紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【ぬらりひょんの孫】21世紀の妖怪漫画として

2010-09-28 22:18:22 | コミック全般

昨今、「ゲゲゲの女房」のヒットなどでなんとなく「妖怪ブーム」という言葉を聞きませんか?
実はこの「妖怪ブーム」というのは、昔からずっと、毎年のように言われていることのようです。
「ブーム」というのは一過性の流行のことなので、ずっと続くブームなどありえないのですが、
こと「妖怪ブーム」に関しては、1960年代終盤ごろから事あるごとに言われるように
なったのだそうです。
(このあたりの詳しい言及は、京極夏彦先生の「妖怪の理 妖怪の檻」という本で行われています。
興味のある方は読んでみてください。)

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とにかく、今は何度目かの妖怪ブームなのです。


今回は、そんな妖怪ブームのなか、TVアニメが絶賛放映中のジャンプ漫画【ぬらりひょんの孫】を
「21世紀の妖怪漫画」として紹介してみようと思います。


  妖怪のこと

日本にはたくさんの妖怪がいます。

これら妖怪は、昔の人が説明できないような奇怪な現象に遭遇した際に、なんとかその説明をつけるために
化けものの姿を想像してあてはめたことから生まれたキャラクターでした。
当然、想像なので妖怪一匹一匹の具体的な姿は定まっていなかったのですが、
江戸期、鳥山石燕ら浮世絵師によって妖怪の姿が描かれました。
さらに、明治から昭和にかけて、妖怪は民俗学を通じて人々に紹介されました。
この頃はまだ、妖怪は学術用語であり一般の人にはなじみの薄いものでした。

そんな中、登場したのが「ゲゲゲの鬼太郎」でおなじみの水木しげるです。
妖怪を題材にした「ゲゲゲの鬼太郎」のヒットにより、妖怪は一般の人々に
広く受け入れられることになりました。



水木しげるの描く妖怪は、基本的に鳥山石燕の描いた妖怪をモデルに描かれています。
そして、鬼太郎以降の妖怪漫画は必然的に水木の妖怪を下敷きにすることになるので、
今現在認識されてる妖怪の姿は、鳥山石燕 ⇒ 水木しげる ⇒ 鬼太郎以降の妖怪漫画家たち
という系譜で描き継がれている構図ができあがるわけですね。


【ぬらりひょんの孫】に登場する妖怪たちも、基本的に石燕⇒水木の妖怪をもとにデザインされています。


  ぬらりひょんの孫、21世紀の妖怪漫画として

さて、いよいよ本題。【ぬらりひょんの孫】です。
このタイトルの通り、主人公は妖怪ぬらりひょんの孫、その名も「奴良(ぬら)リクオ」です。


昼間は人間。しかし、夜になると・・・


妖怪になってしまうのでした!



おじいちゃんのぬらりひょんは、「妖怪の総大将」と呼ばれる妖怪であり、
孫のリクオは、おじいちゃんの後を継いで"三代目"奴良組総大将となります。


「ぬらりひょん」という妖怪は、鳥山石燕の「画図百鬼夜行」で紹介されているのですが、
実は、具体的にどんな妖怪なのか一切記述がありません。
現在、一般に知られている「妖怪の総大将で、どこからともなく家に入ってきて勝手にお茶を飲んだりする」
という特徴は、藤澤衛彦という民俗学者が注釈したもので、根拠は一切不明なのです。
鬼太郎に登場するボスキャラとしてのぬらりひょんも、この藤澤の「妖怪の総大将」という
根拠不明の注釈を水木しげるが拾って、ぬらりひょんのキャラ付けに活用しているだけで、
要は、実際のところぬらりひょんという妖怪がどういう妖怪なのか、よくわからないのです。

【ぬらりひょんの孫】では、この具体性がほとんどないぬらりひょんの特徴をうまく作品に
生かしています。



ぬらりひょんという、"具体的でない"、"よくわからない"という特徴を能力化して、
「相手の認識をずらす」
という能力に昇華させているのです。

こういった、妖怪の特徴がそのままその妖怪の能力となり、
【ぬらりひょんの孫】は「特殊能力バトル漫画」として成功しているのです。

まさに、21世紀の妖怪漫画といった風格。おみごとです。


冒頭で妖怪ブームがずっと続いていると触れましたが、【ぬらりひょんの孫】を読んでいると
その理由がなんとなく頷ける気がします。

「妖怪」というものは、古くからあるのに、料理の仕方によって
いくらでも魅力的に輝かすことのできる題材だから、ではないでしょうか。

「まだだ、まだ妖怪ブームは終わらんよ。永遠にっ!」



とりあえず、雪女がかわいすぎて生きてるのがつらい・・・。

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