ペリト・モレノ氷河のツアーが少し高かったので、エル・チャルテンでツアーに参加したのだ(1人145ペソ;1US$=3ペソ)。
強風の中、見ているだけで体が凍えてきそうな急流の上をハーネス(腰に装着する命綱固定用フンドシみたいなの)を使ってロープをつたい渡り(20m)、巨大な氷河の上では初めて着けた“アイゼン”(靴に装着するスパイク)を氷に突き刺しながら歩いた。
「落ちたらどうしよう、、、」とビビリながら氷河の深い亀裂を覗き込み、はたまた10m以上の氷壁をピッケル(氷に突き刺す鍬の様な道具)両手に大奮闘、よじ登ってしまったのだ。
川を渡るのもドキドキ。でも、川の向うにはすぐそこに氷河が見えている!渡るしかない。「風よ止まって!」と祈りながら、頼りないレスキュー隊の様に、でもカメラには余裕の笑顔で無事川を渡る。
アイゼンを着けての氷上歩行が思った以上に難しい。「垂直に足を上げて垂直に降ろす、力強く突き刺しながら歩く!」とガイドのガブリエルが何度も私たちに言う。「斜めに足を上げない!」「ゆっくり!」との強い語調に「ここでこけたらシャレにならないんだろうな」と気を引き締めて歩く。
氷河の表面には、強風で飛ばされてきた石がいくつもあり、その石が太陽光に熱せられ温まり、石に接する周囲の氷が解け始め、石は自身の重みで沈み、また接する氷を溶かしながら下へ下へと沈んでいくため、そこらじゅうに深い氷の穴が出来ていた。穴の奥のほうは青白く光り、とても神秘的。ただし、気をつけて歩行しないと、その穴に落ちてしまう。私たちが覗き込んだ入り口の小さい穴(直径50cmくらいの楕円)でも、深さが60mくらいと聞いて、思わずガイドの腕をギュっと強く掴んでしまった。
氷河の上を40分くらい歩いたところで、昼食。朝7時から7時間歩き続けだったので、もうお腹ペコペコ。前の晩に用意したご飯と野菜炒めとハム、そしてゆで卵が詰まったお弁当箱を氷河に腰掛け、食べたのは至福の一時。
他の欧米旅行者たちがシンプルな出来合いサンドイッチを食べている隣で、お弁当箱を出して食べる私たちはかなり注目を浴びた。皆の視線を、しかも羨望の視線を感じながらの、ちょっと気持ちの良いランチ休憩だった。そして、デザート代わりに待望の氷河をガリガリとかじってみた。「普通の水の味」。
ガイドに聞くと、ミネラルたっぷりの氷は氷河の表層にはないらしい。私たちがかじった氷河表面の氷は、「雨」と同じだと知り少々がっかりする。氷河のミネラル氷を味わうには、氷河の穴などに降りていって、ピッケルで砕かないといけない。そんな大技“にわか冒険家”の私たちにはガイドが許してくれない。
昼食後は、とうとう氷の絶壁のぼりだ。断っておくが、私たちはただ単に、氷河の上を歩きたかっただけで、そんでもって、そのついでに氷河を舐めてみたかっただけなのだ。氷壁をしかもこんな絶壁をヘルメットをかぶり、命綱を付けて登りたいなんて考えたこともなかった。絶壁を前にお弁当を食べながら、文ちゃんが「気付かないうちに、何んでもかんでもさせられる、というのは
こういうことを言うんだな」とつぶやく。
でも、まぁ、一生のうちでこんな氷の壁を両手にピッケル握り締めてよじ登ることも、もうないだろうから、一度くらい経験しておくか。。。ということで、ヘルメットを被り、思ったよりグッと重たいピッケルの使い方を真剣に聞き教わる。
「イッチ、ニッ、サンッ、シ」右手、左手、右足、左足の順に氷壁に突き刺し、ゆっくりとよじ登る。意外とイケル、と思った瞬間左足で突き刺した氷が崩れ落ち、体のバランスが崩れる。でも、両手のピッケルがしっかりと氷に突き刺さっていてくれるから、転落しない。
「ふぅー」。無理かと思われた絶壁登りも、何とか無事達成!
