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映画&音楽のレビュー&日々起こる時事に絡めて商品をピックアップしながら論ずるブログです。Twitterとも連動中です。

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映画「パッチギ!LOVE&PEACE」を鑑賞。

2007-05-19 13:56:29 | Weblog
 映画の話
 1974年、アンソン(井坂俊哉)は病気の息子の治療のため、一家で京都から東京に移り住む。妹のキョンジャ(中村ゆり)は芸能プロダクションにスカウトされ、甥の治療費を稼ぐために芸能界入りを決意する。彼女は先輩俳優の野村(西島秀俊)と出会い、彼に恋心を抱く。

 まずオープニングの電車内とホームでの大乱闘が井筒監督らしい。出端で観客の心を鷲掴みにし作品の中に力づくに引きずり込まれる。ただ、前置きも無く過剰なヴァイオレンスと言うのは強引かもしれない。前作では、ちゃんとキッカケがあってバス横転の大乱闘だったのだから、ちょっとしっくりこない。このシーンの喧嘩相手の日本人応援団は時代背景から考えると『花の応援団』へのオマージュ?
 私は予備知識無しで見たせいか、アンソン一家が東京に引っ越してきた理由も、映画を見た後にネットの公式サイトを見て判ったし、主演の兄妹を演じる俳優が変わっていたので、前作とは別の人物の話だと思っていたのだけど、アンソンの家の仏壇に前作の楊原(現 松永)京子の写真が置いてあるのを見て初めて前作の兄妹のその後の話だと判ったしだいである、とにかく判りづらい映画だ。

 時代も1974年に変わり、異常なほどにディティールにこだわっているのが画面からヒシヒシと感じる。町に張られている映画のポスターも多分井筒監督の趣味が反映されているらしく『パピヨン』『突破口』『悪魔のはらわた』『エマニュエル夫人』そして、極めつけはお正月に浅草の映画館で見るブルース・リーの『ドラゴンへの道』だ。劇場の前にはブルース・リーの腕がグルグル回る安っぽい立体看板まで作られている。映画を見た後はもちろん、なりきりブルース・リーで「アチョーッ!」と叫んでみたり、ヌンチャクまで振り回す徹底ぶりである。その他にも、ユリ・ゲラーのスプーン曲げや、「幸福ゆき」の切符のキーホルダーや、ブリタニカの百科事典オールスター対抗水中運動会、「仮面ライダー アマゾン」や、ぶつかりそうになる『トラック野朗』みたいなデコトラや、ゲイラカイトなど、懐かしいアイテムが随所に映画に散りばめられている。

 映画の感想
 うーん、これは在日朝鮮人家族のサーガを描いた井筒監督版の「ゴッドファーザー」だな。井筒監督は口癖のように「僕は『ゴッドファーザー』が一番好きだ!」と言ってる監督である。前作を見ている時は、それほど感じなかったけど本作を見ると痛いほど感じ取れる。前作は日本人の目を通した在日朝鮮人との交流の話だったので取っ付きやすかったのだけど、本作は日本で暮らす在日朝鮮人の目を通した日本の話なので感情移入しづらい。
 それから並行して描かれる1944年の南洋諸島の話が判りづらい。初め突然話がぶっ飛んだ時は何のことやらと思ってみていると、やがて話がアンソンとキョンジャの父の話と判って来るのだが、もう父は死んでいるのだから誰の見た回想かも不明であるのが難点である。普通、戦争の回想であるならば『プライベート・ライアン』や『父親たちの星条旗』の様に今現在生きている人の回想なら判るが、本作のように死んでしまっている人の回想シーンには無理がある、短いながら素晴らしい戦争シーンだっただけに残念に感じた。
 それでもいい所も沢山あった。冒頭の電車での大乱闘と、その後の試写会場での大乱闘など大勢の人間が大暴れの群像劇は井筒監督ならではのヴァイオレンスであるし、随所に入る笑いのシーンなど独特のセンスを感じさせられるし、何と言っても日本の映画界で、これだけ骨太のドラマを撮れるのは井筒監督ならではである。
 まだ早いかもしれないが、多分『パッチギ!』は『ゴッドファーザー』を見習って3部作になる事だろう、これから製作されるだろう『パッチギ!』第3作目を期待したい。

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映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」を鑑賞。

