではきちんと南先生と結婚しています。
密リターンズのパターンはのたり松太郎という先例があります。
こういう主人公が普通だよ、って紹介するまでは許せましたが、主人公のいいとこを言うたびにねちねちした言い方が混じるのがとても不快でした。