前回からの続き
黄泉からの誘い
魔界の穴騒動からしばらくして、蔵馬のもとにある妖怪からの使い魔が現れる。

使い魔をよこしたのは、1000年以上も前の盟友「黄泉」であった。
なんと、黄泉は蔵馬の差し向けた刺客によって視力を失ってから
相当妖力を向上させたようで、かつて蔵馬がその強大な力の前に
魔界から撤退せざるを得なかった雷禅・躯と肩を並べる
ほどにまで力をつけたのだという。
黄泉は、かつて自分の視力を奪った刺客を捕らえて飼っているとも言った。
その刺客を放ったのが蔵馬であることには言及しなかったが、
どうやら黄泉は蔵馬に殺されかけたことに気がついているようであった。
が、黄泉の用件は蔵馬への断罪ではなかった。
雷禅・躯を滅ぼし、魔界統一を成し遂げたい。
そのために、蔵馬の協力が必要なのだという。

同じ頃、飛影のもとには躯の使者が、
幽助のもとには雷禅の使者が訪れていた。
飛影、蔵馬、幽助の三人は、魔界を三つに分けた戦いに
身を投じることになったのである。
魔界へ
魔界への道は、なんと霊界特防隊の案内であっさりと開かれた。
どうやら霊界は、三人を体よく魔界へ厄介払いするつもりのようである。

戦いたいがために魔界へ身を投じる三人を、桑原が激しく叱責する。
ただ戦えれば立ち位置はどうだってよいというのでは、ポリシーが無い分
戸愚呂や仙水よりタチが悪いのではないか、と。
蔵馬は闘争心から黄泉のもとへ行くわけではなかったが、
桑原の叱責を甘んじて受け、特に反論はしなかった。
7月、蔵馬=秀一の母が再婚した。
式は身内だけでしめやかに行われ、二人は幸せそうだった。
「これからはぼくがあなたの支えになる」と言った母の再婚相手は
それなりに頼もしく感じられた。
蔵馬は遠慮する二人へ8月一杯かけての海外旅行をプレゼントした。
そして。

夏休みの間だけという条件で、蔵馬は参謀として黄泉の戦列に加わったのだった。

黄泉の陣営は、蔵馬の目から見て脆弱であった。
大将・黄泉のワンマン陣営なのである。
「組織のカギは副将が握る」というのが蔵馬の持論であったが、
黄泉陣営の副将・鯱(しゃち)は戦力的には心もとなく、
しかも己の保身を第一に考え、国に利益をもたらそうという考えが
皆無な男であった。
黄泉は、蔵馬が鯱を除いてNo.2の座にまでのし上がってくれることを
期待していた。

自分の視力を奪った妖怪を蔵馬の目の前で殺してみせ、
黄泉は改めて蔵馬に協力を求める。
蔵馬が「NO」と答えたそのときは、海外旅行に出かけている
両親の旅先での不幸をほのめかす、半ば脅迫であった。
蔵馬には、名実ともに黄泉に協力する以外の選択肢は無かった。
No.2への道
暗黒武術会以来、蔵馬は一ヶ月に一度くらいの割合で、
ひどく好戦的になる自分を発見していた。
その周期は最近短くなりつつあり、黄泉に会ってからは
さらにその症状が進んだ。

蔵馬=秀一には母親の再婚相手の息子にあたる、義理の弟がいたが、
鯱によって人質に取られていた。
しかし、蔵馬はこのくらいでは動じない。
暗黒武術会での呂屠といい、黄泉といい、
蔵馬は人質を取られ慣れているといっても過言ではない。

時折人間界へと帰っていた蔵馬は、幻海師範の道場にて
黄泉陣営の戦力となる妖怪たちを鍛え上げていた。
勿論、霊界に目をつけられないよう、コエンマを抱き込んでの
秘密事業であったが。
コエンマは蔵馬・飛影・幽助がお互い合意の上に戦っていることに対し、
「不思議な関係だな」と感想をもらす。
蔵馬も「確かにその通りかもしれない」と思った。

そして、蔵馬はわずかな期間で強大な妖力値を持つ妖怪を
6人も黄泉陣営に参戦させたのだった。
6人は、かつて暗黒武術会で浦飯チームと戦ったことのある、
蔵馬たちとは馴染みの浅からぬ妖怪たちだった。

この功績により、蔵馬は黄泉陣営の第二軍事総長となる。
第一軍事総長である鯱に肩を並べた結果となった。

自らの立場を危ぶんだ鯱は蔵馬に闇討ちをしかけるが、
程度の低い鯱など、蔵馬の敵ではなかった。
鯱は蔵馬の返り討ちに遭い、果てた。
この瞬間、蔵馬は黄泉の軍事参謀総長となったのである。
魔界統一トーナメント
雷禅が死んだ。
これにより、魔界の均衡が崩れ、すぐにでも黄泉と躯の一騎討ちが始まる
かと思われたが、事態は意外な方向へと傾いた。
なんと、雷禅のもとにいた幽助が、国を抜きにしての個人戦にして
勝ったやつを魔界の王なり大統領なりに決めるという、
とんでもない提案を持ち出したからであった。

