夏の終わり

僕の数少ない「ライブを見に行きたくなる邦楽バンド」



サンボマスター。

ツアーファイナル→追加公演→そしてほんとに最後のオーラス。
8/31＠ZEPP東京に参戦してきた。

前回観たのが2005/4だったので、もう1年半振りのサンボだ。
その間に数々の有名フェスに出演、テレビドラマの主題歌・CMソングの
起用など、今やすっかりメジャーなバンドのひとつと成り得た彼らだが、
今日は一体どんなライブを見せてくれるのか。

正直今回は期待より不安の方が大きかった。3ｒｄアルバムの評判がイマ
イチ良くないのも気になっていた。

僕は敢えて、最新アルバムは聴かずに今回のライブに臨もうと思っていた。
目の前の山口が発する言葉、メロディーを直接受け取りたかったからだ。

メンバーが現れ、相変わらず苦笑を誘う山口のMCから。
しょっぱな、ガツンとデカイ音を出したかと思ったら割とスローな大人し
い曲でスタート。もともとは繊細な表現こそ得意とするバンドであると思
うが…前回のような勢いに任せたノリだけに頼ることはなく、なのになぜ
か非常にテンションの高いパフォーマンス。エンジンで言えば「低速での
トルクが太い」といった感じだろうか。貫禄がついてきたな、と思わせる
には十分なスタートだったが。

ベース近藤の様子がおかしい。1曲目からいつになく暴れまくる。転倒しま
くり、マイクスタンドを何度もぶち倒す。

普段もの静かな印象の彼だが、サンボマスターの精神的支柱は間違いなくこ
の人だと思う。それはベース云々では無く、近藤という人間がサンボには絶
対欠かせないに違いないという意味において。だからドラム木内は勿論、山
口の近藤に対する信頼感は痛いほど伝わってくる。

しかしそれにしても、と僕は思ってしまう。
これが原因なのかはわからんが、なんとなくメンバー、観客の双方のテンシ
ョンがちぐはぐな感じでちょっと変だぞ？と感じ始めていた。

用意された盛り上がり。しかしそうと分かっていても盛り上がってしまう。
そんな魔法をこれまで何度も魅せてきたのがサンボのパフォーマンス。
それがあってこそ、アルバムなんか聴いたことない人でも楽しめるサンボだ
ったのはずなのに。

僕はその時ちょっとだけ前よりサンボとの距離を感じてしまった。
観客はそれなりに盛り上がっている。メンバーも暴れまくっている。
一体感もあるって言えばある(かな？)
なのに、なぜか思ってしまう。

お前ら、こんなもんじゃねえだろ！もっと行けるはずだろ！


そんな気持ちを自身感じているのか、山口も全く同じ言葉で観客に要求する。
そんな態度に僕の違和感は増すばかり。
終いには踊ってない奴に、踊りを要求する始末。




そりゃ、違うぜ山口。

恥ずかしいから踊らないわけじゃない。

「踊れ」と言われて踊るのが恥ずかしいんだ。

躍らせたいなら、それをメッセージで伝えてくれ。

この歌は踊ったり「イエーイ！」とか叫んで聴くような軽さはねーだろう？




なるほど、そこで最新アルバムの評判が割れているということになんとなく合点が
いった。

と共に、やっとこの違和感を受け入れられるようにもなった。


「聴くものを煽ろうとする気持ちと、反して伝えたいシリアスなメッセージ」

つまりはまとめ切れていないだけなのだ。

「ありのままの自分」

口にしてしまえばどこにでも転がっている陳腐な言葉。しかしこれを地でやって
るバンドがどれ程あるというのだろう。まとまりが無いのはむしろ当たり前では
ないか。

まとめ切れない自分をそのまま世に出してしまう。ともすれば安い確信犯的行動
と取られかねない危うさ、不器用さ。

そうなのだ。この不器用さこそが僕たちの愛するサンボの姿ではないか。


2ndで今の形をすでに完成させてしまったサンボ。

一体これからどこに向かうのか？
何を伝えてゆくのか？

その答えを今回のライブで見せてくれるものと僕は期待していた。
しかし、その答えは当人たちにとって1年や2年で簡単に出せるものではなかった。

でも、そのもがいている姿は紛れも無くサンボマスターだった。

そしてそれはやはり、僕の愛しいサンボマスターだった。





4thも行く。