登った氷壁の向こう側には、自然の芸術美世界が広がっていた。セロ・トーレ(Cerro Torre:タワーの峰)という名に相応しく尖った塔の様な3本の雪山が、真っ青な空をバックにそびえ立っていた。
氷河ウォークを満喫した後は、再び5時間ほどかけて山を降り、合計12時間を超える大作のツアーが終わった。
ここ南半球は、長かった冬が終わり、春を迎えているため、陽がとても長い。だからこそ在り得る12時間ツアーなのだろう。朝7時にスタートして、満足感と疲労とにまみれて宿に着いたのが夜8時、、、と言っても、まだ日は沈んでおらず、辺りは明るかった。
たまには、こういう思い切ったツアーに参加するのも悪くない。
アルゼンチンの美味しい赤ワインを飲みながら、充実感と満足感に包まれ、長い一日を終えた。
(写真:セロ・トーレ氷河にて)
(10月29日記:くみこ)
強風の中、見ているだけで体が凍えてきそうな急流の上をハーネス(腰に装着する命綱固定用フンドシみたいなの)を使ってロープをつたい渡り(20m)、巨大な氷河の上では初めて着けた“アイゼン”(靴に装着するスパイク)を氷に突き刺しながら歩いた。
「落ちたらどうしよう、、、」とビビリながら氷河の深い亀裂を覗き込み、はたまた10m以上の氷壁をピッケル(氷に突き刺す鍬の様な道具)両手に大奮闘、よじ登ってしまったのだ。
川を渡るのもドキドキ。でも、川の向うにはすぐそこに氷河が見えている!渡るしかない。「風よ止まって!」と祈りながら、頼りないレスキュー隊の様に、でもカメラには余裕の笑顔で無事川を渡る。
アイゼンを着けての氷上歩行が思った以上に難しい。「垂直に足を上げて垂直に降ろす、力強く突き刺しながら歩く!」とガイドのガブリエルが何度も私たちに言う。「斜めに足を上げない!」「ゆっくり!」との強い語調に「ここでこけたらシャレにならないんだろうな」と気を引き締めて歩く。
氷河の表面には、強風で飛ばされてきた石がいくつもあり、その石が太陽光に熱せられ温まり、石に接する周囲の氷が解け始め、石は自身の重みで沈み、また接する氷を溶かしながら下へ下へと沈んでいくため、そこらじゅうに深い氷の穴が出来ていた。穴の奥のほうは青白く光り、とても神秘的。ただし、気をつけて歩行しないと、その穴に落ちてしまう。私たちが覗き込んだ入り口の小さい穴(直径50cmくらいの楕円)でも、深さが60mくらいと聞いて、思わずガイドの腕をギュっと強く掴んでしまった。
氷河の上を40分くらい歩いたところで、昼食。朝7時から7時間歩き続けだったので、もうお腹ペコペコ。前の晩に用意したご飯と野菜炒めとハム、そしてゆで卵が詰まったお弁当箱を氷河に腰掛け、食べたのは至福の一時。
他の欧米旅行者たちがシンプルな出来合いサンドイッチを食べている隣で、お弁当箱を出して食べる私たちはかなり注目を浴びた。皆の視線を、しかも羨望の視線を感じながらの、ちょっと気持ちの良いランチ休憩だった。そして、デザート代わりに待望の氷河をガリガリとかじってみた。「普通の水の味」。
ガイドに聞くと、ミネラルたっぷりの氷は氷河の表層にはないらしい。私たちがかじった氷河表面の氷は、「雨」と同じだと知り少々がっかりする。氷河のミネラル氷を味わうには、氷河の穴などに降りていって、ピッケルで砕かないといけない。そんな大技“にわか冒険家”の私たちにはガイドが許してくれない。
昼食後は、とうとう氷の絶壁のぼりだ。断っておくが、私たちはただ単に、氷河の上を歩きたかっただけで、そんでもって、そのついでに氷河を舐めてみたかっただけなのだ。氷壁をしかもこんな絶壁をヘルメットをかぶり、命綱を付けて登りたいなんて考えたこともなかった。絶壁を前にお弁当を食べながら、文ちゃんが「気付かないうちに、何んでもかんでもさせられる、というのは
こういうことを言うんだな」とつぶやく。
でも、まぁ、一生のうちでこんな氷の壁を両手にピッケル握り締めてよじ登ることも、もうないだろうから、一度くらい経験しておくか。。。ということで、ヘルメットを被り、思ったよりグッと重たいピッケルの使い方を真剣に聞き教わる。
「イッチ、ニッ、サンッ、シ」右手、左手、右足、左足の順に氷壁に突き刺し、ゆっくりとよじ登る。意外とイケル、と思った瞬間左足で突き刺した氷が崩れ落ち、体のバランスが崩れる。でも、両手のピッケルがしっかりと氷に突き刺さっていてくれるから、転落しない。
「ふぅー」。無理かと思われた絶壁登りも、何とか無事達成!
登った氷壁の向こう側には、自然の芸術美世界が広がっていた。セロ・トーレ(Cerro Torre:タワーの峰)という名に相応しく尖った塔の様な3本の雪山が、真っ青な空をバックにそびえ立っていた。
氷河ウォークを満喫した後は、再び5時間ほどかけて山を降り、合計12時間を超える大作のツアーが終わった。
ここ南半球は、長かった冬が終わり、春を迎えているため、陽がとても長い。だからこそ在り得る12時間ツアーなのだろう。朝7時にスタートして、満足感と疲労とにまみれて宿に着いたのが夜8時、、、と言っても、まだ日は沈んでおらず、辺りは明るかった。
たまには、こういう思い切ったツアーに参加するのも悪くない。
アルゼンチンの美味しい赤ワインを飲みながら、充実感と満足感に包まれ、長い一日を終えた。
(写真:セロ・トーレ氷河にて)
(10月29日記:くみこ)