蔵馬は、あまりにも幽助らしいこの提案を痛快に思い、
黄泉に反旗をひるがえして幽助の提案を支持した。
同時に、躯もこの提案に乗ったため、黄泉は幽助の提案を容れるしか
なくなってしまったのである。
魔界はにわかに活気づいた!
自分も魔界の王になれるかもしれない、そう考える妖怪が大勢出てきた。
しかも、そのなかには黄泉や躯よりも強力な妖怪がいるかもしれなかった。

幽助の提案は魔界全土に受け入れられ、魔界統一トーナメントが開催された。

が、優勝したのは大方の予想を裏切って、煙鬼(えんき)という
まったく無名の妖怪であった。
蔵馬は三回戦で九浄という妖怪と当たり、敗退した。
優勝した煙鬼は、魔界に三年間チャンピオンとして君臨することを宣言。
魔界は、新しい一歩を踏み出そうとしていた。
その後の蔵馬

魔界統一トーナメントを終え、蔵馬は人間界へ帰ってきていた。
魔界の大統領が決まった頃、霊界ではコエンマが上層部を告発。
霊界が今まで、人間界での妖怪の悪事として報告してきた事項の
大部分が偽造であったことを告発したのであった。
これにより、魔界は悪であり、霊界が人間界を守るために結界を張る
という大義名分が完全に失われた。
霊界はついに重い腰を上げ、魔界の門を開いたのだった。
人間界と魔界との行き来は完全に自由になった。

それは、人間と妖怪の垣根が少し低くなったことを意味した。
妖怪でありながら人間に転生した蔵馬。
人間でありながら妖怪に覚醒した幽助。
微妙な存在である二人の生き方を後押しされたようでもあった。



人間界と魔界が近づいたことで、ちょっとしたトラブルが
何度か起きたが、それらはすべて取るに足らないことであった。

月日が流れ、結局、蔵馬が選択した道は魔界で妖怪に立ち戻ることではなかった。
蔵馬は、人間界で義父の会社を手伝い、人間として暮らすことを
選んだのだった。
【幽遊白書】の物語での蔵馬の活躍はこれにて終わる。
しかし、人間・南野秀一の物語は、まだまだ続いてゆくのである。
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魔界の穴騒動からしばらくして、蔵馬のもとにある妖怪からの使い魔が現れる。

使い魔をよこしたのは、1000年以上も前の盟友「黄泉」であった。
なんと、黄泉は蔵馬の差し向けた刺客によって視力を失ってから
相当妖力を向上させたようで、かつて蔵馬がその強大な力の前に
魔界から撤退せざるを得なかった雷禅・躯と肩を並べる
ほどにまで力をつけたのだという。
黄泉は、かつて自分の視力を奪った刺客を捕らえて飼っているとも言った。
その刺客を放ったのが蔵馬であることには言及しなかったが、
どうやら黄泉は蔵馬に殺されかけたことに気がついているようであった。
が、黄泉の用件は蔵馬への断罪ではなかった。
雷禅・躯を滅ぼし、魔界統一を成し遂げたい。
そのために、蔵馬の協力が必要なのだという。

同じ頃、飛影のもとには躯の使者が、
幽助のもとには雷禅の使者が訪れていた。
飛影、蔵馬、幽助の三人は、魔界を三つに分けた戦いに
身を投じることになったのである。

魔界への道は、なんと霊界特防隊の案内であっさりと開かれた。
どうやら霊界は、三人を体よく魔界へ厄介払いするつもりのようである。

戦いたいがために魔界へ身を投じる三人を、桑原が激しく叱責する。
ただ戦えれば立ち位置はどうだってよいというのでは、ポリシーが無い分
戸愚呂や仙水よりタチが悪いのではないか、と。
蔵馬は闘争心から黄泉のもとへ行くわけではなかったが、
桑原の叱責を甘んじて受け、特に反論はしなかった。
7月、蔵馬=秀一の母が再婚した。
式は身内だけでしめやかに行われ、二人は幸せそうだった。
「これからはぼくがあなたの支えになる」と言った母の再婚相手は
それなりに頼もしく感じられた。
蔵馬は遠慮する二人へ8月一杯かけての海外旅行をプレゼントした。
そして。

夏休みの間だけという条件で、蔵馬は参謀として黄泉の戦列に加わったのだった。

黄泉の陣営は、蔵馬の目から見て脆弱であった。
大将・黄泉のワンマン陣営なのである。
「組織のカギは副将が握る」というのが蔵馬の持論であったが、
黄泉陣営の副将・鯱(しゃち)は戦力的には心もとなく、
しかも己の保身を第一に考え、国に利益をもたらそうという考えが
皆無な男であった。
黄泉は、蔵馬が鯱を除いてNo.2の座にまでのし上がってくれることを
期待していた。