2007-05-19 13:46:32 | Weblog
映画の話
 昭和19年秋、圧倒的に不利な戦況の日本軍は、少ない戦力の中で敵と戦う最後の手段として、戦闘機に250キロの爆弾を搭載して敵艦に体当たりする「特別攻撃隊」を編成する。やがて、鹿児島県の知覧飛行場も陸軍の特攻基地となる。軍指定の富屋食堂の鳥濱トメ(岸惠子)は、二度と帰らない彼らを引き止めることもできず、複雑な想いを胸に秘め、母親代わりとして慈愛の心で見守り続けていく…。

 特に予備知識無く鑑賞したのだが、東映のロゴマークの後に石原慎太郎のメッセージが文字で出るのは、慎太郎嫌いの人は拒否反応が出るのではと思うが、嫌いな人は初めから映画を見に来ないか・・・。
 私は、この映画の主役と言える鳥濱トメさんの事は何も知らない、なので映画の起承転結の起の部分が描かれていないのが気になる。何故トメさんが特攻兵たちにそこまで親身になっていった過程が知りたいのだが、その部分が映画には無い。特攻兵達が皆、トメさんに対して「お母さん」「おかあちゃん」と呼んでいるのが違和感を感じる。まぁ、「おかあちゃん」を演じるのが市川崑監督の「かあちゃん」で「かあちゃん」を演じた岸恵子なのだからヤボな話かもしれないが、酷な言い方かも知れないが岸恵子は「おばあちゃん」にしか見えない。そしてトメさんの長女役が「かあちゃん」の時にも娘役だった勝野雅奈恵と言うのもまた可笑しい。勝野雅奈恵と言えば、今回は勝野ファミリーが総出演で、お父さんの勝野洋が久々に凛々しい軍人を演じていたし、長男の勝野洋輔窪塚洋介の成長した弟役でチラッと出演している。
 そしてトメさんの次女役が多部未華子が演じているのだけれど、岸恵子と二人並ぶと孫とおばあちゃんにしか見えないのが難点。

 映画の感想
 先にも書いたが起承転結の起の部分が無いのは致命傷、戦争を知らない世代にも判りやすく起の部分を描けば作品に深みが出るのだが、その部分がスッポリと抜け落ちてしまっているのは駄目だ。それから特攻兵たちの心情をちゃんと描けばいいのに中途半端に描くので感情移入出来ない。途中から出てくる中越典子徳重聡に惹かれていく過程も殆ど無いので、いくら役者が頑張っても説得力に欠ける。とにかくドラマが薄い。それなのに特攻隊の出撃シーンは涙が出てしまう、やはり自分も日本人でDNAの奥底に刷り込まれた何かが反応してしまうようだ。
 しかし見るべき点もある、それは特撮シーンだ。これは凄い、日本映画でここまでの戦闘シーンが作れるのかと驚愕した。実写や合成はやや雑な部分もあったが、空中戦の戦闘機は大迫力でCGとミニチュアを駆使して作った映像は日本の特撮史上特筆すべき出来栄えだ。これに米軍の描写も加わればパーフェクトなのだが、米軍は背景程度にしか描かれていない。
 あと特攻隊の目線が前半殆ど無いのが気になった。初めに特攻隊に任命された的場浩司がいい演技をしているのたが、特攻シーンは引きの突撃シーンだけではせっかくのいい演技も台無しである、あのシーンは的場のコクピットの中の心情シーンを入れるべきであったと思う。
 それから伊部雅刀も最後に大事なシーンがあるのだから、もっとドラマの中に登場させてあげれば、あのシーンももっと悲壮感が出るのだけれど、いかんせん出演シーンが少ない。 
 私は本作の監督の新城卓という監督は知らないが、もう一押しすればいいドラマになるのに熱い物が感じられず、全体的あっさりとした印象しか残らなかった。「何処に18億円も使ったんだ?」と思う位にこじんまりとした演出。ラスト20分に戦後のシーンが少し描かれているが、このプロットをもう少し膨らませれば話に深みが出ると思うのだが、ここもあっさり・・・。
 それでも、この映画を見てしまうと靖国神社に参拝したくなる人が出てくるのではないかと考えてしまう。
 そして、これから公開する「パッチギ!LOVE&PEACE」と並び特攻隊絡みの作品で、両作品共に特撮が素晴らしい、作品の評価は別として特撮ファンは必見の作品である。

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