自分の視力を奪った妖怪を蔵馬の目の前で殺してみせ、
黄泉は改めて蔵馬に協力を求める。
蔵馬が「NO」と答えたそのときは、海外旅行に出かけている
両親の旅先での不幸をほのめかす、半ば脅迫であった。
蔵馬には、名実ともに黄泉に協力する以外の選択肢は無かった。

暗黒武術会以来、蔵馬は一ヶ月に一度くらいの割合で、
ひどく好戦的になる自分を発見していた。
その周期は最近短くなりつつあり、黄泉に会ってからは
さらにその症状が進んだ。

蔵馬=秀一には母親の再婚相手の息子にあたる、義理の弟がいたが、
鯱によって人質に取られていた。
しかし、蔵馬はこのくらいでは動じない。
暗黒武術会での呂屠といい、黄泉といい、
蔵馬は人質を取られ慣れているといっても過言ではない。

時折人間界へと帰っていた蔵馬は、幻海師範の道場にて
黄泉陣営の戦力となる妖怪たちを鍛え上げていた。
勿論、霊界に目をつけられないよう、コエンマを抱き込んでの
秘密事業であったが。
コエンマは蔵馬・飛影・幽助がお互い合意の上に戦っていることに対し、
「不思議な関係だな」と感想をもらす。
蔵馬も「確かにその通りかもしれない」と思った。

そして、蔵馬はわずかな期間で強大な妖力値を持つ妖怪を
6人も黄泉陣営に参戦させたのだった。
6人は、かつて暗黒武術会で浦飯チームと戦ったことのある、
蔵馬たちとは馴染みの浅からぬ妖怪たちだった。

この功績により、蔵馬は黄泉陣営の第二軍事総長となる。
第一軍事総長である鯱に肩を並べた結果となった。

自らの立場を危ぶんだ鯱は蔵馬に闇討ちをしかけるが、
程度の低い鯱など、蔵馬の敵ではなかった。
鯱は蔵馬の返り討ちに遭い、果てた。
この瞬間、蔵馬は黄泉の軍事参謀総長となったのである。

雷禅が死んだ。
これにより、魔界の均衡が崩れ、すぐにでも黄泉と躯の一騎討ちが始まる
かと思われたが、事態は意外な方向へと傾いた。
なんと、雷禅のもとにいた幽助が、国を抜きにしての個人戦にして
勝ったやつを魔界の王なり大統領なりに決めるという、
とんでもない提案を持ち出したからであった。

蔵馬は、あまりにも幽助らしいこの提案を痛快に思い、
黄泉に反旗をひるがえして幽助の提案を支持した。
同時に、躯もこの提案に乗ったため、黄泉は幽助の提案を容れるしか
なくなってしまったのである。
魔界はにわかに活気づいた!
自分も魔界の王になれるかもしれない、そう考える妖怪が大勢出てきた。
しかも、そのなかには黄泉や躯よりも強力な妖怪がいるかもしれなかった。

幽助の提案は魔界全土に受け入れられ、魔界統一トーナメントが開催された。

が、優勝したのは大方の予想を裏切って、煙鬼(えんき)という
まったく無名の妖怪であった。
蔵馬は三回戦で九浄という妖怪と当たり、敗退した。
優勝した煙鬼は、魔界に三年間チャンピオンとして君臨することを宣言。
魔界は、新しい一歩を踏み出そうとしていた。


魔界統一トーナメントを終え、蔵馬は人間界へ帰ってきていた。
魔界の大統領が決まった頃、霊界ではコエンマが上層部を告発。
霊界が今まで、人間界での妖怪の悪事として報告してきた事項の
大部分が偽造であったことを告発したのであった。
これにより、魔界は悪であり、霊界が人間界を守るために結界を張る
という大義名分が完全に失われた。
霊界はついに重い腰を上げ、魔界の門を開いたのだった。
人間界と魔界との行き来は完全に自由になった。

それは、人間と妖怪の垣根が少し低くなったことを意味した。
妖怪でありながら人間に転生した蔵馬。
人間でありながら妖怪に覚醒した幽助。
微妙な存在である二人の生き方を後押しされたようでもあった。



人間界と魔界が近づいたことで、ちょっとしたトラブルが
何度か起きたが、それらはすべて取るに足らないことであった。

月日が流れ、結局、蔵馬が選択した道は魔界で妖怪に立ち戻ることではなかった。
蔵馬は、人間界で義父の会社を手伝い、人間として暮らすことを
選んだのだった。
【幽遊白書】の物語での蔵馬の活躍はこれにて終わる。
しかし、人間・南野秀一の物語は、まだまだ続いてゆくのである。
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幽☆遊☆白書は私の小学生時代大好きだったマンガで、記事を見て懐かしく思いまた読み返したいと思いました。
冨樫先生の絵や物語は本当に素晴らしいです。
今度は是非ハンターハンターの注釈もお願いします。